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■「みなす」は「仮」という意味?◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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曖昧さを許すのか、許さないのか。
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「みなす」と確定する。もとからあったものと同じ扱いに
「みなす」という言葉。
買ったとみなす、売ったとみなす、届けたとみなす、食べたとみなす、返事をしなければ欠席とみなす。
「みなす」という言葉は日常生活で頻繁ではないものの、ボチボチと耳にする言葉ですね。
普通、「みなす」というと、「仮のもの」と解釈するはずで、一時的に想定するという程度の意味で取り扱うと思います。
しかし、法律で「みなす」という言葉を使った時は、「一時的なもの」という意味ではなく、「確定したもの」という意味で使います。普通の感覚からするとヘンな感じですが、法律では「みなす=確定」と考えているのですね。
労務管理にも、「みなし労働時間制度」というメニューがあり、これは実際に働いた時間で判断するのではなく、事前に決めた「みなし時間」だけ働いたとみなすものです。
これは便利な仕組みで、正確に勤務時間を把握できない仕事をしていると、時間に応じて賃金を設定することが難しくなるので、実際の勤務時間ではなく、みなされた時間を基準にしても良いわけです。
しかし、便利であることと使いやすいことは別の話です。
"適正に"みなしているのかどうか
みなし労働時間制度を採用する動機は、「厳密に時間を把握できない」、「各自で仕事の要領が違うので、個別に時間を把握するのは不合理」、「時間の管理を社員の裁量に任せているので、個別に時間を管理しない」などが代表的でしょうか。
外回りで仕事をしている人が主な対象でしょうね。
みなし労働時間制度は、例えば、1日8時間をみなし時間と設定した場合、勤務時間が6時間でも7時間であっても、勤務時間は一律に8時間であるとみなされるわけです。
この場合は、「短い時間を長い時間であるとみなしている」ので、特に支障などはありませんね。
しかし、9時間の勤務時間を8時間であるとみなすと、ちょっと問題が起こります。つまり、「長い時間を短い時間であるとみなしている」のが事の焦点です。
「8時間を超えても8時間とみなしても良いのかどうか」という点です。
みなし労働時間制度を採用している多くの企業では、「8時間を超えても8時間とみなしたい」と考えているのではないでしょうか。
時間を管理しにくいので、1日8時間というように固定して、勤務時間の調整を社員に任せて、時間管理を簡便にしようというのが望みなはず。
みなし労働時間制度は、見込みで勤務時間を計算ものですから、時間の管理がアバウトになることを許容する制度とも言えます。
しかし、「短い時間を長い時間であるとみなしている」ことは何らの問題がないものの、「長い時間を短い時間であるとみなしている」ことには問題が起こりやすいのですね。
もちろん、「短い時間を長い時間であるとみなす」ことができるのだから、「長い時間を短い時間であるとみなす」こともできます。
ただ、その「みなし」が「適正なみなし」なのか、それとも、「適正ではないみなし」なのかという点で、結論が分かれるのですね。
労働時間をみなすと、「実際の部分」と「みなし部分」の間に誤差が発生します。その誤差をどう処理するかがキモです。特に、長い時間を短い時間であるとみなした時の誤差が最大のヤマです。
法定労働時間の枠まで超える力はない
みなし労働時間制度でコントロールできるのは、「所定労働時間」であって、「法定労働時間」ではありません。
ゆえに、みなし時間を1日8時間と設定して、1日9時間の勤務になると、1時間分は時間外の勤務として扱わなければいけません。
そのため、「8時間を超えても8時間とみなしたい」と思っても、8時間を超えた分は時間外なのですね。
いくら「みなす」と言っても、法定労働時間を超えたものを法定内であるとみなす力はないのですね。
ちょっと脱線して、阪急トラベルサポートという会社に関する判例を紹介します。
(東京地裁 平20.7.18)
阪急交通社の子会社(阪急トラベルサポート)の添乗員の女性が、「事業場外みなし労働制」を適用され、残業代を支給されなかったのは不当と申し立てた労働審判で、東京地裁は「添乗員は日程表や日報などで労働時間を管理されており、労働時間把握は可能。したがって、みなし労働制は適用できない。よって、残業代を支払うべき」
上記の内容では、「勤務時間を管理することができるので、みなし労働時間制度を適用できない」と読み取れます。
ちなみに、みなし労働時間制度を採用していても、勤務時間を管理しなければいけないのがルールです。
ところが、勤務時間を管理できることを理由に、みなし労働時間制度を適用できないとなると、みなし労働時間制度は最初から使えないと結論できそうですよね。
時間を管理しにくいからこそ、みなし労働時間制度を採用しているのだから、勤務時間を管理しないのが真っ当です。しかし、みなし労働時間制度を採用していても、勤務時間はキチンと把握していなければいけないようですので、やむなく企業は勤務時間を把握しているはずです。
そこで、「勤務時間を把握できるならば、みなし労働時間制度は適用できない」と指摘されてしまうとなると、企業はどうすればいいのでしょう。
勤務時間をキチンと把握しなければいけないとなるならば、何のために勤務時間をみなしているのか分かりませんよね。みなしているのに管理しなければならないというのは、ちょっとヘンです。時間を管理しなければいけないならば、みなし労働時間制度を使う理由がないのではないかと私は思いますが、それでも意味があるのでしょうか。
また、みなし労働時間制度を使っているものの、やむなく勤務時間を把握すると、「時間を把握できるのだから、みなし労働時間制度は使えない」と言われてしまう。
どうも、わざとみなし労働時間制度を使いにくくしているのではないかと私は思います。
労働基準法は「1日8時間、1週40時間」という枠から出て行くことを嫌っているようで、原則から外れるような変形労働時間制度やみなし労働時間制度はあまり使いやすいメニューになっていないのでしょうね。
「みなし労働時間制度は使うな」というメッセージなのかもしれませんね。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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