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保険証が手元になければ病院代は全額自己負担になる?

保険証メールマガジン 本では読めない労務管理の"ミソ"

山口社会保険労務士事務所
(2019/4/5号 no.319)

 

 

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保険証が手元になければ病院代は全額自己負担になる?
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保険証が手元に無いとき、病院代は10割負担になってしまうのか、それとも何らかの対処法があるのか。今回はこの点についてお伝えします。

3月から4月は、退職する人や入社する人が多くなり、人の移動が増える時期です。それに伴い、健康保険から脱退することもあれば、新たに加入することもあります。


健康保険に加入すると、保険証が会社経由で渡されるのですけれども、加入してすぐに保険証が手に入るものではなくて、少し時間がかかります。

入社時点で社会保険に加入する条件を満たしていて、健康保険と厚生年金に入るとします。この場合、入社した時点ですぐに健康保険を使えるようになるはずですが、手元に健康保険証が届くには1週間ぐらいかかるんですね。

では、健康保険証が届くまでの間に病院に行ったら、病院代は全部自己負担になるのか。

手元に保険証がありませんからね。

「そりゃあ、保険証が無いんだから、10割負担になっちゃうでしょ」と思うところです。


ですが、入社時点で社会保険に加入する条件を満たしていて、事業所経由で被保険者資格取得届を出しているならば、入社日から健康保険には加入できています。

ならば、入社日から健康保険は使えるようになっているんですね。保険証はまだ届いていないですけれども。

「保険証が無いのに、どうやって健康保険を使えるの?」と疑問に思うところですが、この場合は『療養費』という給付制度を利用します。


保険証があれば、それを病院の窓口に提示して、3割負担で医療サービスを利用できますが、保険証が無い場合は、先に10割負担で支払っておき、後から療養費を健康保険協会に申請します。

先に立て替え払いして、後から7割分を金融機関の口座に振り込んでもらう。これで実質的に3割負担で病院を利用できるというわけです。

健康保険の療養費支給申請書にはいくつか種類がありますが、保険証が手元に無い場合に利用するのは立替払の申請書です。

健康保険療養費支給申請書(全国健康保険協会)


「保険証を持っていないから全額自己負担になっちゃう」と悩む方が毎年3月や4月にいらっしゃいますが、後から療養費を申請すれば健康保険を利用できると知っていれば安心ですよね。


退職する場合も入社時と同様で、後から任意継続で健康保険に加入する方や市町村の国民健康保険に加入する方でも、療養費を申請すれば保険証を持っていない期間でも健康保険を適用できます。

入社直後や退職直後で健康保険証が手元に無い期間をどうするか。

 

 

入社直後や退職直後で健康保険証が手元に無いから病院に行けない?

保険証

健康保険証が手元になければ病院代は自己負担になる?

会社に入社して、社会保険に加入すると健康保険証が発行されます。また、退職時には、会社に健康保険証を返却して、健康保険の被保険者資格を喪失させる手続きをします。


入退社のときは健康保険証の受け取りや返却がありますが、保険証を受け取るまでに病院に行ったらどうするのか。保険証を使えないから全額自己負担になるのか、それとも健康保険証が手元に無くても健康保険を利用できるのか。

また、退職時に保険証を返した後、以前の健康保険を任意継続するか、市町村の国民健康保険に加入するまでの間に病院に行ったらどうするか。この場合も、保険証が無いから自己負担になるのか、それとも何らかの方法で健康保険を利用できるのか。

手元に健康保険証があれば問題なく病院には行けるのですけれども、手元にそれが無いとなれば、やはり不安なもの。


入社直後に健康保険証がないけれども病院に行きたい。その場合にどうしたら良いか。

退職直後に健康保険証がないけれども病院に行きたい。その場合にどうしたら良いか。


それぞれ対処法を考えてみましょう。

 

 

入社した時点で健康保険には加入している

入社してから、社会保険の手続きをして、後ほど健康保険証が自分のもとに届きますから、大体1週間ほどでしょうか、保険証が無い期間は。

「1週間ぐらいなら、病院に行くこともないだろう」そう思う方もいるでしょうが、短期間であっても、何らかの原因で病気なり怪我なりをして、治療をしないといけないときもあるでしょう。

保険証が無いと、「まだ健康保険には加入できていないんじゃないか」と思うところですが、社会保険に加入する条件を満たしていれば、入社時点から健康保険には加入しています

保険証が届くまで、手元にはモノがありませんけれども、それでも健康保険の被保険者であることは確かなのですね。

じゃあ、「病院の窓口で保険証を出さなくてもいいの?」と考えるところですが、保険証を出さないと病院代は10割負担になります。

「10割負担になるなら、健康保険に加入していない状態と同じでは?」と言いたいところでしょうが、病院の窓口では健康保険に加入しているかどうかを確認できないため10割負担になりますが、実際はすでに健康保険の被保険者になっています。

この場合は、先に10割分を立て替え払いしておき、後から「療養費」を請求すると、支払った額の7割は指定した金融機関の口座に返ってきます。


療養費(全国健康保険協会)

 

 

健康保険被保険者資格証明書を使えばどうか

先程は、立て替え払いしておいて、後から療養費を請求する方法でしたが、健康保険には『健康保険被保険者資格証明書』というものがあり、保険証が手元に届くまでの間に使える証明書として発行されています。


従業員に健康保険被保険者資格証明書を交付するときの手続き(日本年金機構)


健康保険被保険者資格証明書を発行してもらい、これを病院の窓口に出すと、保険証を持参した場合と同じように3割負担になるとのことですが、利用した経験のある方は少ないのではないでしょうか。

なぜ少ないかと言うと、仮に健康保険被保険者資格証明書を発行してもらったとしても、健康保険証が届くまで一時的にしか使わないからです。そのため、あえて請求せずに、保険証が届くまで待っている方のほうが多いはずです。

健康保険被保険者資格証明書を発行してもらうには、申請書を書いて、年金事務所に出すのですが、2019年3月時点では、年金事務所で証明書を発行してもらえないケースもあるようです。


日本年金機構のウェブサイトでは、年金事務所で原則として当日中に交付すると書かれていますが、年金事務所へ手続きに行くと、広域事務センター(健康保険の事務処理を一括して処理している場所)に申請書を郵送するよう案内されるケースがあり、健康保険被保険者資格証明書がすぐに手に入らないこともあるとのこと。

健康保険に加入して、保険証が届くまでの期間が1週間だとすると、健康保険被保険者資格証明書を使うのはその1週間限りとなります。

郵送でやり取りすれば、3日ほどはかかりますから、証明書を使える期間は実質的に数日しかありません。即日で交付されればまだ使いようもありますが、申請から交付まで数日かかるとなれば役に立たないでしょう。

申請書を書いて、今か今かと待って、健康保険被保険者資格証明書が届いても、すぐに使わなくなるのです。

それならば、健康保険被保険者資格証明書を申請せず、保険証が手元にない期間は、立て替え払いで対応し、後ほど療養費を請求する方が楽だろうと思います。

病院によっては、療養費の手続きを病院側でやってくれるところもあり、本人が療養費申請書を出さなくていいケースもあります。

療養費の手続きならば、後からゆっくりと書類を作って郵送すればいいですし、健康保険被保険者資格証明書を申請するときのようにバタバタと急いで手続きすることもありません。


健康保険被保険者資格証明書は、使おうと思えば使えるものの、手間と時間、届いてからの使用期間の短さを考えれば、申請しない方が良いのではないでしょうか。

健康保険被保険者資格証明書を年金事務所に申請して発行してもらうのではなく、会社側で作成して発行できるならば、即日で渡せるため利点がありますけれども、申請してから数日かかるとなると、健康保険被保険者資格証明書を申請せず、被保険者資格取得届を出して、健康保険証が届くのを待っていた方が手間が増えなくていいのではないかと。

郵送で手続きをしたとして、健康保険被保険者資格証明書が届くのは3日ぐらいはかかるのでしょうし、それだったらもう健康保険証が手元に届くまで待っておこう。そう考えるのでは。被保険者資格取得届を出して1週間ぐらいで健康保険証が届きますから。

「健康保険証が手元になかったら健康保険を使えないのではないか」と心配になるでしょうけれども、後日、療養費で保険負担分の7割が返ってきます。ですから、健康保険証が手元になかったとしても健康保険を使うことはできます。病院の窓口で「今、健康保険証を発行する手続きをしている最中なので、手元に保険証がありません」と伝えておけば良いでしょう。 

マイナンバーカードを健康保険証として使えるようになれば、常に手元にマイナンバーカードはありますから、被保険者資格を喪失したり取得したりすることで一時的に健康保険証が手元から無くなることはなく、常にマイナンバーカードが手元にあるので、それを利用すれば健康保険の被保険者資格があるかどうかは判断できるようになります。

手元に健康保険証がないのが不安の原因ですから、マイナンバーカードならずっと手元にあります。健康保険証を返したりまた新しいもの送ってもらったりという手間もなくなりますし、マイナンバーカードを健康保険証として使えるようになる利点は大きいですね。

健康保険料を自動で正しく計算してくれる給与計算ソフトは?
給与は基本給だけでなく雇用保険料や健康保険料も含めて計算しなければいけないものですから、それらの保険料を自動で計算してくれる給与計算ソフトは便利ですね。

 

退職した後、次の保険証が届くまでの期間も健康保険が適用される

退職日までは在職時の健康保険証を使えます。その翌日からはもう健康保険証は使えませんから、次の健康保険、任意継続での健康保険、もしくは国民健康保険に加入して保険証が届くまでは手元に健康保険証はありません。

