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【降雪対策】雪が降ったときに従業員を休業させる時の注意点

雪で休業

 毎年、冬になれば、
場所によっては雪が降りますけれども、

北海道や東北とは違って、
都市部で雪が降ると職場に行けなかったり、
会社やお店を開けられなかったりします。



一晩で30cmも雪が降ったとなれば、
北海道や東北ではままあることですが、

東京や大阪でそれだけの雪が降ったら、
それはもう一大事です。数センチの積雪でニュースになるぐらいですから。

5cmぐらいの積雪でも電車が遅れて、
道でスッテンコロリンする人もいるぐらいですからね。

 

 

大雪で仕事が休みになった 休業手当は必要なのか

雪が降って電車が動かなければ、会社に行けない。
そんな方もいらっしゃるでしょう。

雪国の電車と違って、都市部の電車はアッサリと止まりますからね。


電車に乗れないならば職場に行けない。

となると、仕事もできず、その日は休みになってしまいます。


「こういう場合、どう対応するの?」
と思うところ。


マイカーで通勤しているなら、

<雪で道路が通行止め>

なんてこともあります。

 

雪国だと道路脇に4メートルぐらいの雪の壁(あれホント凄いですよね)
が出来ていますけれども、
あれぐらいの雪でも道路は通行止めにはなりません。

しかし、東京で僅か数センチの雪が降ると、
道路が通行止めになります。

タイヤチェーンを持っていない人も多いでしょうし、
冬用のスタッドレスタイヤを履かずに道路を走っている車もいます。


電車であれ、車であれ、
都市部だとホンノリと雪が積もっただけで交通網がマヒ。

だから、雪で仕事が休みになることがあるんですね。

 

雪で仕事が休みになると、

 

社員の立場だと、

「休みになったら給与が無いよな、、」と思うはず。

会社側の立場だと、

「休ませちゃったけど、大丈夫かな?」と思うところです。

 

 

雪が降っても使用者の責任ではない

会社の判断で従業員を休ませると、
仕事をしていなくても給与を支払わないといけません

 

労働基準法26条には、休業に関する決まりがあって、
使用者の責任で従業員を休ませると、
「休業手当」という形で給与を支払わないといけなくなります。

じゃあ、雪が降って会社に来れず、休みになったときはどうなるのか。

その場合は、使用者の責任ではありませんから、休業にはなりません。


会社の社長が雪を振らせて従業員に嫌がらせしている
(↑ こんなこと出来たら凄い)
ならば話は別ですが、

気候が決めることですから、使用者には責任が無いんです。

 

 

雪が降ってお客さんが少ないから従業員を早退なり休ませたら休業手当が必要?

雪が降るかどうかは使用者の責任ではありませんが、

「雪でお客さんが少ないから店を早く閉める」

となると、これは使用者の責任になります。


晴れた日よりも雪の日の方がお客さんは減るでしょうね。

 

飲食店とか、
ショッピングセンターとか、
お弁当屋さんとか、
ケータイショップとか、
コンビニとか、

雪が降れば、寒いですし、歩いていればツルッと滑るでしょうし、
「なるべく外に出ないでおこう」と考えるもの。

 

お客さんが少ないから店を早仕舞いしようと考えたいところですが、
営業しようと思えばできる場合に閉店時間を早めると、
労働基準法26条の休業になり、
<働いていなくても給与を払わないといけなくなり>ます。

 

ここで、

「何で働いていないのに給与が出るの?」

思う方もいらっしゃるはず。

 

 

休業にしたら給与(休業手当)を払わないといけない理由

人が働く場合には、会社と社員との間に「雇用契約」と言うものがあり、

「何曜日に何時間働きます」
「何曜日が休みです」

などの条件が契約で決められています。

仮に、水曜日に、10時から17時まで働く契約の場合、
会社は10時から17時までの労働力を契約に基づいて購入しないといけないんです。


別の例を挙げると、

「テレビを組み立てるためのディスプレイ画面を1月に1万枚購入する」
という契約をディスプレイ会社と締結していたとしましょう。

自分のところの会社はテレビを作っている会社だと考えてください。

ディスプレイ画面を購入して、それを使ってテレビを作るわけです。


もし、テレビの売れ行きが良くなくて、生産量を減らすとなれば、
ディスプレイ画面の発注量も減らします。

そこで、1万枚購入するところを、
「4千枚に減らしてくれないか」
と相手企業に伝えます。

 

