- 出産から育児で使えるお得な公的給付と免除制度
- 知っておくべき公的制度は6つ
- 産前産後休業期間中(産休)は社会保険料が免除
- 産休中には、社会保険料の免除だけでなく出産手当金もある
- 出産時に支給される出産育児一時金
- 出産後、育児休業時にも社会保険料を免除
- 雇用保険からは育児休業給付が支給される
- 児童手当 0歳児で月額15,000円
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出産から育児で使えるお得な公的給付と免除制度
知っておくべき公的制度は6つ
出産、産休、その後の育児まで、この3つはセットになっていて、切り離せないものです。この3つのイベントが発生したときに使えるお得な公的な制度が用意されていますので、まだ出産する予定が無い方も、出産を経験することがない男性の方も、知っておくと後々役に立つでしょう。
これだけは抑えておくべきなのが、以下の6つです。
1.産前産後休業期間中の保険料免除。
2.出産手当金(健康保険から。支給額は収入の約2/3。産休中に給付)。
3.出産育児一時金(健康保険から給付)。
4.育児休業等期間中の保険料免除。
5.育児休業給付(雇用保険から給付)。
6.児童手当(市町村経由で給付)。
これ以外にも子供向けの多種多様な給付なり制度はあるでしょうが、上記の6つはmustです。
まず、1と4は社会保険料が免除される制度です。さらに、2と3は健康保険から給付され、5は雇用保険から、6は市町村から。
たった6つですが、色々な角度から制度なり給付がありますよね。さらに、居住している市町村や都道府県単位でも何らかの制度が用意されている場合もありますから、上記以外にも調べる価値はありそうです。
産前産後休業期間中(産休)は社会保険料が免除
まず最初に使うのが、産休時の社会保険料免除でしょう。
産休期間は、出産前の42日間、さらに出産後の56日間です。約3ヶ月ありますが、この期間の社会保険料が免除されます。
「産休で休んでいるんだから、収入がないはず。だったら社会保険料もゼロなんじゃないの?」と思うかもしれませんが、社会保険料というのは収入がなくても発生するものなのです。収入に連動して社会保険料は決まるのですが、その収入が無い場合でも社会保険料はゼロにはならないのです。
収入が無くても社会保険料だけ請求されるのですから、何だか腑に落ちないところですが、社会保険料は年に1回計算され(「社会保険料算定」と表現されることもあります)、その金額が決まります。そこで決まった保険料が1年間ずっと続くので、何らかの理由で仕事を休んだからといって社会保険料がその分だけ減るということは無いのです。
ちなみに、雇用保険料は実際に働いていないと発生しません。そのため、産休で休んでいると、雇用保険料はゼロになります。といっても、雇用保険料の額は僅かですから、仮に社会保険料のように課されたとしても影響は微々たるものです。
本来ならば、産休で仕事をしていない期間であっても社会保険料は発生するのですが、特別に産休中は社会保険料を免除する制度があります。
この産休時の保険料免除ですが、産休期間に入ったらすぐに手続きをしましょう。産休が終わるまで手続きは可能ですが、この類の手続は"なるはや"で済ませるのが賢明です。「まだ手続き期間は残っているから、後からやるべ」などと後回しにしないように。体が動きやすい時期に済ませてしまう方が良いでしょう。
手続きは期限にかかわらず、すぐに済ませる。これは社会保険に限らず大事です。
さらに、免除されるのは本人負担分だけでなく、会社負担分の免除されます。例えば、会社が負担する保険料が毎月3万円(本人負担と合算で月6万円)ならば、毎月3万円のお小遣いを会社が貰っている状態になります(法人にとって毎月3万円という金額は誤差程度ですが)。
上記のように、社会保険料が免除されるのは厚生年金と健康保険に加入している2号被保険者(会社経由で社会保険に加入している人)ですが、1号被保険者(国民年金と国民健康保険に自分で加入している人)の場合はまだ産休中に保険料を免除する制度はありません(2016年7月時点)。
産休中には、社会保険料の免除だけでなく出産手当金もある
次は出産手当金の手続きです。これは健康保険から給付されるもので、産休中には仕事ができなくて収入が減りますから、それを補填するために用意された給付です。
