あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

学生のアルバイトにも労災保険はある 仕事上の怪我なら健康保険を使わない

労災保険

深夜時間に居酒屋で働く高校生。18歳未満は22時以降に働けない

学生は普通の社員とは違うと思っている人もいるかと思いますが、実際は学生もパートタイマーもフルタイム社員も、労務管理での取り扱いはほぼ同じです。

ただし、「ほぼ同じ」と表現しているので、違いはあります。例えば、高校生は、22時以降は働けません。22時から翌日の5時までが深夜時間帯ですが、この時間帯に高校生は働けないように制限があります。

「給与はチャンと払うから、ちょっとぐらい延長してもいいんじゃないの?」と思うところでしょうが、18歳未満の人の深夜業については、深夜割増賃金を支払っても不可です。

会社によっては、22時に終業するのではなく、22時のちょっと前、21時50分とか21時45分に終業して、帰り支度を済ませ、22時までには会社なり店の外に出るようにしているところもあります。

私が高校生の頃、居酒屋で働いていたときは、午前0時30分まで仕事がありましたね。確か17歳で、お店の営業時間は17時から0時だったか。0時まで営業して、そこから閉店作業なり掃除を済ませて、終わるのが0時30分。90年代の後半でしたから、もう随分と前のことです。

22時までに仕事を終えるなんてころは無かったですし、深夜割増賃金も無かったように記憶しています。今風に言えば、なかなかのブラックっぷりです。

個人営業の居酒屋でしたから、労務管理について店主の人は知らず、仕事の時間に対して時間給を支払えばそれでOKと思っていたのでしょう。

高校生は22時以降は働けませんから、深夜割増賃金を受け取ることもありません。もし、深夜割増賃金を受け取っているとしたら、深夜勤務をしていることになります。

ちなみに、36協定も高校生には適用されませんから、法定労働時間を超えて働くことはできません。ただ、所定労働時間を超える残業は可能です。

1日に8時間を超えて働くのはダメですが、例えば1日4時間のところを30分延長して、4時間30分になったら、超過した30分は残業ですが、36協定の適用を受ける残業ではありませんので、これならば高校生でも可能です。

学生は労災保険を使えないから、自分で健康保険を使う?

病気や怪我をした時の保険というと、まず頭に浮かぶのは健康保険です。

一方、仕事をしている時に、業務上の理由で怪我や病気をしたら、健康保険を使わずに、労働者災害保険、通称では労災保険を使います。

この労災保険は、雇われて働いている人が半ば自動的に加入している制度です。会社が労災保険の適用事業所になると、その職場で働いている人達は、自動的に労災保険に加入した状態で仕事をすることになります。

保険に入っているとなると、保険料がかかるんじゃないか、と思うところですが、労災保険の保険料は事業所、つまり会社が全額払うので、給与から労災保険料が控除されることはないのです。

つまり、従業員は保険料を払わずに労災保険に入っている、というわけです。お得ですね。

労災保険で病院に行った時は、通勤災害の場合を除いて自己負担がありませんから、健康保険のように支払いの3割が自己負担になりません。労災だと0割負担です。

職場で怪我をしてしまったら、学生は労災保険を使えないから、健康保険を使って自分で病院に行け。こんな事を言う職場が実際にあるかどうかは知らないですけれども、学生であったとしても、労災保険は適用されますから、仕事中の怪我で病院に行くときは、健康保険を使わずに労災保険を使います。こういう場面で健康保険を使わせると、「労災隠し」になります。

労災保険を使うところ健康保険を使ったときは、あとから切り替えをすると、支払った自己負担分が還付されます。

健康保険から労災保険への切り替え

普通の社員も学生も、労災保険では同じ

学生だと、雇用保険、社会保険には加入しません(夜間部や社会人学生だと例外)。

学生の身分には失業という状態がありませんので、雇用保険に加入する意味がないため、加入していません。

健康診断も会社経由では受診しないのが学生の特徴です。学校保健安全法13条に基いて学校経由で健康診断を受けるので、会社経由で受診する必要がないのです。学校では4月になると健康診断がありますよね。大学でも、4月は履修科目を登録したり、教科書を購入したり、健康診断を受けたりとバタバタします。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S33/S33HO056.html
学校保健安全法