この場合も、入社時と同様に、保険証がない期間は、病院代を先に立て替え払いしておき、後から療養費を請求すると、7割分は返ってきます。

健康保険に未加入になって全額自己負担になるわけではないので安心です。

退職日の翌日から、任意継続の健康保険なり国民健康保険に入っていたと扱われ、無保険の期間が無い状態になるのです。

ゆえに、保険証が手元に無くても、健康保険を利用できるため、後ほど療養費を請求すれば、3割負担で病院に行けるというわけです。

「保険証が無いと、健康保険が使えない」と考えてしまいがちですが、新しい保険証が交付されるまでの期間に対してキチンとフォローが用意されているのですね。


ちなみに、国民健康保険にも『被保険者資格証明書』というものがありますが、これは国民健康保険税(国民健康保険料と表現する市町村もある)を滞納した人に送付されるもの。

先程書いたように、保険証が手元にない人が一時的に使う健康保険被保険者資格証明書とは違いがあります。

 

 

マイナンバーカードを保険証として使えるなら解決できる問題

保険証のやり取りは、もう何十年も前から時間と手間がかかる作業で、2019年現在でも書類やカードのやり取りがされています。

入社時には、被保険者資格取得届を出してもらい、保険証を発送し、それを会社経由で本人に渡す。

退職時には、会社経由で保険証を返して、被保険者資格喪失届を出す。

すぐに保険証は手元に届きませんし、保険証を作って発送するにも費用がかかります。また、先程書いたように、保険証が手元に無い間に病院に行ったら、後から療養費を請求する必要があります。

退職時にすぐに保険証を返還せず、退職した後に保険証を使ってしまう人もいます。大阪では、平成30年9月末時点で、資格喪失後1ヶ月以内に保険証を回収できたのは88.56%。全国平均は91.36%で、大阪の回収率はそれよりも低いです。

資格喪失後に健康保険を使ったのは、平成29年度で、13,142件、金額では311百万円。

退職した後に健康保険を使うケースが年間で1万3千件ほどあるとのことですから、「手元に保険証があればまだ使っていいんだろう」と考えている方も少なからずいるのだろうと予想します。


マイナンバーカードを健康保険証として使うと、資格取得手続きが終われば、すぐに健康保険を使えるようになります。以前のように、保険証が送られてくるのを待たなくてもいいですし、健康保険被保険者資格証明書を申請する必要もなくなります。

1日か2日で健康保険が有効化され、マイナンバーカードを健康保険証として使えるようになるでしょうから、病院代を立て替え払いして後から療養費を申請するケースも減ります。また、健康保険被保険者資格証明書の出番も無くなるでしょう。

カードそのものは常に手元にありますから、入社や退社のつどカードを新しくする必要はありません。

被保険者資格取得届を出して、その確認が済めば、加入者のデータを更新して、即日にでも健康保険を使えるようにできます。早ければ1日、遅くても2日でマイナンバーカードを保険証として使えるでしょうから、書類やカードをやり取りしているときに比べて所要時間を短縮できます。

資格取得手続きが終わったかどうかは書類ではなくマイナポータル(マイナンバーカードを使って閲覧できる自分専用のウェブサイト)で通知するようにすれば良いでしょう。さらに、マイナポータルの通知がスマホにも届くようにしておくと、どの時点から健康保険を使えるようになったかが分かりやすいでしょう。


カードの券面を見るだけでは被保険者資格を有しているかどうかは判別できませんので、健康保険証を病院の窓口に持ってこられると、「健康保険に加入している」と受け付けてしまいます。

一方、マイナンバーカードだと、ICチップを端末で読み取って、オンラインで資格確認できるようになりますので、健康保険に加入できているかどうかを病院の窓口で判断できます。


健康保険証以外にも、入院して手術を受けるときに限度額適用認定証を事前に申請して、それを病院の窓口に出すと、高額療養費制度を病院の窓口で利用できますが、この認定証もマイナンバーカードに集約しておけば、認定証の作成と発送が不要になりますし、認定申請を済ませるだけで限度額適用を受けて高額療養費制度を利用できます。


資格喪失時も、被保険者資格喪失届を受理したら、すぐに健康保険を無効化して、資格喪失後に健康保険を利用しないようにできます。カードを回収する必要はなく、加入者データを更新すれば手続きが終わりますから、資格喪失後の利用は減るでしょう。

健康保険を任意継続する場合は、任意継続の申請書を出せば、1日か2日で手続きが終わり、以前のようにマイナンバーカードを健康保険証として使えるようになります。健康保険を利用できるまでの時間的間隔が短くなりますから、後から療養費を申請する機会も減っていくはずです。


回収した保険証は裁断して廃棄するだけでしょうし、何枚もカードを作って、廃棄してと繰り返せば費用も手間もかかります。マイナンバーカードはずっと使うものですし、健康保険証のように使い捨てにはされません。

カードや書類のやり取りが減るという点だけでも、マイナンバーカードを健康保険証として利用するメリットがあります。

 

 

被保険者資格を喪失した後に健康保険証を使ったら、療養費の手続きはどうなるのか

健康保険証が手元にあるけれども、すでに被保険者資格を喪失をしている段階で、その保険証を使ってしまったらどうなるか。

被保険者資格の喪失手続きと同時に健康保険証を返却するところですけれども、古い方の健康保険から新しい健康保険に切り替わるとき、前者から発行されている健康保険証をやむを得ず使ってしまった、そういう場面もあるでしょう。

被保険者資格を取得する手続きをしても、健康保険証が届くのは1週間ぐらいかかりますから、その間に病院に行かなければいけないとなった時に、以前の健康保険の保険証を使ってしまったとなると、資格喪失後の給付になりますから、後ほど療養費の手続きが必要になります。 

例えば、3月31日で国民健康保険の被保険者資格を喪失した人が、翌日の4月1日に医療機関に行って、国保の保険証を出して治療を受けたらその後どうなるか。被保険者資格は3月31日で喪失してるけれども、国保の保険証がまだ手元にあるので、翌日の4月1日にそれを使って病院に行った場面です。

なお、3月末の段階で、国民健康保険から協会けんぽへの切り替えが終わっており、4月1日からは協会けんぽの被保険者資格を取得しているとします。

本来ならば協会けんぽの健康保険証を使って病院に行くところですけれども、4月1日の時点では、まだ保険証が手元になかったため、国保の保険証を使って病院に行きました。

このとき、国保の健康保険証が使えないかというと、国保の保険証で保険診療を受けることができます。法律上は被保険者資格を喪失しているので、保険診療を受けることはできませんが、病院の窓口では保険証を提示すると、健康保険を使って治療を受けることができます。

4月1日の段階では、国民健康保険の被保険者資格は既に喪失していますから、窓口で国保の保険証を使えたとしても、後ほどその保険で給付されたものは返還する必要があります。

この返還に関する通知ですが、市町村からすぐに連絡が来るということはなくて、資格喪失後の利用から半年ぐらい経過した段階で、郵便で医療費の返還についての連絡が届きます。

健康保険が使えないところを保険証を使って、診療ないし治療を受けたわけですから、その費用は市町村に返還しなければいけないのです。

現金で市町村に支払って、そのあと4月1日から被保険者資格を取得した協会けんぽの方に療養費を請求する。この2つの手続きが必要なのかと思えるところです。

市町村に保険診療分を現金で振り込む形で返還し、その後、同じ金額を協会けんぽの方に療養費として請求するとなると、手続きが煩雑ですし、めんどくさいと感じて放置する人も出てくるのではないでしょうか。

では、実際に実務でどのようなことが起こるかというと、市町村から保険診療分の返還について連絡が来て、その郵便の中に、協会けんぽ向けに「療養費請求書」と、その「療養費を国保の運営側である市町村が代理で受領することへの同意書」この2つが同封されています。実際の文書は『国民健康保険資格喪失後受診に伴う返納金清算に係る同意書(兼 委任状)』という名称です。

協会けんぽに療養費を請求する書面と、その療養費を国保側が代理で受領する。この書面を市町村に送ると、国保と協会けんぽとの間で療養費のやり取りをしてくれます。その結果、加入者側で療養費の返還(立て替え払い)と療養費の請求という2つの手続きをやる手間を省くことができるようになっています。

面倒な手続きを加入者にさせると、回収不能になる可能性が高まり、厄介ですから、国保と協会けんぽの間で療養費をやり取りして、確実に回収できるようにしているのですね。

被保険者資格を喪失した後に、健康保険証を使ったとき、新たに別の健康保険に加入できているならば、以前の健康保険制度と新しい方の健康保険制度で、療養費のやりとりを代わりにやってくれるという形で便利な手続きができるようになっているわけです。 

 

健康保険料を自動で正しく計算してくれる給与計算ソフトは?
給与は基本給だけでなく雇用保険料や健康保険料も含めて計算しなければいけないものですから、それらの保険料を自動で計算してくれる給与計算ソフトは便利ですね。

4月から新しく入ってくる学生アルバイトを雇うときの注意点。

 

学生

 


学生のアルバイトはパートタイマーではない?

