あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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副業の残業時間、「事業所」ではなく、「事業場」という文言の違い。

時間を通算

 

 

働く場所が異なるとき、どうやって労働時間を通算するのか。

働く場所が複数ある人はどれぐらいいるのでしょうか。おそらく、殆どの人は、職業は1つで働く場所も1つなのではないでしょうか。フルタイムで働いているとなると、なおさら職業も勤務場所も1つに集約されやすいはず。

ただ、中には、フルタイムの仕事とパートタイムの仕事を掛け持ちしている人もいるでしょうし、パートタイムの仕事を2つ掛け持ちしている人もいるし、自営業とフルタイム、自営業とパートタイムという組み合わせも考えられる。

全ての人が「1つの職業、1つの勤務場所」とは限らず、人によっては2つ以上の職業と勤務場所があるのですね。


そこで問題になるのが、労働時間の処理です。

例えば、9時から18時までフルタイムで仕事(食品会社の事務の仕事だと仮定)をして、20時から22時までパートタイムで仕事(コンビニの仕事だと仮定)をしている人がいるとしたら、この人の労働時間は何時間でしょうか。

9時から18時までの時間には1時間の休憩時間が含まれているので、フルタイムの仕事では8時間の労働時間。さらに、パートタイムの仕事は20時から22時だから、2時間。ゆえに、労働時間は10時間となる。

確かに、労働時間は10時間ですよね。では、8時間を超えた時間は法定時間外労働として扱われるでしょうか。

「もちろん、8時間を超えたら残業だから、残業代が必要だよね」と判断しましたか?

それとも、「うーん、確かに労働時間は10時間だから、2時間分は残業となるはずだけれども、、、何か違う気がする」と思いましたか?


さて、あなたはどちらでしょうか。



労働基準法38条の効果が及ぶ範囲はどこまで?

 2時間分は残業となる。いや、2時間分は残業にはならないんじゃないか。

どちらの判断も間違っているわけではありません。ただ、働く場所が途中で変わっているので、はたして労働時間を通算すべきかどうか分からないのですよね。


労働基準法38条(以下、38条)には、労働時間の通算に関するルールが書かれています。

第38条 
労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

 

この条文を素直に読むと、働く場所が変わっても、労働時間は通算するのだと思えます。それゆえ、上記の例でも9時から18時までフルタイムで仕事をして、20時から22時までパートタイムで仕事しているのだから、両方の労働時間を通算して、10時間として把握するのが正しいのではないかと思える。

しかし、そう考えると、ちょっと不都合なことがあります。

労働時間が10時間であるとして、8時間を超えた時間はどうするのか。労働基準法では、1日8時間を超える勤務は法定時間外労働ですから、8時間を超えた2時間分はいわゆる残業として処理すべきところです。残業として処理したならば、法定時間外労働の割増賃金も発生すると考えるのが法律通りの手順ですよね。

さて、では2時間分の割増賃金は誰が用意するのでしょう。9時から18時まで働いていた事業所でしょうか、それとも20時から22時まで仕事をしていた事業所でしょうか。

「そりゃぁ、20時から22時まで働いていた所が払うんじゃないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それで問題ありませんか?

2時間しか仕事をさせていないのに、2時間分の割増賃金が必要になる。これはヘンですよね。あなたがコンビニのオーナーだったらどう思うでしょうか。納得できないはずです。コンビニで8時間を超えて仕事をさせているならば、確かに割増賃金は必要でしょう。しかし、2時間だけの仕事に対して割増賃金を支払うとなれば、これはオカシイ。


38条を読むと、「事業"所"」という文言が使われておらず、「事業"場"」と書かれている。これが何を意味するのか。

「事業場を異にする場合」というのは、「同じ会社で、仕事をする場所が分散している場合」を意味しているのではないでしょうか。つまり、食品会社を例に挙げるならば、工場が4つあって、さらに本社が1つあるという場合、4つの工場や本社をまたがって仕事をした時に、労働基準法38条で労働時間を通算するという意味と考えるのが自然です。

同じ会社内で労働時間を通算するルールを38条に書いたと考えるわけです。おそらく、他の会社と労働時間を通算することを想定していないと私は考えます。チェーン展開する会社。事務所が複数ある会社。これらを想定していると考えるのが自然な解釈です。

もし、他社と労働時間を通算するとなると、社員の勤務情報を他社に渡す必要があります。しかし、自社の社員の勤務情報を他社に渡す会社はおそらく無い。なぜならば、それは個人情報だからです。仮に、他社から勤務情報を集められたとしても、残業代をどこの会社が負担するのか、さらには雇用保険料や健康保険、厚生年金の保険料をどこの会社が負担するのかという点を解決できませんので、やはり他社の労働時間まで含めて通算すると解釈するには無理があります。

もし、他社との通算を想定しているならば、38条では「事業場」ではなく「事業所」という文言を使っているのではないか。


ゆえに、食品会社で8時間、コンビニで2時間、合計で1日10時間の仕事をしたとしても、8時間を超えた2時間分は残業にはならず、割増賃金も発生しないと考えることになります。

 

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