あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

テレワーク(在宅勤務)の費用は会社負担それとも本人負担?

テレワーク手当

 

テレワークは在宅で勤務するものというイメージがありますけれども、他にもサテライトオフィス勤務やモバイル勤務という形態もテレワークに含まれます。

ちなみに、 テレワークとリモートワークの違いは特になく、どちらの言葉を使っても同じ意味で通じます。同じことを違う表現で伝えると違う意味があると思うものですが、そうではないんですね。

サテライトオフィス勤務とは、普段働いている職場が本社で、サテライトオフィスが支社や支店というイメージになります。ですから、働いている場所だけが変わるので、本社で働いていた、つまりは以前働いていた職場と同じ条件でサテライトオフィスでも働けます。

以前は東京で働いていたけれども、サテライトオフィスとして群馬で働くようになったとなれば、働く場所が変わったものの、労務管理でのルールは東京で働いてた頃と同じ。これがサテライトオフィス勤務形態によるテレワークです。

モバイル勤務とは、ノートパソコンやタブレット、スマートフォンといった仕事道具を持ち歩いて、働く人がどこで仕事をするかを選ぶテレワークの1つの形態です。

今日は図書館で働いて、昨日はカフェで仕事をしていた。ならば、明日はネットカフェで仕事をしてみる。他にもホテルに滞在して仕事をする。こういうのもモバイル勤務に含まれます。フリーアドレス制を職場外に広げたような感じですね。

テレワークと言うと、まず在宅勤務を思い浮かべてしまうところですけども、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務という形態もテレワークに含まれるわけです。

 

テレワークを導入する目的は?

感染症対策のために導入するのか。導入するとしてもずっと続ける恒常的な制度にするのか、それとも臨時もしくは緊急的な措置としてテレワークを導入するのか。

さらには、台風など自然災害が起こった時にもテレワークができるようにするのか。夏の終わり頃は台風で電車が動くなる動かなくなることがありますし、雪が降って交通機関が動かなくなることもあります。感染症に限らずテレワークを利用できる場面がありますから、どういう目的でテレワーク制度を導入するのかというところをはっきりさせておきます。

テレワーク規定や就業規則に、テレワークを導入する目的を最初の条文に書いておきます。

 

テレワークの対象になる業務は?

コンピューターを使ってする仕事だったら、職場のほぼすべての仕事をテレワークの対象業務にできるかもしれません。しかし、テレワークではできない仕事も世の中にはありますから、テレワークの対象業務になるか、対象にならない業務か、これを分ける必要があります。
例えば、タクシー会社だったら、タクシーを運転してお客さんを運ぶ業務はさすがにテレワークではできません。実際に車に乗って、お客さんを乗せて目的地まで運んであげないと価値を提供できませんから。タクシーを運転する仕事はテレワークにできないとしても、お客さんから配車リクエストを受けて、運転手に伝える、こういう配車の業務だったら、電話やパソコン、タブレットなどの通信機器を使ってできるでしょう。

お客さんから「タクシーをお願いします」という電話を受けて、稼働中のタクシーの運転手に指定の場所に迎えるかどうか取次をする仕事だったら、テレワークでも対象業務になりますよね。

 どの業務がテレワークの対象業務になって、一方で、テレワークの対象業務にならない仕事はどれなのか。この境目を決めるのもテレワークの仕組みを構築する上では必要です。

現場から離れてできる仕事なのか。現場から離れてはできない仕事なのか。テレワークの対象業務になるかどうかの境目を決める際の基準はここにあります。 

タクシー会社だけじゃなく、花屋で花を売る仕事。レストランで料理を作る仕事。出来上がった料理を運ぶ仕事。トラックに荷物を乗せて運ぶ仕事。テレワーク、テレワークと言われても、テレワークでは仕事にならないような商売もありますから。そういう商売をやっている会社で、どのようにテレワークを実施していくのかが考えどころですよね。 

 

テレワークで使った費用と私生活で使った費用の境目は曖昧

個人事業主として事業で商売をしていれば、仕事で使った光熱費や通信費、仕事で使う道具を購入する費用は経費にできます。

しかし、給与所得者である会社員は、仕事でかかった費用は会社が負担するのが通常です。例えば、業務で使う備品を買い出しに行って、代金を立て替え払いし、領収書なりレシート受け取った上で会社に持って帰ると、その費用を払ってもらえます。仕事で使う経費を自分で出すという経験があまりないのが給与所得者の特徴です。

