あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

振替休日と代休の違い 「あらかじめ」という境界線

微妙な違い

 

 

先に振替休日を取って、その後から振替で出勤する

出勤日と休日を振り替えるには、就業規則で「出勤日と休日を振り替えるときがある」等の根拠に基づいて、振替出勤日と振替休日をあらかじめ指定して、入れ替える必要があります。

休日を振り替える際のコツは、先に振り替え休日を取ってもらって、その後に、振り替えで出勤してもらうところにあります。先に出勤してもらってから、後ほど振替休日を取る、という形にしてしまうと、いつまでも振り替え休日を取れずに、休みの日がうやむやになってしまう問題が生じるので、先に振り替え休日をとってから、振り替えで出勤する順序にするのが大事です。

休日に出勤する必要が生じたら、まず先に休んでもらって、その後から振り替えで休日出勤します。

時間外労働に関する点も、振り替えるときに気をつけなければいけないところ。仮に、今週の水曜日を振り替え休日にして、来週の月曜日(事前の予定では休日だった日)を振り替え出勤日にしたとすると、来週は出勤日数が1日増えるわけですから、その結果、1週間あたりの法定労働時間である40時間を超えてしまったなら、三六協定と時間外労働に対する割増賃金の支払いが必要になります。


振り替え前の勤務シフトが以下の通りだとすると、

月曜日:休日
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:休日
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:出勤

月曜日:休日
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:休日
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:出勤


振り替え後の勤務シフトは次のようになります。

月曜日:休日
火曜日:出勤
水曜日:休日
木曜日:休日
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:出勤

月曜日:出勤
火曜日:出勤
水曜日:出勤
木曜日:休日
金曜日:出勤
土曜日:出勤
日曜日:出勤


翌週の出勤日数が週6日になっていますので、労働時間によっては週40時間を超えてくるはずです。


出勤日と休日を振り替えているからといって、三六協定は不要になるとか、時間外労働の割増賃金が必要ない、というものではないので、この点は注意が必要です。

休日の振替と違って、代休は、振替休日と振替出勤日を予め決めずに、休日を出勤日に変えてしまうものです。つまり、事前に計画せずに休日出勤してしまうと、それは代休になってしまうわけです。

休日の振替よりも、代休という言葉の方が一般的になじみがありますから、休日を出勤日に変えて、後ほど休みを取る流れになると、振替ではなく代休という言葉を使ってしまいがちです。

出勤日と休日をキチンと振り替えているならば、休日出勤にはなりませんし、休日労働に対する割増賃金も不要ですけれども、表向きは休日を振り替えているふうになっていても、実際はそれは代休ということもあります。

休日と出勤日を入れ替えるときは、振替の手続きに一本化して、代休という言葉を使わないようにしていったほうがよろしいでしょう。

両方を併用してしまうと、これは振替なのか、それとも代休なのかが分からなくなったり、混乱したりするものですから、出勤日と休日を入れ替える時は、振替の手続きに一本化しておいて、誤解や混乱を招かないようにします。

出勤日と休日を入れ替える際は、先に振り替え休日をとってもらってから、後ほど振替出勤をしてもらう順序が肝になります。また、休日と出勤日を振り替えるとの連絡をいつまでにするか。なるべく早めに伝える方が良いですから、日程を振り替える2日前までに伝える、という形で就業規則にルールを定めておけば、休日の振替に関して分かりやすい環境になります。

 

 

あらかじめ手続きがあったかどうかで振替休日と代休が分かれる

振替休日と代休を分けるキモは、「事前に勤務日と法定休日を入れ替えたかどうか」という点にあります。

休日出勤する前にあらかじめ勤務日と法定休日を入れ替えると振替休日として処理され、一方、休日出勤した後に事後的に休日を設けると代休として処理される。

ここで、休日出勤する前と後でキチンと処理を分けることが可能なのかどうかという点に疑問を抱く方がいらっしゃるかと思います。ここで、「どっちも一緒じゃないのか」と思ってしまう方がいるのも分かります。

