あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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休業中に副業やアルバイトをすると休業手当や雇用調整助成金に影響する?

休業中に副業

 

 

休業中は時間があるので他社で働く

普段働いている会社が休業になって、休業手当を受け取って休んでいる状況。これは年次有給休暇で休んでいる感覚に近いですね。

働かなくても給与(休業手当)が出るわけですから、ジッとしていてもいいのですけれども、それだと暇ですし、健康にも良くないでしょうから、何か他に仕事なり副業をしようかと考える方もいるのでは。時間はタップリあるのでしょうし、他の仕事をするには良い状況ですよね。

そこで、休業中に他の会社で仕事をしようと考え、普段勤めている職場を事業所Aとして、一方で休業中に他の会社で働くとして、その会社を事業所Bとしましょう。主な職場がAで、従となる職場がBです。 

事業所Aは休業になって、従業員は休んでおり、時間があるので事業所Bの方で従業員が休業中に働いた。事業所Aでは休業手当が支給される一方で、事業所Bでは通常の給料が支給されますよね。

このケースでは事業所Aでも事業所Bでも、会社員という立場で働いていると仮定しています。事業所Aではフルタイムで働く会社員として、事業者Bではパートタイムで働く会社員として。

では、この場合、事業所Aから休業手当を受け取りつつ、事業所Bから給与を受け取っても、休業手当や雇用調整助成金には影響はないのかどうか

なお、休日や休業中に他社で働いたり、自営業で副業をするのは許されている職場だと考えます。


休業手当や雇用調整助成金は他社での勤務事情を考慮するのかどうか

雇用調整助成金は、休業している事業所で、そこの従業員が休業して、休業手当を支払われていれば、受給の対象になります。

事業所Aでは、きちんと休業している(働いているのに休業だと偽っていない)。休業手当もちゃんと払われている(労働基準法26条を守っている)。それならば雇用調整助成金の受給要件を満たしていますから、助成金を申請できます。

では、休業中に事業所Bで働くのは問題ないのか。仮に他社で働いたとしても、休業手当の支払いが止まるわけではありません。事業所Aで休業しているかどうかでもって休業手当を支払うかどうかを決めますから、事業所Bで働いているから休業手当は払わないよ、という対応はできません。 

事業所Aにとっては自社の従業員が休業中に事業所Bで働くことに関して感知していないでしょうから、従業員本人の判断で、休業中に他の仕事をしているのですから、事業所Aはその件について知るのは難しい。 

事業所Aは、休業して、休業手当を支払い、雇用調整助成金を申請して受給する。やることはここまでです。

ただし、事業所Bの方で、1週間に20時間以上働くようになり、他にも条件はありますけれども、社会保険に加入するような状況になると、それはそれでまた別の問題が生じますから、休業中に他の会社で働くなら、週15時間ぐらいの労働時間にしておき、短時間に留めておくようにする方が良いでしょう。

他の選択肢としては、せっかく休業中なのですから、あえて別の会社で働かずに、自営業で何か商売を始めても良いのではないかと。

会社員と個人事業主はそれぞれ別扱いになりますし、個人事業主としてたくさん働いたとしても、社会保険は会社で入っているもの(健康保険と厚生年金)で足ります。個人事業主側で、国民年金や国民健康保険に入る必要はない。 

雇用保険にも個人事業主は入りませんから、会社員の身分を2つ持つのではなく、個人事業主の身分の方が会社員と切り分けることができます。


ダブルワークする人の休業手当と雇用調整助成金

雇用調整助成金に関する Q & A の4-19から4-21までの項目にダブルワークをしている労働者に対する雇用調整助成金についての記述があります。

ダブルワークをしている労働者であっても雇用調整助成金の対象になると書かれていますが、この Q & A のケースでは、事業所Aと事業所B、この両方が休業になって、双方から休業手当が支払われるという前提で Q & A の回答がなされています。

片方は休業になっているけれども、もう片方は通常通りに営業している。このケースについての Q & A はありません。

先に労働契約を締結した方から休業手当を受け取って雇用調整助成金を申請し、後から労働契約を締結した方の休業手当は雇用調整助成金の対象にしないとの内容です。

この回答部分も、2つの会社があって、その2社とも休業になっている前提での回答ですから、片方が休業していて、もう片方は通常営業、というケースでどのようになるのかについては書かれていません。

休業中に他の環境で仕事をしていたとしても、会社としてはその事実を把握することは難しいですから、休業手当の支払いや雇用調整助成金の受給にあたっては、その事情を考慮することができないと考えざるを得ません。

 

年次有給休暇を取った日を休業日にしたらどうなる?