出産手当金の給付額は、働いていたときの収入の約2/3です。収入の6割ぐらいが手当金として給付されるのだろうと見積もっておけば良いでしょう。
2人出産したら出産手当金も二重に受給できるのかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、出産手当金は働けない期間の所得補償ですので、2人出産した場合も1人出産した場合と同じです。ちなみに、出産育児一時金は出産人数だけ給付されますから2人出産なら2人分です。
社会保険料が免除され、さらに健康保険から手当も出る。二重に追い風です。
社会保険料が免除されるという点について追加で説明すると、免除というと、「保険料は不要になるけれども、年金が減っちゃうんじゃないの?」と思うところですが、産休中の保険料免除が適用された場合は、年金は減らないようになっています。
社会保険料は発生しませんので0円ですが、年金の保険料は通常通りに支払ったものとみなされます。実際は支払っていないのですけれども、支払ったと扱われるので、年金の保険料が丸々タダになるわけです。
仮に、毎月3万円の厚生年金保険料を支払っていた(会社負担分と合わせると計6万円)とすれば、産休中は「毎月3万円のお小遣いを貰っているようなもの」とイメージしていただければ良いかと思います。会社負担分も折り込めば、毎月6万円のお小遣いです。お小遣いといっても現金をポンと渡されるわけではないので、「実質的に収入が増える」と考えていただければ良いでしょう。
さらに、健康保険証も通常通りに使えますから、保険料負担なしで健康保険を使える国民年金3号被保険者と同じです。
ただし、この出産手当金も、会社経由で健康保険に加入しておらず、市町村の国民健康保険に加入している人は対象外になります。
保険料の免除がなく、出産手当金も無いため、国民健康保険に加入する人と会社経由で健康保険に加入する人では差があります。
出産時に支給される出産育児一時金
出産前の産前休暇を終えると、次は出産ですが、この時点では「出産育児一時金」を利用できます。これは健康保険からの給付で、給付の上限は42万円です。2023年4月以降は出産1人あたり50万円に増額される予定です。
今では、先に費用を支払ってから、後で出産育児一時金を支給申請する必要はなく、医療機関の窓口で手続きを済ませると、健康保険から直接に医療機関へ出産育児一時金が支払われる現物給付になっているので、先に費用を自己負担する必要がなくなりました。
この出産育児一時金については知っている方は多いでしょう。「出産の時は一時金で健康保険から補助されるんやで」と関西のオネーサン方は話していることでしょう。
この出産育児一時金ですが、これは国民健康保険に加入している人も制度が用意されています。
話は変わりますが、一時負担が不要になった制度といえば、高額療養費制度も同様ですね。
昔のように、先に自分で立て替え払いしておく必要はなく、「限度額適用認定証」というものを利用すると、医療機関へ直接に高額療養費が支給され、利用者側で一時的に負担する必要が無くなりました。
この限度額適用認定証というのは、入院や手術の前に予め申請して交付してもらえる書面です。指定の書類1枚(健康保険協会のウェブサイトからダウンロードできる。下記参照)に必要事項を記入し、健康保険証のコピーを同封して都道府県ごとの健康保険協会の窓口へ送るだけですので、手続きとしては簡単です。社労士が登場するまでもなく、皆さんでも問題なくできるはずです。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3020/r151
医療費が高額になりそうなとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会
手術、入院が必要となれば、あらかじめその旨が医療機関から本人に通知され(手術の内容や入院の手順など)、準備する期間が1ヶ月ぐらいあるでしょうから、その間に認定証を申請して手に入れておくといいですね。
準備なしで緊急手術、入院となる場合もあるでしょうが、病院の費用の支払いというのは治療から支払いまでタイムラグがありますので、その間に認定証を申請しておくこともできます。
筆者も限度額適用認定証を申請したことがありますが(自分で使うためではなく、親族の人のもの)、申請して4日で届きましたので、時間はそうかからないはずです。
