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解雇予告手当を支払ったから解雇は有効になるわけではない

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■解雇予告手当を支払ったから解雇は有効になるわけではない◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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お金で解決できないのが解雇の難点。
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解雇予告手当を準備すれば足りる、、、わけではなさそう。

解雇を実施するときは、労働基準法の20条(以下、20条)に基づいて、期間に余裕を持って解雇の予告をするか、解雇予告手当を支払うかという2つの選択肢があります。もし、30日前に解雇の予告をすれば、解雇予告手当不要。10日前に解雇の予告をすれば、20日分の解雇予告手当が必要。また、すぐに解雇するときは、30日分の解雇予告手当を用意するわけですね。なお、労働基準監督署の認定(20条3項)を受けると、解雇予告なしで解雇を実施することも可能です。

20条を素直に読むと、余裕を持って解雇の予告をしたり、予告手当を用意すれば解雇できると解釈できます。「あぁ、解雇するときは、予告するか手当を用意すればいいんだな。この20条の手続きをキチンと実施すれば足りるのだな」と思うわけですね。

確かに、20条を読めば上記のように思うのも無理のないことです。

しかし、実務では20条だけで足りるわけではなく、労働契約法の16条の条件も満たさないと解雇として成立しないように仕組まれています。

労働契約法:
第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

このルールがあるために、実務では困る場面に遭遇してしまうことがあります。







お金を払うだけでは解雇できない

労働契約法16条があるために、解雇予告を実施したり解雇予告手当を用意したからといって、解雇が有効になるとは限らないという場面に遭遇します。


解雇を実施する場面では、「予告や手当の支払い」と「解雇が有効かどうか」は別のものとして扱われるために、解雇の手続きが曖昧になります。

もし、20条に基づいて、予告をキチンとすればいい、予告手当をキチンと支払えばいいと判断するだけならば、客観的に解雇の手続きを実行できます。予告するか手当を用意するという2点が解雇の条件なのですから、手続きは明瞭です。

しかし、20条だけでなく、労働契約法16条が加わってくると、20条で客観的に解雇の手続きを実行することが可能になっているにもかかわらず、途端にその客観性が失われてしまいます。「客観的に合理的な理由」を要求し、「社会通念上相当であるかどうか」を判定しなければいけませんので、人の主観が入り込んでしまうわけです。

つまり、20条は客観的だが、16条は主観的という特徴がありますね。


20条だけで解雇できるならば、さほど解雇に関するトラブルは起こらないだろうと思います。日数を基準に予告と手当を組み合わせればよいのですから、主観が入る余地はまず無いはずです。しかし、労働契約法16条が解雇の手続きに加わってくると、いつになっても解雇が完了しないこともあり得ます。

まず、「客観的に合理的な理由」があるかどうかを客観的に判断するのはなかなか難しいでしょう。解雇の理由が客観的に合理的かどうかは、当事者(企業と社員)の思想や価値観で判断することなのでしょうから、当事者であるお互いの判断が一致することは容易ではありません。企業の立場だと、「この解雇は合理的な理由がある」と判断できたとしても、社員側で、「いや、この解雇には合理的な理由がないので無効だ」と主張する場面がほとんどでしょう。企業はより解雇が実現しやすいように判断するでしょうし、社員はより解雇が実現しにくいように判断するでしょう。このように、主観で解雇を判断すると、解決にいたるまで随分と時間が必要になります。

また、「社会通念上相当であるかどうか」という点はさらに厄介です。そもそも、「社会通念」とは何かという点が疑問です。辞書では、「社会一般に通用している常識または見解(大辞泉より)」と定義されていますが、これではなおさら分かりませんよね。要するに、「社会通念=常識」ということなのでしょうから、では「常識」とは何かが疑問になりますよね。辞書では、「一般の社会人が共通にもつ、またもつべき普通の知識・意見や判断力(大辞泉より)」と定義されています。う~ん、、、これでも分かりません。

つまり、「社会通念上相当であるかどうか」という基準は、キチンと定義できない言葉を使って、解雇の良否を判断しているのでしょうね。

何かを判断するためには、キチンとした基準が無いとキチンとした判断は難しいと思います。基準がグラグラしているのに、どうしてマトモな判断ができるでしょうか。

ゆえに、何をもって適正な解雇とするかは客観的に定まっていないのですね。そのため、何をもって解雇権の濫用かも判断できません。


解雇まで期間を設けたとか、解雇のための手当を用意したかという基準だけでなく、人の気持ちが納得したかどうかまで要求してしまっているのですね。








解雇するための条件を分かりやすく

労働市場では、「解雇しやすいと、雇用しやすくなる」し、「解雇しにくいと、雇用しにくくなる」のが正常です。「雇用すればまず解雇できない」と企業に思わせてしまうと、雇用に対して消極的になります。この姿勢は労働者にとっては不都合なはず。企業は雇用に対しては積極的でいて欲しい、と労働者は思っているでしょうからね。

しかし、「積極的に雇用して欲しいけど、解雇はダメ」と要求してしまうと、企業への負担が大きくなってしまいますよね。積極的に雇用するならば、積極的に解雇することも認めなければいけませんし、一方、解雇はダメとするならば、雇用も消極的になることを認めなければいけないでしょう。


それゆえ、私は、解雇規制を緩和するのがよいと考えています。労働契約法16条を加えて解雇を判断するのではなく、労働基準法20条だけで解雇を判断するわけです。

ただ、現状の労働基準法20条ではおそらく内容が不足しているかもしれません。1ヶ月の予告や手当だけでは次の仕事まで持たないはずです。それゆえ、解雇の予告期間をより延ばす(3ヶ月前、4ヶ月前など)か、解雇予告手当の額を1ヶ月分ではなく3ヶ月分や4ヶ月分に増やすと良いでしょう。

