土曜日は休日。その休日に仕事をしたんだから休日勤務になるの?
普段は土曜日と日曜日が休みの会社(週休2日)で、何らかの理由により、土曜日に3時間だけ出勤したとします。具体的には、9時から12時までの3時間で、休憩は無しです。
平日だと9時から18時までフルタイムで勤務するところ、休日の土曜日だったので、臨時で3時間だけ仕事をした。何か追加の仕事がちょっと発生したとか、来週の受注分を整理するために土曜日に出勤したのか、理由は様々ですが、休日に少しだけ出勤した場面を想定してください。
本来は休みの日なのに出勤したら、休日はどうなるのか、休日手当なり休日割増賃金がでるのかどうか。この点が気になるところです。
今回は、休日である土曜日に3時間だけ仕事をしましたが、この場合、本来は休みであった土曜日はどうなるのでしょうか。休みはなくなっちゃうのか。それとも、別の日に代わりの休日を設定するのか。仕事の時間はフルタイムではなく、3時間だけですから、その時間を除けば休日と言ってもいいわけですが。
土曜日にフルタイムで仕事をすれば上記のように迷うことも無いのですが、中途半端に3時間だけ仕事をしたために、休日も中途半端な扱いになってしまう。この点が困ったところです。3時間出勤しただけで1日分の休日が潰れてしまうのか、それとも違う扱いになるのか。
さらに、もう一点、疑問を抱くポイントがあります。
休日である土曜日に出勤したのですから、休日手当(休日労働に対する割増賃金のこと)が支給されるんじゃないか。そう思う方もいらっしゃるはず。確かに、休みの日に出勤すれば休日勤務ですから、休日手当も必要のように思えます。
では、上記のように、土曜日に臨時で3時間だけ出勤したら、休日手当は支給されるのかどうか。
短時間だけ休日勤務をした後のフォロー。さらに、休日である土曜日に仕事をしたら休日手当が出るのかどうか。この2点が問題となります。
一般的な休日と労務管理での休日は違う
まず、休日勤務の後の処理について。休日である土曜日は消滅してしまうのか、それとも代替的な手段で休日を取れるのか。
対処法は、2つあります。
土曜日に3時間勤務したのだから、他の日に3時間だけ勤務時間を短縮する。もしくは、土曜日とは別の日に休日を設ける。この2つが現実的に選択されうる解決策かと思います。
この場合、どちらを選択しても法律上は問題はないので、好きに選択できます。3時間分の勤務を3時間分の休日で相殺するのもいいし、時間にかかわらず休日に出勤したのだから、別日に振替休日を設けるのもいい。
土曜日に3時間出勤したので、翌週の月曜日は勤務時間を3時間短縮する。こういう形で時間を調整するのも手です。
「僅かでも休日に出勤すれば、その日は休日ではなく出勤日に変わる」という考え方ならば、後者の選択肢(振替休日を設ける)が妥当です。一方、「休日も時間単位に換算できるから、勤務時間数に相当する時間を別日で短縮すれば足りる」という立場ならば、前者の選択肢が論理的に筋が通りますね。
「時間単位の休日」という考え方を取ると、「3時間だけ休んで、後は仕事」というのでは、十分に休めませんよね。何か休みという感じがしないですから、時間単位での休日は避けたほうが良いように思います。3時間だけ勤務時間を短縮されても、1日分の休日の代わりにはならないのでは。
法的には問題ないけれども、社員さんの気持ちを斟酌すると、休日はやっぱり1日単位で取得するほうが嬉しいはず。
また、3時間だけ早退できるとしても、他の人が仕事をしているときに、「お先に失礼しますぅ~」などと言って帰るのは気が引けますよね。後ろ髪を引かれるというか、気持ちがスッキリしないのではないでしょうか。
労務管理では、このような人の気持ちを想像するのが大事なんですよね。法的に問題ないからといって、ズバズバと判断すると、感情的に反発される可能性がありますから、人の気持ちがどう動くかを想定して処理するのがコツですね。
それゆえ、短時間の休日出勤であっても、別日に休日を改めて設けるのが妥当です。
次に、休日である土曜日に仕事をしたら休日手当(休日労働に対する割増賃金)が出るのかどうかという点について。
「休日に仕事をすれば休日労働だ。だから、その休日労働には割増賃金が伴うはずだ」多くの方はこう思っているのではないでしょうか。
しかし、休日労働の「休日」という言葉の意味は1つに固定されているわけではないのです。言葉上は単に休日と表現するけれども、「一般的に理解されている休日」と「労務管理での休日」はちょっと違います。
何が違うかというと、同じ休日労働であっても、割増賃金を伴うものと伴わないものがあるのです。
「休みの日=休日」と考えるのが一般的なのですが、労働基準法ではそのようには考えないのです。法律では、休日手当の「休日」とは、法定休日(1週間に1日の休日。労働基準法35条1項の内容です。労働基準法という法律に書かれているから「法定休日」と表現する)のことを意味します。「法定休日=休日」であって、「休みの日=休日」というようには扱わないのです。
「じゃあ、法定休日と休みの日では何が違うの? どっちも一緒じゃないの?」そう思うかもしれませんね。
単に「休みの日」もしくは「休日」と表現した場合、法定休日はその言葉の中に含まれますが、さらに、法定外休日というものまで含まれます。ちなみに、法定外休日とは、法定休日以外の休日です。つまり、一般的な意味での休日の定義は広く、労務管理での休日の定義は狭いということ。
