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■■┃ 本では読めない労務管理の「ミソ」
□□┃ 山口社会保険労務士事務所
┗━┻━━━━━━━━━━━━━━━ (2008/12/9号 no.44)━
- 時効で有給休暇が消えるのは不満 捨てずに使う方法を考える
- 時効の年次有給休暇を活用 会社での自由設計が可能
- 消滅した有給休暇を積み立てる制度
- 労務管理は工夫の積み重ね 時効になった年次有給休暇の活用も考えて
時効で有給休暇が消えるのは不満 捨てずに使う方法を考える
有給休暇の時効は2年です。付与されたときから2年を経過すると消滅しますから、労働者としてはきっちりと活用したいと思いますよね。
しかし、2年で使いきれないこともあるでしょう。時効の期間内で全ての有給休暇を使うのが理想ではありますが、様々な事情で年次有給休暇が残ることも。
そこで、使い切れなかった有給休暇を何とかして使うための工夫をしたいところですね。
時効の年次有給休暇を活用 会社での自由設計が可能
消滅した有給休暇は、本来ならば、利用できなくなるものです。そこをあえて使えるようにする仕組みですから、その内容は会社側で自由に決めることができるんですね。
- 時効に達すれば、完全に消滅する
- 時効に達しても、病気や怪我のよる休みの時のみ、消滅した有給休暇を利用できる。ただし、連続して利用できるのは3日まで。
- 時効に達しても、子の病気看護の時のみ消滅した有給休暇を利用できる。ただし、無給とする(有給するとなお良いですね)。
- 時効に達しても、慶弔時のみ、3日を限度として、消滅した有給休暇を利用できる。
- 時効に達した日数に応じて、フィットネスクラブの利用券を用意する。失効した有給休暇1日あたり利用券を2枚など。
このように、時効になった年次有給休暇を活用して働きがいがある職場だと感じてもらえる工夫ができますよね。
他には、時効でなくならないように、有給休暇の利用意向を3ヶ月に1回、面談で聞いてみるのも一案です。時効で消滅する前に本人に自発的に利用してもらうわけです。年次有給休暇の計画付与だと会社の判断でスケジュールが決まりますから、まずは本人の意向で年次有給休暇を利用してもらいます。
消滅した有給休暇を積み立てる制度
消滅した有給休暇を使えるといっても、無制限に持ち越して使えるようにしている会社は少数では。
無期限にはできないものの、具体的には、
「毎年消滅する有給休暇に関し、5日を限度として、通常の
有給休暇とは別に、傷病・看護休暇として積み立てる。また、
積み立てる有給休暇の上限は20日とする」
というように決めて、日数に上限を設けるのも良いですね。この例では日数に上限があるものの、利用期限はありません。
ポイントは、「利用方法」、「時効期間を経過後に繰越できる日数」、「上限日数」、「利用期限」を会社で決めるということ。
すでに傷病や看護に関する休暇制度がある会社の場合ならば、その休暇制度ではなく(年次有給休暇の消滅で持ち越した)有給休暇の方を優先的に使うように指定します。
以上のように就業規則(他には休日休暇規定など)に記載して、運用することで、消滅した有給休暇を活用することができますね。
時効経過後に繰り越された有給休暇の明細は、給与明細に記載するという対応で良いでしょう。法定の年次有給休暇の日数を給与明細に記載し、さらに時効経過後に繰り越された有給休暇も併記しておくと分かりやすいです。
また、特定の時期、お盆や年末年始、決算期には利用できない、としても構いません。職場ごとに繁忙期があるでしょうから、そこを避けてもらえる条件を付けておきます。
法定の年次有給休暇には利用条件を付けられませんが、時効経過後は条件を付けて活用していきましょう。
通常の年次有給休暇と積み立てた傷病・看護休暇(時効を経過した年次有給休暇)、どちらを先に使うのかも決めておきます。先に積み立てた方を使うのか、通常の年次有給休暇がなくなったら積立分を使うのか。工夫する余地がありますね。
労務管理は工夫の積み重ね 時効になった年次有給休暇の活用も考えて
時効消滅後の年次有給休暇をどう扱うかは法律で決まりがないため、会社の裁量で工夫できます。
病気や怪我、子供の病気看護といった用途に限定して、消滅した有給休暇を使えるようにするのも、使える仕組みではないでしょうか。
働きがいがある、働きやすいと感じてもらえる工夫をするのが人事労務管理の役割です。
これなら、社員さんも喜んで受け入れると思います。