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大阪サミットで仕事を休みにしたら給与はどうなる?

 

Summit

 

 


道路を使えなくなる4日間。

2019年の6月27日から30日の日曜日まで、大阪のインテックス大阪を会場にG20サミットが開催されるため、大阪では交通規制が実施され、その時期の業務をどうするかが悩みとなっています。

幹線道路の道路上にある歩道橋や高速道路の入り口に取り付けられた電光掲示板には、大阪サミットで交通規制されるとの情報が5月頃からずっと表示されています。

 

G20大阪サミット 交通規制

出典:G20サミット交通規制路線(大阪府警察)

 

規制される路線の図を見ても、大阪で生活していないといまいちインパクトが分からないはず。

赤い線の部分が規制される道路なのですが、大阪市内の高速道路がほぼ使えない状態です。

大阪市内の高速道路といえば阪神高速。この唯一の高速道路を通れないとなると、普段からそこを走っている車が一般道に流れてきます。

阪神高速の1日あたりの交通量は約70万台強。この車両のほぼ全てが、6月27日から30日までの4日間、一般道に流れてくるわけです。


阪神高速道路 日平均交通量実績(阪神高速道路株式会社)

 

では、大阪市内の幹線道路は空いているのかというと、平日の朝と夕方はひどく渋滞しますし、それ以外の時間帯でも交通量は多いです。

そこにおよそ70万台の車両が流れてきたら、4日間はずっと渋滞したままになるのではないかと思います。

となると、車を使う商売には影響が出てきます。

 

 

 

サミットを理由に仕事を休みにしたら休業になる?

道路を利用する商売というと、タクシーやバス、トラックなど運輸業がありますし、販売する商品をトラックで運んでいる小売業もあります。

飲食業でも、材料を車で運んでいるでしょうから影響があるはずです。

道路が使えないからお店を開けられない。となれば、会社を休みにするという選択もあるかと思います。

では、この場合、会社を休みにすると休業になり、休業手当を支給する必要があるのかどうか。

労働基準法26条(以下、26条)では、使用者の都合で労働者を休ませると、仕事をしてもらっていなくても6割以上の給与を支給しないといけないと決められています。

例えば、今日は暇だから早退してと言って、予定の時間よりも2時間早く退社させると、2時間分の給与の6割以上を休業手当として支払う必要があります。

他にも、明日は仕事が無いから休みにしてと言った場合も、振替で他の日に出勤できるように手配しなかったとすれば、休業手当が必要になります。


使用者の責任で労働者を休ませれば、休業手当が必要ですが、G20サミットが開催されるため、通常通りの業務ができないので休みにしたとすれば、休業手当は必要なのかどうか。

サミットを開催するかどうかは使用者が決められるものではありませんから、それを理由に休業したとなれば、使用者の責任にはならず、26条の手当は必要ありません。

ただ、操業すればできるのにサミットにこじつけて休みにすると、使用者の都合で休業したと判断されます。

「道路を使えないと仕入れができないから、お店なんて開けられない」
「荷物を運べないなら仕事にならない」
「お客さんを乗せても渋滞で走れないなら商売上がったりだ」

こういう類の仕事ならば、使用者の責任にならない休業として休みにできます。

 

 


振替出勤や年次有給休暇で対処するのもあり。

6月27日から30日までの4日間を休みにする代わりに、他の休みの日を出勤日に振り替える。こういう対処法もあります。

出勤日が減れば給与も減るでしょうから、代わりの日に振替で出勤できるようにすれば、休んだ日を補填できます。

他には、年次有給休暇を4日間入れて休むのも一案です。

休業手当が出ないので、有給休暇を割り当てて給与が減らないようにする。6月は祝日がありませんから、6月末を有給休暇で4連休にするのも良いかもしれません。

 

 

 

 

年金保険料の二重払いを回避できる 日・中社会保障協定が発行

二重払い回避


 


2019年5月、日本と中国の間で社会保障協定が発効するための外交文書が交換され、9月1日から日・中社会保障協定の効力が生じるようになります。


日・中社会保障協定の発効について(厚生労働省)

 