人によっては、「事後的に休日を設けるという点では振替休日も代休も同じなのだから、両者を厳密に分けることはできないんじゃないの?」と思うかもしれない。

確かに、そう思うのは尤もです。あらかじめ手続きを実施すれば振替休日になり、事後的に手続きを実施すると代休になるという点で両者は分けられているのですが、「あらかじめ」か、それとも「事後的か」をキチンと分けるのは簡単ではないだろうと思うのでしょうね。

そこで、「あらかじめ」とは、時間的にどれくらい「あらかじめ」であれば、「あらかじめ」と言えるのかが問題となります。

どれくらい時間的に前に処理すれば振替休日として扱われ、どの時点から代休として扱うのか。

 

どの時点までがあらかじめなのか 休日の振替は早めに決める

予めという言葉の意味を辞書で調べると、「物事の始まる前に、ある事をしておくさま。前もって」と定義されている。何かが始まる以前が「あらかじめ」であり、その時点以降は「あらかじめ」ではないということです。

では、振替休日として休日勤務を処理するときの「あらかじめ」という言葉の意味はどのように解釈すべきでしょうか。


休日勤務の1週間前に振り替える旨を伝えれば振替休日として扱えるだろうか。おそらく、これは大丈夫そうですよね。1週間も前に勤務日と法定休日を振り替えると伝えるのですから、これは振替休日と考えて差支えはなさそうです。

では、3日前もしくは2日前に振り替える旨を伝えたらどうでしょうか。これもおそらく振替休日と考えて大丈夫ではないでしょうか。あくまで主観による判断ですが。

おそらく、問題になるのは、1日前から休日勤務が始まるその時までの間です。休日勤務が始まる24時間前以降に勤務日と法定休日を振り替える旨を伝えたときに問題が起こるはず。

辞書の定義に素直に従えば、休日勤務が始まるまでに振り替える旨を伝えれば「あらかじめ」と考えてよさそうです。ならば、17時間前でも12時間前でもOKだし、4時間前でも1時間前でもOKでしょう。さらには、それこそ直前の30分前とか5分前でもあらかじめ振り替える旨を伝えることも可能と言える。

上記の例は極端な例かもしれないが、「あらかじめ」という言葉の定義に基づけば、上記のような振替処理も可能なのですね。「実際に休日勤務が始まるまでならば振替休日にすることは可能なのだ」と言えてしまうわけです。

しかし、あまりにも直前に振替の連絡をされても困りますよね。例えば、日曜日の休日勤務(日曜日が法定休日として設定されていると仮定)が10時から始まるとして、9時30分頃に電話で「今日出勤してくれる?」と伝えればどうか。これは振替休日か、それとも代休でしょうか。

「休日勤務日である日曜日に連絡しているので、もはや代休として扱うべき」と判断するのか。それとも、「いや、10時から仕事が始まるのだから、9時30分に休日振替の連絡すれば振替休日として処理することが可能だ」と判断するのか。

どちらの判断も正解として成立することが可能ですので、どちらが確実に正しいとは言い切れません。

振替休日制度と代休制度の最大の問題は、両者の区別が曖昧だという点にあります。

両者を「あらかじめ」という基準で分けているため、あらかじめという言葉の定義がキチンと定まっていないと、どのような場合に振替休日として扱い、どのような場合に代休として扱うのかが判断できなくなるのです。

意図的に曖昧さを残し、企業と社員間で裁量的に調整できる余地を残すのが労務管理の良さなのかもしれませんが、場合によってはその利点が欠点に変わることもあるのですね。

振替と代休をキチンと区別する方法を考えるならば、「振替手続きに期限を設ける」と良いと思います。

「休日と勤務日を振り替える場合は、休日勤務の3日前までに伝える」という類のルールを就業規則で決めます。そうすれば、あらかじめという言葉の定義で物議を醸すこともなくなるでしょう。