高校生になるとアルバイトを経験する人が出てきます。中学生まではアルバイトをしたくても、企業が募集をしていないし、もしできるとしても学校の許可が必要です。中にはアルバイトをしている人もいたみたいですけれども、中学生でアルバイトをするには、何らかの人的なコネクションがないと難しい。

筆者も高校生の頃にはアルバイトを経験しました。1つだけではなく、ガソリンスタンド、運送会社、打ちっぱなしゴルフ練習場に併設されているレストラン、ゴルフ場のボール回収、居酒屋、思い出しただけでも5つの仕事を経験しています。

居酒屋で働いていたときは、夕方から夜の仕事で、17時から0時30分まで働いていました。高校生が0時30分まで働くのは法律違反ですが、16歳でそんなことは知りませんでした。

チェーンの居酒屋ではなく、個人経営の居酒屋のためか就労条件は店主のマイルールで決まっていたのではないかと。まあまあ繁盛しているお店で、店の近くに大きな会社があったので、平日のお客さんは多かったですね。日曜日はその会社が休みになり、ビジネスマンがお店に来ないので、飲食店には珍しく日曜定休日の居酒屋でした。

日曜日といえば飲食店にとっては稼ぎ時ですから、定休日にするなんてあり得ないと思えるのですが、平日メインのお店だと日曜日が定休日になることもあるのですね。ビジネス街の飲食店が日曜日に閉まっているのは、そういう理由なのかもしれません。

さて、高校生が17時から0時30分まで働いていたとすると、労務管理としては問題がありますよね。ご存知のように、高校生が働ける時間は22時までです。そのため、0時30分まで働くことはできない、、、はずです。

筆者は今でこそ社労士ですけれども、高校生の頃は労務管理についてはほとんど知らず、22時以降は高校生が働けないことも知らなかった。さらには、深夜時間帯に働くと割増賃金が必要なことも知らなかった。22時以降のルールについて知らないのですから、割増賃金について知らないのも当然ではあります。

その当時は、インターネットは今ほどは普及していなかったですし、パソコンも一部のマニア向けの機械であって1台で70万円とかだった頃です。ダイアルアップ接続というネット接続方法があって、接続しただけお金がかかるという代物で(通信速度も遅い)、定額料金で使い放題なんて夢のまた夢。

言うまでもなく、ケータイでネットはできなかったし(携帯電話はあったが通話機能だけだった)、スマートフォンなんて存在すらしなかった。そのため、働くときのルールについて知ろうとしても、せいぜい本で調べる程度で、手に入れられる情報なんて実に貧弱でした。

高校生が0時30分まで働いていた。深夜割増賃金も無かった。こんな法律違反の居酒屋でしたが、賄いの食事は美味しかった。居酒屋だから大したものは出てこないだろうと思うかもしれないけれども、賄いの食事は色とりどりで、飽きることはなかった。竹輪の天ぷらにマヨネーズをつけて食べることを初めて知ったのはこの居酒屋です。ここで食べた厚揚げ焼きの味は今でも忘れていない。あんなに美味しい厚揚げ焼きはなかなかないと思う。

食べ物の話はさておき、法的には不備があるお店でしたが、だからといって不満というわけでもなかった。もし、労務管理について知識を持っていたら、おそらく不満を感じていたのではないかと思う。知らないからこその満足。知っているからこその不満。その好例だったように思う。

 

居酒屋以外にも、ゴルフ場でのボール回収の仕事も経験しましたが、こちらも労務管理の面で問題がありました。ゴルフ場といっても、いわゆる広いコースに落ちているボールではなく、打ちっぱなしで練習するゴルフ場です。

打ちっぱなし練習では、お客さんがボールをパンパンと打ち飛ばして練習して、ボールが練習スペースにたくさん転がっています。そのため、営業時間が終わると、打ちっぱなしエリアにはボールがビッシリと落ちています。そのボールをキレイに片付けるのがボール集めの仕事。

ゴルフ練習場の営業時間が23時で終わるので、23時から0時までの1時間が作業時間です。集めるといっても、手で1つ1つ拾うのではなく、トンボ(T字型の地ならし道具)やボールを一度にたくさん集められる重機を使うので、45分から50分程度で終わるのです。

道具を使っているから、ササッと終わるだろうと思うかもしれませんが、ゴルフボールをトンボで集めてみると、結構重たい。ボール1個あたりの重さは大したことはないけれども、数が集まると随分と重くなります。その重いボールを回収場所の溝まで運ばないといけないので、仕事は想像するほど簡単ではないのです。ボール回収用の重機もあったけども、それは1台しかないので、全員が重機を使って作業できるわけではありませんでした。

ここでも、22時以降の仕事が問題となっていますね。高校生が23時から0時まで仕事をするのは、法律ではダメです。ただ、時給が1,000円だったので、高校生としては魅力的に思えました。当時、高校生の時間給は700円程度が相場でしたから、1時間で1,000円だと良さそうに感じたのでしょう。

居酒屋にしろ、ゴルフ場にしろ、使用者が法律を知らなかったのか、それとも知っていた上でのことだったのか、事実は定かではないけれども、高校生が22時以降は働けない点について知らない会社が多かったのかもしれません。

2019年の今だと、ニュースでも新聞でも、インターネットでも労務管理についての情報がたくさんありますので、高校生の扱いについては知っている人も多くなっているはず。しかし、昔は情報を集めるには、本を読むか人から聞くぐらいしかなく、知らずに過失で法律に違反している事業所も多かったのかもしれませんね。

学生のアルバイトはパートタイマーのおばちゃんとは違う。そう思っている方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。アルバイトとパートは別物。学生のバイトならば雑に労務管理しても許される、そういう誤解も無いとも限りません。

確かに、学生とパートのおばちゃんでは働く時間の長さが違うでしょうし、仕事の内容も違うかもしれない。勤務日数も、学生は週に2日や3日の勤務であっても、パートの人は週に5日で働いているのかもしれない。そう考えると、学生とパートのおばちゃんは違うと思うのも無理のないことです。

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https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/040330-8.html

学生を雇うときは、高校生と他のパートタイマーとの違いを知っておく必要があります。

 


学生もパートのおばちゃんと一緒。

アルバイトとパートタイマーは、労務管理ではほぼ同じものと扱います。「アルバイト=学生。パート=おばちゃん」というようにパカっと分けて理解している方も多いのでしょうけれども、労務管理での取り扱いは変わりません。

ただし、高校生だと、22時以降は働けないので、この点はパートタイマーの人との違いです。22時で終業して、着替えて退社するところもあれば、22時で終業すると22時までに退社や退店ができないので、22時ちょっと前、21時45分とか21時50分に仕事を終えて、22時までに会社やお店を出れるようにしているところもあります。前者は終業時点で22時、後者は退店まで含めて22時ですね。後者の方がよりキッチリしています。

雇用保険や健康保険、厚生年金に会社経由で加入しないのも学生が他の従業員と違うところです。学生は年金の第3号被保険者にはなりませんからね(例外はありますが)。

ちなみに、高校生にも年次有給休暇はありますから、もし週5日で働いていれば、フルタイム社員と同じ日数の有給休暇があります。週3日や週4日でも、勤務日数に応じた有給休暇(比例付与の年次有給休暇)がありますので、有給休暇が全くない高校生のバイトはいないのです。

高校生で年次有給休暇を使っている人はどれぐらいるんでしょうね。おそらく、限りなくゼロに近いのではないかと思います。採用時の面接では、勤務時間や曜日、休みや時給の話は出てくるけれども、有給休暇の話は出てこないはず。私が高校生の頃も、有給休暇について説明を受けたことはありませんでした。高校生に年休なんて無いと思っていましたからね。

高校生にも有給休暇があると会社側の人は知らないのか。それとも、知っているけれどもあえて隠しているのか。色々な理由があるのかもしれませんが、高校生ならばテスト休みのときに有給休暇を使うのが良いでしょう。中間テストや期末テストが近づくと、1週間ほど休みを取るものですから、そこに年次有給休暇を充当して消化するわけです。

高校2年の夏休みに、お中元の配達がたくさんある時期で、運送会社の庫内作業の仕事をしていたときは、働き始めて3週間から4週間ぐらいで、「今週いっぱいで終わりということで」と言われてリストラされた経験があります。筆者を含めて、高校生は確か12人ほどいたと思います。その12人のうち、8人か9人減らされ、残った人で仕事を続けたそうです。筆者はリストラ組だったんですね。

仕事が想定より少なかったか。それとも、トラブルが多かった(バイトが原因となった配送ミスが多発していた)から人数を減らしたのか。理由は定かではないですが、パタッと解雇されましたね。

解雇予告と言えるものは1週間だけでしたし、残りの期間に対する解雇予告手当も無し。労働基準法では、雇用契約を解除するには合理的な理由が必要ですし、契約解除の1ヶ月前に予告するか、1ヶ月分の解雇予告手当を支払わないといけません。

高校生でしたから、解雇の手続きについて知っているはずもなく、今週いっぱいで終わりと言われても、「あぁ、そうなのか」という程度で、また別の仕事を探そうかと思っていた程度です。学生の身分で切迫感はなく、雑に解雇されてもダメージは小さいものです。

その運送会社では、高校生で8時間を超えて仕事をしている人もいて、残業代が出ていたのかどうかは知らないのですが、労務管理に関してはルーズな職場だったのかもしれません。ただ、ルーズといっても、悪い職場というわけではなく、高校生にしては時給は高かったし、給与が高い割には仕事はさほど過酷なものではなく、倉庫内でピッキングと梱包をサクサクとやっていく。そんな仕事でした。ただ、夏でしたから、倉庫内は暑かったですね。エアコンなし、窓も開いていないところでしたから(労働安全衛生法にも違反していた?)。悪い点と言えば、暑かったという点ぐらいでしょうか。

