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雇用保険の失業手当を受け取りながら働いてもいいの?

失業中に働く


失業手当を受け取りながら働くことができるのかどうか。

失業中で、じっとしているのも時間がもったいないので、体や頭が動くならば、失業中でも、許される範囲ならば、働いて収入を得ようか、と考えている方もいらっしゃるはず。

とはいえ、雇用保険から失業手当を受給するには、就業に向けた行動なり努力が必要で、じっとしているわけではないですが。

世間一般には、雇用保険のことを失業保険と表現する機会が多く、また、雇用保険の基本手当のことを失業手当を表現することが多いです。

そのため、便宜的に、失業保険なり失業手当という表現を使っている部分があります。また、文脈によっては雇用保険、基本手当という表現を用いているところもありますが、いずれも同じものです。

雇用保険は別名、失業保険と言われるように、失業のリスクに備える保険です。会社都合による解雇や退職勧奨を理由とする失業のみならず、自己都合による退職でも失業手当を受け取れます。

自ら保険事故を起こす(自殺など)と、保険金は給付されないものですが、雇用保険は自分から退職した場合でも給付が行われます。

失業中に受け取るのが失業手当なので、それを受け取っている間は、働いてはいけないのではないか、と思うところ。

失業期間が長期間になると、「ちょっとぐらい働いてもいいんじゃないか」という考えが出てきます。確かに、失業手当を受給している間は、失業中ですから、本来は働いていない状態のはずです。

働けば、もう失業中ではありませんからね。

ですが、雇用保険では、失業中に就業するのは許されており、収入を得ることも可能です。

つまり、失業手当を受け取りつつ働けるというわけです。


厚生労働省のウェブサイトで、雇用保険の基本手当に関するQ & Aが掲載されており、その21番目には以下のように書かれています。

Q21 アルバイトをしているのですが、雇用保険(基本手当)を受給することはできるのでしょうか。

雇用保険(基本手当)の受給資格決定時に、次のいずれかに該当する期間中である場合は、実際に仕事をしていない日も含めて「就職」している期間とされますので、雇用保険(基本手当)を受給することはできません。
1.雇用保険の被保険者となっている期間(原則週の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用見込みがあるもの)
2.契約期間が7日以上の雇用契約において週の所定労働時間が20時間以上、かつ、週の就労日が4日以上の場合は、
  その契約に基づいて就労が継続している期間

上記「就職」の状態であるかどうかの確認・判断は、各ハローワークにて行っていますので、住居所を管轄するハローワークへお問い合わせください。

なお、就職状態でなければ、受給手続きはできますが、仕事をした日は雇用保険(基本手当)の支給対象とならなかったり、収入額により減額される場合があります。


つまり、雇用保険に加入するほど働けば、もう失業中ではないと判断され、失業手当は受け取れなくなります。

また、7日以上の雇用期間を設定し、「週20時間以上、週4日以上働いている」場合も、同様と解釈できます。

雇用保険に加入するかどうか、または、一定以上の条件で雇用されているかどうか。ここでは、これらが基準になっていますが、さらに収入による基準もあります。

 


失業中にどの程度まで働いてもいいのか。

働けるといっても、じゃあ無制限に働けるかというと、そうでありません。

失業手当てを受け取りながら、いくらでも収入を得ていいとなると、それでは雇用保険としての意味がなくなります。

では、働いても良いとして、どのくらいなら働いてもいいのか。時間数や収入額が、どの程度までならば許されるのか。この境目が問題となります。

月に5万円程度ならばOKなのか、いや10万円までならばセーフなのか。このような基準が分からないと、働いてもいいのかどうか判断できません。

どこまで許容されているのか、という基準が分からないと、働きにくいもの。

失業手当を受け取りながら、どの程度まで働いてもいいのかの基準は、ごく単純化して言えば、「失業中の収入と失業手当の合計額が、在職時の収入の80%を超えたかどうか」です。

実際の計算は、もう少し複雑なのですが、『基本手当+「収入」≦ 賃金日額の80%』という計算式で表されます。

基本手当というのは、失業手当を意味します。失業手当の正式名称は、雇用保険の「基本手当」ですので、このような表記になっています。

また、収入というのは、失業手当を受け取っている期間中に得た収入のこと。賃金日額というのは、離職した日の直前の6ヶ月間に得た賃金を1日あたりに換算したものです。

失業手当と収入をあわせて、在職時の収入の80%を超えると、失業手当が減額、もしくは不支給になります。

働いて収入を得てしまうと、失業手当の支給が止まってしまうのが本来の形ですけれども、雇用保険では、ある程度の就業は許されているため、失業中に働いたら失業手当がどうなるか、が問題になるわけです。

 

 

具体的に数字を入れて計算すると、失業手当はどうなるか。

雇用保険の給付額を決める基となる、賃金日額の上限額と基本手当日額の上限額は、毎年変わりますので、今回は令和1年8月に変更されたものを使います。

仮に、40歳の人が失業したとして、在職時の月収は50万円だとします。

さらに、1ヶ月の収入を1日あたりに換算して、1日の賃金は24,000円とします。

この場合、この人の賃金日額は24,000円なのですが、40歳の人だと、賃金日額の上限額が15,140円と定められているため、24,000円ではなく上限額である15,140円が賃金日額になります。

失業手当、つまり雇用保険の基本手当は、1日あたり7,570円となります。

これらの数字は、厚生労働省の資料に掲載されています。

雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和元年 8 月 1 日から~

在職時の収入は1日あたり約24,000円でしたが、失業して雇用保険の基本手当を受け取ると、1日あたり7,570円に収入が減ります。在職時に比べて、7割弱ほどの減少です。