所得税では給与所得控除という形で給与所得者に対して年間の経費控除が概算で認められていますけれども、仕事で使っているものを自分でお金を払って、それを給与所得控除で相殺するというような感覚を持っている方は少ないのではないでしょうか。

税金や社会保険料は給与や賞与から天引きされていますし、税金の処理も会社が年末調整でやってしまい、確定申告を経験した方は少ないのではないでしょうか。住宅ローン控除を使う時など、何らかのイベントが発生すれば確定申告をするかもしれませんけれども、大半の方は会社におんぶに抱っこの状態で、年末調整をやってもらって、自分自身で確定申告の手続きをしないものです。

仕事で使うものは会社が用意するのが当たり前。だから会社員として働いている人は自分で仕事の経費を出す必要はありません。とはいえ仕事で使うスーツだとかビジネスシューズやバッグ、スマートフォンも、自分で用意したものを仕事で使いますから、給与所得控除が用意されているのです。業務用の携帯電話を用意せずに、個人の携帯に仕事の連絡をしている。そういう使い方をするのはごく普通ですから、自分自身の私物を職場なり仕事で使っているなんてことは珍しいことではありません。

職場で仕事をしているならばいいとしても、在宅でテレワークするとなると、本来は発生しなかった費用が発生します。その費用を会社が負担するのか、それとも本人が負担するのかは気になるところです。

仕事で使っている費用だからといって、全部会社が負担するのかというと、私生活で使っている部分もあるでしょうから、全額を請求できるわけでもなく、かといって全て本人の負担になるわけでもない。リモートワークの費用なり経費といったものをどちらがどれだけ負担するか、という境目を決めなければいけないのです。 

リモートワークやテレワークで使う電気代や通信費、デスクやチェアーなど、在宅勤務で発生しているそれらの費用は、給与所得控除で吸収するものなのか(労働者が自己負担)、それとも会社が手当という形で支給するのか、ここが考えどころです。

税金のことを考えれば、実際に発生した費用を手当として払うならば、会社はその費用を非課税にすることができますけれども、実費に連動せず定額でテレワーク手当のような名目で支払うと課税される費用になります。

 

 

 

テレワーク手当に集約して支給する

個別にかかった費用を集計して、会社がそれを支払っていくのは現実には面倒で困難です。となると、例えば、テレワークを1日実施するごとに200円を手当として支給すると、月に10日ならば2000円になります。これぐらいシンプルにしないとテレワークの仕組みとしては続けられないでしょう。

通信費や光熱費、文具代、デスクやチェアーの購入費、そういったものを全部コミコミでテレワーク手当という形で払ってしまうのが分かりやすいですね。特別に必要になった費用、例えば郵送代など、テレワーク手当で吸収しきれない費用が発生したときは、個別に領収書でもって支払う形にすればいいでしょう。

在宅勤務で使った電気代はいくらなのか。ガス代は。水道代は。さらに通信費は。となると、それらの支出は私生活で使っている部分と混ざった状態ですから、その明細を分けるというのは難しいですし、無理と言っても過言ではないのでは。

どうしても分けたいとなったら、電気の配線やガス配管も別で引かなければいけないくらい大層な工事が必要になります。そこまでしてやるほどのことじゃありませんよね。 

通信費を例にすると、通信費用は毎月定額ですから、何 GB(ギガバイト)を 私生活で使って、何 GB を仕事で使ったか、などといちいち分けるのは非現実的。仕事で使う専用の格安 SIM とか、月額3000円ぐらいで使える回線を用意して、それを仕事だけで使うという方法もあるにはありますけれども。また、私生活で使った電気代は何 kwh(キロワットアワー)で、仕事で使った電気代は何 kwh なのか。これも分けるのは困難です。ガスも電気と同じです。

となると、テレワーク手当として支払う金額は、毎月3000円とか毎月5000円のように定額で支払うのが妥当です。この手当は課税されますが、費用の明細を分けるコストのほうが高く付くのではと。ですから、全部コミコミで1つの手当で対応するのが最も簡単な方法です。通信費、電気代、ガス代こういったものを全部込みでテレワーク手当に集約しておけば、使用者も労働者も納得しやすいのではないでしょうか。 

