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会社を設立して社長が1人だけでも社会保険に加入する必要があるか

会社設立

 

社長1人の会社だから社会保険に入らなくてもいい?

個人事業主だと、国民健康保険と国民年金に加入しているでしょうが、会社を設立すると個人事業主とは別の形で社会保険に入ることになります。なお、この場合の会社は法人だと考えてください。

会社を設立したばかりで、社長が自分1人だけ、他の従業員はいない。そういう環境で社会保険に入る必要があるのかどうか。自分1人だから社会保険に加入しなくてもいいんじゃないかと思えるところ。

社会保険に加入しなかったとしても、不利益を受けるのは自分自身ですから、自己責任と割り切れば、社会保険に入らなくても、その不利益は自分だけで完結します。さらに、他の人にも迷惑をかけてないのでいいだろう。そう考えてしまいますよね。

従業員として他人を雇って商売をやっているなら、個人的な判断で社会保険に入らないと判断はできませんけれども、社長1人しかいない会社だと、加入しなくてもいいんじゃないかと思ってしまいますよね。

健康保険法3条には『法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの』と書かれており、社長1人の会社この内容に当てはまります。また、厚生年金保険法では6条(法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの)に健康保険法と同じ内容が書かれています。

人数に関する条件が書かれていないのがここでのポイントです。常時使用する従業員が10人以上なら適用事業者になるとか、5人以上なら適用事業所になるなどと人数に関する条件が書かれていませんので、社長が1人の法人であったとしても健康保険と厚生年金の適用事業所になります。 

健康保険と厚生年金、このそれぞれに被保険者になる適用条件が設定されていますから、その条件に当てはまれば、被保険者資格を取得して社会保険に入らなければいけませんし、条件に当てはまらなければ加入しなくてもいいと判断できます。

 

 


健康保険と厚生年金ではそれぞれ加入条件が違う

会社を設立したとなれば、その会社はおそらく法人でしょうから、社会保険では法人の場合は被保険者の人数に関わらず強制適用事業所になります。これは上で説明した通りです。先程の内容は、被保険者の話ではなく、事業所が社会保険の適用を受けるかどうかが焦点でした。

適用事業所になったからといって、その事業所に所属している人たちも被保険者になるかどうかはまた別の話です。被保険者として社会保険に加入するかどうかは適用条件に該当するかどうか、また別で判断しなければいけないところです。


75歳以上の人は後期高齢者医療制度の被保険者になるため、健康保険(協会けんぽのもの)には加入できません。仮に、会社を設立した社長が77歳の人なら、その会社は適用事業所になるけれども、社長自身は健康保険に加入することなく後期高齢者医療制度の被保険者になるわけです。

なお、75歳未満の社長ならば、協会けんぽの被保険者になります。 

一方、厚生年金では70歳未満の人が適用対象になり、被保険者になります。健康保険では75歳未満の人が被保険者になり、厚生年金では70歳未満の人が被保険者になる、という違いがあるわけですね。

社長1人だけの会社、法人の会社ですが、仮に社長の年齢が73歳だとすると、健康保険には加入して、厚生年金には加入しなくていいんじゃないか、と思えるところ。しかし、社長は事業主ですから、厚生年金では事業主については年齢を問わず被保険者資格を取得する手続きをしなければいけません(厚生年金保険法27条)。

社長以外つまり事業主以外の方だったら、70歳未満かどうかで厚生年金の被保険者資格を取得するかを判定していけばいいのですけれども、 事業主が厚生年金に加入するかどうかを判断する時は、年齢を問わず被保険者資格を取得しなければいけないのが注意点です。

会社を設立して社長1人だけの会社であっても、その会社が法人であるならば適用事業所になりますし、年齢上の条件に当てはまれば健康保険に加入します。さらに、厚生年金は、年齢にかかわらず事業主は被保険者資格を取得して加入しなければいけないわけです。 

 

 


社会保険料を大幅に節約する方法 「個人事業主の社会保険」と「法人の社会保険」の違い

個人事業で社会保険に加入する場合であれ、法人経由で社会保険に加入する場合であれ、どちらも社会保険に加入しているという点では同じですけれども、両者には違いがあります。

最も大きな違いは社会保険料の払い方です。

個人事業主は、売上から経費を除いたものが全てその個人事業主の売上なり年収、収益といったものになり、その数字に対して社会保険料がかかってきます。

例えば、売上から経費を除いたものが毎月200万円あるとすれば、この個人事業主の月収は200万円です。仮に社会保険料を30%とすると、200万円の30%ですから60万円が社会保険料です。

