労災に加害者がいたらどうなる?

 

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労災というと、例えば荷物を運んでいる最中に、何らかの理由で床に油が溢れていて、その油でツルンと滑り、コケて怪我をするような場面が典型的です。他には、クレーンとかリフトに巻き込まれて怪我をする、配達中に事故を起こすような場合も労災です。

あとは、仕事が原因で発症する心疾患のような病気も労災の対象になります。

通勤中に階段でコケて怪我をしたとか、自転車で職場まで行くときに接触事故に遭ったような場合も労災(通勤災害)の範囲に含まれます。


大半の労災は自己完結型の怪我なり病気なのでしょうが、中には加害者がいるようなケースもあります。

例えば、荷物をトラックに乗せて配送先に運んでいるとき、交差点で赤信号を無視して突っ込んできた車と衝突し、トラックの運転手が怪我をしたような場合。

荷物を運んでいるわけですから、トラックの運転手は業務中で、その最中に怪我をしたのですから、これは労災です。そのため、「じゃあ、労災で治療を受けるんだろう」と思うところですが、普通の労災とは少し違いがあります。

この事故が起こった原因は、交差点で赤信号を無視して突っ込んできた車ですよね。トラックの運転手が自分で運転を誤って事故を起こしたのではありません。

このような場合、労災保険でトラックの運転手は治療を受けられますが、その費用を労災保険側ではなく、事故の原因を作った車の側に回すことができるようになっています。これを「求償」といって、要した費用を、事故の原因を作った人に請求できるのです。

 

ただ、この求償ですが、「請求しなければいけない」ものではなく、「請求できる」という権利になっています。そのため、費用を請求するかどうかは労災側で判断でき、請求しないという判断も可能なのです。

制度の運営者側で請求するかどうかを裁量的に判断できる余地があるため、個々のケースを評価する組織なり人によっては、「請求できたのに請求しなかった」と評価する場合もあるのでしょうね。

 

労災保険は、単年度で保険料収入がざっと1兆円あり、保険給付による支出が8千億円弱(他にも細々とした支出もある)ですから、収支は黒字です。

労災保険の財政規模から考えると、1億円程度の求償漏れがあっても、制度に与える影響は皆無に近く、誤差の範囲と言っても差し支えない程度です。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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