もし、上記のような職場で、「この取り扱いは法律に違反している」と指摘しても、「自分が望んで働いているんだろう?」と言われれば言い返せない。気に入らないならばヤメてもいいという態度を示されたら、こちらとしてはどうしようもない。

不正を指摘しても、"大人の交渉"をされてしまう。悩ましいですよね。

確かに、強制されてやっている仕事じゃない。だから、気に入らないならば辞めるといい。この論法で来られたら、切り返しにくい。

もちろん、上記のように対応されたら、労働基準監督署に相談したり、法律を利用して直接交渉することもできます。ただ、その方法で解決できるかどうかはやってみないと分かりません。ほとんどの会社は不備を指摘されれば直すとは思いますが、中には変わった会社もありますから、そのような会社に出会ってしまうと厄介です。

「法律を守るのは義務であって最低限のことだから、法律の水準までは交渉不要で企業が対処すべき」という考えもあります。しかし、現実にはそうならないときもあります。

自分の思い通りにならないときに、何を妥協して、何を求めるか。自分で環境を変えられるならば変えてしまえばいいのでしょうけれども、自分では変えられない環境もあります。そういうときは、自分自身でその環境から逃げる(退職する)のが良い解決策ではないかと思います。

他者を変化させるのは難しいですが、他者ではなく自分自身を変化させる方が容易です。

 

www.check-roudou.mhlw.go.jp

筆者が学生だった頃は、自分が働いてる職場の労働条件や就業環境が適切なものだったのかどうかを判断するような情報なり調査をする方法が乏しくて、事業所側からこういう条件で働いてもらう、と提示されたら、「ああそういうものなのか」とそのままを受け入れざるを得ないような時代でした。

2021年時点では、厚生労働省のウェブサイトで自分が働いてる職場の労働条件が適切なものなのか判断する情報が提供されていて、筆者が学生だった頃よりは恵まれています。

履歴書を渡して、面接を受けて、それだけで「じゃあいつから入れるのか」というような採用方法が過去には当たり前になっていて、労働条件を書面で明示することはほとんどないような状況でした。口約束だけが頼りでしたから、危なっかしい時代だったんです。

何時から何時まで働くのか。何曜日に働くのか。週に何日出勤するのか。休憩時間は何分あるのか。休日や年次有給休暇はどのように取っているのか。そういうことを雇用契約で示しておかないと、後からなし崩し的に働く内容が変わってしまいます。

採用した時点では、週3日で働くと決めていたのに、実際に働き始めると、週5日でシフトに入っているなんてこともあります。

他にも、1日3時間勤務と約束して採用されたのに、実際は1日5時間働くことになっちゃってる。こういうケースもあるでしょう。

雇用契約で、働く日数や時間を決めた場合は、その通りにきちんと働く、または働かせるようにする義務が生じます。忙しいからといって勤務時間や日数を一方的に増やせませんし、暇だからといって無給で休ませることもできないのです。

会社が商品を仕入れる時に、1つ1000円で仕入れると約束したのに、取引する段階になって1つ2000円で売るなんて言われたら、買い手は困ります。1つ1000円でやり取りすると約束したのに、一方的に1つ2000円に変えられたら、買い手は不満でしょう。

そういう一方的に条件が変えられることを防ぐために、契約があります。

お互いに契約で決めたことは守る。だからこそ取引ができるんです。それは商品の仕入れだけに限らず、人を雇う時でも同じです。

 

 

大雑把に学生アルバイトを扱っているとトラブルが発生する。

アルバイトの労働条件を確かめようキャンペーン。このキャンペーンは、厚生労働省が行なっているもので、毎年春になると実施しています。春は学生がアルバイトを始める時期ですから。

履歴書を持ってきてもらって、ちょちょっと面接をして、「じゃあ、いつから入れる?」みたいな感じで、ラフな採用がされがちな学生のアルバイトですので、きちんと労働条件を詰めずに働き始めてしまったり、働き始めた後になって、1週間に何日出勤するか、何時間働くか、といった部分が曖昧になって、当初約束していたよりも多く働いたり、少なく働いたりなんてことになります。

採用する際には、労働条件を書面で提示して、後からナアナアで変更されることのないようにします。

契約書の雛形を厚生労働省のウェブサイトから取得できますから、まずはその雛形を使って、採用時の労働条件を書面で残しておくようにすると良いでしょう。その雛形の書面では足りなくなってきたら、事業所ごとに独自に雇用契約書を作って、契約を締結する際にそれを使っていけばいいでしょう。

 

 

雇う会社。雇われる学生。

毎年4月になると、新しい人が職場に入ってくるもの。3月は退職する人が多く、4月は入社してくる人が多いのが毎年のパターンです。

4月から年度が新しくなり、学生も心機一転して、新しいアルバイト先を探す方も増える時期。

学生と他の社員は違うと思われているフシがあって、どうも学生は雑に扱われがち。採用時に契約書を作らない。勤務シフトを一方的に変えられる。契約したときよりも勤務時間を減らされる(もしくは増やされる)。商品の買い取りノルマがあるなど。

 

出典:岡山で未来をつかめ!|岡山県政PR動画公式サイト より。

岡山県のウェブサイトでは、学生のアルバイトに対する注意喚起を促すムービーも作られています。


相手は学生だから無茶苦茶言っても大丈夫だろうと思っているのではないか、筆者は学生の頃にそう感じていましたね。相手がモノを知らないウブな奴だと。

確かに、学生の頃は筆者も労務管理に詳しくありませんでしたし、今でもそういう学生はほとんどいないはずです。


厚生労働省でも、「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを実施しており、学生や企業に周知しているところです。


重点的に周知している点は5つ。

1.労働条件の明示。
採用時に書面で労働条件通知書や雇用契約書を作る。

2.勤務シフトの設定。
学生の事情を考慮した勤務シフトを設定する。

3.労働時間の適正な把握。
労働時間を正しく記録する。

4.商品を強制的に購入させない。給与から購入費を控除しない。
恵方巻きや柏餅、クリスマスケーキ、おせちを買わせるようなケースですね。

5.労働契約の不履行に対して罰金を取らない。
労働基準法で定める減給制裁の範囲ならば減給も可能ですが、遅刻したり、休みを取ったという理由で時間給を減らしたり、契約で決めた日数よりも出勤日を減らすことはできません。


雇われる学生が労務管理のルールを知っておくことは大事ですが、雇う側である会社やお店の人が知っておくのも大事。

では、学生を雇うとき、どういうことが問題になるのか検討していきましょう。

 

 

学生を雇う会社やお店が注意すべき5つのポイント。

事業主の皆さんへ「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン中です!!(厚生労働省)

重点事項で挙げられているように、事業主側、学生を雇う会社が注意する点は5つあります。

では、1つずつ解説していきましょう。

 

 

1.アルバイトを雇うとき、書面による労働条件の明示が必要。

履歴書を持ってきてもらって、面接して、「じゃあ、いつから入れる?」という手続きだけでは足りず、書面で働く条件を提示する必要があります。

すでに契約書の型が出来上がっている職場は良いですが、採用時に書面を作っていない職場ならば、まずは厚生労働省が用意している労働条件通知書を使って、書面を提示するようにしていくと良いでしょう。

労働条件通知書 短時間労働者用(厚生労働省)

メールで契約書を送ることも可能で、文面に内容を記して送るのも良いですし、PDFを作成して、それをメールに添付して送る方法もあります。文書として保存できる体裁になっていれば良いです。

FAXもOKなようですが、今どきFAXというのはナシかと。事業所ではまだ使っているところがありますが、費用がかかりますし、印字も不鮮明で、良いところなしなのですが、しつこく使われています。

PCで文書を作成して、そのままメールなりクラウドストレージなりを使って相手側に送る方が都合が良いはずですが、そうなっていない事業所もあるんです。


他に、SNSでも文章は送れますが、短文を投稿するシステムが主流で、雇用契約書のような長文を送るには適していないメディアです。また、機種変更したり、アプリを消去すると過去のデータが消えてしまうこともあり、契約書をSNSで送付するのは推奨できません。

最低でも、労働条件通知書を作成して学生に渡す。ここは必須です。

 

 

2.学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトを適切に設定。

昼に学校に行くならば、平日は夕方から勤務するでしょうし、土日祝日なら朝から出勤することも可能でしょう。出勤可能な時間帯に合わせて出勤してもらうよう勤務シフトを設定していく。変わったところはなく、当たり前のことですが。

学生が休む時期は、テスト前後夏休みなどの長期休み、主にこの2つです。

テストは実施時期が決まっていますから、予め対応策を講じるのは難しくありません。

高校生は、5月中旬、7月上旬、10月中旬、12月上旬、1月下旬、合計5回のテストがあります。大学生だと、前期テストが7月にあり、後期テストが1月に実施されます。

さらに、夏休みが8月にあり、冬休みは年末年始。大学生は春休みが最も長く、2月から4月の初めまであります。

5月は高校生が減り、7月は高校生と大学生が減ります。年末年始もテストで学生が少なくなります。

学生が減る時期は分かっているのですから、その時期は学生以外の人に重点的に出勤してもらい、それ以外の時期は学生がメインになるように勤務シフトを設定していきます。


例えば、テストの時期に年次有給休暇を取ってもらえるようにすれば、有給休暇の義務化にも対応できて、学生も嬉しいでしょうから、一石二鳥です。テスト休みに使えば、あっという間に有給休暇は無くなります。