「法定休日」と表現した場合、それは法定休日のみであって、法定外休日を含みません。
つまり、単純に休みの日とか休日と表現してしまうと、休日の定義が広まってしまい、自らが想定する意味を超えて休日という言葉の意味が解釈されてしまうのです。
もし、出勤した土曜日が法定休日ならば、3時間の勤務に対する休日手当が必要です。しかし、土曜日が法定外休日ならば、休日手当は必要ない。
ならば、今回の事例では、休日手当は必要なのか。それとも、必要ないのか。どっちでしょうか。
答えは、、、、分からない。
分からない。これが答えです。
「ええっ!? 分からないだって? いやいや、ご冗談でしょう。 ここまで話を引っ張ってきて、分からないが答えなわけがないでしょう」こう思うかもしれない。
もちろん、これは冗談ではなく、本当に分からないのです。
とは言うものの、知識がないから分からないわけではなく、前提条件が把握できないので分からないと言うべきかもしれない。
土曜日と日曜日が休みの会社。この点から推測すると、おそらく週休2日制の会社なのだろうと考えられます。つまり、1週間に2日の休日がある。
法定休日は、1週間に1日の休日です。それ以外の休日は、法定外休日。
この2つの条件を組み合わせて、土曜日は法定休日なのか、それとも法定外休日なのか。もしくは、日曜日が法定休日なのか、それとも法定外休日なのか。これは、カンタンに判断できません。
単に、「休みの日である土曜日は法定休日なのか、それとも法定外休日なのか」と聞かれても、分かりませんと答えなければいけなくなります。
どちらか一方が法定休日で、もう片方は法定外休日なのですが、どちらがどちらに該当するのかまでは特定できません。勤務シフトを見れば、ある程度は推測できるかもしれませんが、土曜日と日曜日が休日となっていれば、どちらかが法定休日です。
「日曜日が法定休日だろう」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、日曜日が法定休日とは限りません。労働基準法の32条では、曜日までは指定していないので、日曜日が法定休日である可能性はありますが、同時に土曜日が法定休日である可能性もあります。
「土曜日:法定外休日 日曜日:法定休日」という組み合わせか、それとも、「土曜日:法定休日 日曜日:法定外休日」という組み合わせか。このどちらかです。
もし、就業規則で法定休日の曜日を特定していれば、どの休日に仕事をすると休日手当が支給されるかが分かります。
しかし、「休日は、土曜日と日曜日、および祝日とします」というように就業規則に書かれていたら、どの日が法定休日で、どの日が法定外休日なのかが分かりませんよね。
おそらく、法定休日の曜日を固定している会社は少ないのではないでしょうか。ご自分の会社の就業規則を見ていただければ、法定休日は特定されていないかと思います。法定休日や法定外休日という表現ではなく、単に休日という表現が使われているだけ。これが現実です。
となると、日曜日が休みの日になっていれば、その日が法定休日になり、土曜日は法定外休日と考えられます。そうなると、土曜日に3時間だけ出勤しても割増賃金は付かないという結論になります。
もちろん、法定休日の曜日を固定しないからダメというわけではないので、固定しても固定しなくても何か法的にイケナイというものでもないです。ただ、どの日が法定休日なのかが分からないと、休みの日に仕事をしたときに「休日手当がでるんじゃないか」、「いや、休日手当は出ない」、「休みの日に仕事をしたら支給されるのが休日手当なんだから、出るはず」というようなゴタゴタが起こりかねない。
今回の事例だと、土曜日は出勤になったけれども、日曜日は休みになっているのでしょうから、半ば自動的に日曜日が法定休日になり、一方で、土曜日は法定外休日として扱われる。その結果、土曜日の勤務には休日手当は付きません。法定休日の曜日指定がなければ、このように処理するはずです。
今回の問題を解決する方法は3つあります。
1、事前に決めた休日に仕事はしない。
この方法ならば、休日はキチンと休みになるので、休日手当を支給するかどうかは問題にならない。
2,休日に仕事をした場合は、法定休日であるかどうかを問わず、割増賃金を支給する。つまり、休日手当が出る日と出ない日を分けない。
これは、休日に出勤したら、法定か法定外かを分けず、すべて休日手当を支給する方法です。つまり、休日の定義を労働基準法に合わせるのではなく、一般の基準に合わせるということです。
3,就業規則や雇用契約書で法定休日を固定して、その日に仕事をした場合には割増賃金を支給する。
この方法だと、どの休日に出勤すれば割増賃金が支給されるのかが事前にキチンと分かります。
法定休日の曜日を固定しない方が柔軟性が高くていいのかもしれませんが、上記のように会社と社員の間で判断が異なってしまうときがありますので、一長一短です。
些細なことなのですけれども、労務管理のトラブルは些細なことが原因になる場合が多いように思いますので、キチンと出来る部分は極力キチンとした方が良いでしょうね。
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