年次有給休暇を取った日を休業した日と扱い、雇用調整助成金を申請することはできません。休業日が増えれば雇用調整助成金の受給額も増えますから、年次有給休暇を休業の日に変えて、受け取る助成金の額を増やしてやろう、という狙いなのでしょう。 

休業は使用者の都合によって実施されるもの。一方、年次有給休暇は本人の申請によって取得するもの。この両者は別物であって、代替できるものではないのですね。

ですから、年次有給休暇を取った日を休業した日として雇用調整助成金の申請書に書いてしまうと、それは休業していない日を休業したものとして申請したことになり、後から助成金を返還しなければいけなくなります。

休みの日という点では同じですが、年次有給休暇は年次有給休暇であって、休業した日とは違います。年休を取った日を雇用調整助成金の申請に含めないようにしてください。 

 

休業中に出勤したり研修を受けたらどうなる?

休業しているので普段の仕事はしていないけれども、休業中に出勤を求められて職場に行ったり、休業日にオンラインで研修を受けることを求められたら、これは休業していることになるのかどうか。

休業とは、普段の仕事をせずに休んでおり、使用者の判断で休みにしますよ、という形で休みになっているもの。

休業している期間に、使用者がこの日に出勤してと求めたり、この日にオンラインで研修を受けてもらう、このような業務に関連する行動を求めると、出勤した日や研修を受けた日は休業にはならず、雇用調整助成金の対象外になります。

出勤や研修が必要な日は助成金の対象となる日から外して、それ以外の日を休業している日として雇用調整助成金の対象に含めることができますから、この日は休業、一方でこの日は休業じゃない、と分けておけば助成金を申請するにあたって問題は起こりません 

 

休業中にグループ会社や近隣チェーン店舗で働いたら

自分が所属している店舗が休業している期間、別の系列店やグループ企業、もしくは近隣のチェーン店舗で働いたら、これは休業ではなく通常通りに勤務していると扱われます。

例えば、チェーンの飲食店で、複数の店舗があって、その中に新宿店と渋谷店があったとします。渋谷店に勤める人たちはお店が休業になっているけれども、新宿店は通常営業を続けているので、渋谷店の人たちを新宿店に集めて通常通り勤務させたとしましょう。渋谷店に所属する人たちは休業で休まずに、一時的に新宿店で働いている。となると、お店である渋谷店は休業しているけれども、そこから新宿店の方に移動して働いてる人たちは普段とほぼ変わりなく働いているのでしょうから、休業しておらず雇用調整助成金の対象にはならないわけです。

所属している店舗が臨時休業になったとしても、普段そこで働いている人たちが別の店舗で休業せずに働くことができているならば、休業している人はいないわけですから、休業手当も払っていません。となると雇用調整助成金の対象外になります。 系列店ならば、店舗が異なっても勤怠状況が分かりますので、他店舗で出勤できるなら普段どおりに勤務できていると扱われるんですね。

お店が休業しているとしても、そこの従業員の人たちが本当に休業してるのかどうか。渋谷店は休業しているけれども、そこに所属している人達は渋谷店に移動して働いている。となれば、それはもう休業は実施していないわけですから、雇用調整助成金を申請する対象にはならないわけです。 

 

自分の職場と関連がない職場や仕事を休業中にやったら?

事業所Aと事業所Bがお互いに関連性のない会社であるならば、事業所Aの方で休業していて、休業中に事業所Bで働いていたとしても、休業手当や雇用調整助成金には影響がありません。

両方の事業所がお互いに何らかの関連性、先ほどのようにお互いがチェーン店になっているとか、系列店なりグループ会社、親子会社のように、相互に関連性があり、人材を内部で移動させることができるような状況だと話が変わります。

事業所同士で関連性があると、実質的に自社内で働いていると判断され、休業していないと扱われます。某飲食店では、休業店舗から通常通りに営業している店舗(系列店)に移動させて、休業店舗に所属する従業員を休業しているものとして雇用調整助成金の対象にしたという実例があります。これだと不正受給になってしまいます。