年金については、20歳になると学生でも国民年金に加入しますし、学生納付特例制度を利用すれば在学中は保険料の納付を後回しにできます。

http://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150514.html
学生納付特例制度

市町村の窓口に行って手続きするのが基本ですが、学校によっては、学内に設置した窓口を経由して学生納付特例制度を申請できるところもあります。

高校を卒業して会社員になれば、18歳から厚生年金と国民年金に加入する人もいます。


雇用保険、社会保険、いずれも学生は対象になりませんが、労災保険は学生であっても対象になります。

「学生は労災の対象じゃないから自分の健康保険を使わないといけない」というのは間違い(健康保険を使うと労災隠しになる)。18歳未満の人でも、会社で働いていると、手続き無しで労災保険の対象になりますから、対象にならないということはありません。

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousaikakushi/dl/leaf-01.pdf
労災保険 - 厚生労働省


労災保険の保険料は会社負担ですので、雇用保険や健康保険、厚生年金のように本人が半分を負担する必要はありません。加入する条件は、労働保険の適用事業所に雇用されているかどうかです。そのため、適用事業所で働いていれば、学生であっても全員が労災保険に加入している状態になります。

ちなみに、同じ労働保険であっても、雇用保険では学生は適用除外になっており、加入していない方が大半だと思いますが、労災保険には学生を適用除外にするルールはありませんので、それには加入するということになります。

雇用保険と労災保険はまとめて扱われるため、加入する場合も両方同時なのだろうと思うかもしれませんが、学生のアルバイトように労災保険だけ加入する場合もあるのですね。

雇用保険に加入していると、毎月の給料から雇用保険料を支払います。一方、労災保険は、会社が保険料を全額負担するので、毎月の給料から労災保険料が支払われることはありません。つまり、学生であっても「無料で労災保険に加入できる」と言うこともできますね。 

社会保険にも加入条件があり、1週あたりの労働時間数や収入が基準になりますけれども、労災保険は加入者である従業員には条件がありません。それゆえ学生が労災保険に加入するにあたって加入条件はないわけです。

労災保険を使うと自己負担無しで治療を受けられるため、自己負担を3割必要とする健康保険とは違いがあります。

フルタイムで働いていても、パートタイムで働いていても、学生であっても、通勤中の怪我や仕事中の怪我は労災保険の対象になります。

仕事中に従業員が怪我をしたら使用者から休業補償が必要 労災保険に丸投げするだけでは足りない

従業員の人が仕事中に怪我をしたら労災保険を使ってもらって病院で治療する。このような流れになるのですけれども、怪我がすぐに治らなくて、しばらく休む必要があり、例えば休業期間が2週間になったとします。労災保険からは休業時に支給される休業補償給付が出ますが、休業の最初の3日間(連続3日間でなくてもよい。健康保険の傷病手当金の待機期間との違い)は労災保険から給付が出ませんので、使用者が休業補償として給料を出さなければいけないわけです。

労災保険があるからといって労災からの給付に丸投げする、というわけにもいかないんですね。 

ちなみに休業補償は、労働基準法26条(以下、26条)の休業手当とは違うものです。

業務上の理由で怪我をしてしまった時に使用者がその責任を負うというもので、休業手当とは違います。休業補償は労働基準法第76条(以下、76条)に決まりがあります。休業手当の26条とは違うものです。

使用者には安全配慮義務があります(労働契約法5条)から、仕事中に従業員が怪我をしたとなると、その安全配慮義務が十分ではなかったわけですから、その責任を負うために76条で休業補償のルールが設けられているんですね。

休業している間も社会保険料はかかりますから、76条では休業補償は平均賃金の60%以上ですが、3日分の給与ですから通常通りに出勤したのと同じように給与を支給する、つまり給料を全額支給するのもありです。

仕事中に怪我をしたのですから、従業員の責任というよりも事業主の責任の方が大きいのではないかと考えて、休業補償給付が出ない3日分に関しては通常通りの給与を全額支給するという配慮もあっていいのではないかと。平均賃金の60%から社会保険料を控除すると給与が想定しているよりも少なくなりますので。

最初の3日間にどういうルールで給与を支給するか。これをあらかじめ就業規則で決めておかないと、仕事中に事故を起こして怪我をした人が実際に出てから考えたのでは対応を決めにくいですから、どういう対応するのかを決めておくと良いですね。給与を全額支給するには根拠が必要ですから。

ちなみに学生の方でも労災保険の対象になりますから、例えば仕事中に指を骨折するような怪我をした場合、個人差にもよりますけれども2週間ぐらい仕事ができなくなるとすれば、 休業の最初の3日間は使用者が休業補償をして、4日目以降は労災保険の休業補償給付が出る、そういう手はずになります。

学生だから労災保険は使えないとか。使用者による休業補償はいらないだろうとか。そういうものではなくて学生であっても労災保険の扱いは他の従業員の人たちと同じです。 

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