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年休が義務にならない職場もある。フレックスで残業対策。

 

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年休が義務にならない職場もある。フレックスで残業対策。
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「義務化」という言葉が先行している。


有給休暇の取得が義務化される。2014年の12月頃だったか、少しずつ情報が出てきて、義務化に賛成する人もいれば、反対する人もいます。

2015年3月2日に、厚生労働省のウェブサイトで労働基準法を改正する法律案要綱が掲載されました。

「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」の答申

要綱の内容は大きく分けて7つあり、その中の3番目に「年次有給休暇の取得促進」について書かれています。

まだ法律案ではなく、法律案要綱の段階なので、2015年3月11日の段階で、衆議院のウェブサイトでもまだ掲載されていない内容です。

世間では、「義務化」という言葉が先行してしまい、その部分だけがクローズアップされ、ネガティブなイメージを抱く人もいるかもしれません。

上記のウェブサイトでは、『使用者は、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、そのうちの5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。ただし、労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については時季の指定は要しないこととする。』と書かれています。

ポイントは、ただし書きより後の部分です。労働者が休暇の取得時期を決めた場合、もしくは計画有給休暇で取得時期を決めた場合はそちらを優先します。

義務となっている年5日分のうち、その5日分全てを労働者が指定する時期に有給休暇を取得すれば、使用者は有給休暇の取得時期を指定しなくても良いのです。また、計画有給休暇で年5日以上の有給休暇を消化している職場でも、使用者側の時季指定は不要です。

今まで年に5日以上の有給休暇を利用できていた職場ならば、今回の改正で特に対処が必要なところは無いでしょう。


ただ、読み方によっては、「年5日分は使用者側が時季指定し、労働者側の時季指定や計画有給休暇はその5日分には含まれないんじゃないか」とも解釈できそうです。しかし、そのように解釈してしまうと、仮に付与された休暇の日数が10日であり、計画有給休暇を導入している職場の場合、5日が使用者が時季指定し、残りの5日分の休暇が計画消化されるとなると、労働基準法39条5項(以下、39条5項)との兼ね合いで不具合が出ます。

39条5項では、付与日数のうち5日を超える部分を計画消化の対象にできると書かれています。もし、10日のうち5日分を使用者が時季指定してしまうと、残りは5日なので、必然的に有給休暇を計画消化できなくなります。

休暇の取得を促進するのが今回の改正の趣旨ですから、強引に使用者に時季指定させるのが目的ではなく、年に5日以上の休暇を使えるようにするためだと考えるのが妥当です。

ゆえに、労働者側の時季指定、もしくは計画有給休暇でもって年に5日分の休暇を利用できるならば、使用者による時季指定は必要ありません。


今で年に5日も有給休暇を使えなかった職場では、今回の改正で対処が必要です。例えば、2ヶ月に1日のペースで休暇を取得すれば、年に6日になりますので、ラクに義務とされた水準をクリアできます。


あと疑問となるのは、どの時点までに時季を指定すればいいのかという点です。年始に一括で指定する必要があるのか、それとも月ごとに指定してもいいのか。ここはハッキリと分かりません。

おそらく、年間で5日以上の有給休暇を利用させるのが改正の趣旨ですから、一括で指定することは要しないと思います。7ヶ月先とか10ヶ月先の予定までは分かりにくいですから、年始に休暇を取得するスケジュールを強引に決めさせるとは考えにくい。

年に5日以上の休暇を取得できればそれでOK。これが今回の改正の狙いですから、時季を指定するスケジュールは月ごとで足り、仕事のスケジュールを勘案しながら、年5日以上の休暇を取得すればそれで良しとするはずです。

施行日は平成28年4月1日で、今が平成27年3月であと1年ありますので、それまでに年5日以上の有給休暇を取得できる体制にしておけばよいでしょう。

3ヶ月単位のフレックスタイム制は使える。


今回の法律要綱の4番目には、フレックスタイム制の改正について書かれています。

『フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長する。併せて、1か月当たりの労働時間が過重にならないよう、1週平均50時間を超える労働時間については、当該月における割増賃金の支払い対象とする。』

フレックスタイム制というと、出勤時間と退勤時間を自主的に調整できる仕組みとして認知されています。例えば、出勤時間を7時から10時に設定し、朝早く出勤して通勤ラッシュを回避する、道路の渋滞を回避する、痴漢に会わないようにするなど良い効果を得られます。人によっては遅刻したときの保険としても使えますね。

フレックスタイム制には別の効果があります。それは、変形労働時間制度と同様に、法定労働時間の枠を融通できるという効果です。

変形労働時間制度は、1日8時間、1週40時間の枠に拘束されず法定労働時間の配分を変えられるのが利点ですが、あらかじめ、日毎、週毎の勤務時間を決めておかないといけないのが欠点です。将来時点での必要な勤務時間を予測できる商売ならば変形労働時間制度はマッチしますが、日毎、週毎に勤務時間が変動しやすい商売には馴染みにくい制度です。

例えば、この日は5時間勤務にして、この日は11時間勤務にすることで残業代を無しにできる。他にも、この週は51時間勤務にして、この週は29時間勤務にすることで残業代を無しにできる。ザックリ書くと、これが変形労働時間制度です。

一方、フレックスタイム制も変形労働時間制度に似たところがあり、清算期間内で使える労働時間枠内の範囲内で労働時間の配分を変えられます。これは上記ような時間配分の組み換えと同じです。

今回の改正で清算期間の上限が1ヶ月から3ヶ月に変わりましたが、これによって変わるのかというと、時間配分がより柔軟になります。

今までは、清算期間の上限は1ヶ月で、1ヶ月に使える総労働時間が仮に170時間だとすると、この170時間を1ヶ月の範囲内で配分していました。これが3ヶ月になると、170時間×3ヶ月 = 510時間ですので、3ヶ月の範囲内で510時間を配分できるようになります。

つまり、仕事の内容と関わりなく1日8時間、1週40時間と常に固定するのではなく、仕事が集中する時期に時間もタップリと配分することで、より実態に合った時間配分ができるようになります。

出退勤の時間をコントロールでき、さらに法定労働時間の配分も変更できるため、変形労働時間制度よりもフレックスタイム制は柔軟性が高くなっています。さらに、今回の改正で、清算期間が3ヶ月まで設定できるようになりますから、言うなれば「3ヶ月単位の変形労働時間制度」に近い仕組みを作れます。

ただし、このフレックスタイム制には制約があり、『1週平均50時間を超える労働時間については、当該月における割増賃金の支払い対象』となります。

例えば、10月、11月、12月、この3ヶ月間を清算期間に設定してフレックスタイム制を運用した場合に、10月は100時間、11月も100時間、12月は300時間というように、極端に偏った時間配分をすると、総労働時間の枠内であっても割増賃金が必要になります。

期間が3ヶ月で時間枠が510時間となると、仕事が忙しい時期にドカンと時間を配分したくなるのですが、そこは釘が刺されています。




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