2019年6月時点で19カ国との社会保障協定が発効しており、対象国との間では、年金制度に二重加入しないようになっています。


海外で働かれている皆様へ(社会保障協定)

 

社会保障協定とは、自国と相手国、両方の年金制度への加入基準を満たすと、両方の国で年金に加入しないといけないところ、双方で調整し片方の国の年金のみ加入するようにするものです。

二重に加入しても、二重に年金を受給できるものではなく、保険料の掛け捨てになってしまいます。そこで、国家間で社会保障協定を締結し、年金の保険料が掛け捨てにならないようにしているわけです。


加入しただけ年金が支給されるというものではなく、日本では10年以上にわたって年金に加入していないと受給条件を満たせません。

仮に、日本で年金に4年加入し、その後はずっと海外で年金制度に加入していたとすれば、10年以上の受給資格期間を満たせないため、日本で加入していた4年間の保険料が無駄になってしまいます。

社会保障協定を締結していれば、日本で加入していた4年間も海外の年金制度で通算され、掛け捨てを回避できます。

それゆえ、保険料と加入期間が無駄にならないように、国家間で社会保障協定を締結しているというわけです。


今回の社会保障協定は、日本と中国の間で締結されたものですが、お互いに人の往来が多いですから、利益が多い協定になると思います。

中国経済からの恩恵を最も受けているのが日本と言っても過言ではないぐらいの関係ですし、過去に「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪をひく」と言われたことがありましたが、今や「中国がくしゃみをすれば日本が風邪をひく」と言ってもいいぐらいです。


民間企業関係で中国に在留している邦人が約7万人いるとのことですから、他の協定国と比べても協定の恩恵を受ける対象者は多いでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

祝日に年次有給休暇を使わせてもいいの?

 

祝日有休

 

有給休暇をいつ使うかは当事者次第

法律では、年次有給休暇を付与する条件と日数についてルールが定められていますが、どういう使い方をするかは決められていません。

用事があるから有給休暇で休むのは良いですし、病気で休んでいるときに使うのもアリです。単に休みたいだけで年次有給休暇を取得するのも問題ありません。

では、祝日に有給休暇を使ったらどうなるか。


仮に、祝日は休みになる職場があるとして、祝日には有給休暇で休むように会社から指示されたらどうか。

もしくは、会社からの指示ではなく、労働者の判断で祝日に年次有給休暇を充当したらどうか。


なお、1週間に1日は休日を入れないといけないのが法律ですが、その休日には該当しない祝日に有給休暇を使うことを想定してください。

つまり、法定休日ではない日に有給休暇を使うというわけです。


「祝日が休みの日ならば、労働義務がない日だから、有給休暇は使えない」という理屈もありますが、休みの日に年次有給休暇を使うことが法律で禁止されているわけではありませんので、この点はクリアできているという前提で考えてください。

 

祝日に年次有給休暇を充当するかどうかは労働者の任意で決めるもの

無休の祝日にしてもいいし、有給休暇を祝日に充当するのもOKというように選択できるならば大丈夫です。

しかし、祝日は半ば自動的に有給休暇が充当されるという運用はダメです。

有給休暇は労働者本人が自主的に使うものですから、会社側で祝日を有給休暇に変えてしまうことはできません。

本来ならば無休になるところ、有給休暇で祝日に休めるならば、労働者にとって悪い扱いでもありませんが、どうするかは労働者が決めることです。


他には、労使協定を締結して、計画有給休暇を事前に決めているならば、会社側で決めたスケジュールで祝日を有給休暇にすることも可能です。

計画年休を実施するには、事前に労使協定を締結して、実施内容を決めておく必要があります。何らの準備もせずに一方的に祝日を計画年休に変えてしまうことはできないのです。

祝日だけでなく、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始など、休みが連続する時期に計画有給休暇を充当させるのは、有給休暇の使い方としては良い方法です。

連休中の平日に有給休暇を入れる『ブリッジホリデー』というものもあり、平日を休暇に変えて連休を作り出すという使い方です。


年次有給休暇の計画的付与制度(厚生労働省)


