book871(残業しなくても残業代が出る。)

 

http://www.sanyonews.jp/article/472548
はるやまが「ノー残業手当」導入 4月から、健康配慮し業務効率化

 

 スーツ販売の子会社・はるやま商事(同)と合わせた計約1200人(課長級以上を除く)が対象。残業時間ゼロの社員に月額1万5千円を支給する。残業した社員についても、残業代が1万5千円に満たない場合は、手当と同額になるよう差額分を支給する。

 手当の総額は年間1億8千万円を見込む。両社の社員1人当たりの平均残業時間は月10時間半で、制度導入により残業代を年間8千万円圧縮できるとみている。

 

 


残業しなくても残業手当を支給し、残業しないことに対するインセンティブを用意するのが狙いです。

今までだと、残業しなければ何も無く、残業した場合は割増賃金が支給されていたため、残業することに対するインセンティブはあったものの、残業しないことに対するインセンティブはありませんでした。


ノー残業手当と表現されていますが、いわゆる定額残業代と同じです。一定額の残業代を定額で支払い、給与を計算する際に、不足分があれば追加で支払う。

ただ、定額残業代という名称を使わないのは賢明な判断です。定額残業代に対するイメージは良いものではなく、「残業代を未払いにするつもりなんじゃないか」、「定額支払いにして、残業をやり放題にするつもりなんじゃないか」、「割増賃金をケチるために導入したんじゃないか」などと邪推されがちです。

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スマホの料金のごとく、毎月、一定額を支払えば使い放題という感覚で残業代を定額化すると、割増賃金の未払いが発生します。例えば、毎月5,000円だけ支払って、後は残業し放題なんてことになると、それはアウトです。

残業手当を定額で支払うならば、何も定額残業代という名称にこだわる必要はありません。例えば、「定時退社奨励手当」という名称でもいいですし、ノー残業手当という名称も、もちろん可能です。

「残業」という名称が入っていなくても、法定時間外労働に対する割増賃金として取り扱えます。なぜならば、実態判断を優先するのが労働基準法だからです。箱は何であれ、中身が重要なのです。



月額15,000円を定額で支給して、不足が生じた分は追加で支払う。これがはるやまのノー残業手当です。

・1ヶ月間の残業代が6,000円だった場合、この場合は15,000円を支給します(残業せずに9,000円を余分に手にできます)。

・1ヶ月間の残業代が13,000円だった場合、この場合も15,000円を支給します(残業せずに2,000円を余分に手にできます)。

・1ヶ月間の残業代が21,000円だった場合、この場合は21,000円を支給します(定額分の15,000円を超えているので、不足分の6,000円を追加で支払います)。

・1ヶ月間の残業代が0円だった場合、この場合は15,000円を支給します(残業を全くせずに丸々15,000円を手にできます)。


収支としては、年間で1億8千万円が出ていき、圧縮できる残業代が8千万円です。単純な収支では1億円の支出超過ですので、会社が損をしているような感じがします。



しかし、残業が減る効果として、

  1. 人の流出が減り、採用時の教育コストが減る。
  2. イメージアップによる企業評価。
  3. ニュースとして取り上げられた宣伝効果。
  4. イメージアップにより、求人する際のコスト低下。

 

などが見込めます。


これらを年間1億円で買うと考えれば、必ずしも高い買い物ではないと思います。

この程度の施策でもニュースとして採り上げてもらえるのですから、先行者利益を得るならば今がチャンスです。先に取り組んだほうが宣伝効果が高いですから、過労死や残業代未払いなどが注目される今なら早い者勝ちです。



小銭を捨てて、大銭を節約する。これは商売の基本です。

入ってくるキャッシュよりも出ていくキャッシュを減らす。その結果、手元に残る利益が増える。


今回の施策も、あえて手当を出すことで、長期的な視点で手当を減らすのが狙いです。1億円で1億8千万円を買うようなイメージです。短期的には損をする感じがしますが、中長期的にはプラスになっていく。

千円を捨てて、一万円を拾うような労務管理ができれば言うことなしです。

残業代を未払いにしてケチるようだと、これは「一万円をゴミ箱に捨てて、目の前に落ちている千円を拾う」ようなものですから、後から損をするのは明らかです。

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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