次に、テレワーク手当を支給する条件を設定するにはどうするか。対象者や勤務日数、金額の調整といった条件の設定です。

1ヶ月のうちテレワークを何日実施したかによって、日割りで計算してテレワーク手当を支給することができます。例えば、1ヶ月の所定労働日数が20日だとして、テレワークで勤務したのがそのうち10日だとすると、テレワーク手当は半分という計算になります。満額だと毎月3,000円のところ、テレワークで在宅勤務したのは10日ですから、その半分の1500円をテレワーク手当として支給するというわけです。

テレワーク手当は、テレワークを実施した日数に応じて定額で支給していくのが妥当でしょう。 1日何時間勤務でもテレワーク勤務1日とカウントするのかどうか。ここも論点の1つになります。1日あたりの勤務時間を問わずに日数をカウントしていくのか。1日4時間以上のテレワーク勤務をしたら1日とカウントするのか。こういう条件設定も就業規則やテレワーク規定で基準を設定しておく必要があるんですね。

判断する基準を作っておく取り組みは、労務管理において重要な仕事になります。 

他には、1か月当たり5日以上の在宅勤務を行った人に対してテレワーク手当を支給する、という線の引き方もあります。この条件だと、在宅勤務の日数が4日未満の人には手当を支給しません。 

しかし、在宅勤務日数が5日未満の人であったとしても、テレワークをしたことには変わりはありませんから、その人たちを手当ての対象外としてしまうと、物議を醸すかもしれません。手当の対象外になるからテレワークをしないでおこうとか。ちょっとでも出勤して5日以上のテレワーク日数になるようにしたり。このように制度に歪みが発生してしまう心配があります。ですから所定労働日数に応じた日割りで支給するのが分かりやすいでしょう。

他には、通勤手当をどうするかも考えどころですね。以前だったら通勤定期券を使って職場まで行き来していたのでしょうけれども、テレワークだと電車やバスに乗る必要ありませんから、通勤定期券を買う必要はなくなります。そのため、実際に出勤した日に応じて実費を支払って清算する、と決めておくと良いです。方法としては、Suica(地域ごとに名称が違うIC乗車券がある) の乗車履歴を見せてもらって、実費精算すれば、きちんと支払ったことが証明されているので、対応しやすいですね。 交通費の実費精算は、利用状況が把握できる IC カードを利用した場合に限る、というようなルールの決め方もあるでしょう。 

条件をどれぐらい作り込んで、どれぐらいの塩梅にしてシンプルにしておくのか。アクセルとブレーキの踏み分けのようなものですね。 

 

 


テレワーク手当を超える費用が発生したら本人負担にする

支給するテレワーク手当の額を超える費用が発生したら、在宅勤務者本人の負担とすると決めて、会社が支給するのは定額のテレワーク手当まで、としておきます。費用の補助をテレワーク手当に集約していくならば、その金額を超過した場合は本人負担にする。こういう境目の設定の仕方をしておいて、お互いにどこからどこまでを負担するのかがはっきりわかるようにするのが親切な仕組みです。

テレワーク手当を超えると本人負担になるので、「なるべく節約しよう」という意識も生まれやすくなります。人間は、他人のお金を平然と使う傾向がありますが、自分のお金に対してはケチになるものです。

なお、本人に負担させる部分がある場合は就業規則に定めておく必要があります(労働基準法89条5項)。 

給与所得者には先ほど書いたように給与所得控除がありますから、支給されるテレワーク手当と給与所得控除、自己負担したテレワーク費用は、その両者を合わせて吸収していくという形になるでしょう。 

このように会社や従業員がお互いに判断できる基準を作っておくのが労務管理の役割なのです。 判断する基準がないから、当事者が主観的に判断して、その結果トラブルになるわけです。

PCやモバイルルーターなど、そういったものを会社が貸与するなら、その費用は会社が負担するのか、それとも貸与を受けている人たちのテレワーク手当を少し減らすのか。この点もテレワークでは悩むところ。

自分で道具を用意する人たちがいる一方で、コンピューターや通信環境を会社から提供してもらう人がいるわけですから、その両者の差をどのようにして調整していくのか。自分で全部用意する人たちはそれでいいとしても、会社から貸与される人にはテレワーク手当の額を調整するのか、それとも完全に会社が全部負担して道具を提供するのか。 

自宅に固定の通信回線がない人もいるでしょうから、そういう人に対してはモバイル wi-fi ルーターを貸し出すのではないかと。固定回線のように通信量無制限で使えるルーターもありますから、それならば毎月4000円とか5000円ぐらいで固定回線の代わりに使ってもらって、テレワークができるでしょう。 