すると、相手企業は、
「アナタのところへ1万枚売ると契約しているし、すでに作っちゃってるから、減らせないよ」
と返事してきます。

「いや、でも減らして欲しいんです」
「契約だからダメだ」

こういう押し問答が起こるんですね。


契約では、こういう場合を想定して、
「途中解約時の違約金」
というものが設定されています。


例えば、

「契約後に全部解約、もしくは一部を解約する場合、解約する金額相当の80%を違約金とし、買い手は売り手側にその違約金を支払う」

こんな感じで契約書に違約条項が入っています。

 

ディスプレイ画面が1枚で1万円だったとして、それを6,000枚解約するのですから、6,000万円。違約金はその80%なので、4,800万円となります。

一方的に発注量を減らすと、こういう違約金を売り手側から請求されるんです。商売というものは。

お互いの信頼に基づいて商売をしているため、一方的に契約内容を破棄すると、相手からその補償を求められることがあるんです。


雇用契約の話に戻ると、会社と社員の関係も先程の話と同じです。

10時から17時までの労働力を買うと契約して、
買い手である会社が一方的に「今日は雪だから休み」と言えば、
売り手である社員は違約金(休業手当のこと)を請求できるのです。

その違約金が
「労働基準法26条の休業手当」
なんです。

 

 

休業になるかどうかの境界線

使用者に責任が無ければ休業ではないですし、
責任があれば休業です。


しかし、この基準だと分かりにくいときもあり、

「営業したくてもできない」 = 使用者の責任による休業ではない。
「営業しようと思えばできる」 = 使用者の責任による休業。

この基準で判断する場合もあります。


雪が降って仕入れるはずの魚が届かない(魚屋さん、寿司屋とか)。
道路が通行止めで、パン工場から販売用のパンが届かない(パン屋さん)。

だから店を開けられない。

こういう場合は、営業したくても出来ませんから、
これは使用者の責任にはなりません


しかし、お店を開けることはできるけれども、

「雪が降って寒いからお客さんが少ない」
「お客さんが少なくて店が暇だ」
「寒くてヤル気が出ない」

こういう理由で、働いている人を早退させたり休ませたりすると、
給与(休業手当)を支払わないといけなくなります。


「仕事をしていないのに給与を払うの?」と
思うかもしれませんが、

先程の違約金の話のように払わないといけないんですね。

 

 

休業を回避する方法は?

「休業手当を払わずに済ませる方法は無いの?」
と考えるところでしょうが、方法はあります。


払うべきものを払わずに済ませる。

「そんな方法は怪しいんじゃないか」
「違法な方法なんじゃないか」
と思うかもしれませんが、

そんなことはありません。


その方法とは、

「出勤日を振り替える」

というもの。


雪で休みになった日を他の日へ振り替えれば、休業を回避できますから、休業手当も必要なくなります。

例えば、木曜日が大雪で、仕事を休みにしたならば、
その代わりに、翌週の月曜日を出勤にする。
(翌週の月曜日が休みだったと仮定しています)

このように休みの日と出勤日を入れ替えるといいんです。

 

そのままポーンと休みにしてしまうと、
契約で決めた勤務時間を確保できずに休業手当が必要になります。

しかし、代替措置として休みの日を出勤日に変えれば、
契約で約束した勤務時間まで仕事をしてもらえます。


雪の影響で休むといっても、1日か2日ですから、
振替出勤で対応できる範囲です。

2週間なり1ヶ月なり長期で休みになったら、
さすがに振替出勤ではカバーできませんが、
1日もしくは数日ならば振替出勤で対応できます。


「雪で仕事を休みにするときは、振替出勤が出来ないか検討してみる」

ココがポイントですね。

有給休暇の残日数管理を簡単にするには?
有給休暇の残日数はひとりひとり違うものですから、その日数を管理するのは労務管理では負担になります。年次有給休暇の管理もできる給与計算ソフトを使うと、その作業が楽になるのでは。

 

雪で電車が運休したり路面凍結で始業時間を遅らせたら労務管理ではどう対応するのか

降雪で電車が運休してる間、自宅で待機してもらって、運行が再開されてから出勤してもらう。たくさん雪が降ると、このようなこともありますよね。 

他にも、路面が凍結しているため、出勤時間を数時間遅らせてから職場に来てもらう。道路が凍っていて、そこを歩いて滑ってケガをすることもありますから、昼ぐらいまで出勤を控えてもらって、凍った状態が解消されてから出勤してもらえば安全です。 