振替処理に期限を設定しないと、いつでも振り替えていいのだと解釈されてしまうので、いつまでも振替と代休の区別が曖昧なままになります。代休と考えるべき時に振替休日として処理している企業も実際にあると思います。

先に振替休日を取ってから、休日出勤する。この順序だと、振替休日を取れなくなるという問題は起こりません。

もちろん、振り替え手続きに期限を設けるのは義務ではないので、実際にルールを設けるかどうかは企業の任意で判断できます。

さらに踏み込んで考えれば、後日に休日を取得できるならば、振替休日に一本化するのが分かりやすいでしょう。

振替と代休を「あらかじめ」という基準で分ける意味はあるのか。また、後で休日を取得できるならば、あえて似たような仕組みである振替休日と代休の2つを用意する必要はないのではないか。

割増手当の有無で両者が異なるのは分かりますが、振替と代休を振替だけに一本化した方が運用は簡単でしょう。後日に休日をキチンと取得できるならば、休日割増も不要ではないかと思います。似たものが2つあるから混乱するのであって、1つに集約されれば、それは避けられます。

代休と休日割増手当をなくして、休日と勤務日を入れ替えたときは全て振替休日にするのが妥当ではないでしょうか。

 

 

振替休日をきちんと取れる利点は?

労働者の休日を確保できる

休日が確保されることで、労働者の健康やモチベーションの維持が期待できます。ちゃんと振替休日を取れるのが前提です。

生産性の向上

休日を適切に取得することで、労働者の疲労が軽減され、生産性が向上する可能性があります。休みが潰れてしまって取れなくなり、休日が減ってしまうと疲れますから仕事の効率を上げて、安全に仕事をするには振替休日を取れるような環境を作るのは大事です。

柔軟なスケジューリング

会社は、業務のピークや繁忙期を考慮して、振替休日を設定することができます。仕事が多い時期に合わせて出勤日を持ってきて、それ以外の日を休みにするために出勤日と休日を振り替えるのは良い方法ですね。業務の継続性を確保できるのも良いところです。仕事が途切れないように出勤日と休日のスケジュールを調整できますので。

労働者の満足度向上

休日を確保することで、労働者の満足度や企業へのロイヤルティが向上する可能性があります。ちゃんと振替休日を取れる職場ならば、この仕事を続けようという気持ちになりますよね。

法令を遵守して働く人が安心

労働基準法等の法的要件を遵守することで、企業のリスクを低減することができます。振替休日が取れないと、雇用契約に違反したり、法定休日が潰れると労働基準法に違反します。法令や契約に沿った人事労務管理ができる職場は魅力的です。休日出勤手当が発生しないのも振替休日の特徴で、あらかじめスケジュールを調整して、出勤日と休日を振り替えれば休日労働の割増賃金は必要ありません。

 

振替休日の対応をするときの問題点は?

業務の遅延

振替休日を取得することで、一時的に業務が遅延する可能性があります。しかし、休日を先に取ってから、後で出勤日を持ってくるようにすれば、この点は対処できるのでは。

スケジュールの調整

休日の振替が頻繁に行われると、業務スケジュールの調整が難しくなることがあります。振替休日は後ろにも前にもスケジュールを調整できますから、休日を取りやすい時期を早めに探っておくのがポイントです。

人事労務管理の手間

振替休日の管理やスケジューリングには、一定の手間やコストがかかることがあります。勤務シフトを調整する必要がありますから、少々の手間はかかります。また、代休と混同されやすい。休日出勤手当が発生しない。この2点についても従業員に十分説明しておかないと、誤解を招いてトラブルになります。

休日を取れるという期待とのギャップ

労働者が振替休日の取得を期待している場合、それが実現しないとモチベーションの低下を招く可能性があります。振替休日が取りづらい職場もありますが、出勤日を先に持ってきて、後から振替休日を取るスケジュールにすると、いつまでも振替休日を取れない問題が生じやすいです。その対処法は、先に振替休日を取ってから、後から出勤日を持ってくると、先に休日を消化できますので問題を回避できます。

 

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