- 休業の責任は労働者に無く、会社にも無い
- 原則通り時効で消滅させる。例外で時効を延長させる。どちらも正解
- 休業に入る前に通知して年次有給休暇を消化してもらう
- 休業期間中に出勤日を設けて年次有給休暇を充当する
- 特別休暇として消滅した年次有給休暇の日数を再付与
- 有給取得奨励日を設定する
- 連続で年次有給休暇を取ったら手当を出す
休業の責任は労働者に無く、会社にも無い
休業する期間が2日から1週間ぐらいだったら、年次有給休暇の時効が休業中に消滅する可能性は低いのでしょうけれども、休業期間が2ヶ月、3ヶ月になってしまうと、その休業期間中に年次有給休暇の時効が到来してしまう方も出てきますよね。
休業しなければ年次有給休暇は時効で消滅しなかったけれども、休業期間が例えば3ヶ月になったから、その間に年次有給休暇、前々年度から繰り越してきた年次有給休暇が消滅してしまう。この問題にどのように対処するのか。
何らかの措置を設けるのか。それとも、原則通り、2年繰り越してきた年次有給休暇は消滅するのか。
どういう扱いをしていいのかが悩んでしまうところですよね。
原則通り時効で消滅させる。例外で時効を延長させる。どちらも正解
労働義務の無い日に年次有給休暇を取れない。これが原則のルールとなっていて、休業で休んでいる日に年次有給休暇を充当することはできません。
となると、休業期間が3カ月に及んでしまうと、この3ヶ月間には年次有給休暇は使えない。じゃあその間に時効で消滅してしまった年次有給休暇は、そのまま時効になって消えてしまうのか。それとも時効期間を延長して使えるようにするのか。
先に結論を書けば、原則通り、2年で年次有給休暇を時効で消滅させるのは正解であって正しい対応です。また、休業期間が3ヶ月になったので、その補填として年次有給休暇の時効を例えば3か月延長するという対応も正解です。
年次有給休暇を買い上げればいいんじゃないか、と考える方もいるかもしれませんが、退職時点ならまだしも、在職している状態で年次有給休暇をお金で買い上げることはできません。お金で年次有給休暇を買うという対処法は無しです。
年次有給休暇の時効は2年ですから、この2年よりも短く設定するのはダメですけれども、2年よりも長く設定する、今回の場合だったら2年で消滅するところ、例えば2年6ヶ月まで延長するとか。法律で決められた時効期間よりも長く設定するには労働者側に有利になるので、それは会社が任意に決めても構わないものです。
しかし、年次有給休暇の時効を延長するとなると、延長してもらえる人と延長してもらえない人が出てきて、その差をどうするのかが問題なります。早い段階で年次有給休暇を使っていた人たちは時効にかからないでしょうし、ゆっくりとちょっとずつ取っていた人たちは時効にかかる可能性があるでしょうから、この両者の差をどのように解決していくのかが悩みどころです。
また、この延長措置は今回限りにするのか、これからも感染症が広がった時にも同じように対応するのかも考えなければいけませんよね。
さらに、人事労務関連のシステムも、2年で年次有給休暇を消滅させる設定になってるものもあるでしょうから、そのシステムの変更までできるのかどうか。
単に時効を延長すると言うだけでしたら難しいことではありませんけれども、社内での調整、事務手続きやシステムの変更といったところまで考えると、時効を延長させるのが妥当なのかどうか。
感染が広がるたびに休業しているとなれば、いつまた休業するのか分かりませんし、どれぐらいの期間の休業になるのかも予定できません。将来起こるかどうかも分からない、どれぐらいの休業規模になるのかもわからない。にも関わらず有給休暇の時効について例外的な取り扱いを認めていたらキリがなくなるのではないかと。
休業期間が3ヶ月になったとしても、もっと早い段階で年次有給休暇を取ることはできたのでしょうし、年次有給休暇を取る余地が全くなかったわけではなく、休業期間以外だったら年次有給休暇を取れたのでしょうから、あえて時効を延長せずに、原則通りに2年の時効で消滅するとした方が分かりやすいのではないかと。
給与の全額が休業手当として支払われているならば、実質的には年次有給休暇を取っているのと変わりませんし(給与を受け取りながら休んでいる)、休業手当を受け取りながら休んでる日を年次有給休暇だとみなして満足していただくというのも1つの解決策です。
休業に入る前に通知して年次有給休暇を消化してもらう
時効消滅が近い有給休暇がある場合、従業員に「時効が近い有給休暇の残日数」を事前に通知し、取得を促すのもいいでしょう。長期休業が予定されているならば、その休業が始まる1ヶ月前に時効が近い年次有給休暇を使ってもらって、その後に休業に入ります。休業の開始前に有給休暇を取得できるようスケジュール調整を行います。これならば時効消滅する年次有給休暇が出ませんね。先に時効が到来する年次有給休暇から使うと決められている職場ならば、この方法が有効です。
休業期間中に出勤日を設けて年次有給休暇を充当する
3ヶ月休業するとして、途中で出勤日を数日設けて、その日を年次有給休暇にすることで時効になる前の年次有給休暇を消化することもできます。ただ、休業手当が出るのに、あえて自分の年次有給休暇を使うという選択はしにくいものですから、方法の1つとして考えておく程度ですね。
特別休暇として消滅した年次有給休暇の日数を再付与
時効で消滅する有給休暇分を「特別休暇」として付与する制度を設けることも可能です。予定通り2年で年次有給休暇は時効消滅するものの、後から有給の特別休暇を設けて取得してもらうこともできます。
法定の年次有給休暇の時効を延長するのは、勤怠を記録している人事労務管理システムの調整ができずに対応しにくいかもしれませんが、特別休暇を別途で付けるならば可能ですよね。
有給取得奨励日を設定する
有給取得奨励日とは、企業があらかじめ特定の日を指定し、その日に年次有給休暇の取得を推奨する取り組みです。従業員に休暇を取得する動機を与えることで、有給休暇の取得率向上や時効消滅の防止が期待できます。
業務が比較的落ち着いている日を選びます。例えば、年末年始休暇やゴールデンウィークの前後、夏季休暇前後、閑散期など。年末年始やお盆、ゴールデンウィークに平日が入ったときは、そこで年次有給休暇を取得するよう奨励するのも良いでしょう。
メールや掲示板、ミーティングを活用し、「この日を有給取得奨励日とする」旨を明確に伝えます。
年次有給休暇を取得する義務はありませんが、指定日を設けて取得を促すことができますね。
連続で年次有給休暇を取ったら手当を出す
年次有給休暇を連休で取ってもらうのは、有給休暇取得率の向上や従業員の満足度向上につながります。
3連休取得で5,000円、4連休取得で10,000円、というように手当を用意して、まとめて年次有給休暇をとってもらうように案内します。
連続取得は年間2回までというように、年間で支給可能な回数を設定し、制度のコスト管理も同時に行います。
手当は連続休暇取得後、給与と一緒に支給します。
長期の連続休暇取得が奨励され、時効による休暇消滅の防止につながります。また、「連続で年次有給休暇を取得すると手当支給」の制度を採用広告に明記することで、求職者にとって魅力的な企業としてアピールできます。「連続有給休暇で家族との時間を充実できる職場です」という伝え方も良いですね。
年次有給休暇は人事労務管理で関心が高いところですから、工夫次第で魅力的で働きがいのある職場だと感じてもらえます。