ドコモのhome 5Gのような据え置き型の通信端末を貸し出すのもいいですね。エリアが広いですし、データ量無制限ですから。

通信回線用のルーターを貸し出ししてもらう人と、してもらえない人の差がありますから、貸出を受けた人に対してはテレワーク手当を毎月300円減額するというような工夫もアリです。自宅に固定回線がある人は貸出を受けられないわけですから、その人達との差が分かるようにテレワーク手当にも違いを設けるわけです。

自分が所有する PC を持っていない。そういう方もいますから、その人に対して会社が PC を貸し出しするとなると、貸し出しを受ける人と受けない人の差をどのようにして埋めていくのか、テレワーク手当で差をつけるのか、それとも差をつけずに無償で貸すのか。ここでも就業規則やテレワーク規定で判断する基準を設けなければいけないのです。 

 


貸与した通信機器の私的利用を認めれば、通信機器の使い方に習熟するのも早い

タブレットなどを貸し出しすると、テレワーク規定や就業規則でそれらを私的に利用してはいけない、というルールが設けられてしまう傾向があります。会社が貸してるものだから仕事以外では使うな、という意図なんでしょうね。

しかし、仕事の時しか使わないとなると、使いこなすまでに時間がかかり、人によっては使うのが嫌になったりします。ですから、あえて仕事の時に使うだけでなく、私生活での利用も認めることで、早く使いこなせるようになる、という利点があります。

また、個人的に使ってもいいとなると、本人も喜んで普段から使ってくれるでしょう。天気予報を見たり、地図を調べてみたり、料理のレシピを調べたり、ストリーミングビデオ視聴したりと、私的に利用すると端末の操作に習熟する速度も速くなりますし、業務でも積極的に使ってくれるようになるという利点を見込めます。そういう便利なものを会社から提供されているわけですから、本人は嬉しくなってどんどん使いますし、気分が良いから仕事でも積極的に使うでしょう。 

貸しているものだから私的に使ってはいけないと決めてしまうのではなく、あえて私生活でも積極的に使ってもらうことで、仕事での利用も促進していく。そういう効果を狙っていくように工夫するのもいいのではないかと。

例えば、iPadを貸し出ししますと言われて、仕事用に貸し出しされても、業務以外では使ってはいけないとなると、使っている本人としてはつまらないものです。自宅に持ち帰って好きなように使ってもいいというルールにすれば、本人はiPadを買わなくてもいいですし(これは大きいメリット)、普段の生活で使えます。さらに、 iPad に習熟する速度も速くなり、私的利用の利点は複数あります。

貸しているんだから私的に利用してはいけないのは、セキュリティーで心配があるのかもしれませんが、モバイルデバイスにはリモートスワイプ機能があります。もし何らかのトラブルがあっても、遠隔で操作して端末のデータを消去するなど、セキュリティーをコントロールできるようになっています。

Apple のデバイスには、 MDM(mobile device Management )機能があり、会社が貸与した iPad を集中的に管理する方法が用意されています。

「iPad MDM」で検索すれば、Apple のウェブサイトで MDM の詳細について説明されています。

MDMでのiPhoneおよびiPadデバイスの制限 - Apple サポート (日本)

 

MDM 機能で iPad の動作を制限できるのですけれども、制限すればするほど使う魅力も低下してしまいますから、私的利用を制限しているのと同じ状態になってしまいます。

遠隔操作で端末の中のデータを削除するという機能は必要かもしれませんが、ブラウザー(safariなど)が使えなかったり、業務用のアプリ以外のアプリが使えなかったり、と制限がかかっていると使いたくなくなります。端末の操作にも習熟しないので、業務にも支障が出るというか効率が良くならない、そういう悪循環も考えられます。 

制限は少なめにして、私生活でも使ってもらって、早く使いこなせるようになってもらうようにしたほうが良いでしょうね。 


判断する基準分かりやすくしておくのが就業規則やテレワーク規定の目的ですから 、テレワークの費用にどう対応するのかも労務管理では決めておく必要があるわけです。

 

参考:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚生労働省)

 

 

労務管理をラクにする給与計算ソフトとは?
仕事での定型的な事務作業は、なるべく省力化して済ませたいものですから、手作業で給料計算するのではなく、作業を楽にしてくれる給与計算ソフトを使うのが望ましいでしょう。

 

 

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