では、カレンダーにあるすべての祝日を計画有給休暇の対象にできるかというと、付与された日数のうち年5日を超える分だけが計画付与の対象にできます。

5日分だけは本人が任意で使えるように残しておき、それ以外の休暇はカレンダーを見ながら計画的に埋めていけます。


ただ、計画年休を実施するとなると、残日数が足りなくなった人をどうするかが問題です。

計画付与する段階で有給休暇の残日数がゼロになっていれば、計画年休を使えませんので、別途で休暇を与えないといけなくなります。


計画年休の欠点を避けるには、原則として祝日は無休の休みになるが、本人が希望すれば有給休暇を充当することも可能とする。

これがベストな解決策ではないかと思います。

祝日に有給休暇を充当するかどうかは本人の選択に任せるほうが会社もラクですし、従業員も納得しやすいでしょう。

年次有給休暇の管理にまつわる疑問と正しい対応例
働いてる人にとって年次有給休暇は関心を集めますから、労務管理でも疑問や問題が生じやすいところですよね。労務管理でもトラブルになりやすいのが年次有給休暇の取扱いです。ならば年次有給休暇についてキッチリしている職場にすれば、働いている人たちからの評価も上がっていくでしょうね。

 

祝日を年次有給休暇にする要望を使用者が受け入れる義務はない

祝日を会社の判断で年次有給休暇に変えてしまうと、休みの日が1日なくなってしまいますから、会社側から一方的に祝日を年次有給休暇に変えることはできません。

しかし一方で、従業員から、「祝日だと給料がない無給の休みになるから、祝日に年次有給休暇を入れたい」と言われた場合は、会社はそれに応じなければいけないのかというと、応じる義務はありません。

祝日はもともと休みになっている職場ならば、あえて年次有給休暇を使う必要はありませんから、祝日を年次有給休暇に変えたいと要望を出されても、会社側はそれを拒むことができます。

本来は出勤する日を休みに変えるのが年次有給休暇の効果ですから、既に休みになっている祝日に年次有給休暇を入れるのは、本来の使い方としては想定されていません。

ですが、会社と従業員とのあいだで、祝日に年次有給休暇を使うことに関して合意しているならば、第三者がそこに割って入って、そういう年次有給休暇の使い方をしちゃいけないよ、と止めることはできません。

休みになっている祝日に年次有給休暇を入れるの本来の使い方ではないので、そういう形での年休の使い方をしないようにしたほうがいいのですけれども、労使間で合意した上で、そういう運用しているとなれば、法律に反するものではありませんし、ましてや第三者が介入して止めるようなことでもないです。

 

有給休暇を取った日でも正確に給与計算する方法とは?
年次有給休暇は、通常の休日と違って給与を受け取りながら休む日ですから、給与を計算しなければいけないところなんですけれども、普段では慣れないことをすると間違いやすいところです。

働くと年金が減る在職老齢年金制度が廃止されるかどうか

収入と年金を調整するのが在職老齢年金制度

在職老齢年金制度を廃止するかどうかを政府が検討するとのニュースが毎日新聞から報道されました。

在職老齢年金制度とは、年金受給者が働いて収入を得ると、年金額と収入を勘案して、年金額を調整するというものです。

仕組みを簡単に説明すると、例えば、年金を多く受け取っていて、追加で収入を少し得ると、年金を減額して調整します。逆に、年金は少ないけれども、働いて得る収入が多い場合も、年金を減額して調整します。