しかし、双方の事業所がお互いに別の会社であるとするなら、人材の移動は出来ませんし、お互いに勤怠情報をやり取りすることもできません(お互いに内通しているような関係でない限り)。事業所が管理できる範囲の外と考えざるを得ない理由がこの点です。グループ会社や系列店などと違って、全く別の会社で働いているとなると、その会社の勤怠情報を知ることはできません。それを入手できるとすれば、本人からの自己申告ぐらいです。

休業中に他の会社で働いてはいけないとなるなら、会社が休みの日に副業してもいけないし、他の会社でも働いてはいけないという理屈になりますから、休みになっている日まで会社が管理権を行使することはできませんよね。 

グループ会社やチェーンの系列店だったら、従業員が休業しているのか、それとも出勤しているのかがわかります。渋谷店に所属する人が休業して、その期間中は新宿店に移って働くとなると、この人たちは休業せずに通常通りに出勤しているという扱いになるわけです。

事業所Aと事業所Bが互いに関連性がない別の会社だとすると、従業員の人たちが事業所Bで休業中に仕事をしていたとしても、何曜日に何時間働いていたのか、給料はいくらなのか、休みの日はいつなのか、そういった勤怠情報を知ることはできませんから、事業所Aとしては対処のしようがありません。

となると、事業所Aで休業手当を受けて、事業所Bの方では普通に働いたわけですから、給与が支給されます。他社での就業が許されている職場ならば、休業手当と給料、この2つを収入として受け取ることができるんですね。 

 

休業中のダブルワーク 組み合わせは3つ

フルタイム勤務とパートタイム勤務で組み合わせるとすると、事業所Aは休業していて、事業所Bは通常勤務(1)。これは上記で書いた内容と同じです。

事業所Aは休業、Bの方では会社員ではなく自営業で仕事をしている(2)。普段は会社員だけれども、休業中の副業は個人事業主として自営業をやっているケースですね。

事業所Aで休業していて、事業所Bでも休業している(3)。つまり両方の事業所が休業になっている場合です。休業中に他の職場で仕事をしていたけれども、その職場も休業になってしまい、言うなれば「ダブル休業」みたいな状態です。 

休業中のダブルワークだと、この3つのパターンのいずれかに当てはまるのでは。

 

(3)の組み合わせは、2つの事業所がどちらも休業しているから、休業手当も2件分を受け取れるのではないかと思うところですけれども、これは厚生労働省の Web サイトの Q & A の4-19から4-21までに書かれているところです。

先に雇用契約を締結した方の休業手当が雇用調整助成金の対象になり、後から雇用契約を締結した方は助成金の対象外になると説明されています。2件分の休業手当を受け取って、雇用調整助成金も2件分申請できるものではないんですね。 

(1)の組み合わせは、片方の事業所は休業していて、もう一方は通常勤務となった場合ですが、上で書いたように、2つの事業所の間に何の関連性もない会社だとすると、それぞれが別扱いになり、休業している事業所で休業手当を払い雇用調整助成金の申請をする。一方で、普段どおりに営業している方は、働いた人に給与を支払います。

休業手当を支給してもらって、他方で給与を受け取るとなると、なんだか二重取りな感じもしますけれども、それを防ぐような仕組みもありませんし、それが何らかの不正になるというものでもないです。

他社で働くことを制限している事業所もあるでしょうけれども、2022年の段階では、他社で働いたり、自営業で商売をすることに対して寛容になっている雰囲気がありますから、休業している時に他の仕事をしていたとしても、事業所としては何かペナルティを課す可能性は低いのではないでしょうか。従業員を休業させておいて、他の仕事はするな、とは言いにくいもの。

(3)の組み合わせだと、普段働いている事業所は休業になっていて、休業中に自営業で商売をする、つまり副業をするというものです。

休業している従業員がその期間中に自営業で何かやっていたとしても、その内容を把握することは難しいでしょうし、副業の情報を勤務先に伝える人も少ないでしょう。

会社員の身分と個人事業主の身分は別のものですから、事業所の方で休業手当を支給し、雇用調整助成金を申請していたとしても、そこの従業員が休業中に副業をしていたとしても考慮できません。

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