振替休日と代休の境目は「あらかじめ」にある。
「振替休日と代休はどこが違うの?」
この疑問は労務管理では定番で、昔も今も誰かが検索で調べていたりします。
あらかじめ休日と労働日を入れ替える。これを振替休日。
あらかじめ休日と労働日を入れ替えずに、休日労働を実施し、その後に休みを与える。これを代休。
淡白に説明してしまうと、上記のようになります。
さて、問題は、「あらかじめ」という言葉の意味です。
あらかじめ休日と労働日を入れ替えるかどうかで振替休日か代休かが変わるので、「あらかじめ」という言葉の意味が重要になります。
例えば、当日になって、電話で佐藤さんとその上司である荒瀬さんが勤務スケジュールの変更について連絡する場面を考えてみましょう。
荒瀬:「あぁ、佐藤か。今日、日曜なんだけど出勤してくれないか。火曜日を休みにするからさ」
佐藤:「あぁ、はい。分かりました。行きます」
こんなやりとり。
この場合、振替休日でしょうか。それとも、代休でしょうか。
さあ、ムズカシイですよぉ。
「前日までに」があらかじめの意味。
奈良労働局のウェブサイト
http://nara-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/hourei_seido/01kizyunhou/01kizyunhou09.html(リンク切れ)
奈良労働局のウェブサイトを見ると、「遅くても前日までに本人に予告」と書かれています。つまり、「あらかじめ」という言葉の意味を「前日まで」と解釈していますよね。
奈良労働局のウェブサイトのリンクが切れていますので、代わりに厚生労働省の『労働基準法のあらまし』を使って説明します。
労働基準法のあらまし 9ページを見ると、振替休日の説明箇所で『④振替は前日までに通知』と書かれています。
ということは、日曜日と火曜日を入れ替えるには、土曜日までに予定を変更していないといけないわけです。
しかし、当日ではあるけれども、業務が開始されるまでに「あらかじめ」電話で日曜日と火曜日を入れ替えるように伝えていると解釈すれば、先ほどの場面でも振替休日になるとも判断できそうです。
つまり、業務を開始するまでに予定を変更すれば、あらかじめ手続きを完了したと考えるわけです。
しかし、一方で、当日になって、ドタキャン的に休日勤務の予定を入れ込まれているのだから、「こんな急に変更されたら、"あらかじめ"なんて言えないんじゃないの?」とも判断できます。
振替休日と判断することは可能だし、代休と判断することも可能。
こういうことは実際に起こりうるシチュエーションですよね。
労働局の基準では、休日を振り替えるには、前日までに予定を変える必要があるので、ここを会社での基準にするのが無難ですね。
ここまで読んでいると、振替休日には自主規制が必要だと分かりますよね。
いつまでに振替の予定を決めるか。これを就業規則で決めておかないと、上記のようなトラブルに遭遇しちゃうんですね。
例えば、今週の日曜日に休日労働するならば、振替を予定している日の3日前までに振替休日を指定するようにすれば、出勤する本人も対処しやすいでしょう。もちろん、前日までにしてもいいのですけれども、早い方がいいにこしたことはないですからね。
今回の例にあてはめれば、日曜日から3日前だから、木曜日までに振替の予定を決めておく必要があります。もし、金曜日以降に振替の予定を決めたら、それは振替休日ではなく代休(割増賃金+休み)として処理をする。
「あらかじめ」という言葉の意味を限定しておくのがポイントですね。
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