年金と収入を組み合わせてリバランスさせながら、年金の受給額を調整するのが在職老齢年金制度です。

年金と収入、どちらも少なければ、減額されずに年金が満額支給される場合もあります。

金額で基準が設定されており、ここまでの年金かつ、ここまでの収入ならば年金を減額しないという水準ならば、年金は満額支給されます。

在職老齢年金の早見表とシミュレーション!60歳以上、65歳以上で働く場合の年金は支給停止される! | 保険の疑問をしっかり解決

上記のウェブサイトに、在職老齢年金の早見表というものが掲載されています。

この早見表に、収入と年金額を当てはめると、どれぐらい年金が減額されるかが分かります。

「基本月額」は毎月の年金額と読み替えて、「総報酬相当額」は働いて得る月収と読み替えてもらうと分かりやすいでしょう。

年金額と収入のマトリクスで、年金額をどれぐらい調整するかが決まります。

どれぐらい働くと年金はいくら減るのか

2022年4月から60歳代前半の在職老齢年金制度と60歳代後半の在職老齢年金制度の支給停止基準額が揃えられ、どちらも47万円になりました。この変更で在職老齢年金の計算がしやすくなりました。以前は60歳代の前半と後半で支給停止基準額が違っていて、60歳代後半の方が支給停止基準額が高く設定されていました。つまり、60歳代前半だと支給停止基準額が低いため、老齢厚生年金が減らされやすかったということ。

その後、2023年4月から支給停止基準額は48万円に拡大されています。

在職老齢年金の支給停止基準額は毎年見直され、2024年4月からは50万円になります。支給停止基準額が引き上げられると、年金を受給しながら働きやすくなりますので、60歳以降の方には有利な制度変更です。

2024年4月時点の報道では、在職老齢年金が廃止を含め見直しが検討され、全廃か一部緩和へと検討されています。

在職老齢年金が廃止されれば、年金をカットされる心配なく働いて自分の収入を増やしやすいですので、60歳以上の方で、厚生年金の被保険者として厚生年金保険料を払いつつ老齢厚生年金を受け取っている方には有利な制度変更になります。法人で役員として厚生年金に加入している方は関心が高いところでしょうね。

厚生年金に加入し、高い厚生年金保険料を払ってきたのですから、払った分は回収したいと思うのが当然です。一方で、年金給付を抑えたいと考えるのが政府ですので、両者のせめぎあいが起こります。

毎月の賃金と老齢厚生年金の月額が支給停止基準額を超えると、超えた額の1/2が老齢厚生年金から減額されます。働くと年金が減ると表現しているのはこの部分なのですね。

例えば、毎月の賃金(給与と賞与を1月あたりに平準化したもの。 毎月の賃金(標準報酬月額)+ 1年間の賞与(標準賞与額)÷ 12)が20万円で老齢厚生年金の月額が32万円だとすると、支給停止基準の50万円を超えている額が2万円なので、その1/2の1万円が年金の支給停止額になります。その結果、毎月の賃金は20万円、老齢厚生年金の月額が31万円となり、合計で月額51万円です。給付カットされるのは1万円。

なお、収入に応じて減額されるのは厚生年金(老齢厚生年金)であって、国民年金(老齢基礎年金)は収入が増えても減額されません。年金というと国民年金と厚生年金を混ぜて表現することがありますが、在職老齢年金制度で減額や支給停止になるのは老齢厚生年金です。

ですから老齢基礎年金(国民年金の老齢年金のこと)だけ受け取っている方は、どれだけ収入が増えても年金はカットされません。例えば、厚生年金に加入したことがなく、月額7万円の老齢基礎年金を受け取っている方だと、月収52万円でも、月収300万円でも、年金は月額7万円です。国民年金は基礎年金とも言われており、生活の基礎になる年金のため、収入にかかわらず在職老齢年金の対象にならないのです。

在職老齢年金制度の対象になるのは厚生年金に加入して厚生年金保険料を支払っている60歳以上の方です。厚生年金の保険料を支払いつつ老齢厚生年金を受け取っていると、収入に応じて年金が減額されたり、支給停止されることがあるのですね。

収入が多い方は、60歳以降は雇用契約ではなく個人事業主として請負契約で働くと、厚生年金の被保険者にはなりませんから、在職老齢年金による影響を受けなくなります。ただし、個人事業主から法人化すると、また厚生年金の被保険者になりますから、その点は新たに検討していく必要がありますね。

iDeCoを年金で受け取ったり、退職金を分割で受け取っても在職老齢年金の計算に含まれない

在職老齢年金制度で支給停止になるかを判定するときは、厚生年金に加入して得られた毎月の給与や年に数回の賞与、老齢厚生年金の支給額のみ。そのため、iDeCoの年金や退職金による収入を含めずに判断します。