労働基準法には打切補償(労働基準法81条)という制度がありますが、この仕組みを参考にすれば良いのではないかと思います。ただ、1,200日分というのは多すぎますので、この部分までは参考にする必要はないでしょう。


解雇のように人の感情が入り込みやすい問題は、なるべく定量的な基準を使って解決するのが望ましいはず。個々の感情や価値観ををぶつけ合い、ヤイヤイとやりあって時間を浪費するよりもいいのではないかと思います。

他の例では、内定取り消しに対して補償金を出しているのも上記と同じような発想ではないでしょうか。内定を取り消しが有効だとか無効だと争うよりも、補償金で解決する方が早いでしょうし、内定を取り消された人も挽回しやすいはずです。


ゆえに、解雇が有効かどうかを判断するときは、主観に基づく基準を使ってはいけません(使うべきではない)。



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労務管理の問題を解決するコラム

職場の労務管理に関する興味深いニュース

【仕事のQ and A】

決まったことを決まった手順で処理するのは難しいものではありません。例えば、給与計算。毎月1回は給与が支給されるので、その計算作業も毎月ありますけれども、頭を悩ませるほどのものではありません。

他には、雇用保険や社会保険への加入手続きもちょくちょくと発生しますけれども、これも必要な書類を揃えて出すだけですから難しくない。

労務管理ではルーティンな業務があり、それらを処理するには特別な能力や知識は必要ありません。

しかし、時として、普段は遭遇しないような問題が起こります。例えば、休憩時間を1回ではなく何回かに分けて取るのはいいのかどうか。有給休暇を半日や時間単位で細かく分けて取ると便利なのかどうか。仕事着に着替える時間には給与は支払われるのかどうかなど。答えが1つに定まりにくい問題が労務管理では起こります。

  • Q:会社を休んだら、社会保険料は安くなる?
  • Q:伊達マスクを付けて仕事をするの?
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  • Q:休憩時間を分けて取ってもいいの?
  • Q:残業を許可制にすれば残業は減る?
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このような問題に対して、どのように対処するか。それについて書いたのが『仕事のハテナ 17のギモン』です。

 

仕事のハテナ 17のギモン

【1日8時間を超えて仕事をしたいならば】

毎日8時間の時間制限だと柔軟に勤務時間を配分できないので、月曜日は6時間の勤務にする代わりに、土曜日を10時間勤務にして、平均して8時間勤務というわけにはいかない。

しかし、仕事に合わせて、ある日は勤務時間を短く、ある日は勤務時間を長くできれば、便利ですよね。それを実現するにはどうしたらいいかについて書いています。

残業管理のアメと罠

 

残業管理のアメと罠

【合格率0.07%を通り抜けた大学生。】

私が社労士試験に合格したのは大学4年のときで、いわゆる「現役合格」です。けれども、3年の時に一度不合格になって、ヘコんだんです。「たかが社労士試験ごときにオチたのか」って。

どうすると不合格になるか。どんなテキストや問題集を使えばいいか。問題集の使い方。スマホをどうやって社労士試験対策に活用するか、などなど。学生の頃の視点で書いています。

社労士試験というと、社会人の受験者が多いですから、学生の人の経験談が少ないんですよね。だから、私の経験が学生の人に役立つんじゃないかと思います。

大学生が独学で社労士試験に合格する方法: 合格率0.07%の軌跡 Kindle版

 

合格率0.07%を通り抜けた大学生。

【学生から好かれる職場と学生から嫌われる職場】


高校生になれば、アルバイトをする機会があり、
過去、実際に経験した方、
もしくは、今まさに働いている学生の方もいるのでは。

中には、
「学生時代はアルバイトなんてしたことないよ」
という方もいらっしゃるかもしれません。

そういう稀な方は経験が無いでしょうけれども、
学生のアルバイトというのは、
何故か、不思議と、どういう理屈なのか分かりませんが、
雑というか、荒っぽいというか、
そういう手荒い扱いを受けるんです。

若いし、体力もあるし、
少々、手荒に扱っても大丈夫だろうという感覚なのでしょうか。

それ、気持ちとしては分かりますけれども、
法令上は、学生も他の従業員と(ほぼ)同じであって、
一定のルールの下で労務管理しないといけないのです。

もちろん、
18歳未満は夜22時以降は働けないとか、
8時間を超えて働けないとか、
そういう学生ならではの制約は一部ありますけれども、
それ以外のところは他の従業員と同じ。

週3日出勤で契約したはずなのに、
実際は週5日出勤になっている。

休憩時間無しで働いている。

採用時に、1日5時間働くと決めたのに、
実際は1日3時間程度しか勤務させてもらえない。

「学生には有給休暇が無い」と言われた。

テスト休みを取って時給を減らされた。

など、
やってはいけない労務管理がなされてしまっている
という実情もあるようです。

何をやってはいけないかを知らないまま、
間違った対応をしてしまうこともあるでしょう。

(知らないからといって許されるものではありませんけれども)

このような労務管理をすると、学生から好感を持たれ、
辞めていく人が減るのではないか。

一方で、
「これをやってしまってはオシマイよ」
な感じの労務管理だと、
ザルで水をすくうように人が辞めていく。

学生から好まれる職場と嫌われる職場。

その境目はどこにあるのかについて書いたのが
『学校では教えてもらえない学生の働き方と雇い方 - 35の仕事のルール』
です。

 

「学生が好む職場」と「学生が嫌う職場」 その違いは何なのか。

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