2009/10/4【施設にいるだけで全て勤務時間に?】





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■施設にいるだけで全て勤務時間に?◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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時間管理を緩慢にすると、右から左に勤務時間になる。
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■勤務時間は自己申告で、自由に勤務できる環境は良い?


【神戸大病院、残業代不払い=研修医らに1億6000万円】というニュースについて。
ネタ元(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090930-00000078-jij-soci

>>引用開始

神戸大学付属病院の研修医ら延べ788人に総額約1億6000万円の残業代を支払っていないとして、神戸東労働基準監督署が同大に是正勧告をしていたことが30日、分かった。4月までに全額を支払ったという。
神戸大によると、労基署が指摘した不払いの期間は2007年2月~08年9月。是正勧告を2回、立ち入り調査を3回受けた。
同病院は、研修医らに対し、医療行為に従事する時間や指導を受けている時間について、労働時間として自主申告するよう指示していた。しかし、労基署は自主的な学習などで院内にいた時間すべてを労働時間とすべきだとしたという。
神戸大付属病院総務課の話 長時間の時間外勤務が恒常化しないよう、適切な労務管理に努めたい。 

<<引用終了


最近ではよくありそうな時間外勤務についてのテーマですね。


注目するポイントは、「労働時間として自主申告するよう指示していた」という部分、「労基署は自主的な学習などで院内にいた時間すべてを労働時間とすべきだ」という部分でしょうか。

つまり、神戸大は、「労働時間は管理しないから、各自で申告して下さい」という立場だった。あえて管理しなくても、キチンと報告してくれれば良いだろうと考えていたのでしょうか。

ただ、自主申告というのが曲者で、申告したものの勤務時間として認められなかったという時間もありそうです。


一方、研修医側も、「時間は自主申告なのだから、自由に病院内にいてもいいよね」と考えていたのかもしれません。臨床研修がない日でも、病院内の施設で自主的に学習していたのかもしれません。

いわゆる「勝手に就業」や「勝手に残業」という類いの扱いになるのでしょうか。


そこに、第三者である労働基準監督署が来て、「この状態ではダメ!」と言ってきた。

「院内にいた時間を全て労働時間にせよ」と、、、。

かなり剛腕な是正です。






■分からなければ働く側に有利に判断する。


何事でもそうですが、当事者が納得していても、第三者は認めないことがあります。

自分と相手の間で、「こうしようね」「うん、そうしよう」と合意していても、第三者が割り込んできて「ちょっと待った」と声をかけることもあるわけです(「ねるとん」ではありませんが)。

今回のように、病院と研修医の間では、勤務時間を自主的に管理すると合意していても、第三者から判断するとダメと判断されたりします。

私は当事者の自主性を尊重したいと思うタチなのですが、現実にはダメなのかもしれませんね。


ただ、神戸東労働基準監督署の判断は、「病院にいるだけで全て勤務時間になる」というメッセージのようにも受け取れます。

この判断を基準にすると、神戸大学付属病院のように緩慢に勤務時間を管理していると、勤務時間が過剰に認められてしまう可能性があるのですね。

本来ならば勤務時間ではない部分までも一緒くたにされて、「全て勤務時間にしなさい」などと指導されたりします。


通常、時間外勤務の時間は「申告制」や「許可制」で時間を管理したりするのですが、今回の事例では自己申告でしたから、「申告制」は採用できているわけです。

にもかかわらず、機能していなかったのですね。

おそらく、許可制にしたとしても、最初のうちはキチンと管理していたけど、時間が経つにつれて、いちいち許可を出すのは億劫だと管理職が考え、それに応じて、社員も許可を事前に織り込んであえて許可を取らずに時間外勤務をしたりするようになるかもしれません。


「申告制」や「許可制」を採用したから大丈夫というわけにはいかないのですね。

「管理するなら最後まで管理せよ」ということでしょうか。







■自由裁量で勤務できる環境を作れる会社は少ない。


例えば、自由裁量で勤務する環境を作るとすると、時間外手当を年俸に含めて支払い、時間の管理はしないという方法もあるにはあります。

ただ、時間外手当を年俸に含めるには、相当程度の年俸でないと認めてもらえないようです。


例えば、外資系投資銀行で、年俸2,000万円とか3,000万円を支払っていると、時間外手当を年俸に含めて支払うことも裁判では認められています(モルガンスタンレーの判例がありました。この点については、以前にメルマガでも書きました)。

高額な報酬ゆえに、時間外手当が年俸の中に含められていると考えて差し支えないときには、時間外手当込みの年俸も使えるのですね。


ただ、一般的には、勤務時間を管理せずに働いてもらうような環境を作るのは困難です。

年俸2,000万円とか3,000万円を支払える会社というのはどれぐらいあるのでしょうか。日本の企業だとほとんど無いのではないかと思います。


今回の例だと、大学病院の研修医ですから、上記のような環境で働いていたと考えるのは無理です。まさかそんなスーパー研修医はいないでしょうからね。教授でもそんな待遇にはなっていないはず。

となると、自主申告で勤務を管理するのはマズいわけです。



ちなみに、私は、年俸に時間外手当を含めるのはアリだと考えています(あくまで個人的に)。また、ホワイトカラー・エグゼンプションにも賛成の立場です(これも個人的に。条件の設定が煮詰まらずに日本では廃案になりましたが)。


以前は、工場作業のように「時間=成果」が成立していて、時間をかければたくさんの成果物を生み出すことができました。

しかし、今では「時間=成果」が成り立たない仕事も多くなっていますから、必ずしも時間と賃金をリンクさせるさせることもないのではないかと思うのですね。


もちろん、法定水準を超える超過勤務(36協定違反)とか、サービス労働とか、時間外手当の不払いという問題はあるものの、「[時間=成果]が成り立たない」という点についても思いをよせなければならないはずです。

「時間に拘束されずに働くことができる」「定時を考慮しないので、仕事を早く終えることもできるようになる」などが賛成側の理由ではあります。

ただ、「そうは言っても、そんな制度を採用すればもっと就業環境は悪くなる」、「時間を拘束しているのだから、その犠牲分だけでも賃金を支払うべき」と思う人もいるはず。疑心暗鬼の状態になっているのですね。「譲歩すれば、ヤラれる」と、、。


時間管理を自由にしたいと考えれば、労働基準監督署とのネゴシエーションを覚悟しないといけないのが今の現状なのです。








┏━━━━━━━━━━☆★ 編集後記  ★☆━━━━━━━━━┓


車やバイクで、アクセルを開けて速く走っても、一般道には信号があるので、結局は同じ速度で進んでいるのと同じだなぁ、といつも思います。

高速道路ならば信号がありませんので、アクセルを全開にすれば早く目的地に到着できます。ただし、スピード違反になることもありますが。

しかし、一般道だと信号がありますから、どんなにスピードを出していても、赤信号ならば止まらなければいけないわけです。

ここで気づくのが、自分の脇を抜き去っていったバイクや車が同じ場所の信号で止まっているということです。

あれだけ威勢良く抜き去っておきながら、結局は同じ場所の同じ信号で止まっている。


そこで、「あぁ、、早く走っても大して早くは進めないのだな、、」と分かるわけです。

結構当たり前なことなのですが、運転をしているとつい忘れるのでしょうね。


やっぱり法定速度で走る方が得策なのかもしれません。







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