60歳以上で厚生年金に入って、被保険者として厚生年金保険料を払っている人であって、収入と年金の受給額、この2つを合算して1月あたり50万円を超えたときは、その超えた額の1/2が老齢厚生年金から減額されます。

例えば、給与と賞与を合算して1月あたり30万円として、老齢厚生年金の受給額が1月あたり25万円だとすると、50万円を超えた額は5万円。在職老齢年金で減額されるのは超えた5万円の半分ですから、年金の受給額は22.5万円になります。

自営業での収入、保険会社で加入している個人年金保険から出る満期金、不動産や投資信託などの金融資産からの収入も在職老齢年金の支給停止額を計算する際には含まれません。

自営業からの収入が月に40万円あったとしても、在職老齢年金では考慮されませんから、給与と賞与を合算して1月あたり30万円、年金が25万円、自営業の収入が40万円、3つの収入を合算すると月に95万円になりますが、自営業の収入は在職老齢年金の計算からは外しますから、収入は月55万円として計算されます。そのため上記の例だと、年金の受給額は22.5万円で変わりません。

働くと在職老齢年金制度の影響で年金が減る?

年金を受け取り始める年齢が近づくと、「年金って、受け取りながら働くと減っちゃうんでしょう?」と言う人が出てきますね。

50歳代の中頃になると、もうそろそろかなと感じ、年金に意識が向き始めるのでしょうね。

その状況で、「年金って、受け取りながら働くと減っちゃうんでしょう?」という疑問が湧くわけです。

確かに、年金を受け取りながら仕事をすると、年金が減ることがあります。

ただ、この場合の「年金」という言葉の定義はハッキリしているのでしょうか。つまり、単に「年金」という言葉を使うとなると、国民年金と厚生年金を含めて表現することになります。人によっては、厚生年金基金からの年金や各種の共済年金、また確定給付企業年金などの企業年金も含めて「年金」という言葉を使うこともあるのかもしれませんね。

では、「年金」を受け取りながら仕事をすると、上記の「年金」の全てが減ってしまうのでしょうか。それとも、特定の年金だけが減り、その他の年金は影響が無いのでしょうか。

国民年金と厚生年金は違うもの

結論から言えば、年金を受け取りながら働いて減るのは「厚生年金」だけです。

厚生年金には「在職老齢年金」という仕組みがあり、この仕組みによって、年金を受け取りながら働く人の年金を調整するのです。

在職老齢年金とは、何か追加的に支給されるような年金のことではなく、年金を受け取る人が働いて報酬を受け取るときに、満額の年金を支給せずに、「仕事の報酬に合わせて年金額を調整する仕組み」のことです。「在職老齢年金」という名称を聞くと、「あぁ、何かまた年金を受け取れるのね」と思う人もいるかもしれませんが、在職老齢年金は年金ではなく年金額を調整する仕組みなのですね。

一方、国民年金には在職老齢年金のような仕組みはありません(なお、各種の共済年金にも厚生年金と同様の仕組みがあるかもしれませんが、各組織ごとに独自に運用されている年金ですので把握できていません)。

そのため、専業主婦(専業主夫)や自営業を営んできた人のように、国民年金だけを受け取る人ならば、年金を受け取りながら働いても差し支えはないのです。

ゆえに、「年金って、受け取りながら働くと減っちゃうんでしょう?」という表現は、「"厚生年金"って、受け取りながら働くと減っちゃうんでしょう?」と言い換えると正しくなります。

働いて減るのは厚生年金 国民年金は働いても減らない

在職老齢年金制度の対象になるのは老齢厚生年金であって、国民年金から支給される老齢基礎年金は対象とはなりません。

そのため、厚生年金に加入したことがない方(国民年金だけ加入していた方のこと)は、どれだけ収入を得ても年金は減額されないというわけです。

国民年金は、基礎年金と言われるもので、生活の基礎となる年金であるため、収入に応じて減額されることはないのです。

一方、厚生年金は、報酬比例年金と言われており、収入に連動した年金です。そのため、多少なり減額したとしても生活には支障がないと考えられています。そのため、在職老齢年金制度で調整の対象になっているというわけです。

