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変形労働時間制を導入すれば、緩く労働時間を管理できる?
労働時間というのは、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」を最大の枠として、この枠内で仕事時間をやり繰りするのが適正だと思われていますよね。
また、場合によってはこの枠を超えてしまうかもしれないときは、あらかじめ36協定を届け出るわけです。
さらに、必要とあらば、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」という枠を一定の期間で融通して、この枠を超えて勤務することも可能です(変形労働時間制度)。他にも、みなし労働時間制度や裁量労働制度もメニューとして用意されており、柔軟に労働時間を取り扱えるとも思えるはず。
ただ、上記のような柔軟性が高いと思われている時間管理であっても、自由に労働時間を管理できるという段階までは達していないのですね。
変形労働時間制度やみなし労働時間制度、さらにはフレックスタイム制度は、自由な時間管理制度だと思われるフシもあるのですが、自由になりきれているかというと、必ずしもそうではありません。
変形労働時間制は法定労働時間の枠を融通する仕組み
労働基準法では、どのような時間管理制度を採用したとしても、労働時間は原則に収束させるように仕組まれています。
例えば、1ヶ月単位の変形労働時間制度を考えると、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」という枠を自由に超えていってもよいかというと、そうでもなく、一定の枠が設定されています。「1ヶ月分の総労働時間の枠」、「36協定に対する限度時間」、さらには「日ごと週ごとに事前に設定した労働時間の枠」という3つの枠があるのですね。
そのため、労働時間を変形できるといっても、企業の裁量で自由に変形できるとまでは言えず、一定の枠内で変形できる程度です。
みなし労働時間制度でも、「法定労働時間を超えた勤務」を「法定労働時間内の勤務」としてみなすことまではできません。5時間の勤務を8時間の勤務として扱うとか、7時間の勤務を8時間の勤務として扱うのは構わないのですが、9時間の勤務を8時間として扱ったり、10時間の勤務を8時間として扱ったりするのはダメなのですね。
"みなす"ことを認めているものの、一定の枠内で"みなす"にとどまるわけです。企業が望んでいるのは、5時間の勤務を8時間の勤務として扱っても、9時間の勤務を8時間として扱っても、同じように8時間の勤務として扱いたいのでしょうけれども、そこまでの裁量はないのですね。
他にも、1週間単位の変形労働時間制度でも、上記と同じような状況です。1週間単位の変形労働時間制度は、1週間の期間内で、40時間(または、44時間)という勤務時間の枠をやり繰りする仕組みです。本来ならば、1日で8時間までのところ、ある日に4時間の勤務で、他の日に9時間の勤務、またある日に11時間という勤務スケジュールを法定内の労働時間での勤務として扱うことが可能なのですね。
しかし、勤務スケジュールが弾力的に変更できるとしても、結局は1週40時間もしくは1週44時間という枠に収束させています。
考えてみると、1ヶ月単位の変形労働時間制度でも、みなし労働時間制度でも、1週間単位の変形労働時間制度でも、常に「1日8時間、1週40時間(44時間)」という枠に帰着させています。
例えて言うならば、「朝三暮四」のような仕組みですよね。
自由に時間を管理できるかのように思わせるものの、結局は原則の法定労働時間の枠にはめ込んでいるわけです。
労働時間の配分を変えるのが変形労働時間制度
再三指摘していることですが、労働基準法は常に「労働時間と賃金をリンク」させようとします。
労働基準法は昭和22年(1947年)にできあがった法律です。昭和22年ですからねぇ、、、随分と古い、、、。その当時は、どんな時代だったのでしょう。昭和20年に終戦しましたから、終戦後間もなくの時期です。国土がボロボロになっていたのでしょうから、建設業や土木業を中心に人々がシャカリキに仕事をしていたのかもしれませんね。おそらく、時間外勤務だとか、深夜労働だとか、そんな概念などなく、がむしゃらに仕事をしていて、労務管理のルールを作るのは後からだと考えていたのかもしれない。
労働基準法はそんな時代にできたんですね。
もちろん、今に至るまで改正もたびたびありましたから、その時代に合わせて内容も変形してきたはずです。しかし、「労働時間と賃金をリンクさせる」という思想というか価値観というものは変化できていないと私は思います。
確かに、ひっきりなしに手を動かすような仕事ならば、労働時間と賃金をリンクする方法が便利です。労働時間が生産量に結びつきますから、労働時間を基準にして賃金を決めても差し支えないわけです。
しかし、農業や牧畜業、水産業や林業といった第一次産業から、製造業や鉱業、建設業といった第二次産業に産業構造がシフトして、さらに今では、商業や運輸通信、金融といった第三次産業が産業の主体になっています。そのため、労働時間と賃金の間のリンクが徐々に緩くなりつつあり、労働時間を基準に仕事を評価する方法が適正ではなくなっているのですね。
ちなみに、第一次産業、第二次産業、第三次産業という分類は、イギリスの経済学者コーリン=クラークという人物が提唱したとのこと。
「より少ない資源(時間や資金など)で、より多くの成果を得る」のが良しとされるようになり、「大量投入、大量成果」という立場の旗色が悪くなっています。
さも緩やかに労働時間を管理できるかのように思えて、結局は原則の仕組みに帰らせるのではなく、法定の時間枠に必ずしも帰着しなくてもよいようにすれば、労働基準法はより時代に合うのではないかと思います。
「法定労働時間の枠は絶対に超えさせない」という執念を少し冷ますと良いのかもしれませんね。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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