しかし、実際の社会保険料には上限がありますから、国民年金は毎月定額(17,000円弱)で、国民健康保険料にも上限額が設定されています。そのため、この両者を合わせても社会保険料が毎月60万円になるということはありません。

大阪市の国民健康保険を例に挙げると、医療分の保険料の年間賦課限度額は63万円。後期高齢者支援分の年間負担額の上限は19万円。介護分の保険料の年間負担額の上限額が17万円。この3つを合わせると、年間で99万円が国民健康保険料の上限額です。これを1ヶ月あたりに換算すると82,500円が国民健康保険料の月あたりの上限額になります。月収200万円であれ、月収500万円であれ、月収1,000万円であれ、国民健康保険料の額は毎月82,500円で同じになるというわけです。 

収入が10倍になったら、社会保険料も10倍になるか。

一方、法人の場合は、法人が得たお金で、そこに所属する被保険者、今回だと社長が1人だけですから、法人が個人である社長に対して報酬を支払うわけです。

法人が得た利益は200万円だとして、その200万円から個人である社長に対して支払う報酬を仮に毎月20万円とすると、社会保険料はいくらになるか。社会保険料率を30%と仮定すると、20万円の30%ですから、毎月6万円。さらに、この6万円を法人と個人で折半し、個人である社長が負担する社会保険料は毎月3万円です。

流れるお金は同じでも、社会保険料は個人と法人で違います。

個人事業主なら、売上から経費を除いた利益は全額本人の収入になり、その収入を基準に社会保険料が決まってしまいます。しかし、法人を設立していれば、法人にお金を残して、個人に支払う報酬を減らしていくと、社会保険料もそれに連動して減ります。法人がお金を貯めるダムのような役割を果たしているのです。 

個人の社会保険料と法人の社会保険料の違いは、個人事業主は入ってきたお金が全て社会保険料の計算の対象になる。一方、法人ならば、得た収益をある程度法人に滞留させておき、そのうちの一部を個人である社長に支払うという形で、お金の流れを調整することができます。

社会保険料を節約しようと思えば、法人にたくさんお金を残しておき、個人に支払う報酬を少なくすれば、支払う社会保険料も少なくなります。

社会保険料は個人の報酬に対して計算されますけれども、法人が得た売上には社会保険料はかかりませんから、個人に支払う報酬を減らせば、社会保険料もそれに連動して減っていく、という仕組みになっています。

ですから、法人会社を設立している場合は、なるべく法人にお金を残しておき、個人である社長には役員報酬を少なめに支払う。これが合理的な判断となります。

 

 

個人事業と法人事業、この両方に取り組んでいたら、どちら側で社会保険に入るのか

個人事業主だと国民健康保険と国民年金に入りますが、法人だと協会けんぽの健康保険に入り、厚生年金にも加入します。

では、個人事業として事業をやりながら、なおかつ法人の方でも別の事業をやっているという状況で、個人事業主の身分と法人での代表者という身分、この2つを持っていたとすると、社会保険はどういう加入状況になるのか。

社会保険に2つも入るのは無駄ですから、どちらか片方だけでいいんじゃないか、と思えます。どちらか片方だとすると、個人事業の方の社会保険に入るのか、法人の方で社会保険に入るのか、迷うところですよね。 

国民健康保険と協会けんぽ、両方の健康保険に入ったところで意味はありませんから、こういう場合は、法人の方の社会保険、つまり国民健康保険ではなく協会けんぽの方の健康保険に加入します。

法人の方で社会保険の被保険者資格を取得すると、国民健康保険の方は適用除外になりますから、健康保険は協会けんぽの方で入ることになります。

国民健康保険法6条では、健康保険の被保険者とその被扶養者は国民健康保険の適用除外になると決められています。この場合の健康保険というのは、協会けんぽの健康保険のことで国民健康保険とは別の制度です。 

協会けんぽの健康保険に入るということは、自ずと年金の方は厚生年金に入るということになります。

補足として、厚生年金の保険料には国民年金の保険料が含まれていますから、厚生年金の保険料を支払うことで、国民年金の保険料も同時に支払っているという扱いになります。

給与明細には厚生年金保険料としか書かれていませんから、ここに国民年金の保険料が含まれているとは表面的には分かりませんけれども、厚生年金保険料には国民年金保険料が含まれています。 

 

 

 

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山口正博 社会保険労務士事務所
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