在職老齢年金制度で年金が減らされない範囲で働くのも1つの方法です。例えば、厚生年金を受け取っている60歳の人で、年金額が毎月10万円ならば、月収18万円までなら年金が減額されません(先程紹介した早見表で確認できます)。

他には、厚生年金を受け取り始めたら働かないのも対処法です。そうすれば、在職老齢年金の対象にはなりませんので、年金は減額されません。

少なくとも、払った保険料は回収したいと思うのが加入者の気持ちですから、働いたからといって年金が減らされるのは不満に感じるでしょうね。

年金の財政を考えれば、支給額を減らしたいところでしょうが、加入者が納得しにくい形ではそれを実現するのも難しいもの。

年金には所得税も課されますから、在職老齢年金制度でもって支給段階で減額調整せずに、まずは支給してお金を使ってもらって、所得税や消費税で回収していくほうが納得が得やすいでしょうね。

雇用保険の高年齢雇用継続給付も考慮して待遇を決める

雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あって、60歳以上65歳未満の一般被保険者で、原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて、75%未満に低下した状態で働き続ける場合に支給されるのが高年齢雇用継続給付です。

60歳以降は在職老齢年金だけでなく高年齢雇用継続給付も考慮して再雇用の条件を決めると良いでしょう。

老齢厚生年金が減らない範囲で、さらに高年齢雇用継続給付も受給できる、これらの条件を満たせる雇用契約で働くのが合理的ですね。

60歳以上65歳未満の各月の賃金が60歳時点の賃金の61%以下に低下した場合は、各月の賃金の15%相当額が高年齢雇用継続給付として支給されますので、この水準を前提に、在職老齢年金の支給停止基準額を超えないようにしましょう。

例えば、60歳時点の賃金が月額40万円で、60歳以上65歳未満の各月の賃金が24万円になると、40%減になり、高年齢雇用継続給付の支給率は15%。賃金が24万円で、その15%なので、高年齢雇用継続給付の月額は3.6万円で最も多くなります。ちょうど40%減になるところで賃金水準を決めて、その水準で在職老齢年金も支障がないかどうかチェックします。

用意されている公的制度は使ってもらうために設計されていますから、きちんと使えるような対応をしていくと働きやすい職場になりますね。

厚生年金の保険料を自動で計算してくれる給与計算ソフトは?
給与計算するときは、基本給だけじゃなく社会保険料も控除しなければいけませんから、手作業で給与を計算していると、保険料の控除で間違ってしまうこともありますよね。

ゴールデンウィークの10連休中に出勤したら休日割増賃金は付く?

 

GW


メールマガジン 本では読めない労務管理の"ミソ"

山口社会保険労務士事務所
(2019/4/15号 no.321)

 

 

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ゴールデンウィークの10連休中に出勤したら休日割増賃金は付く?
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毎年5月にはゴールデンウィークがありますが、2019年の5月は世間的には10連休になる予定です。

4月27日の土曜日から5月6日の月曜日まで合計10日間。


連休中に休んでも、お店やアミューズメントパーク、ホテルは混んでいますし、料金も高くなります。

旅行会社が販売するパッケージツアーの料金も、閑散期に比べて2倍、3倍の料金になっていることも当たり前です。

混み合って快適ではないし、料金も割高で、そういうのが私は好きではないので、ゴールデンウィークや年末年始は遠出するような遊びは避けるようにしています。

連休中に仕事が休みになる方もいらっしゃるでしょうが、祝日に出勤したら割増賃金は付くのかどうか。ここに疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。

休日に出勤すれば休日手当なり割増賃金が付くだろうと思われているフシがありますが、では10連休中のゴールデンウィークに仕事をすればどうか。

「休みの日に出勤しているのだから、休日割増賃金が付くだろう」と思う方がいる一方、「祝日と休日割増賃金は関係ないのでは?」と思う方もいるのでは。

祝日といえば仕事が休みの日と考えるものですし、その祝日に出勤したとなれば、名目上は休日出勤になっていますよね。

じゃあ、割増賃金も付くのかどうか。ここが考えどころです。


5月の10連休中に出勤したら休日割増賃金は付く?

 

 

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