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■自由ではない自由◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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「法定労働時間の枠は絶対に超えさせない」という執念。
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■緩い管理ができると思えるけれども、、、。
労働時間というのは、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」を最大の枠として、この枠内で仕事時間をやり繰りするのが適正だと思われていますよね。
また、場合によってはこの枠を超えてしまうかもしれないときは、あらかじめ36協定を届け出るわけです。
さらに、必要とあらば、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」という枠を一定の期間で融通して、この枠を超えて勤務することも可能です(変形労働時間制度)。他にも、みなし労働時間制度や裁量労働制度もメニューとして用意されており、柔軟に労働時間を取り扱えるとも思えるはず。
ただ、上記のような柔軟性が高いと思われている時間管理であっても、自由に労働時間を管理できるという段階までは達していないのですね。
変形労働時間制度やみなし労働時間制度、さらにはフレックスタイム制度は、自由な時間管理制度だと思われるフシもあるのですが、自由になりきれているかというと、必ずしもそうではありません。
■労働時間は常に囲い込まれている。
労働基準法では、どのような時間管理制度を採用したとしても、労働時間は原則に収束させるように仕組まれています。
例えば、1ヶ月単位の変形労働時間制度を考えると、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」という枠を自由に超えていってもよいかというと、そうでもなく、一定の枠が設定されています。「1ヶ月分の総労働時間の枠」、「36協定に対する限度時間」、さらには「日ごと週ごとに事前に設定した労働時間の枠」という3つの枠があるのですね。
そのため、労働時間を変形できるといっても、企業の裁量で自由に変形できるとまでは言えず、一定の枠内で変形できる程度です。
みなし労働時間制度でも、「法定労働時間を超えた勤務」を「法定労働時間内の勤務」としてみなすことまではできません。5時間の勤務を8時間の勤務として扱うとか、7時間の勤務を8時間の勤務として扱うのは構わないのですが、9時間の勤務を8時間として扱ったり、10時間の勤務を8時間として扱ったりするのはダメなのですね。
"みなす"ことを認めているものの、一定の枠内で"みなす"にとどまるわけです。企業が望んでいるのは、5時間の勤務を8時間の勤務として扱っても、9時間の勤務を8時間として扱っても、同じように8時間の勤務として扱いたいのでしょうけれども、そこまでの裁量はないのですね。
他にも、1週間単位の変形労働時間制度でも、上記と同じような状況です。1週間単位の変形労働時間制度は、1週間の期間内で、40時間(または、44時間)という勤務時間の枠をやり繰りする仕組みです。本来ならば、1日で8時間までのところ、ある日に4時間の勤務で、他の日に9時間の勤務、またある日に11時間という勤務スケジュールを法定内の労働時間での勤務として扱うことが可能なのですね。
しかし、勤務スケジュールが弾力的に変更できるとしても、結局は1週40時間もしくは1週44時間という枠に収束させています。
考えてみると、1ヶ月単位の変形労働時間制度でも、みなし労働時間制度でも、1週間単位の変形労働時間制度でも、常に「1日8時間、1週40時間(44時間)」という枠に帰着させています。
例えて言うならば、「朝三暮四」のような仕組みですよね。
自由に時間を管理できるかのように思わせるものの、結局は原則の法定労働時間の枠にはめ込んでいるわけです。
■最後は原則に返る。
再三指摘していることですが、労働基準法は常に「労働時間と賃金をリンク」させようとします。
労働基準法は昭和22年(1947年)にできあがった法律です。昭和22年ですからねぇ、、、随分と古い、、、。その当時は、どんな時代だったのでしょう。昭和20年に終戦しましたから、終戦後間もなくの時期です。国土がボロボロになっていたのでしょうから、建設業や土木業を中心に人々がシャカリキに仕事をしていたのかもしれませんね。おそらく、時間外勤務だとか、深夜労働だとか、そんな概念などなく、がむしゃらに仕事をしていて、労務管理のルールを作るのは後からだと考えていたのかもしれない。
労働基準法はそんな時代にできたんですね。
もちろん、今に至るまで改正もたびたびありましたから、その時代に合わせて内容も変形してきたはずです。しかし、「労働時間と賃金をリンクさせる」という思想というか価値観というものは変化できていないと私は思います。
確かに、ひっきりなしに手を動かすような仕事ならば、労働時間と賃金をリンクする方法が便利です。労働時間が生産量に結びつきますから、労働時間を基準にして賃金を決めても差し支えないわけです。
しかし、農業や牧畜業、水産業や林業といった第一次産業から、製造業や鉱業、建設業といった第二次産業に産業構造がシフトして、さらに今では、商業や運輸通信、金融といった第三次産業が産業の主体になっています。そのため、労働時間と賃金の間のリンクが徐々に緩くなりつつあり、労働時間を基準に仕事を評価する方法が適正ではなくなっているのですね。
ちなみに、第一次産業、第二次産業、第三次産業という分類は、イギリスの経済学者コーリン=クラークという人物が提唱したとのこと。
「より少ない資源(時間や資金など)で、より多くの成果を得る」のが良しとされるようになり、「大量投入、大量成果」という立場の旗色が悪くなっています。
さも緩やかに労働時間を管理できるかのように思えて、結局は原則の仕組みに帰らせるのではなく、法定の時間枠に必ずしも帰着しなくてもよいようにすれば、労働基準法はより時代に合うのではないかと思います。
「法定労働時間の枠は絶対に超えさせない」という執念を少し冷ますと良いのかもしれませんね。
┏━━━━━━━━━━☆★ 後記 ★☆━━━━━━━━━┓
唖然とするほど堂々と屁をこく(「放く(コク)」とも表記できるようだ。どうでもいいけど、、、)人がたまにいる。
若い人にはいないのですけれども、おじいさん、おばあさんで稀に、歩行中に"ブッ!"とコク人がいて、驚かされるんです。
あまりに堂々と"コク"ものですから、本当にその事実("コイた"という事実のこと)があったのかどうかを疑ってしまうほどで、私の空耳かと思ってしまいそうなぐらい。
まあ、屁ぐらいいいんですけれども、公道で堂々とコクのは少し遠慮していただけると、マッコトに助かります。
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