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■掛け持ちで労働時間を通算するか否か◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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通算できる場合もあるし、通算できない場合もある
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労働基準法38条1項は確かに必要だけれども、副業先の労働時間をどうやって把握するの?
複数の事業所で働くと、それぞれの労働時間を通算するというルールが労働基準法にはあります。例えば、水曜日に、Aという事業所で3時間仕事して、その後に、Bという事業所で4時間仕事をすると、その人の水曜日の労働時間は7時間になるという仕組みですね。条文は、労働基準法の38条1項に書かれています。
第38条1項
「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」
なぜこのような仕組みを用意したかというと、事業所間で労働時間を分散させて、法定労働時間の枠を超えて勤務することを防ぐ目的のためです。A事業所で5時間、B事業所で5時間働いた場合、それぞれを別々で把握すると、それぞれ5時間までしか働いていませんので、法定労働時間の1日8時間を超えません。しかし、A事業所とB事業所を通算すると、勤務時間は10時間になり法定労働時間を超えるので、2時間分は時間外の勤務として把握することになるはずです。
法定労働時間の規制を回避することを防ぐのが38条1項の目的ですから、複数の事業所間で労働時間するのは真っ当なことです。
しかし、複数の事業所間での労働時間を通算するといっても、実際に通算できる場合と通算したくてもできない場合があります。つまり、38条1項の通りにキチンと処理したいと考えていても、現実にはできない場面もあるのですね。
「労働時間を必ず通算できる」と考えるには無理がある
38条1項の通りに複数の事業所間で労働時間を通算しようと考えたとき、その複数の事業所間で情報を共有する必要があります。例えば、ある人がA事業所で5時間、B事業所で4時間働いたという事実があったとすると、A事業所はB事業所でその人が4時間働いたという情報を把握している必要があります。また、B事業所はA事業所でその人が5時間働いたという情報を把握している必要があります。しかし、この情報の共有は実際に可能かどうかが疑問です。
A事業所はどうやってB事業所の情報を把握するのか。また、B事業所はどうやってA事業所の情報を把握するのか。別の会社同士で社員個人の情報をやり取りできるのかどうか。ここは疑問を抱くポイントのはず。社員さん(A事業所とB事業所の両方で働いている)自身がいちいち報告するというのも何だか無理があります。他の会社で何時間働いているのかなどいちいち報告しないですよね。では、会社同士で情報をやり取りするかというと、個人情報をホイホイとやり取りするのも無理がある。
もちろん、A事業所とB事業所がグループ企業の関係であるとか、飲食店チェーンの店舗同士の関係であるならば、お互いに情報を渡し合うこともできるでしょう。これならば、38条1項に沿って、複数の事業所間で労働時間を通算することも可能だと思います。しかし、A事業所とB事業所がお互いに関係ない会社同士だったらどうするのか。この場合、労働時間の通算は容易ではないはずです。
さらに、もし違う会社同士で労働時間を通算できると仮定したとしても、時間外勤務に対する手当や各種の公的保険の保険料をどちらが負担するのかが問題になります。先の例のように、ある人がA事業所で5時間、B事業所で4時間働いたという事実があったとしたら、法定労働時間を超えた1時間分の時間外勤務手当はA事業所とB事業所のどちらが負担するのでしょう。「後から出勤しているB事業所で負担するのだ」と考える人もいるでしょうが、それで解決できるでしょうか。B事業所では4時間しか勤務していないのに、1時間分の時間外勤務手当が発生するのは不合理ではないでしょうか。おそらく、B事業所の管理者さんは納得しないはずです。
法定労働時間の規制を免れることを防ぐという38条1項の趣旨は良いのですが、お互いに関係を持たない会社同士で労働時間を通算するのは容易ではないと分かるはずです。
ゆえに、「複数の事業所で働いている場合は、労働時間を通算します」と単純に言えない事情があるのですね。
労働基準法は「1人1社」で働くという想定で作られている
おそらく、38条1項は、まったくお互いに関係ない企業同士で1人の人間が勤務することを想定して作られていない法律ではないかと私は思います。企業内で兼業禁止のルールがキツかった時期に作られたルールなのかもしれませんね。
以前(20年以上前だろうか)は、企業が社員を丸抱えにして雇用している状況を想定していたために、38条1項の不備を予測できなかったのだと思います。まさか違う事業所を跨いで勤務するヤツなんていないだろう、と想定して作った法律なのでしょうね。
別々の会社を掛け持ちするという場面を想定していないために、今の時点から考えるとヘンテコなルールになってしまうのだと思います。もちろん、簡単に法改正などできないという事情もありますし、または、すでに38条1項は形骸化していて、現場ではほとんど機能していないのであえて放置しているのかもしれません。
38条1項は、労働時間を分散させることで法定労働時間規制を回避することを防ぐというマトモな趣旨で作られた法律ですし、内容にも賛成できるものです。
しかし、まったくお互いに関係のない企業間で労働時間を通算することを求めるのは、38条1項の濫用ではないでしょうか。
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【仕事のQ and A】
決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。
他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。
労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。
しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。
- Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
- Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
- Q:休む人が多くて勤務シフトに穴が開く。対処策は?
- Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
- Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
- Q:残業しないほど、残業代が増える?
- Q:喫煙時間は休憩なの?
- Q:代休や振替休日はいつまでに取ればいいの?
このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。
【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】
毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。
しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。
残業管理のアメと罠
【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】
私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。
どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。
社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。
合格率0.07%を通り抜けた大学生。
【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】
高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。
中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。
そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。
若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。
それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。
もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。
週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。
休憩時間無しで働いている。
採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。
「学生には有給休暇が無い」と言われた。
テスト休みを取って時給を減らされた。
など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。
何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。
(知らないからといって許されるものではありませんけれども)
このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。
一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。
学生から好まれる職場と嫌われる職場。
その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。
「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。
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