テストが終われば、学生に重点的に出勤してもらい、学生以外の人には有給休暇を取ってもらえばいいわけです。


テスト休みを取られてブーブー言う人もいますが、学生がテスト休みを取るなんてことは何十年も前から分かっています。お正月が1月1日に来るのと同じで、相手がどう動くかは分かりきっているのですから、対策を講じるのも容易なはずです。


長期休みは学生でも朝から出勤してもらえるのですが、旅行に行く人もいれば、実家に帰省する人もいますから、そのスケジュールを勤務シフトに織り込む必要があります。

勤務シフトを設定するときに、会社の都合をあまりに優先してしまうと、辞められてしまいます。そうなると、また新しい人を採用しないといけませんし、仕事を教える時間や手間もかかります。


勤務シフトを設定するときの注意点として、契約内容に合わせるのがポイントになります。

例えば、週4日出勤で契約している学生ならば、キチンと週4日働けるようにしないといけません。業務上の都合で、週3日にしたり週5日に変えたりすると契約違反になります。

もちろん、臨時的に今週だけ週5日に増やしたというのでしたら、学生の同意があれば勤務可能です。

しかし、週4日契約のところ、週3日に減らしたとなれば、不足した1日分は使用者の都合による休業となり、働いていない日でも給与が必要になります。

臨時で出勤日数を増やすのは、学生の同意があれば可能ですが(ただし、同意があっても契約には違反している)、減らすとなれば休業になりますから、ノーワーク・ノーペイにならず休業手当が必要です。


また、勤務時間数も契約で決めており、1日4時間勤務で契約していれば、原則としてその通りに勤務しないといけません。

忙しいからといって、今日は6時間勤務にしたり、暇だと1日3時間勤務になったりするのはダメです。

1日3時間に減らしてしまうと、契約した時間まで1時間足りませんから、この場合も足りない1時間は使用者の都合による休業になります(休業手当が必要)。


契約で決めた日数や時間の範囲内で働いてもらう。これも大事な点です。


材料を仕入れるとき、1つ300円で買うと契約したのに、「1つ250円で良いだろう?」と買い手が言ってきたら、売り手は「そんなものダメだ。300円で契約しただろう」と言い返すでしょう。雇用契約もこれと同じです。

週4日勤務で契約したら、週に4日は働けるようにしないといけない。1日4時間勤務で契約したら、1日に4時間は働けるようにしないといけない。

雇用は契約なのです。

 

 

3.アルバイトも労働時間を適正に把握する必要がある。

時間を記録する方法としては、タイムカードを使っている職場が最も多いでしょう。アナログな装置で、ずいぶんと息の長い製品ですが、単純で使いやすいため使い続けられているのでしょう。

他には、ノートや出勤簿にボールペンで記入する職場もありますし、カードをスキャンしてサーバーに労働時間を記録するところもありますね。

さらに、Suicaなどの交通系ICカードをタイムカード代わりに使うシステムまであり、ずいぶんと便利になりましたね。


どういう方法であれ、正確に労働時間が記録されていればOKです。

タイムカードは良いけれども手書きはダメ、というものではなく、「正確かどうか」が重要。どういう道具を使っているかよりも、時間を正確に記録しているかがキモ。

タイムカードは正確に労働時間を記録していると思われていますが、誰がカードを打刻機に入れたかまでは分かりません。本人かもしれないし、他の誰かかもしれない。印字された時間も、実際の始業時間よりも遅い時間が記録されている可能性がありますし、また、終業時間も実際よりも早い時間が記録されている可能性があります。


スマホのカメラでタイムカードなどを撮影しておけば、記録を保存できますし、給与の計算が合っているかどうかを後から確認できるでしょう。

ここで大事なのは、「1分でも働いていれば、それは労働時間になる」という点。

終業時間が21:49になったら、端数を切り捨てて21:45に変えてしまうのではなく、49分まで実際に仕事をしていれば、21時49分までの時間が給与の計算対象になります。

 

 

4.アルバイトに、商品を強制的に購入させることはできません。また、一方的にその代金を賃金から控除することもできません。

これを書いているのが4月ですから、強制的に購入させられるものと言えば、5月の柏餅を思い浮かべます。

従業員に商品を買わせても限度があります。1パックならまだしも、柏餅を10パックとなれば食べきれませんし、買っても大半は捨ててしまいます。

買わされた側は不満が残り、仕事を辞めてしまう人もいるでしょう。

何かを売るときは、販売すればご褒美が出るようにして、積極的に売りたくなるような仕掛けをすると良いでしょう。

例えば、紹介で5パック売れば200円。10パック売れば500円のインセンティブが貰える。もし、売れなかったとしてもペナルティは無し。

これならば学生としても面白く感じて「売ってみようか」という気持ちになるでしょうし、売れない場合のリスクもありませんから不満もありません。

ノルマを設定するのも構いませんが、学生側にリスクがないのが条件です。売ればインセンティブが出るが、売れなくてもペナルティは無い。こういうノルマ制なら実施可能です。

学生に買わせるのではなく、売ってもらうにはどういう仕掛けを作ったらいいか。ここに頭を使っていきたいところ。


給与から何らかの費用を控除するには労使協定が必要で、商品を買わせて、その代金を給与から引くことはできません。もちろん、給与から控除するのではなく、現金や電子マネーでもって、別払いで購入するのは構いません。

 

 

5.アルバイトの遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることや労働基準法に違反する減給制裁はできません。

遅刻したから罰金1,000円とか、欠勤したから時給を1,000円から900円に減らす。こういうことはできないんですね。ちなみに、時給900円だと最低賃金を下回る地域もあります。

地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)

遅刻に対して減給制裁を課す職場もありますが、これは労働基準法91条(以下、91条)の範囲ならば可能です。例えば、遅刻をすると、15分相当の給与が控除されるというもの。この程度だと、91条の範囲内ですから実施可能です。

計算の基礎となる賃金にもよりますが、金額に換算すると200円ぐらいです。「あぁ、遅刻するともったいないから、もう遅れないようにしよう」と思わせる程度の金額です。給与を減らすのが目的ではなく、遅刻しないようにしようと思わせるのが減給制裁の目的なのですね。

テスト休みを取ったから、来月から時給を100円減らす。こういうのは契約違反です。減給制裁ではなく、契約で約束した通りに履行していないため、難しい表現では「債務不履行(一部不履行)」と言えます。

契約を更新しない限り、使用者の一方的な判断で時間給を減らすことはできないのです。

 

 

 



変なことをしなければホワイト企業になれる。

採用時には働く条件を書面で渡し、学校の行事などを勘案して勤務シフトを作る。

商品を強引に買わせるのではなく、売ってもらえる仕組みを作る。

罰金を取ったり、時間給を減らしたりしない。


どれも難しいことではなく、当たり前のことを当たり前にやっているだけで学生に選ばれる職場になれるはずです。

 

 

学生アルバイトは雑に扱われやすい。

毎年、4月になると、厚生労働省は『「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン』を実施しており、2019年も4月1日から実施されます。

「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で実施

筆者も高校生の頃に初めてアルバイトを経験しましたが、学生というのは雑に扱われる傾向があり、採用時に労働条件を詳しく説明されなかったり、契約書を作る職場もほとんどなく、雇用契約書の控えを受け取った経験は無かったように思います。

アルバイトを募集しているお店なり会社に電話し、応募したいと伝えると、「履歴書を書いて持ってきて」と言われ、決まった面接日に面接に行く。

面接を担当する人に履歴書を渡して、「じゃあ、いつから入れる?」と言われ、何だかなし崩し的に採用が決まる。

こういうパターンが多かったです。多かったというよりも、どの職場でも同様だったと言うべきでしょうか。

履歴書をサッと見て、面接でちょっと質疑応答して、「じゃあ、いつから入れる?」という流れでも採用はできますし、サクサクと仕事を始められる点は良いところ。

ただ、採用時に決めたことが、後になって、「こんなはずじゃなかったのに」、「約束していたことと違うんじゃないか?」なんて気分になってしまうことも少なくありません。

学生のアルバイトだから、「適当に扱っても大丈夫だろう」という甘さがあるのか。または、フルタイムやパートタイムで働く社会人の人とは違って「多少なり雑に対応してもいいんじゃないか」と勘違いしてしまう方もいるのではないかと思います。


採用される学生側も、「まぁ、学生だからこんなもんかな」と思ってしまうこともあり、筆者も高校生や大学生だった頃は、雇用契約や労務管理について詳しい立場ではありませんでしたから、同じような感覚を抱いていたものです。


学生の労働条件に関しては、過去にも色々とトラブルがあり、今でもトラブルは起こっているようです。

使用者側である会社であれ、労働者である学生であれ、お互いに働くルールを知っておけば、「こういうことはしてはいけない」と判断できますから、トラブルも減っていくのではないかと思います。

労務管理や雇用契約など、職場や学校では学ぶ機会が少ないでしょうから、行政が労働条件について周知させていくのは良い試みでしょう。

 

 

学生アルバイトを雇う際に問題になりやすい5つのポイント。

「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン のウェブサイトでは、重点的に呼びかける事項が5つ挙げられています。
 

  1. 労働条件の明示
  2. 学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定
  3. 労働時間の適正な把握
  4. 商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
  5. 労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止


まず、1つ目の「労働条件の明示」という点から。

労働条件、つまり働く曜日や時間、就業場所、休日、有給休暇など、これらの内容は、面接時に口頭で説明するのはもちろん必要ですが、書面にして応募者に渡す必要があります。

