収入に連動するのが社会保険料
収入が多くなると、社会保険料も多くなり、
収入が少ないと、社会保険料も少ない。
これが社会保険料の仕組みです。
社会保険料を計算する基礎となるのが
「収入」
です。
ちなみに、社会保険では、
「収入」ではなく「報酬」という
言葉を使います。
今回は便宜上、収入という言葉を使っています。
この収入という言葉、人によって定義が変わります。
「諸手当や割増賃金を含めた総額が収入だ」
「細々とした手当や保険料を除いた、正味の部分だけが収入だ」
前者は「総収入」を収入と定義しています。
一方、
後者は、「純収入」を収入と考えているんですね。
例えば、各種の手当を含めると、
総収入は月額70万円だとしましょう。
一方で、
細々したものを除いて、
純収入を出すと月額50万円とします。
では、
どちらの収入を基準に社会保険料を計算するのでしょうか。
月収70万円で社会保険料を計算するのか。
それとも、
月収50万円で社会保険料を計算するのか。
ちなみに、
社会保険料(健康保険と厚生年金を合わせたもの)を30%とすれば、
前者の社会保険料は21万円。
後者だと15万円。
毎月6万円の差があります。
基本給だけでなく手当も含めた収入で社会保険料を計算する
社会保険料を計算するときは、
割増賃金や通勤手当も含んで計算します。
- 通勤手当
- 時間外労働に対する割増賃金(残業代)
も含むんですね。
ちなみに、
時間外労働に対する割増賃金を計算するときは、
通勤手当を含めないで計算します。
何だか混乱しますよね。
こっちの計算では含めるけど、
そっちの計算では含めない。
こういうややこしいことが
多いんです。労務管理では。
残業代(時間外労働に対する割増賃金)を計算するときは、
通勤手当を含めない。
社会保険料を計算するときは、通勤手当を含める。
という違いがあります。
労働の対償となっているものは全て含めるため、
割増賃金や通勤手当だけでなく、
- 住宅手当や宿直手当、
- 家族手当、扶養手当、
- 労働基準法26条の休業手当、
- 食事手当など
これらも社会保険料を計算するときの収入になります。
含めるものが多いほど、保険料は高くなります。
逆に、
含めなくてもいいものがあれば、それだけ保険料は少なくなります。
パートタイマーの加入基準、月額賃金88,000円に通勤手当は含むの?
パートタイマーの人が社会保険に入るには、
いくつか条件がありますが、
その中に、「収入が月額88,000円以上」という条件があります。
ここで問題です。
この88,000円の中に、通勤手当を含めるでしょうか。
それとも、含めないのでしょうか。
社会保険料を計算するときは、
収入の中に通勤手当を含めていましたよね。
じゃあ、
パートタイマーが社会保険に加入するときの
収入基準である88,000円の中に
通勤手当を含める。
、、、という判断でいいのかどうか。
答えは、「含めない」です。
「えっ? 社会保険料を計算するときは通勤手当を含めるんでしょ」
「じゃあ、この88,000円にも通勤手当を含めるんじゃないの?」
そう思いますよね。
でも、違うんですよ。
短時間労働者に対する厚生年金保険等の適用が拡大されています(日本年金機構)
88,000円の中には、
賞与や割増賃金(残業代)、
通勤手当を含めないのです。
社会保険料を計算するとき、
パートタイマーが社会保険に加入するかどうかを判定するとき、
この両者では基準が違うんですね。
月額賃金88,000円のところでは、
正味の給与、時間給部分のみで判断します。
一方、
社会保険料を計算する報酬では、
通勤手当も含める。
基準が二重になっていて混乱しますよね。
労務管理はこういう細かい部分がありますから、
大変かと思います。
労務の実務では、
社会保険に加入しないならば、
あまり加入基準に対してギリギリにならないように、
余裕を持って勤務時間や給与を考慮し、
契約を締結します。
月額賃金が80,000円ぐらいになるようにして、
加入基準に達しないようにします。
一方、
社会保険に加入する場合は、
確実に加入する条件を満たすように、
賃金月額が10万円ぐらいになるよう
契約を締結する。
加入基準スレスレで働くと、
加入するのかしないのか、
物議を醸します。
入るなら入る。入らないならば入らない。
両者をキッチリと分けてください。