- 改装中はお店が休業に 出勤できず給与が出ない
- 店舗改装は使用者の責任なのかどうか 休業手当は出る?
- 改装中に使用者が休業手当を払うかどうか
- 振替出勤で休業を回避するのも一案
- 解雇するつもりはないけれども解雇と同じ扱いに
- 短期間の改装ならば振り替えで。長期間に及ぶならば契約解除に
お店を営業していれば、徐々に設備や内装は古くなります。
新鮮味も薄れてきて、お客さんも飽き始めますから、
ある程度の時間が経過したら、
何らかの形でリニューアルをするもの。
「新装オープン」
「リニューアルオープン」
と書かれたチラシを見たり、
お店の外にのぼり(「旗」のこと)が付いていたり、
ちょくちょくとこういう場面遭遇します。
家電量販店、スーパーマーケット、
さらにパチンコ屋も頻繁に改装していますよね。
改装中はお店が休業に 出勤できず給与が出ない
営業しながらできる改装作業もあるでしょうが、
改装となると、概ねお店を閉めて作業をしているところが多いです。
お店を休みにすれば、働いている人は仕事が休みになります。
となると、
「改装中は休みになるから、給与も無いの?」
と思うところ。
改装作業が無ければ、
普通に出勤して仕事をして、
給与も出ているはずですが、
お店が休みですからね。
固定の月給で働く方だったら、
店舗改装で休みになっても給与は変わりませんが、
パートタイムで働く学生などの短時間労働者は給与が出ませんので、
何らかの補填策を講じていかないといけないわけです。
店舗改装は使用者の責任なのかどうか 休業手当は出る?
使用者の判断で労働者を休ませると、
仕事をしていなくても給与を支払わないといけないのが法律です。
労働基準法26条
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
使用者の責任で休業すると、
休業手当(つまり給与のこと)を払わないといけないんですね。
では、お店を改装するために仕事が休みになったら、
それは使用者の責任なのかどうか。
ここが考えどころです。
改装するかどうかは使用者が決めることですし、
その時期や内容も任意で決められます。
となると、
「使用者の責任で休業しているんじゃないか?」
と言えます。
労働者の責任で休みになっているわけではないですし、
台風や大雪でお店をオープンできないという状況でもありません。
改装スケジュールを決めるのは使用者です。
ならば、「使用者の責任でお店を休みにしている」と考えるのが素直です。
よって、店舗改装で臨時休業する場合でも、事業主の責任で労働者が働けない状態となるため、原則として休業手当を支払う必要があります。
なお、改装の作業を手伝うという名目で通常の出勤日と同じように出勤してもらえば、休業ではなくなりますから、休業手当をどうするかで悩むことはありません。
改装中に使用者が休業手当を払うかどうか
お店を休みにするといっても、
改装の規模や期間によって対応が変わります。
例えば、2日や3日程度の改装作業である場合。
3月13日から15日までの3日間、お店を改装するために閉店するとしましょう。
この3日間に出勤する予定だった人は休業になるわけですが、
休みになっても、他の日に出勤日を振り替えて対応できます。
3月13日から15日までの3日間全てが出勤日だったとすれば、
他の休みの日を出勤日に変えて、出勤日を補填します。
3日分の出勤ですから、どこか休みになっている日を出勤に変えます。
3連続出勤にせずとも、1日ずつ分散して、合計で3日分の出勤日を補填すれば良いでしょう。
また、もともと3月13日から15日まで休みの予定だった人ならば、
振り替えも必要ありません。
予定通り、そのまま休みになるだけです。
他には、事前に出勤日を調整して、
改装日は連休になるように勤務シフトを組むのも一案です。
改装の予定は遅くとも2ヶ月前ぐらいには決まるでしょうから、
年明けの1月から勤務シフトを調整し、
3月13日から15日の3日間は全員が休みになるようにします。
振り替えて出勤する。もしくは勤務シフトを早めに調整しておく。
こういう対策を講じれば、改装中に休業手当を支払うことを回避できます。