もし、降雪に対応するために出勤時間を3時間遅らせるとしたら、会社としてどういう対応をするか。

ここで対応方法を3つ考えてみましょう。 

1.出勤をやめて年休をとってもらう

本人が希望すれば年休で休んでもらうことは可能です。本来は出勤する日ですから、その日に年休を充当して休みにします。雪が降って出勤が難しいから今日は年休を取って、と会社が一方的に年休を取るように指示することはできませんが、本人が連休を取ることに合意しているならば、この対応は1つの選択肢としてありますね。 

2.振替で出勤する

3時間ずらして出勤するなら、勤務時間がずれていますから、始業時間を3時間後ろにずらしたとなると、その3時間分をどうやって補填するかを考える必要があります。雇用契約で約束した通りに使用者は働けるように環境を整えなければいけませんから、出勤時間を3時間遅らせたならば、それに対する補填策を講じる必要があります。 

3.欠勤にする

中途半端に出勤するぐらいならば、もうその日は休みにしてしまう。スパッとわかりやすい対応ですね。しかし、この方法だと休業手当が必要になる可能性が残ります。予防的に欠勤にしたとすれば、使用者都合で休ませたことになり、休んでも給与を支払う必要があります。

従業員と合意して欠勤にすれば休業にならないとも思えますが、「雪だから休みにします」と上司から伝えられたら、言葉には現れない圧力が生じるかと。となると、その合意はちゃんと納得してのものなのかが不明になります。

もし、電車が運休して移動できないならば、これは使用者の責任ではなく、欠勤も可能です。とはいえ、振替出勤で他の日に補填するとか、年休が残っていれば、それを充当するのが良いでしょうね。

一方、路面が凍っているので始業時間を遅らせたとなると、休業手当を支払う必要があるのではないかとツッコミを入れる余地が出てきます。出勤しようと思えば可能ですから。


出勤日や出勤時間を他の日に振り替えて契約で約束した通りに働けるようにする 

路面凍結への対策で出勤時間を3時間遅らせたならば、3時間分を他の日に振り替えると良いのでは。

退勤時間を3時間後ろにズラす。これがまず1つですね。午前10時から始業のところを3時間ずらすと13時始業になります。16時に終業する予定だったところを後ろ倒しして19時に終了する。こうすれば始業時間を3時間ずらした帳尻を合わせることができます。

他には、他の日の勤務時間を増やすのもありです。例えば、1時間ずつ3日に分けるとか。当日中に振替分を解消できない場合は、他の日に回して解消していくのですね。分割せずに他の日の勤務時間を3時間増やすこともできますよね。

雇用契約や労働条件通知書で約束した時間は働けるようにするのが目的で、降雪が原因ですから使用者の都合によるものではないのですけれども、雪による影響は数日で解消されるでしょうから、それならば振替出勤でもって対応するのが妥当です。

欠勤にしてしまうと、出勤しようと思えばできる状態ですから使用者都合による休業になり、休業手当を払う必要があると判断する余地が出てきます。

雪によって電車が止まるとか。雪で道路が通行止めになって通勤できないとか。出勤できないのが確実ならば使用者都合による休業にはなりませんが、物理的に出勤しようと思えばできる状況で、安全のために予防として休みにしたり、勤務時間を短縮すると、それは使用者都合によるものだろうと判断できてしまいます。 

夏だと台風が来ることがありますが、台風が来てお客さんが少ないから休みにするよ、と判断してしまうと、これは使用者の都合による休業と判断されてしまいますから、休みにしても給与を支払う必要があります。

ですから、台風が来たからといって、そう簡単にお店を臨時休業にすることができないという事情があるわけです。飲食チェーン店やスーパーマーケットのチェーン店が台風が来ていても通常通り営業していることがありますけれども、そういう事情を考えてのことです。

天候が理由だとしても、そう簡単に欠勤だとか臨時休業だと判断をしにくいのですね。 

雪の影響を受けた時は、欠勤にするよりも勤務時間を他の日に振り替える、もしくは出勤日を振り替えることでもって対応するのが妥当な対応ですね。雇用契約や労働条件通知書で約束したことを疎かにしないのがポイントです。

振替出勤を望まない、他の日に振替する余地がないならば、本人が希望して会社がOKを出せば、年次有給休暇で休むのも良いです。 

 

 

 

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