学生アルバイトの60.5%が労務のトラブルを経験しているとの調査が厚生労働省より発表されました。
学生アルバイトの60.5%、「労働条件等でトラブル」/厚労省調査
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000103577.html
調査の結果はPDFファイルに掲載されていますが、読んでいて「まぁ、そうだろうな」と思えるところが多々ありました。
大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査(PDF)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000103625.pdf
トラブルが多いとの結果ですが、これは今に始まったことではありません。大昔から似たような事例が多々あったはずです。
高校1年の頃からバイトを経験してきましたが、なぜか学生は雑に扱われます。雑というのは、勤務時間や休日、休憩、休暇など多岐にわたりますが、「学生だから適当に労務管理しても大丈夫だろう」という意識があるのか、どこの会社やお店も程度の差はあるものの問題がある職場だらけでした。
労働条件の通知については、本来ならば雇入れ通知書や雇用契約書を作成し、その写しを本人に渡すのが正式な手続きなのですが、私が学生の頃は写しなど受け取ったことはありませんでした。
履歴書を持ってお店や会社に行き、面接を受ける。「何時間働ける?」、「何曜日に入れる?」、「いつから入れる?」そういう会社側が知りたい情報がやり取りされ、働く側に関する情報はササッと話して終わり。履歴書の空欄部分に何かを書いているのを見たことがありますが、契約書をキチンと作っているお店や会社は、思い出してもありませんでしたね。
作った契約書のコピーを渡すだけでも随分と印象は変るのでしょうが、そもそも契約書を作っていませんので、コピーなど作りようがありません。
履歴書と面接だけ。学生の時はこの2つで労働条件が決まっていたわけです。言うまでもありませんが、雇用契約書を作らない会社が就業規則を備えているわけもなく(フルタイム社員向けの就業規則はあったのでしょうが)、就業規則を見ることも、そのコピーを見ることもありませんでした。
高校生でも深夜勤務
高校生の頃に、居酒屋で深夜22以降に勤務していたのも懐かしいですね。その店は個人経営の小さい居酒屋でした。営業時間は確か夜の23時30分だったかと記憶しています。
営業が終わってから、掃除などの締め作業がありますから、仕事が終わるのは午前0時を過ぎます。夕方の5時30分から始め、日付が変わって0時15分まで。6時間を少し過ぎるぐらいですね。
途中で夕食があり、それが休憩時間を兼ねていたのかどうかは定かではありませんが、休憩という名目での時間は無かったです。夕食中も、お客さんが店に入ってきたら対応し、料理が出来上がると持っていくので、厳密には休憩ではありませんね。
「深夜まで仕事があると知っていて働いているんだから問題無いだろう?」と思うかもしれません。確かに夜22時以降に高校生である自分自身が働いているとは知っていましたが、それが法律で禁止されていることまでは知りません。
私が労務管理に詳しくなったのは、大学生の頃に社労士試験を受けるために学習していたときからです。それ以前は、未成年が深夜勤務をしてはいけないとは知らなかったし、学生でも有給休暇があるとも知らなかった。
労務管理は学校のカリキュラムには含まれていませんし、高校生が自分で労務について学習する可能性は高くないでしょうから、深夜勤務について知らないのも無理のないことです。
居酒屋で高校生が働くことそのものはOKです。ただし、22時を過ぎないように、例えば21時45分に終業し、22時までに退店する。これならば問題のない労務管理になります。
いきなりリストラされた高校生
「今週いっぱいで終わりということで」という一言でリストラされた経験もあります。運送会社での経験ですが、これも高校生の頃です。
夏休みはお盆の時期と重なり、お盆といえばお中元を送る時期なので、運送会社にも仕事がたくさん入ってきます。
高校生の割には給与が良かったので、その運送会社を選びましたが、やっぱりキツイ仕事でしたね。トラックを運転して荷物を運ぶのは無理ですから、倉庫内での作業が主体で、7月の終わりから8月ですから、これがまた暑いんですよ。
風が吹けば良いのですが、倉庫だと風が通りませんから、熱が建物内に篭って、ずっと汗が出っぱなし。それを朝の10時頃から夕方6時ぐらいまで。
勤務頻度は週3日か週4日でしたけれども、それでもシンドイ仕事でした。
