勤務時間が長い日に有給休暇を取る方が得?
パートタイムで働く人は、どの日も同じ勤務時間であるとは限りません。人によっては、働く日によって勤務時間が違います。
曜日によって勤務時間が違う人。月によって勤務時間が違う人。時期によって勤務時間が違う人。このように色々です。
日によって勤務時間が違うところ、有給休暇を取ったら、給与はどうなるか。
例えば、火曜日は4時間勤務。水曜日は5時間30分勤務。金曜日は7時間勤務。という勤務シフトのパートタイマーがいたとします。
この人が火曜日に有給休暇を取ったら給与はどうなるか、水曜日ならどうか、最も勤務時間が長い金曜日に有給休暇を取ったらどうか。
どの日に有給休暇を取っても給与は同じなのか。それとも、有給休暇を取る日によって給与は変わるのか。どちらでしょうか。
年次有給休暇を取得した日の給与を計算する
火曜日から金曜日まで、勤務時間を全部足して3で割った時間数を出し、その時間を使って給与を計算してみると、勤務時間の合計は16時間30分。これを3で割ると、5時間30分。
これに時間給を掛けて有給休暇を取った日の給与を計算する。
何だか尤もらしい計算ですが、これでいいのでしょうか。
他の計算方法としては、一番短い時間と長い時間を足して2で割った時間数を使って計算するというのもあります。
最も短い時間は火曜日の4時間で、長いのは金曜日の7時間。これらを足すと12時間。それを2で割れば6時間。6時間に時間給を掛けて、有給休暇を取得した日の給与にする。
最小値と最大値を使う計算方法で、統計学ではこういう計算を採用することがあります。
勤務時間の平均値を出して、有給休暇を取った日の給与を計算する。何となく正しい計算のように思えますが、これは正式なものではありません。簡単ですし、分かりやすいんですけどね。
上のようなマイルールで計算している人もいますけれども、有給休暇を取った日の給与計算には決まりがあります。
有給休暇を取った日の給与計算は2通り
有給休暇を取った日の給与を計算する方法は、
【実際に出勤した場合と同じ賃金にする】
【労働基準法の平均賃金で計算する】
この2つです。
なお、パートタイマーだと社会保険に加入している方といない方で分かれますので、標準報酬月額を使った年休取得日の給与を計算する方法は割愛します。全員が社会保険に加入していれば左記の方法が便利ですけれども。
1.実際に出勤した場合と同じ賃金で給与を計算
まず、【実際に出勤した場合と同じ賃金にする】方法から説明しましょう。
火曜日は4時間勤務。水曜日は5時間30分勤務。金曜日は7時間勤務。
この勤務シフトを前提として、火曜日に有給休暇を取れば、4時間分の給与を支給します。水曜日に有給休暇を取れば、5時間30分に相当する給与を支給します。金曜日に有給休暇を取れば、7時間分の給与を支給します。
これが【実際に出勤した場合と同じ賃金にする】方法です。
シンプルな方法ですし、どなたでも理解できる給与の計算方法だと思います。ただ、この計算方法には欠点があります。勤務シフトに応じて有給休暇を取得した日の給与が変わるのですから、
「じゃあ、勤務時間が長い日に有給休暇を取れば給与が多くなるな」と考える人が出てきます。上の例だと、火曜日ではなく、金曜日に有給休暇を取れば、3時間分多く給与が得られるのですから、そう考えるのも自然なことです。
【実際に出勤した場合と同じ賃金にする】方法は簡単で分かりやすいものの、有給休暇を取得する日によって給与が変わってしまうという欠点があります。
2.労働基準法に基づく平均賃金で有給休暇の給与を計算
次に、【労働基準法の平均賃金で計算する】方法を説明しましょう。
この方法だと、有給休暇を取得した日にかかわらず、給与は同じです。 【実際に出勤した場合と同じ賃金にする】方法にあった欠点をクリアできるのが特徴ですね。
平均賃金とは、過去3ヶ月の賃金を日数で割ったものです。実際に平均賃金を計算するときは、直前の賃金締切日からの過去3ヶ月分で計算します。
例えば、
10月に有給休暇を取るとして、給与の締め日が毎月15日だとしましょう。
その場合は、6月16日 - 7月15日 7月16日 - 8月15日 8月16日 - 9月15日の期間に支払われた給与を使って平均賃金を計算します。
6月16日 - 7月15日:140,000円(30日) 7月16日 - 8月15日:172,000円(31日) 8月16日 - 9月15日:166,000円(31日)
これが実際の給与額だとします。ちなみに、平均賃金を計算するときは、通勤手当や時間外手当なども含めて計算します。
総日数は92日で、賃金の総額である478,000円を割ります。1日あたりの賃金は、5,195円(1円未満切り捨て)になります。
10月のどの曜日に有給休暇を取っても、平均賃金である5,195円を支払えば足ります。
【労働基準法の平均賃金で計算する】方法は、手間がかかるのが難点です。平均賃金を計算するという作業が必要ですので、【実際に出勤した場合と同じ賃金にする】方法よりも少し煩雑です。
対処法としては、毎月、給与を計算する段階で、過去3ヶ月分の平均賃金を計算しておけば、有給休暇を取得したときに平均賃金がすぐに分かります。