雇用保険の基本手当は、賃金が低い人ほど支給額が増えるようになっており、一方で、賃金が高い方は支給額が相対的に少なくなるよう設計されています。

仮に、この人の賃金日額が24,000円ではなく、5,000円だったとすれば、失業手当の額は4,000円ほどになります。収入の約8割が失業手当として支給されている計算になります。

では、失業中に5日間就業し、合計で6万円の収入を得たとすればどうなるか。

『基本手当+「収入」≦ 賃金日額の80%』に当てはめていくと、まず、賃金日額は15,140円ですから、その80%は12,112円。

基本手当の日額は、先程書いたように7,570円。

収入の部分は、1日あたりに換算すると12,000円。

1日あたりで減額される額は、(12,000円 - 1,306円) + 7,570円 - 15,140円 × 80% = 6,152円

ちなみに、1,306円の部分は、失業期間中に自己の労働による収入がある場合の基本手当の減額の算定に係る控除額のことです。

この人の場合、1日あたり6,152円が失業手当から控除されることになります。

7,570円 ×(28日-5日)+(7,570円-6,152円)× 5日 = 181,200円(1ヶ月間の失業手当額)

失業中に働くことで、この人の場合、失業手当の額が1日あたり7,570円から1,418円に減少しています。

計算方法は、下記のページの内容を参考にしています。
賃金日額等の改正前後の金額について

 


失業中に働いた場合は、失業認定申告書に書く。

基本手当を受け取りながら、働いて収入を得た場合は、毎月の失業認定報告書にそのことを記載しておきます。

ここで記載しないと、不正受給になり、不正に受給した額の3倍の納付をしないといけなくなります。

働いたからといって、すぐに失業手当がストップするというものではなく、収入に応じて減額、不支給の判定をしているわけです。

ただ、働いて雇用保険に加入してしまうと、この場合は減額などは無く、失業手当の支給は終了します。雇用保険に入ったということは、再就職したと解釈されるため。

失業中に働く場合は、雇用保険に加入するかどうか、次に、減額される収入基準を超過しているかどうか。この2点に気をつけておく必要があるでしょう。

先程の例では、減額される基準額を超えていたため、1日あたり、7,570円から1,418円に基本手当の額が減りました。

計算式で算出される基準額を超えない範囲ならば、働きながら基本手当を全額受給することも可能です。

ハローワークの窓口に行って、基本手当の額と収入を勘案しながら、どの程度まで就業できるかを相談するのも手です。

 

 

雇用保険の失業には"2種類"ある。

雇用保険は失業保険と表現されることが多いですね。

失業したときに給付があるので、雇用保険よりも失業保険という表現のほうが馴染みやすい。そのため、以下では、雇用保険のことを失業保険と表現し、雇用保険の基本手当のことを失業手当と表現します。

仕事を長く続けていると、給与から雇用保険料が控除されているぐらいしか意識しないのですが、失業には2つの種類があります。

「失業は失業であって、それ以外には何もないでしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、失業は2種類あるんです。

一口に失業といっても、色々な失業がありますよね。会社が潰れちゃったので失業した場合、何らかの理由で解雇された場合、自分から申し出て仕事をヤメた場合など。失業は1つであっても、そこに至るまでの理由は人によって違います。

その理由によって、失業は2つに分けられます。

それは、「受給資格者」と「特定受給資格者」の2つ。失業にはこの2種類があるんですね。


失業の原因によって給付の内容が変わる。

表現上は、特定という文字が付くかどうかの違いでしかないのですけれども、失業手当の受取額で違いが生じます。

コンパクトに説明すると、自分で会社を辞めた人は受給資格者になります。一方、会社がなくなったとか、解雇された場合は特定受給資格者という身分になります。どちらも失業者という点では一緒ですが、失業保険では扱いが違うんですね。


例えば、後藤さんと岩田さんという2人の会社員がどこかの会社にいるとして、後藤さんは会社を自主退職して失業し、岩田さんは会社が清算して無くなったので失業したとしましょう。

また、後藤さんも岩田さんも、失業保険に12年加入していたとします。さらに、年齢も、両者とも45歳だと仮定します。


この場合、後藤さんは、受給資格者です。自主退職していますからね。一方、岩田さんは、会社が倒産して失業しているので、特定受給資格者です。

では、後藤さんと岩田さんを比較して、出業手当の受け取りにどういう違いがあるか調べてみましょう。

ハローワークインターネットサービス - 基本手当の所定給付日数

上記のサイトに記載されている表で調べます。

まず、後藤さんから。

後藤さんは、失業保険に12年加入していて、年齢は45歳。そして、受給資格者なので、「2.特定受給資格者及び特定理由離職者以外の離職者」という部分に書かれている表にあてはめます。

被保険者であった期間は、12年。年齢は全年齢なので、全員一緒です。表を見ると、10年以上20年未満の部分に、120日と書かれています。これが後藤さんが失業手当を受け取れる日数です。

もし、1日1万円の失業手当を受け取るとすれば、120日ですから、後藤さんが受け取る失業手当は満額で120万円です。


次に、岩田さんの場合。

岩田さんは、失業保険に12年加入していて、年齢は45歳。ここは後藤さんと同じですね。そして、特定受給資格者なので、「1.特定受給資格者及び特定理由離職者」の部分該当し、ここの表にあてはめて考えます。

被保険者であった期間は、12年。年齢は45歳なので、45歳以上60歳未満のエリアに該当します。これを表に当てはめると、270日と書かれていますね。

もし、1日1万円の失業手当を受け取るとすれば、270日ですから、岩田さんが受け取る失業手当は満額で270万円です。


同じ加入年数、同じ年齢であっても、失業の理由が違うと、失業手当に150万円の差が出るんですね。


「失業の種類は2つある」

これは知っておきたいですね。



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