その年の夏は、想定よりも仕事が少なかったようで、学生のバイトを減らしてきました。確か8月の2週目ぐらいだったか。仕事を始めてから3週間ぐらい経ったぐらいに、「今週いっぱいで終わりということで」と伝えられました。
高校生でしたから、解雇予告の手続きなんて知るはずもありません。今週いっぱいで終わりと言われれば、「あぁ、そうですか」と納得してしまい、それで終わりです。
ムカついたかというと、そんなことはなかったです。今でも何も怒りなどありませんし、むしろそういう経験があったからこそ、それをネタにして文章を書けているのですから、有り難いぐらいです。
高校生のバイトだからといって、「今週いっぱいで終わりってことでヨロシクゥ!」などと言ってはいけません。もしバイトを終わらせたいならば、仕事を終える1ヶ月前には伝えておくのが正しい対応です。
急なシフト変更については、お互い様
一方的に急なシフト変更を命じられたという問題も多かったようですが、これは企業側も学生側もお互い様というところです。
急に「サークルのイベントで、、」、「ゼミの合宿で、、」、「カレシに振られたので、、」と色々な理由でドタキャン欠勤する学生はいます。
「学生が急にシフトを変更してくるんだから、会社側もシフトを変更してもいいんじゃないか?」と応酬してくるのは想定内です。
テスト休み、お断り
テスト休みや実家への帰省も学生の特徴です。この2点を露骨に嫌がる会社もあります。
高校生の頃、私も中間テストや期末テストの前に休みを取っていましたが、嫌がられていましたね。学校というのは無駄にテストが多い場所で、中間テストと期末テストだけでなく、実力テスト、夏休みなどの長期休みの後に実施する宿題テスト、後は何かの学力テストと、2ヶ月に1回ぐらいのペースでテストがあったと記憶しています。
学生が多いのは、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、居酒屋、その他飲食店、学習塾のようですが、これらの職場でテストで休みますとか帰省で休みますと言えばどうなるか。
薄利多売の商売では、人員をギリギリで回しますから、シフトから人が抜けると、穴埋めしにくいのが特徴です。スーパーマーケットやコンビニエンスストアはもちろん、飲食店も薄利多売で営業している店が多いですから、学生が休むとなると嫌がります。私も高校生の頃、飲食店で働いていたからよく分かります。
学習塾も休みにくいでしょうね。学生相手の商売ですから、テスト前こそ仕事が増えるし、夏休みや冬休みには夏期講習や冬期講習があります。
テスト休みや帰省休みを取られては困るならば、学生を募集対象に含めないようにする。学生の側も、この仕事はテストや帰省で休むのは難しそうだなと判断したら、そのような職場には行かない。これがお互いのためです。
大学生ならば、長期休みに入る前にテスト(前期テスト、後期テスト)がありますから、いったんバイトを辞めて、休みが終わったらまた別の仕事を始めるのもいいでしょう。
シフトを変更するならば、契約も変更する
一方的にシフトを削られた経験でしたら、私にもありますね。
採用時の約束(?)では、週3日だったところ、週3日で勤務できる週がある一方で、週2日になったり、週4日になったりと変動する。減るだけではなく、増えるケースもありました。
シフトが削られるということは、出勤日数が減ることを意味しているので、契約では週4日のところ、一方的に週2日に減らされた。このようなものが典型例でしょうね。
契約で週4日勤務と決めているのに、一方的に週2日に変えると、休みになった日は休業として扱われます。さらに、休業した日には、会社は社員に対し休業手当(給与の60%以上)を支払う必要があります。
契約と勤務実態をピッタリと合わせないと、休業手当を請求されたら会社はそれを支払うことになります。
もし、勤務日数を減らすならば、雇用契約を更新します。現状が週4日勤務ならば、週2日勤務の契約を新たに締結すると、古い契約が新しい契約に更新されます。
契約を更新するのが面倒だから、口頭で「来月から週2日出勤で頼むわ」と軽い気持ちで伝え、後々トラブルになるわけです。もともと雇用契約書を作らない職場はもちろんですが、契約書を作成する職場であっても、年に2回、決まった時期しか契約を更新しないので、契約期間中に勤務日数が変更になっても、契約を更新せず放置する会社もありましたね。
勤務日数を変更するならば、キチンと契約もそれに合わせる。これは大事です。
働く側も、「週2日ならば仕事を辞めます」と契約の更新を拒否することもできます。週4日ならば続けるけれども、週2日だと収入が減るし、出勤する手間もかかるので、辞めちゃう。そう判断する人もいるでしょうね。
タイムカードに表示されない勤務時
実際に働いた時間の管理がされていない。これもむか~しむかしからの問題です。
