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■■┃ 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2009/7/26号 no.109)
50%割増の時間外労働手当を出すのか、代替休暇を用意するのか
平成22年4月から、改正された労働基準法が試行されますが、
この新しい労働基準法では、月間の時間外勤務が60時間を超える
と、25%から50%に割増手当の支給率が上昇します。
ただ、代替手段として、「50%割増の手当を支払う」代わりに、
「25%の割増手当と代替休暇を用意する」ことで対応することも
可能です。
つまり、50%のうち25%分だけは通常の時間外手当として扱い、
残りの25%分を有給の代替休暇として割り当てることができる
という仕組みです。
改正の内容は、今の段階でも、相応に情報が出てきているの
ですが、まだ十分に行き渡っていないと思いますので、今回の
メルマガでまとめてみます。
代替休暇を設けて時間外労働へ対応することも可能
50%割増手当だけをメニューにすれば、事務の取り扱いはさほど
難しくありません。
今までの計算をそのまま使えますから、対応しやすいです。
しかし、代替休暇をメニューに加えるとなると、休暇の時間数を
計算したり、時間単位で休暇を使える手段が必要になったりと、
事務の取り扱いに負荷がかかります。
休暇制度を作るのは簡単ですが、その後にそれを運用して維持していくのは難しいです。年次有給休暇以外にも色々な休暇制度が存在している会社で働いている方だと、この点についてよく分かるはず。
具体的には、代替休暇として付与できる時間数は、「{(1ヶ月の
時間外勤務時間数)ー60}×換算率」で算出します。
例えば、ある月に、1ヶ月の時間外勤務が70時間になったとする
と、60時間を超過した時間は10時間です。
その10時間に対して、「50%割増(60時間を超えた部分の
割増率)ー25%割増(代替休暇を取得したときの、残りの割増
手当)=25%」という換算率を掛け算すると、「10×(25/100)」
となります。
実際に使うときには、換算率は25%でほぼ固定されるでしょう
から、このまま利用しても大丈夫です。
ゆえに、代替休暇として付与される休暇の時間数は、2.5時間と
決まります。
ただ、計算で出てくる数字は半端な数字になることもあります
から、そのまま休暇として使うのは抵抗がありそうです。
「2.5時間だけ休暇」といっても、何とも使いにくいですよね。
そのため、有給休暇と代替休暇を組み合わせて使うこともできる
とのことです(労使協定が必要です)。
もちろん、そのまま時間単位で代替休暇を使うのもアリです。
蛇足ですが、代替休暇を取得した日は、有給休暇の算定基礎になる
全労働日に含めません(つまり、代替休暇は有給休暇に影響しない
ということ)。
また、代替休暇といっても、すぐに取得するとは限りませんから、
しばらくプールできるようにしていなければ不便ですよね。
そのため、代替休暇は、給与の締め日から2ヶ月以内に取得できる
とのことです。
つまり、給与は末締めの会社で、4月に60時間を超える時間外勤務
があったとすると、その代替休暇は6月の末までに取得するという
流れです(4月末締めから2ヶ月ですので、6月末までです)。
代替休暇をプールできるならば、単月で端数が出ても(先ほどの
例のような2.5時間など)他月と通算すれば、1日単位で休暇を使う
ことができるかもしれません。
ただし、各月の代替休暇は2ヶ月以内に取得するということなので、
他月と通算する時は時期に気を向けておかなければいけませんね。
代替休暇をメニューに加えると、考えることが一杯ですよね。
代替休暇を設けずに割増賃金を50%増にする方法は分かりやすい
月に60時間を超える時間外勤務に対しては、50%の割増手当を
支払うだけにすれば負担は少ないと思います。
代替休暇はあくまで「代替」の手段ですから、必ずメニューに
加えることまでは要しません。
また、時間単位で休暇を取得したいと考える人は、さほど多くない
のではないでしょうか。
細切れで休むよりも、まとまった休みの方が良いと思う社員さん
もいるでしょうから、代替休暇の制度は無くても良いのかも
しれません。
2時間30分だけ休みで後は出勤、というのでは休んだ気がしませんよね。
ただ、どうしても時間単位の休暇が必要ならば、代替休暇を使わず
に、有給休暇で対応する方が良いでしょう。
他のポイントとしては、代替休暇を取得すると申し出ていた方が、
後になって、「やっぱり休暇はいらないので割増手当で支払って
欲しい」と言ってくることも有り得ます。
つまり、先ほどの例を基にすれば、4月末の段階では「25%割増+
代替休暇でお願いします」と言っていたのに、5月の後半頃に
なって、「やっぱり割増手当だけ(50%の手当)でお願いします」
と言ってくるような場面です。
会社の事務を担当している人は、眉間にしわを寄せるかもしれませんね(笑)。
しかし、5月の後半となると、すでに4月分の給与は清算され、
支払いも終わっているはず。
また、代替休暇の取得期間は2か月ありますから、休暇自体を取得
することは可能です。しかしながら、これを認めると本来の給与
支払い時期を超えてしまうわけです。
4月分の給与を5月分として支払う手順になりますので、困りますよね。
だからダメかと言うと、そうでもないようです。
もし後から休暇を撤回したときは、次の給与で清算すれば対応
できるとのことです。
ここでは、賃金支払いの原則を緩和しているんですね。
他にもまだ知っておくと良いこともありますが、今回はここまで
にしておきます。
メルマガ以外にも、たくさんのコンテンツをウェブサイトに掲載しております。
【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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