言葉で話すだけだと、内容を忘れてしまいますし、使用者、労働者ともに後から内容を確認できません。

履歴書を持ってきてもらって、面接して、「いつから入れる?」ではダメなんですね。90年代や2000年代はこういう雑な対応も通っていたのですが、今は労働条件を書面化しておくよう求められています。

どういう条件で働いてもらうのかを書面で作成し、キチンと残るようにしておく必要があります。


何か取引をするときは契約書などの書面を作るのが当たり前で、スマホの契約であれ、家を買うときであれ、商売の材料を仕入れるときであれ、条件を書面で残しているものです。

しかし、人を雇うときは、なぜか契約書を作らず、履歴書と面接だけでルーズに採用していたのです。

労働条件を書面にするといっても、「どういう書面を作ったらいいの?」と思うところ。その場合は、厚生労働省のウェブサイトに労働条件通知書の雛形が用意されていますから、それを印刷して使うところから始めてみてはどうでしょうか。

労働条件通知書 短時間労働者用(厚生労働省)

様式は厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。


学生のアルバイトだと、出勤する曜日、勤務時間、休憩、休日、有給休暇、給与、この6点が重要な内容になります。

曜日ごとに労働時間を書く欄がありませんが、余白部分に書き込めば良いでしょう。

休憩時間も、勤務シフトによって変わるならば、それも補足するように労働条件通知書の余白部分に書いておくと分かりやすくなります。

すでに会社で雇用契約書の様式を定めて使っているならば、それを使い続けても構いません。


働く条件を書面に残す。ここが大事です。


付け加えると、契約で決めたことは、後から一方的に変えてはいけないのも大事な点です。

例えば、週5日で契約しているのに、実際は週3日しか出勤できない。逆に、週3日で契約しているのに、実際は週5日で勤務シフトが入れられているとか。

契約で決めた範囲でしか働けませんから、週3日契約ならば週3日まで勤務できます。

週5日契約なのに、週3日出勤になった場合は、足りない2日分は休業として扱われ、会社は休業手当を支払わないといけなくなります。つまり、仕事をしてもらっていない日に対して給与を払う羽目になります。

勤務時間でも同様で、契約通りに働けるようにしなければ、休業手当が必要になります。

1日6時間勤務で契約しているところ、1日4時間しか働けていないならば、足りない2時間は使用者の都合による休業になり、休業手当が必要になります。

契約した内容はキチンと守る。これも忘れてはいけないところです。

週3日勤務という形で契約をした場合は、週に3日は働けますけども4日は働けません。今週忙しいから週4日出勤にしてというのは原則としてできません。ただ、労働者が、今回の場合は学生ですが、学生さんが「今週だけなら週4日出勤でも構いません」という形で承諾したら、それは当事者間の契約として自由なところですから、今週のだけ週4日勤務というのは可能ではあります。

しかし、口頭で、後から契約内容と違う働き方をしてしまうと、契約した内容は何だったのか、ということになりますから、契約した内容通りに働けるようにしなければいけないのです。

勤務時間を1日4時間勤務として契約しているなら、1日に働ける時間は4時間です。これを5時間にしたり6時間にすることは、契約に反するので、できないのです。逆に、時間を短縮するのも契約違反になります。1日4時間で契約してるわけですから、それを暇だからといって1日2時間とか3時間に短縮してしまうと、それは使用者の都合によって休業していることになり、休業手当を払わなければいけなくなります。

雇用契約で約束した内容はお互いに守らなければいけませんので、週4日勤務で契約したら週4日働けるようにしなきゃいけないですし、1日4時間勤務なら1日4時間働けるように、使用者は配慮していかなきゃいけないわけです。


 

次に、「学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定」の部分について。

学生が他の従業員と違う点は、テスト期間に休みを取る、夏休みなど長期休暇中に帰省する、学校のイベントで休みを取る、就活のために休む、主にこれら4点です。

前の2つは時期が決まっていて、予め事業所の方で対処ができます。


まずテストについて書くと、高校生だと、5月中旬、7月上旬、10月中旬、12月上旬、1月下旬、合計5回のテストがあります。このテスト時期の1週間前ぐらいから休みを入れ始めますから、その時期は学生以外の人を勤務シフトに入れて対応します。

大学生はテストが年に2回あり、前期テストが7月にあり、後期テストが1月に実施されます。大学生が働く職場では、7月と1月はシフトに穴が空きやすいですから、この時期は学生以外の方に重点的に出勤してもらいます。

テストの時期はもう何十年も前から決まっていますから、予め対策を講じるのは難しいものではありません。

高校生と大学生のテスト時期が重なるときがあり、7月と1月は出勤する学生が特に少なくなります。つまり、7月と1月は学生以外の人に出勤してもらうよう働きかけが必要になります。


テスト休みを取られて不満を感じる職場の人もいるでしょうが、学生がテスト休みを取るのは分かっていることですし、それを納得の上で採用したわけですから、対策を講じておくのは当然でしょう。

例えば、テスト時期になったら時間給を一時的に加算して、勤務シフトに入る人を増やすようにインセンティブを設けるのも一案です。抜けた学生のフォローするわけですから、その補償として用意するわけです。


夏休み、冬休み、春休み、学生には長期休暇が年に3回ありますが、この時期にもテスト時期と同じように、出勤してもらうよう工夫が必要です。

せっかくの休みですし、バイトではなくどこかに行って遊びたいのが学生の気持ちです。ですが、学校が休みでも商売は休みではありませんから、なんとか出勤してもらいたいもの。

ここでもテスト時期と同様に、一時的に給与が増える仕掛けを作って、「遊びに行くよりも働いたほうがいいじゃないか」と思ってもらえる動機を会社が用意する必要があります。

例えば、8月1日から31日までの出勤日数に応じて給与を加算する。給与を毎日加算する方法も良いですが、一定の出勤日数に達した人に給与を加算するのも一案です。

8月に10日以上出勤した場合は3,000円を加算。
15日以上出勤した場合は5,000円を加算。
20日以上出勤した場合は10,000円を加算。

これは一例ですが、人はインセンティブに反応する生き物ですから、普段と同じ労働条件では夏休みや冬休みに働いてもらうのは難しいもの。強引に勤務シフトを入れて、辞められてしまったら大変です。

「おっ! 出勤してみようかな」と思わせるのがキモ。

強引に働かせてやろうと考えるのではなく、自発的に出勤したくなるような条件を出すわけです。

他には、「テスト期間中は有給休暇を優先的に使って構わない」とアピールするのも良いですね。テスト休み中に給与が出るのですから、学生としては嬉しいオファーです。事業所としても有給休暇の消化が一気に進みますし、年次有給休暇の義務化への対応にもなります。

普段は年次有給休暇を使わずに、高校生ならば中間テストや期末テスト、大学生だったら前期テストや後期テストの時に、年次有給休暇を使えるにすれば、学生にとっては好都合です。ただの休みだと給料は出ませんけれども、年次有給休暇なら給料を受け取りながら休むことが出来ます。

事業所にとっても、学生の年次有給休暇の取得を促進できますから都合が良いです。

「あのお店や会社では、テスト休みに年次有給休暇を使える」という口コミも発生するでしょうから、学生のアルバイトをたくさん集めたい職場なら、テスト期間中に年次有給休暇を使えるという点をアピールポイントにできるでしょう。


あとは、学校のイベント(修学旅行やサークル、部活など)、就活がありますが、ここは個々に違いがあり、個別に対処する他ありません。

学生生活に支障が出ると、学生は仕事を辞めて他の職場を探しますから、なるべく学校での事情を斟酌して、使用者は勤務シフトを組みましょう。

 

 

労働時間を適正に把握する。働いていれば1分でも労働時間。

タイムカードやICカードなどを使って正確に労働時間を記録している職場ならば何も問題ありません。

ただ、タイムカードを使っていても、始業時間や終業時間が実際のものと違っていたりすれば、適正に労働時間を把握していることにはなりません。


また、労働時間の端数の取り扱いも問題になりやすい点です。

始業時間が17時なのに、実際は16時51分から仕事を始めている。この場合、労働時間は16時51分から開始ですが、給与計算では17時からの時間が計算対象になっている。

1分であっても実際に仕事をしている時間は労働時間になるため、51分から仕事を始めていたら、この時間が始業時間になります。

終業時も、勤務シフトでは21時で終わるところ、何らかの業務上の理由で21時11分まで延長したならば、終業時間は21時ではなく21時11分になります。11分を端数として切り捨てるのではなく、給与計算に含めて給与額を算出します。


ノートなどに本人が労働時間を記入する職場もありますが、これも正確に時間が記録されていれば有効です。ただ、この場合も労働時間の端数を切り捨てるのではなく、時間に端数が生じた場合はキチンと給与計算に含めてください。

故意に労働時間を変えてしまうのがダメなのであって、時間を記録する手段は色々あって構いません。

 

 

商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止

柏餅やクリスマスケーキ、おせちなどを従業員に半ば強制的に購入させるような場面を想像できます。

任意で買ってもらうのは構わないのですが、例えば、「1人あたり、柏餅を10パック販売するのが目標で、達しなかった場合は足りない分を本人が自腹で買う」のはダメです。


何かを売りたいならば、売れた件数に応じてインセンティブが用意されていれば、学生も熱心に販売するはずです。1パック500円の柏餅を1パック販売すれば、50円のインセンティブを受け取れるとなれば、「じゃあ、売ってみるか」という気持ちになります。