始業時間ピッタリに仕事を始める。終業時間ピッタリに仕事を終える。たったこれだけのことなんですけどね。
私の場合、始業時間前に仕事というのは経験が無いです。始業時に朝礼がある職場を経験しましたが、朝礼はキチンと勤務時間内でした。始業時のトラブルには遭遇したことがありませんね。
しかし、終業時間をちょっと過ぎるぐらいまで仕事をさせ、はみ出した数分に対して賃金を支払わないケースは多々ありました。いわゆる「はみ出し無賃残業」です。21:00が終業時間であるところ、21:03とか21:09とか、微妙にオーバーさせるんですね。わざとピッタリに終わらせないというか、もう時間なのに仕事を振ってくるとか。
15分単位、20年ぐらい前は30分単位で勤務時間を管理していて、端数は全て切り捨てられていました。21:03とか21:09でも、3分なり9分、実際に仕事をしている場合でも、終業時間は21:00として扱われました。
だから、21時をオーバーしたんだから、21:15まで仕事をしてタイムカードを打刻すればいいや、と考えるようになる。誰が得をするのでしょうね。このような仕組みで。
21時に終えていれば、無駄な費用は発生しないので会社は損をしません。働いている本人も時間通りに帰れます。しかし、変にケチ臭い事をすると、キリの良い時間、21:15分まで無駄に時間を消化されてしまう。
2015年現在でこそ、1分単位で勤務時間を計上するのが主流になってきましたが、これが当たり前です。
15分単位で時間を計算すると、「はみ出した時間は切り捨てられるんだから、キリの良い時間まで時間を潰しちゃえ」と考える人が出てきます。会社としては、数分オーバーした時間に対する賃金を踏み倒せると考えているのでしょうが、踏み倒す賃金以上の費用が発生するのですね。
ここでも、「もっと柔軟に」と主張する人が出てきます。柔軟という言葉、便利ですねぇ。
仕事に合わせて時間を調整するべきと考える気持ちも分かりますが、仕事に締め切りがあるように、仕事の時間にも締め切りがあります。
1時間で終わる仕事を、「よおーし、ユックリ、丁寧に、1時間30分で仕上げよう」と考え、ヌタヌタと作業をしていたらどうなるか。
今週末が納期なのに、来週に納品したら、取引先はどう対応してくるか。
1時間で終わるならば1時間で終えるのが良いし、後者だと、取引相手から契約解除されるでしょう。
仕事に締め切りがあるのと同様に、勤務時間にも締め切りがあります。それが法定労働時間です。
もちろん、柔軟にと言い続ける人が、「1時間30分で仕上げてもいいよ」、「納期? あぁ、来週でもいいし、何なら来月でもいいよ」というタイプならば、話は分かります。しかし、そんないい加減な対応をする人はいないとは言い切れないが、稀でしょう。
契約書よりも口約束
1つ6,000円で販売していたものが、突如として一方的に1つ3,000円に変えられたらどうするか。自分の会社で販売しているディスプレイを1枚6,000円で相手先企業に納品していたのに、ある日突然、取り引きの契約内容を変更していないにもかかわらず、相手先企業から1枚3,000円に変更された。
契約では1枚6,000円で販売すると決めているのに、相手が一方的に1枚3,000円に変更してきたら、「契約と違うぞ。1枚6,000円で納品すると決めたじゃないか」と相手に伝えるはず。
納期は1ヶ月後だったのに、一方的に相手から3ヶ月後に変えられたらどうするか。もしディスプレイが納品されなければ、製品を作れず、販売できなくなります。1ヶ月で納品されると想定して、製品を製造していたら困りますよね。
もし、取引先にこのような態度で接すれば、取引条件を悪化させられる場合がありますし、取り引きを打ち切られる場合もあります。だから、商売ではキチンと契約を守ります。
しかし、商売ではキチンとしているのに、労務管理になると途端にルーズになるのが不思議です。
契約通りに履行するのではなく、「契約は契約なんだから、状況に合わせて柔軟に対応すべきじゃないの?」と言う人。
契約を守らないことを柔軟に対応するという言葉で隠していますが、柔軟に対応するならば、1つ6,000円のものを一方的に3,000円に変えちゃってもいいことになるし、納期をコッソリと1ヶ月後から3ヶ月後に
伸ばしてもOKということになってしまう。
労務管理のトラブルは、契約と実態が合っていないのが最大の原因です。シフトの削減や変更、仕事の内容が違うなど、契約した内容と実際の勤務内容にズレがあるので問題になっているわけです。
契約は契約なんだから、仕事に合わせて柔軟に変えればいい。このようにいい加減な判断をすると、契約を締結する意味がなくなります。
学生のバイトでのトラブルは、契約と実態をキチンと合わせるだけでも、随分と減るのではないかと思います。