労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

産休、出産、育児に関する社会保険と労働保険からの給付のまとめ。

子育て

 

子供ができると、手続きがたくさん発生する。

子供ができるのはめでたいことで、喜ぶべきなのですけれども、出産のイベントが発生すると、色々な手続きを行わなければいけない。特に初産の人だと、初めての経験なので、てんてこ舞いになる方もいらっしゃるはずです。

会社の人に伝えて、会社での手続きを行い、さらに市役所に行く。来週には妊婦検診に行かないといけないし、保険関連の手続きもやんなくちゃ。さらに、買い物に行って、ダンナの晩御飯まで作らないといけないから、妊娠するとやることがイッパイです。

子供ができたときの手続きを予めザックリと知っていれば、いざその時になったときにちょっとは助かるのではないでしょうか。


そこで、今回は、子供ができてからの保険関連の手続きをコンパクトにまとめます。

細かく手続きを覚えるのではなく、流れを知っておくのがミソです。

 

 

産休と育休の違い。どちらも同じ休みだけれども、似て非なるもの。

妊娠、出産するとなると、会社を休んで、準備を整える。この流れ自体はよく知られているところなのですが、「会社を休む」という部分で、ちょっと混乱を起こしている方もいらっしゃるのではないかと思います。

出産のために休むとなると、それはいわゆる「産休」と呼ばれるものなのですが、これを「育休」と解釈している方もいるのではないか。また、出産後に乳幼児を育てるために休むときは、「育休」という名目で休みますが、これを「産休」と考えている方もいらっしゃるのではないか。

つまり、育休と産休がゴチャ混ぜになって、「どっちも同じものだろう」などと考えられてしまっている。「まさか、産休と育休を区別できないなんてことはないだろう」と思う方もいらっしゃるでしょうが、意外と区別していない方もいらっしゃるのではないか。

休みという点ではどちらも同じですし、子供関連での休みという点でも同じです。しかし、両者にはチャンと違いがありますので、ここはキチンと分けておきたいところです。

 

 

出産前後の休みが産休。子育て中の休みが育休。

産休は、正式には「産前産後休業」という名称で、労働基準法65条に書かれている内容です。

出産関連というと、健康保険のイメージが強いですけれども、労働基準法にも出産関連の規定があるのですね。

ちなみに、産前産後休業のときには、健康保険から「出産手当金」が支給され、さらに出産時には「出産育児一時金」もあります。

休みは労働基準法で、給付は健康保険で、ということです。

一方、育休は、「育児休業」という名称で、関連する法律は、育児介護休業法です。

1歳未満の子供を育てる際の休みを育児休業と表現し、こちらは産前産後休業とは違うものとして位置付けられています。

育児休業中の給付は、健康保険ではなく、意外にも雇用保険から支給されます。出産育児関連の給付は健康保険にまとめられていると思うところですが、雇用保険にも関連する給付はあるのです。

産前産後休業と健康保険の出産手当金がセットになり、出産時には健康保険の出産育児一時金、その後の育児休業の段階では、雇用保険の育児休業給付が登場する。

他にも、育児休業の時期には社会保険料の免除もあります。さらに、産前産後の時期にも社会保険料の免除がされる予定ですが、平成25年9月の段階ではまだ実施されていません。

産休や育休の仕組みがあっても、人の価値観がそれについて行かないと、うまい具合に仕組みは動かないもの。

産休しか取れず、育児休業は権利があっても取れない職場があったり、産休どころか妊娠すると、仕事を辞めることを前提に話を進める職場があったり、産休も育休も取得できる職場もあったり。

職場によって、産休と育休の運用はバラバラです。

産休は労働基準法での義務ですし、育休も申し出があれば取得させないといけないものですが、なかなかスンナリとはいかないみたいです。出産や育児を想定して労務管理の仕組みを作っていないと、いざ対象者が出てきたときに、どのように対処するのか判断できず困ってしまいます。

職場や職種ごとに働き方は違いますから、子育てしている人とそうでない人の間を調整できるよう、ルール作りをしておかないといけませんね。

産休は、産前に42日、産後に56日ありますので、約3ヶ月です。産前産後休業でも3ヶ月の休みを取ることになりますので、権利といえども、休む本人は気を使うでしょうね。

さらに、育休となると、約1年の休みになりますので、こうなるとさすがに休めないという気持ちになってしまうのではないでしょうか。

2013年9月時点では、育休を3年にするという案も出ているようですが、1年の産休ですら取得が困難なのに、3年となると、もう絵に描いた餅になってしまうのではないかと思います。

私が思うに、今必要なのは、制度の充実ではなく「価値観の変化」です。

出産、育児関連の制度はもう十分に整っていますから、あとは職場の同僚や上司、経営者の価値観が変わり、出産や育児を受け入れるかどうか。ここがキモになるだろうと思います。

