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┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2010/1/9号 no.157)
- 変形労働時間制度を導入しているなら、労働時間の総枠を守っていれば足りる?
- 変形労働時間制度は事前に決めた労働時間と実際の労働時間が一致して効果を発揮する
- 変形労働時間制度の核心部分は「労働時間を事前に特定すること」
変形労働時間制度の正しい使い方は?
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変形労働時間制度を導入しているなら、労働時間の総枠を守っていれば足りる?
労働基準法では、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」という制約が勤務時間の枠として認知されています。1日8時間までが法定内の勤務時間であり、そのラインを超えると法定外の勤務として扱い、また、1週40時間までが法定内の勤務時間であり、そのラインを超えると法定外の勤務という扱いです。
ここまでは十分に周知されている内容ですね。
上記とは別に、労働基準法では「変形労働時間制度」という仕組みを用意しています。変形労働時間制度とは、勤務時間を管理するためのメニューの1つで、一定の手続きを踏まえると、1日8時間、1週40時間(例外44時間)という枠を超えて勤務時間を設定できるのですね。つまり、1日10時間とか12時間という設定で勤務しても法定時間外の勤務にならないようにすることが可能であり、また、1週46時間とか1週52時間という設定で勤務しても法定外の勤務にならないようにすることが可能なのです。
ここもまた十分に周知されている内容だと思います。
前フリはここまでで本題はこれからです。
変形労働時間制度を採用すると、勤務時間の管理が通常とは変わり、「1日8時間、1週40時間(例外44時間)」という枠を変形させて運用できるようになります。先ほどのように1日10時間とか1週46時間という具合です。
また、変形労働時間の特徴として、「勤務時間の総枠」を設定するというポイントがあります。例えば、1ヶ月単位の変形労働時間制度を採り上げると、1ヶ月で172時間とか176時間というように、1ヶ月単位で勤務時間の総枠をあらかじめ想定して、その総枠の中で毎日および毎週の勤務時間を割り振るわけです。今日は6時間、明日は10時間、明後日は7時間というように決めたり、今週は36時間、来週は49時間、再来週は43時間という流れですね。
つまり、1ヶ月の総枠をあらかじめ把握して、その枠内で勤務時間を割り振れば変形労働時間制度は運用できていると考えるわけです。
しかし、変形労働時間制度の運用方法として、「総枠だけを想定して運用する」のは正規の運用方法ではないはずです。何が言いたいのかというと、変形労働時間制度は総枠を守ればそれで足りるという仕組みではなく、「日ごとの勤務時間」と「週ごとの勤務時間」を事前に特定して運用しなければ正規の運用とは言えないはずなのです(なお、今回は、1ヶ月単位の変形労働時間制度だけを採り上げます)。
ならば、「1月の勤務時間の総枠を決めるだけで、後は成り行きで日ごとまたは週ごとの勤務時間を決めていける」と考えるのは正しくはないのではないかと考えるのです。
変形労働時間制度は事前に決めた労働時間と実際の労働時間が一致して効果を発揮する
例を出して書くと、1ヶ月は30日と想定し、4週間(28日)と2日から構成されると仮定します。また、1ヶ月の勤務日数は22日とし、勤務時間は1日8時間を標準とします。また、1週44時間の例外業種ではないと考えます。
ここに、1ヶ月単位の変形労働時間制度を当てはめてみましょう。
なお、1ヶ月の勤務時間の総枠は「8×22=176時間」です。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
1週目
月曜:10時間
火曜:9時間
水曜:7時間
木曜:9時間
金曜:9時間
土曜:休み
日曜:休み
計:44時間
2週目
月曜:13時間
火曜:12時間
水曜:6時間
木曜:10時間
金曜:10時間
土曜:休み
日曜:休み
計:51時間
3週目
月曜:6時間
火曜:7時間
水曜:7時間
木曜:5時間
金曜:8時間
土曜:休み
日曜:休み
計:33時間
4週目
月曜:13時間
火曜:5時間
水曜:5時間
木曜:8時間
金曜:8時間
土曜:休み
日曜:休み
計:39時間
5週目
月曜:4時間
火曜:5時間
計:9時間
1ヶ月の時間総計:176時間
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上記のようなスケジュールで変形労働時間制度を運用すれば、特に何の問題もなさそうにも思えます。何はともあれ「総枠」の中に収まっているのですから。
しかし、「どのような手順で上記のスケジュールを埋めていったか」が今回のキーポイントです。
つまり、「時間総枠の176時間だけを事前に想定して、日ごと週ごとの勤務時間はその都度決めていったのか」、それとも「時間総枠を想定するのはもちろん、日ごと週ごとの勤務時間も事前に決めて変形労働時間制度を利用したのか」という2つのパターンに分かれます。要するに、前者は時間総枠だけを意識して変形労働時間制度を使っており、後者は時間総枠だけでなく個々の日程ごとの勤務時間も事前に決めて変形労働時間制度を使っているという違いです。
前者は、「今日の勤務時間は7時間だと思うが、場合によっては9時間になるかもしれない」とか「今週の勤務時間は40時間だと思うが、場合によっては47時間になるかもしれない」というように、その場その場で勤務時間をコロコロと変えながら変形労働時間制度を使っているわけです。そして、締め日の段階になって、「時間総枠の176時間に収まっているかなぁ」と判断するのですね。
変形労働時間制度を正しく運用するには、「変形期間内の各日、各週の勤務時間を具体的に特定する」必要があります。ということは、上記の後者が正しい運用であると分かりますよね。
ところが、現実に変形労働時間制度を使っている会社では、「時間総枠に収まればそれで足りる」と考えているところが多く、正確に運用されているとは言えない状況です。
では、正確に運用できていないと指導されたりするかというと、実はそうでもなかったりします。
労働局労働基準監督署の人でも、「変形労働時間制度を利用するときは、時間総枠に収まればそれで足りる」と考えているようで、「変形期間内の各日、各週の勤務時間を具体的に特定する」という点はさほど気にしていないようなのです。
そのため、現実には、「日ごとの勤務時間を"事前に"特定し、週ごとの勤務時間を"事前に"特定する」という作業を行わず、1ヶ月の労働時間の総枠で収まっていればそれで良いという判断がされているわけです。
変形労働時間制度の核心部分は「労働時間を事前に特定すること」
確かに「変形期間内の各日、各週の勤務時間を具体的に特定する」のが変形労働時間制度の正しい運用方法なのかもしれません。
しかし、「変形期間内の各日、各週の勤務時間を具体的に特定する」ことにさほどの意味があるのかが私の疑問です。
時間総枠だけを想定して変形労働時間制度を利用したところで、特段なにか支障があるわけでもありませんよね。また、変形労働時間制度は36協定の限度時間を超えることができるのでしょうから、36協定と衝突することもない。
では、なにゆえに「変形期間内の各日、各週の勤務時間を具体的に特定する」ことが必要なのでしょう。日ごと週ごとの勤務時間をその都度コロコロと変えながら勤務スケジュールを決めていたとしても、勤務時間が時間総枠に収まれば、法定内の勤務になるわけです。ならば、時間総枠だけを想定して変形労働時間制度を利用しても差し支えないと結論できます。
労働基準法では、変形労働時間制度を利用するときは「変形期間内の各日、各週の勤務時間を具体的に特定する」という点を要求しているものの、現実にはさほど要求されていないのかもしれません。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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