病院の窓口で高額療養費の手続きを完了する方法。
出産後、育児休業時にも社会保険料を免除
出産した後は、産後休暇(56日)に入りますが、この期間は先ほど書いたように社会保険料が免除されます。また、出産手当金も引き続き支給されます。
さらに、産後休暇が終わった後に育児休業に入ると、さらに社会保険料の免除があります。産休中に免除、育休中も免除です。
産前産後で約3ヶ月、育児休業で子供が1歳になるまでの期間まで免除されたとすると、1年と2ヶ月弱の期間にわたって保険料が免除されます。保険料が毎月3万円だとすると、3×14 = 42万円ですから、少なくない金額です。
ここまででも特典がてんこ盛りですが、まだ他にも制度があります。
なお、育児休業中も、国民年金や国民健康保険に加入している人は、保険料の免除制度がありません。
このように書き上げてみると、国民健康保険というのは不利な制度に思えてきますよね。
雇用保険からは育児休業給付が支給される
育児休業時には仕事を休んでいますから、収入がありません。そこで、収入を補填するために、雇用保険には「育児休業給付」という制度があります。
産休中には社会保険料が免除され、出産手当金が支給されましたが、育児休業中にも社会保険料が免除され、さらに育児休業向けの給付があります。それが育児休業給付です。
雇用保険は失業時に使うものというイメージがありますが、失業しなくても使えるもの(例えば教育訓練給付金など)があります。その一例が育児休業給付です。
給付額は、働いていたときの1日の収入の67%程度と見積もっておけば良いでしょう。出産手当金と同じと考えていただければよいかと。
ちなみに、この育児休業給付は女性だけでなく男性も対象になるため、いわゆるイクメンの人も利用できる制度です。
育児と雇用保険、この両者はなかなか結びつきにくいため、育児の時に雇用保険が使えると知っている人は多くなさそうですから、ここは知っておいて欲しいポイントです。
国民年金1号被保険者で、国民健康保険に加入している人でも、雇用保険には加入している人(パートタイム勤務の方)もいますので、その場合は育児休業給付を利用できます。
児童手当 0歳児で月額15,000円
児童手当は0歳から中学校を卒業するまで支給される手当で、0歳児であっても月額15,000円が給付されますから、忘れずに手続きしたいところです。
平成28年度における児童手当制度について
児童手当を担当するのは市町村で、先ほどまでの健康保険や雇用保険とは取扱窓口が変わります。
児童手当には所得制限がありますが、仮に所得制限を超えていたとしても、一律で月額5,000円は支給(特例給付)されますので、収入が多い人でも利用できる手当です。収入が多ければ納税額も多いですので、税金のキャッシュバック(額は僅かですが)だと考えて受け取るのはどうでしょうか。
出産育児一時金と児童手当はよく知られている制度ですから、おそらく取りこぼしする人はいなさそうです。
育児休業中だけでなく、産休中も社会保険料が免除されると知っている人となると、上の2つよりは数が減ってきそうですし、さらに雇用保険から給付される育児休業給付となると、「児童手当の手続きは済ませたから安心」と思って手続きを忘れる人もいそうです。
産休中の社会保険料を免除して、出産手当金の手続きを済ませる。出産時には病院の窓口で出産育児一時金の手続きを済ませ、出産後は社会保険料の免除を継続(産後休暇から育児休業まで)しつつ、育児休業給付と児童手当の給付を受ける。
産休から育児までの公的制度を使う流れはこのような感じです。
手厚い制度があるかのように思えますが、年金の1号被保険者、つまり国民年金と国民健康保険に加入している人は、社会保険料の免除がありませんし(2016年7月時点では)、産休時の出産手当金もありません。さらに、雇用保険に加入している実績が無い人には、育児休業給付もありませんから、人によって随分と差が出てくるところです。
ちなみに、平成28年、2016年10月からは会社経由で社会保険に加入するパートタイマーの人が増えますから、その人達は雇用保険に加入していますし、年金では2号被保険者、つまり厚生年金と協会けんぽの健康保険に加入しますので、今回紹介した制度をフル活用できます。
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