会社としては、
「仕事をしてもらっていないのに給与(休業手当)を払いたくない」
という気持ちがあるでしょうから、
先ほどのような工夫が必要です。
振替出勤で休業を回避するのも一案
数日で終わる改装ならば、
振替出勤や
勤務シフトを事前に調整して
対応可能です。
しかし、古くなった店舗を全部壊して、新しい店舗を建てるとなれば、さすがに数日で改装作業は終わりません。
どういう建物を壊して、建てるかによりますが、1年6ヶ月とか、2年とか、それぐらいの期間が必要になるはずです。
「じゃあ、1年6ヶ月も休業して、その期間の給与を払い続けるの?」と思ってしまうところですが、さすがにそれは難しいでしょう。
1人を休業させて1日1万円払うとして、従業員が120人いるとしましょう。
そして、期間が1年6ヶ月となれば、月に120万円、1年6ヶ月で2,160万円。
しかも、全く営業せずですから、収益は0円。2,160万円が丸々出ていくことになります。
これは非現実的な対応です。
1年6ヶ月にも及ぶ長期の改装となれば、
他の店舗で勤務してもらう。
もしくは、一旦、雇用契約を解除する。
対応はこの2通りになります。
複数のグループ店舗を持つ飲食店や小売店ならば、他の店舗で人員を吸収し、改装が終わった後に、元の店舗に戻ってもらう。このような対応が可能です。
しかし、他の店舗といっても、改装される店舗に勤める全ての人を吸収できるとは限らず、中には他のお店で勤務できない人も出てきます。
そうなると、店舗改装が終了するまで、一旦、雇用契約を解除し、改装が終わった段階で、再度、雇用契約を締結するという流れになります。
1年6ヶ月も休業手当を払い続けるのは難しいですし、契約を締結したままだと労働者を長い間、拘束することになります。
そのため、一度、雇用契約を解除し、新しい店舗ができたら、改めて雇用契約を締結するのです。
解雇するつもりはないけれども解雇と同じ扱いに
とはいえ、「改装するから、契約は一旦終了するよ」と伝えるだけでは、フォロー不足な感じがあります。
他の店舗で勤務できる人がいる一方で、契約を解除される人がいるわけですから、
雇用契約を終了する方には、解雇予告手当に相当するものを支給し、他の人とのバランスを取るのが賢明です。
改装のために、やむなく契約を解除するため、一般的な意味での「解雇」ではないのですが、使用者側の都合で契約を解除するわけですから、「1ヶ月分の給与(解雇予告手当に相当するもの)」を最後に支給するのが良いのではないでしょうか。
ここでは「解雇予告手当」という名称でなくても構いません。
一般的な意味での解雇ではないならば、
「準備金」
「支度金」
「支援金」
などの名称で支払っても問題ありません。
会社としては解雇したいわけではなく、改装のために止む無く雇用契約を解除しているので、「解雇予告手当」という名称は馴染まない場合もあるでしょう。
お店を取り壊して改装すれば、改装が終わるまでは営業出来ませんし、その間、他の店舗で働けるように会社が便宜を図り、それでも職場を提供できないとなれば、雇用契約を解除するにあたって合理的な理由があると言えます。
さらに、解雇予告手当に相当するものも支払えば、契約解除を否定する理由はほぼ無くなります。
その上、新しいお店が完成したら、「旧店舗の従業員を優先的に雇用する」という約束もしておけば、もう言うことは無いです。
雇用契約を解除するというと、何だか冷たい感じがしますけれども、改装が終わるまでずっと休業手当を支払い続けるのは難しいとなれば、このような現実的な対処法を探るのが妥当でしょう。
短期間の改装ならば振り替えで。長期間に及ぶならば契約解除に
数日で終わる改装ならば、
出勤日と休みの日を振り替える。
もしくは、
早い時期から勤務シフトを調整し、
改装日は休みになるようにする。
これで対応できます。
一方、
改装が長期間に渡る場合は、
他の店舗で就業できないかどうか。
できない場合は、1ヶ月分の給与を支払い、雇用契約を解除。
新しい店舗が完成したら、優先して入れるようにする。
これが店舗改装時の人事労務上の対応となります。