売っても売らなくても自分の給与が変わらないならば、熱心に売る理由がありませんので、ノルマを設定されてもやる気は起きません。

1パックで50円のインセンティブが出て、仮に売れなかったとしても学生に何のペナルティも無いならば、売る気持ちが盛り上がりやすいでしょう。

売れれば自分がトクをする。売れなかったとしても何のリスクもない。こういう条件ならば、ノルマを設定されても構わないですし、学生としても楽しいもの。

親戚や学校の同級生に柏餅を予約してもらえば、チャリンチャリンとインセンティブが入ってくるのですから、ゲームのような感覚で売れます。お店としても、1割のインセンティブを払わないといけないものの、売れ残って捨ててしまうよりはいいでしょう。

強引に商品を買わされて、給与を天引きされても、学生には不満しか残りません。

 

 

労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

これは、例えば風邪を引いて仕事を休んだところ罰金を取られたとか、テスト休みを取って時給を減らされたなどが例として思い浮かびます。

休んでも学生から罰金は取れませんし、テストで休んだからといって時間給を減らすこともできません。

休んだ場合はノーワーク・ノーペイで当日の給与はありませんから罰金で引けるものがありません。また、時間給は契約で決まっていますから、事業主の感情で減らせないものです。

病気やテストで休むときは有給休暇を使えるようにして、給与が減らないようにしてあげれば、学生としては仕事を続けようという気持ちになりやすいでしょう。

罰金を取られたり、給与を一方的に減らされる職場だと、学生は辞めて他の職場に行ってしまいます。そうなると、また新しい人を雇って仕事を教えなければならず、会社にとっては損しかありません。

 

 

学生が嫌がることをしないのが良い職場。

  1. 労働条件の明示
  2. 学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定
  3. 労働時間の適正な把握
  4. 商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
  5. 労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

どれも労務管理では基本のキホンですが、「学生なら適当に扱ってもいい」と誤解していると、トラブルのもとです。

いかに積極的に働いてもらえるか。楽しんでもらえるか。そのために仕掛けなり工夫をするのが労務管理の面白いところです。

『自分がされて嫌なことは学生にもしない』これが分かっていれば、変な方向には行かないでしょう。

 

 
ブラックバイト――学生が危ない (岩波新書)

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5月のゴールデンウィークに出勤したら休日割増賃金は付く?

 

休日割増

 


休みの日に働けば割増賃金が付く?

2019年は、4月27日の土曜日から5月6日の月曜日まで休みだとすると、合計10連休になります。

10日間全て休みになる職場ならば影響はありませんが、祝日に関係なく営業する職場だと、「10連休中に出勤したら休日割増賃金が付くんじゃないか?」と思う方もいらっしゃるはず。

休日割増賃金とは、休みの日に出勤すれば給与が35%以上の割増になるというものですが、5月の連休中に出勤しても、この割増賃金が付くのかどうか。ここが考えどころです。

 



休日割増賃金が付くのは「法律で決まった休日」に出勤したとき

「休みの日に出勤すれば休日労働だ」と思ってしまう。その気持ちは分かるのですけれども、法律では「休みの日 = 休日」というわけではないんです。

普通の感覚だと、「休みの日 = 休日」と考えますし、「休日に出勤 → 休日割増賃金が付く」と考えるのも分かります。

ですが、休日割増賃金というときの「休日」とは、法定休日のことを意味しています。法定休日、つまり法律で定まった休日のことです。この場合の法律とは、労働基準法35条です。

労働基準法35条
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。

「毎週少なくとも1回の休日」これが法定休日なのです。

この法定休日に出勤すれば、休日割増賃金が付くというわけです。

じゃあ、ゴールデンウィークは法定休日になるのかどうか。出勤したら休日割増賃金が付くのかどうか。ここが気になるところ。

 

祝日に働いても休日労働にならないワケ

では、どの日に休日割増賃金が付いて、どの日には割増賃金が付かないのか。

一例として10連休のカレンダーを書くと、以下の通りです。

4月27日(土曜日)
4月28日(日曜日)

4月29日(月曜日 昭和の日)
4月30日(火曜日 祝日 即位の日の前日)
5月1日(水曜日 祝日 即位の日)
5月2日(木曜日 祝日 即位の日の翌日)
5月3日(金曜日 憲法記念日)
5月4日(土曜日 みどりの日)
5月5日(日曜日 こどもの日)

5月6日(月曜日 こどもの日振替)

※前提として、1週間が月曜日から始まり、日曜日で終わるとします。


4月29日から5月5日までの1週間を例にして考えてみましょう。

週に5日出勤して、残り2日は休みになる職場だとして、4月29日(月)から5月3日(金)まで出勤し、5月4日と5月5日の土日は休みとします。この場合、4月29日から5月3日までの日に対して休日割増賃金が付くかどうか。

祝日が連続していますが、4月29日から5月3日までの出勤には休日割増賃金は付きません。

なぜならば、5月4日もしくは5日が法定休日になるため、4月29日から5月3日まで出勤したとしてもそれは休日労働にはならないのです。


ずっと祝日が続いて、世間一般にはどの日も休日なのですけれども、休日割増賃金が必要な休日労働とはならず、通常の勤務日、つまり平日と同じ扱いになるわけです。

週に1日でも休みが取れていれば、法定休日は取れていることになり、もう(労働基準法で想定する)休日労働が発生する余地はなくなるのですね。

もし、5月4日と5月5日も出勤して、4月29日から5月5日まで7日間、休み無しで勤務すれば、休日労働が1日分発生しますから、その1日分に対して休日割増賃金が付きます。

ただ、どの日が休日労働になるのかという難しい問題が残ります。4月29日から5月5日までの7日間のうち、どの日が法定休日になり、休日割増賃金がいくらになるのか。ここを特定するのが難しいのです。

1週間に休みが1日も無いと上記のような問題が生じますから、少なくとも1週間に1日は休みが入るようにするのが望ましいのですね。


祝日に働いたから休日労働になるわけではなく、法定休日に働くと休日労働になる。ここがポイント。

労働基準法ではゴールデンウィークは法定休日ではないため、5月の連休中に出勤しても手当や割増賃金は付かないのですね。ただし、「法律では」という条件が付きますが。

 

 

ゴールデンウィークを含む祝日を特別扱いしないのが労務管理

法定休日や年次有給休暇にはルールがありますが、それ以外の休みに関しては使用者や労働者に任せられています。

週休2日の職場ならば、2日の休みのうち1日分は法定休日ですが、もう1日は法律ではなく職場ごとの任意の休日ですから、どのように扱うかは職場ごとに違いがあります。


『休日割魔賃金が付くのは法定休日に出勤した場合。それ以外の休日は休日割魔賃金の対象外』

ここが法律上のラインです。


週に1日休みが取れていれば、10連休中といえども休日割増賃金は付きません(法律上は)。ただ、職場によっては、祝日に出勤した場合に給与を割増するところもありますし、法定休日ではない休日であっても割増賃金を支払っているところもあるでしょう。

就業規則や雇用契約書を見ると、法定休日以外の休日、祝日に給与がどのように扱われるかが書かれているはずです。内容は職場ごとに異なりますから、特に何も書いていないところならば、先程書いた法律通りの処理が適用されます。


休みの日に出勤したから、もしくは祝日に出勤したからといって、必ず休日割増賃金が付くというわけではないという点は知っておいてほしいところです。

1週間に少なくとも1日の休みが入っていれば、休日割増賃金が付く日は無い。こういう職場の方が多いでしょうね。

 

 

法定外休日は割増賃金の対象?

人によっては、「ゴールデンウィークに出勤したら、休日割増の対象になりますか?」

という疑問を抱く人もいるかもしれません。


他にも、「祝日に出勤したら、休日手当は支給されるのですか?」とか。

 

「土日の週休2日休日制(日曜が法定休日であると仮定)で、土曜に出勤したら、休日出勤になるのですか?」というように、先ほどと同種の疑問を抱く人もいらっしゃるでしょう。


この場合、ゴールデンウィークや祝日、週休2日の土曜日というのは、いわゆる「法定外の休日」です。


そこで、労働基準法では、法定外の休日まで割増の対象にすべきと決めているのでしょうか、それとも、法定の休日に限定して割増の対象としているのでしょうか。

 

 


割増賃金の対象になるのは週1日の法定休日

原則として、休日勤務として割増手当が支払われるのは、週1日の法定休日だけです。

つまり、労働基準法では、法定の休日に出勤したことに対しては休日割増を支払うと決めていますが、法定外の休日(ゴールデンウィークの祝日など)までは割増の対象にしていません。


ただし、あくまで「原則として」です。


雇用契約書や就業規則で、法定外の休日に勤務しても割増手当を支払うと決めていれば、法定外休日であっても割増手当が支給されるはずです。


しかし、法定外の休日まで割増手当を支払う会社はそう多くないはずです。祝日に出勤したら給与が割増(1時間あたり100円プラスなど)になるルールが設けられている事業所もありますが、あれは休日出勤による割増賃金とは別物です。

インセンティブが無いならゴールデンウィークには出勤したくないと思うのが普通です。


通常は、法定休日だけを対象として休日手当が支給されるという仕組みになっているでしょうね。


ゆえに、「法定外の休日には休日割増手当は支給されない」と理解しておくのが妥当です(会社独自のルールによる例外を除く)。

 

 

ゴールデンウィークに出勤する人を増やす工夫

サービス業だとゴールデンウィークにはお客さんがいっぱい来て忙しくなるところもありますから、こういうところでは出勤に対するインセンティブを用意していないと、ゴールデンウィークに出勤する人が少なくて勤務シフトを埋められなくなる、なんてこともあります。

ですからゴールデンウィークに出勤した人に対して何らかのインセンティブ、手当や割増賃金を用意して、出勤してもらうように工夫する必要があるでしょう。

条件を提示せずに「出勤しろ」と言っても人は動きませんし、辞められてしまったら困ります。

平日だったら何もないけれども、ゴールデンウィークに出勤すると時間給が1時間あたり100円増になる。こういう条件が付くならば、出勤しても良いと考える人が出てくるのでは。

他の時期の祝日には特にインセンティブは用意していないけれども、ゴールデンウィークに限定して割増賃金をつけて出勤してもらう人を増やすのも工夫の1つですね。

 

 

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ゴールデンウィークに休んだら、法定休日を取ったことにできる?