子供を理由に、当たり前のように早退したり、遅刻したりする人がいて、あまりいい気分になれない人もいるでしょう。子供がいない女性や男性にとっては、仕事のツケが自分に回ってきて納得出来ない気持ちもあるはず。

子育てする人とそうでない人、この両者を調整するのが労務管理ですから、片方だけを考えていてはうまくいかないもの。

出産、育児で本人が休むとなれば、本人の賃金は発生しない(社会保険料など細かいものは除く)のですから、そこで生じた余剰の人件費を、休んだ本人をフォローする同僚などに手当として上乗せして、金銭的に納得してもらうのも一つの方法だと思います。

制度が充実しても、人の価値観がそれに伴わないと、空回りになってしまい、勿体無いところです。

 

 

使うのは健康保険だけじゃない。

子供に関する給付というと、健康保険の出産育児一時金がよく知られていますよね。これは出産時の費用をフォローする一時金で、子供ができたとなればこの一時金が話題になるぐらい有名です。

しかし、出産関連で使えるのは健康保険だけでなく、労働基準法や雇用保険にも出産に関連する内容が含まれています。

では、ザッと妊娠から出産、育児までの流れを見ていきましょう。

 

1.産休。

まずは産休です。これは労働基準法65条で定まっている制度で、正式には産前産後休業といいます。出産前42日、出産後56日が産休の期間です。

産前・産後休業、育児休業の自動計算│女性にやさしい職場づくりナビ

「産休はシニゴロ」と覚えると忘れません。子供が生まれるのにシニゴロなんて不謹慎な感じですが、インパクトが強いので一度覚えると忘れないのがいいところ。


2.出産"前"の産休中の給付。

次は、産休中に対象になる健康保険の出産手当金です。

これは出産前42日を対象にした給付です。この期間は休んでいるので給与がないため、所得を補填するのを目的とした制度です。なお、出産後56日の期間にも、この出産手当金を受給できます。

産休中は仕事を休んで収入が途絶える方がいるので、それを補填するために出産手当金制度が用意されているわけです。

 

3.出産時の給付。

前半の産休が終われば出産しますから、今度は出産育児一時金が登場します。

この一時金も出産手当金と同じように健康保険から給付されるものです。これは産婦人科でも案内される給付でしょうから、手続きを忘れるという可能性は低いでしょう。出産する人に最もよく知られているのが、この出産育児一時金ではないかと思います。


4.出産前"後"の産休中の給付。

出産が終われば、今度は後半の産休(56日間)に入ります。ここでは、前半の産休と同じように、健康保険の出産手当金が支給されます。

健康保険の出産手当金は産休前の部分と産休後の部分で分かれていますが、別々の制度ではなく1つの制度です。


5.雇用保険の育児休業給付。

出産し、産休が終われば、今度は育休の期間に入ります。産休と育休をごちゃまぜにしている方もいらっしゃいますが、それぞれ別のものです。

ここでは健康保険ではなく、雇用保険が登場します。雇用保険の育児休業給付金は、育児休業前の収入の50%を支給する制度ですが、平成26年度からは50%から67%まで引き上げられます。これは健康保険の出産手当金と同じ水準ですね。産休中と育休中の給付内容を統一させるように変更されました。


6.児童手当。

これもよく知られていますよね。一時期、子ども手当という名称になりましたが、また児童手当という名称に戻っています。

児童手当制度の概要

児童手当は0歳から中学生までが対象になるので、子供が生まれれば、随分と長い付き合いになるはずです。


7.社会保険料の免除。

以前は、育休中だけ社会保険料が免除されていましたが、平成26年度からは産休中も対象になります。
保険料の免除等(産休・育休関係)日本年金機構

これは平成26年の4月からなので、新しい制度です。社会保険料は、収入が変動してもすぐには変わりませんし、仕事を休んでいても必要になるものですから、こういう免除はぜひキチンと使いたいところです。

さらに、会社経由で社会保険に加入しておらず、厚生年金には入らず国民年金だけ加入している方も、産前産後休業中の国民年金保険料が免除されるように変わりました。
国民年金保険料の産前産後期間の免除制度(日本年金機構)

2019年4月からこの免除制度が始まったのですが、それ以前は、社会保険料が免除されるのは会社経由で社会保険の被保険者になっている人だけでした。

なお、1号被保険者は、産前産後休業中の免除だけで、育児休業中はまだ免除対象になっていません。

労働基準法、健康保険、雇用保険、児童手当、社会保険料免除など、上記に挙げただけでも7点もありました。

制度がまたがっているので、まとめてザックリと知っておくと安心ですね。

細かな手続きはその都度調べれば十分です。出産・育児に関する制度を大まかな流れで知っておくのがポイントです。

 

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山口正博 社会保険労務士事務所
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