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■中小企業緊急雇用安定助成金と雇用保険の資格喪失時期◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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資格喪失すると、30日分の助成金がなくなる。
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助成金を受け取っている状況で解雇するときに注意
中小企業緊急雇用安定助成金が創設されたのは、たしか2008年の11月か12月頃だったと思います。世間的には、いわゆる「リーマンショック」という経済的な出来事があって、その出来事を境に、経済環境が変わり、企業の運営に影響が出たとのこと。この影響で、売り上げが50%とか中には90%減ったという会社もあり、そのため、休業を実施する企業が増えました。
そこで、中小企業緊急雇用安定助成金という助成制度ができて、公的に休業手当を補助するようになったのですね。
助成金を使って、その後通常通りに事業を続けている会社もあれば、制度を使ったものの廃業する会社もあります。他にも、助成金を使おうかと考えたものの、結局は使わずにそのまま事業を続けることができている会社もありますね。
ただ、助成金を申請している状況で、解雇したり廃業したりするときには、ちょっとした留意点があります。
解雇をするときは、ご存知のように、解雇予告もしくは解雇予告手当が必要です。また、廃業する場合も解雇と同じ状況として扱うので、解雇予告もしくは解雇予告手当が必要です。
そこで、2010年7月の休業計画(ここでは、上田さんの休業計画だと仮定します)をすでに届け出ており、8月には7月分の助成金(上田さんの分の助成金です)を申請する状況を想定してみましょう。また、上田さんの会社は7月末で廃業するとします。なお、上田さんの会社は、2009年の10月から助成金を申請しており、2010年6月分までの助成金の申請はすでに終わり、助成金を受け取っていると考えます。
この場合、上田さんの会社は、2010年7月分の助成金を受け取るでしょうか。それとも、受け取らないのでしょうか。
2010年7月の休業計画はすでに提出していますし、7月はその休業計画に沿って休業をしたとします。この前提で、8月になれば、7月分の助成金を受け取れるかどうかという点が焦点です。
資格喪失や廃業をすると、最後の月の助成金がなくなることもある
中小企業緊急雇用安定助成金は、休業計画を提出した後、その計画通りに休業し、助成金の支給申請書と休業の実績を証明する書面を提出することで 手続きが完了します。
ならば、先ほどの例に戻ると、上田さんはの会社は事前に7月分の休業計画を提出し、上田さんは休業の計画に沿って7月は休業している。ならば、8月に入れば7月分の助成金を申請できるはずだと思えるでしょうね。キチンと手続きを踏まえているのだから、7月分の助成金は確かに支給されるはずだと考えるわけです。
しかし、解雇や廃業のときは、解雇予告のルールを踏まえないといけないので、30日以上前に解雇や廃業の期日を予告するか、30日分の解雇予告手当が必要です(もちろん、予告と手当を組み合わせることも可能)。
となると、7月末で廃業する上田さんの会社では、7月の初めの段階ですでに解雇予告されているとみなさなければいけないでしょう。ちなみに、中小企業緊急雇用安定助成金は、解雇予告をされたら、その日以後は休業日として扱えないというルールがあります。休業手当を支給して雇用を維持することをフォローするのが中小企業緊急雇用安定助成金の狙いですから、すでに雇用を終了することが予定されている人が休業するものとは考えないのでしょうね。
ゆえに、7月は休業がない(厳密には7月は31日ありますから、7月1日は休業として扱えますが、話を簡単にするために考慮しません)ものとして考えます。
中には、「えぇ~! せっかく休業したのに助成金が出ないの?」と思う人もいるかもしれませんね。確かに、わざわざ休業計画書を作って、その計画書を提出して、その計画通りに休業したのに助成金が出ないのですから納得しにくいのも分かります。しかし、解雇はもちろん、"廃業も解雇と同じ"ですので、解雇予告制度について想定しにくいのかもしれません。
休業して助成金を受給するよりも事業を続ける方が有利
では、「最後までキッチリと助成金を受け取る方策はないのか?」と思うところですが、あるにはあります。
まず、資格喪失の時期を先延ばしにするという方法があります。つまり、廃業や解雇の時期を後ろにズラすわけです。今回の例だと、7月末で廃業せずに、8月まで事業を継続するのですね。ただ、解雇予告の期間は30日必要ですから、8月の初めに解雇を予告して、8月の末まで雇用契約を継続する必要があります。さらには、8月分の賃金は助成金無しで支給する必要があります(8月も休業してしまうと、また同じ問題が繰り返されるので)。
「8月の初めまで雇用契約を維持すれば足りるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、解雇予告の期間は30日必要ですので、7月の休業日が解雇予告の期間に含まれないようにしないといけません。雇用保険だけを考えれば、8月の初めまで被保険者資格を維持すれば足りるのですけれども、労働基準法の解雇予告も含めて考えると、8月の末まで期間を設けないといけないのですね。
ただ、助成金にあわせて事業を続けるというのもヘンですから、助成金目的で8月まで事業を継続することはないかもしれませんね。私も、「最後の月の助成金が受け取れないので、もう1ヶ月事業を継続してください」とは勧めにくいです。事業を継続するかどうかは助成金で決められることではありませんから。
最も良い選択肢は、助成金を受け取って、もとの事業状態に戻ることです。これならば、助成金はもれなくキチンと受け取れますし、解雇の手続きをする必要もありません。
余談ですが、中小企業緊急雇用安定助成金を利用することで一気に雇用保険のモトを取った企業も多いのではないでしょうか。低い保険料であれだけの助成金を支給したのですから、雇用保険の準備金(余裕資金)はなくなっているはずです。ただ、雇用保険の特徴として、景気が回復すると急激に準備金を充実させる傾向がある(2005年から2006年ごろの準備金はタップリありました)ので、あまり心配になるほどではないでしょう。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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