毎年5月になると、祝日が連続して、休みの日が多くなります。では、ゴールデンウィークの祝日に休んだら、それを法定休日を取ったものとして扱うことができるかどうか。

つまり、ゴールデンウィークを法定休日の代わりとして位置づけるという意味ですね。

法定休日とは、労働基準法で決まっている休日のことで、1週間に1日は休日を設けるというのが法律で定められています。

ですから、1週間に1日の休みが最低でも取れていれば、それで法定休日は取れた、ということになります。週に1日は休日を入れてください、というのが法律が求めているものです。

その休みが日曜日である必要はありませんし、土曜日が法定休日になることもあります。さらに、水曜日や木曜日が法定休日になっても構いませんし、ゴールデンウィークの祝日が法定休日として扱われる可能性ももちろんあります。

仮に、ゴールデンウィークで1週間のうちに4日の祝日があり、その祝日全てを休んだとしたら、法律で求められている1週間に1日の休日を取れているので、ゴールデンウィークを法定休日を兼ねたものとして扱うことが可能です。

ただし、事業所によっては、就業規則で、法定休日の内容を定めているところもあります。例えば、「日曜日を法定休日とする」と就業規則に定めていたら、他の曜日に祝日があって、その祝日に休んだとしても、日曜日が出勤日であるならば、それは休日出勤になり、休日労働に対する割増賃金が必要になります。

あえて就業規則で、法定休日の曜日を日曜日に固定してしまうのも、もちろん構わないのですけれども、あえて日曜日に法定休日を固定してしまう利点はありません。

1週間に少なくとも1日の休みが取れれば、法律で求められている休日を取れたものとして扱えますから、あえて曜日を固定して法定休日を定める必要もないわけです。

 

割増賃金の未払いを防いでくれる給与計算ソフトは?
給与は、基本給だけを計算すれば足りるものではなく、割増賃金、つまりは時間外労働に対する割増賃金や深夜労働の割増賃金、休日の割増賃金といったものを計算しなければいけませんので、計算を間違って未払いにならないよう自動で給与を計算してくれるソフトを使うほうがいいでしょう。

 

休日なしの週7日で出勤すると割増賃金はどうなる?

 

割増賃金

 

 

休日割増賃金が必要な日と必要ではない日

雇用されて会社などで働いていると、週に1日もしくは2日の休みがあるところが多いはずです。

労働基準法35条(以下、35条)では、毎週少なくとも1日は休日にする必要があり、週5日出勤、多くても週6日出勤にする必要があります。

この35条の休日は「法定休日」と言われており、この日に出勤すると、休日出勤に対する割増賃金を支払う必要があります。


例えば、週6日出勤で、日曜日だけが休日の場合。

月曜日:出勤
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:出勤
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:【休日】

※見やすいように括弧を使っています。

もし、この日曜日を休みではなく出勤日に変えたとすると、その日の勤務に対しては休日割増賃金(35%以上の割増)を付ける必要があります。

ちなみに、法定休日の曜日は日曜日でなくても構いません。火曜日を休日にしても、金曜日を休日にしても、その日に勤務すれば休日割増賃金が必要です。


では、週5日出勤で、週休が2日だった場合はどうか。

月曜日:出勤
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:出勤
金曜日:出勤
土曜日:【休日】
日曜日:【休日】

土曜日と日曜日が休みですが、片方だけを出勤に変えた場合は、休日割増賃金は付きません(就業規則で特別な決まりがあれば話は別)。

月曜日:出勤
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:出勤
金曜日:出勤
土曜日:【休日】
日曜日:出勤

このように、土曜日は予定通り休日にして、日曜日に出勤したとすると、この日曜日には休日割増賃金は付かないんです。

「でも、休日労働じゃないの?」と思うところでしょうが、35条で求められているのは、「少なくとも週に1日の休日」ですから、この場合、土曜日がその休日として位置付けられています。

つまり、土曜日が法定休日になるわけです。

ゆえに、日曜日に出勤したとしても、休日割増賃金は付かないというわけなんですね。


感情的には「休日労働だろう」と思うでしょうが、法律的には休日労働ではないのです。


ちなみに、土日を入れ替えた場合も同様です。

月曜日:出勤
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:出勤
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:【休日】

このケースでは、日曜日は休日のままにして、土曜日を出勤日に変えています。

本来は、土曜日は休日ですから、その日に出勤すれば「休日労働だろう」と思うところですが、感覚的には休日労働ですけれども、法律的には休日割増賃金は付きません。

その理由は、先程と同じで、日曜日が35条の休日となっているため、土曜日は休日割増賃金が支払われる日にはならないからです。


「休日に出勤すれば休日割増賃金が付く」と思っている方もいらっしゃるでしょうが、ここでの休日とは35条の「法定休日」を意味するものであって、それに当てはまらなければ、休日に出勤したとしても休日割増賃金は付かないのです。

 

 

週7日勤務、週休0日で働くと割増賃金は出る?

では、週7日で働いたら割増賃金はどうなるか。

月曜日:出勤
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:出勤
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:出勤

1日も休みなく働いたら、35条の法定休日はありませんから、法律に違反します。1週間に少なくとも1日は休日を入れなければいけませんので。

ですが、36協定を締結して、職場で休日労働ができる状態になっていれば、週7日出勤も可能ではあります。

ただ、1週間に1日も休みがない状態で働くのはシンドイですし、続けられるものではありませんので、こういう働き方は避けるように勤務スケジュールを組むのが望ましいでしょう。

36協定が適用されていても、違法な状態には変わりありません。労使協定を締結していれば罰則は適用されないという効果が36協定にはあります。


上記の例では、すべての曜日が出勤日ですから、どの日が法定休日になるのか不明なのが悩ましいところです。

仮に、日曜日が法定休日になるとして考えてみましょう。

月曜日:出勤
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:出勤
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:出勤(この日を法定休日とみなす)

この場合、日曜日は休日労働となり、休日割増賃金が必要になります。


法定休日の曜日を予め決めていない場合は、日曜日ではなく、月曜日や水曜日を法定休日とみなして割増賃金を支払うことも有り得ます。


勤務時間が曜日ごとに同じならば問題ないですが、パートタイマーの方だと、曜日によって勤務時間が変わる方もいます。

月曜日:出勤(5時間勤務)
火曜日:出勤(3時間勤務)
水曜日:出勤(4時間勤務)
木曜日:出勤(3時間勤務)
金曜日:出勤(3時間勤務)
土曜日:出勤(5時間勤務)
日曜日:出勤(3時間勤務)
計26時間。


この場合、どの日を法定休日とみなすか。

時間給で給与が決まっているとすれば、使用者側の気持ちとしては、勤務時間が短い日を法定休日とみたしたいところ(割増賃金が少なくなるため)。一方、労働者側としては、5時間勤務の日を法定休日としてみなして欲しいと思うはず(割増賃金が多くなるため)。


週7日出勤にしてしまうと、上記のような面倒な問題を解決する必要がありますから、少なくとも週に1日は休日を入れるようにしたいところですね。

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休日の労働時間は1週40時間の枠内に含まれるか

ご存知のように、法定労働時間外の勤務が週60時間を超過した場合は、50%以上の割増賃金を支払うというルールがあります。

ここで、休日勤務した日の勤務時間を上記の60時間に含んで計算するのか、それとも、含まずに計算するのか。

つまり、休日勤務の時間も他の勤務時間と同様に、一緒にまとめて時間を把握するのか、それとも、休日勤務だけは別枠で取り扱うのかが分かれ目です。

 

 

割増賃金が付く休日勤務は1週40時間の枠とは別で把握する

休日労働には35%の割り増し賃金が既に充てられているので、さらにその上に25%や50%の時間外割増を乗せる必要はないのです。

他の勤務時間と一緒にしてしまうと、35%割り増しで評価された休日勤務の時間が、さらに上乗せで時間外勤務の時間として計算されてしまいます。

35%の割増賃金が付いて、さらに法定時間外労働の割増部分である25%が上乗せされる。これだと法定時間外労働が二重に評価され、割増賃金が重複して支払われている状態になるわけです。

「休日の勤務といえども労働時間だから、他の時間と一緒に把握するべき」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。


休日労働の35%割増には、法定時間外労働への評価も含まれているのです。

つまり、休日勤務に勤務するということは、それ自体が法定労働時間外の勤務をするということ。ならば、休日勤務の割増は、「時間外勤務割増+休日勤務割増=休日割増」という構図になっているわけです。時間外勤務割増を包摂したものが休日勤務割増ということです。

ということは、35%割増の内訳は、「25%:時間外。15%:休日」と考えることもできます。

注意すべきは、休日労働には法定時間外労働の割増賃金が付かないという意味ではなく、「35%の休日労働割増賃金が付いている休日労働」の場合は25%の割増賃金が付かないという点です。

 

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