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■■┃ メールマガジン 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2010/10/14号 no.230)━
- 社会保険と雇用保険は同じ公的保険だけれども、保険料の決め方が違う
- 雇用保険料が毎月の給与で変動してもいい理由。社会保険料を固定しないといけない理由
- 社会保険は支出額が変わらないので、保険料を固定して安定した収入を確保しないといけない
■雇用保険料は変動的、社会保険料は固定的。なぜ?◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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社会保険料は毎月の給与に連動しない。
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社会保険と雇用保険は同じ公的保険だけれども、保険料の決め方が違う
雇用保険と社会保険(健康保険、厚生年金。以下、社会保険と表記する場所では健康保険と厚生年金を総称する)はお互いに公的保険という枠に含まれるのは周知の通りですが、保険料の回収の仕組みには違いがあります。
労災保険料や雇用保険料(以下、単に「労働保険」と表記することがある)は概算納付と確定納付で処理しています。一方、社会保険料には概算と確定という仕組みではなく、1年間の保険料を毎年決定して、その保険料で毎月回収していく仕組みです。つまり、労働保険は一括納付で、社会保険料は月額で分割納付というわけ。
また、保険料の額を決める段階でも違いがあります。雇用保険は毎月の給与額によって決まります。一方、健康保険と厚生年金の保険料は、給与額が少々変動しても、基本は一定です。つまり、雇用保険料は毎月の賃金に連動するが、社会保険料は改定作業をしない限り毎月の賃金に連動しない。
同じ公的保険であるものの、保険料の計算や課金方法が違っているわけです。
なぜ雇用保険は毎月の賃金に連動させているのに、社会保険料は連動させないのか。
なぜ雇用保険は一括納付が可能なのに、社会保険料は一括納付できないのか。ちなみに、一括納付ができると、会社にキャッシュを滞留させる(いずれはキャッシュアウトするのですが)ことが可能ですので、会社に有利です。いわゆる「繰り延べ効果」ですね。支払いは早いよりも遅い方がいいですので。
雇用保険も社会保険も保険料率が決まっているのだから、毎月の賃金に連動させて課金すれば良いのにと思ったりするのですが、どうしてそうしないのでしょうか。病欠とか休職中も社会保険料だけは発生するので何とも不合理ですからね。
雇用保険料が毎月の給与で変動してもいい理由。社会保険料を固定しないといけない理由
「社会保険料はなぜ固定されているのか。雇用保険のように毎月計算すればいいじゃないか」と思う人は少なくないはず。私も同じように思います。
毎月の賃金に保険料率を掛けて保険料を計算するだけなのですから、雇用保険も社会保険料も同じように扱えばいいわけです。にもかかわらず、社会保険料は毎年7月に定時改定したらそのまま維持される(随時改定はあくまで例外)。
なぜなのでしょうね。
保険料の納付も同様ですが、労働保険のように概算納付と確定納付の仕組みを採用すれば、毎月納付する作業は不要ですし、労働保険と社会保険料の納付を一緒にできますので便利です。また、キャッシュの滞留量も多くなりますので、この点も有利です。
労働保険の更新と社会保険料の改定時期が一緒になったのですから、保険料の納付方式も一緒にすればいいのにと思うんですけどね。
なぜ雇用保険料が毎月の賃金に連動しているのかと考えると、財政が黒字化しやすいのでキャッシュインを固定化する必要がないという理由もあります。雇用保険には、好景気のときに財政積立が積み上がり、不景気のときに一気に積立を減少させるという特徴があります。最近ですと、雇用保険の基本手当(失業手当のこと)の支払いが多いですので、積立は枯渇しています。しかし、2005年から2006年にかけては確か3兆円程度の積立があったと記憶しています。労働市場が超売り手市場だった頃ですね。今の時点から考えると「あれは夢だったのかな、、」と思えるほどの市場環境でした。
また、雇用保険からキャッシュアウトするのは、主に被保険者が失業するときか企業に助成金を支給するときです(教育訓練給付などもあるが、自己負担部分が多いですので、利用するインセンティブがあまり大きくない)。
助成金の支給条件は限定的ですし手続きも煩雑にしています。また、好んで失業する人はさほど多くないでしょう。それゆえ、キャッシュが出ていくイベントが発生しにくいので、財政的に困ることがあまりないわけです。また、不景気だと財源が枯渇するけれども、景気が回復すると雇用保険の財源は急回復する特徴もあるので、雇用保険は少々保険料収入が変動しても財政的には困らないのです。
それゆえ、固定的に保険料を回収せずに、毎月の賃金に連動させているのですね。
一方で、社会保険は状況が違います。
年金の支払いは2ヶ月に1回必ず発生しますし、健康保険の保険支払いも高頻度です(風邪とか転けて怪我した程度でも保険が使えますからね)。つまり、健康保険も厚生年金も頻繁にキャッシュアウトする仕組みになっているわけです。
後期高齢者医療制度や在職老齢年金でキャッシュアウトを減らそうという試みはあるものの、ゼロにすることはできませんからね。
ちなみに、介護保険も恒常的に支払いが発生する制度ですから、健康保険や厚生年金と同じです。介護保険料も健康保険や厚生年金の保険料と一緒に抱き合わせて回収しているのはそのためです。
また節約のインセンティブの点でも考察可能です。
雇用保険料は数千円程度なので、節約するインセンティブが低い。そのため、毎月の賃金に連動させてしまってもよい。
一方、社会保険料は健康保険と厚生年金を合わせると数万円ですから、節約するインセンティブが高い。そのため、毎月の賃金に連動させていると、保険料の計算基礎に含まれない手当などを利用して、それらの費目に賃金を退避させ、社会保険料を減らそうと試みる企業が出てくるわけです。
それゆえ、社会保険料は毎月の賃金に連動させずに、固定的に回収しているのです。なるべく節約させないようにするという意図も含まれているでしょうね。
社会保険は支出額が変わらないので、保険料を固定して安定した収入を確保しないといけない
雇用保険も健康保険も厚生年金も、それぞれに保険料が設定されているのですから、毎月の賃金に合わせて計算するのが本来は正しいのです。仕組み的にも可能です。
しかし、現実には、雇用保険は実際の賃金で決めて、社会保険料は実際の賃金ではなく標準報酬月額という数字で決めている。一時的に給与が変動しても、社会保険料はすぐに変更されませんよね。標準報酬月額をもう一度決定するという作業を経ないと、社会保険料は変わらない仕組みになっていますから。
恒常的に支払いが発生する制度では固定的に費用を回収し、偶発的に支払いが発生する制度では変動的に費用を回収すると考えていいでしょう。
ちなみに、法人税にも中間納付と確定納付があって、労働保険と仕組みが似ています。労働保険の場合は全額を概算納付して、一方で、法人税の場合は半分だけという違いがありますが、一括納付という点は同じです。
国の収入は法人税だけではないし、国債で資金を調達することもできるので、法人税も労働保険と同じようにさほど切迫して回収しないといけないものではないのでしょうね。
社会保険料や雇用保険料は、制度が改正されると保険料が変わるので、それに応じて給与計算も変えていかなければいけません。しかし、変更された保険料で正確に給与計算ができず間違ってしまうこともあります。自動で保険料を計算してくれる給与計算ソフトなら、手計算のような間違いも起こりません。
メルマガ以外にも、たくさんのコンテンツをウェブサイトに掲載しております。
【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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