あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます

年次有給休暇の使用順位 新しい方から使うのか古い方から使うのか

年休を使う順番

古い年次有給休暇を先に使う? or 新しい年次有給休暇を先に使う?

年次有給休暇は、時効が2年あり、
今年の分の有給休暇は翌年まで持ち越せます。

勤続6ヶ月時点で、10日。
勤続1年6ヶ月時点で、11日。
勤続2年6ヶ月時点で、12日。
これが勤続期間と休暇日数の対応です(労働基準法39条2項)。


例えば、
2年6ヶ月勤務して、
有給休暇が12日付いた(週5日で勤務と仮定)として、

勤続期間が3年6ヶ月に達するまでに
有給休暇を7日使ったとすれば、
残りは5日分。

さらに、
3年6ヶ月時点で、
14日分の有給休暇が付きますから、
有給休暇の残日数は合計で19日(5日 + 14日 = 19日)。


19日のうち5日分は繰り越しなので、
4年6ヶ月の時点まで繰り越した5日分を使えます。


新しい有給休暇は14日。
繰り越した古い有給休暇は5日。

混ざるんですよね。

新しいものと古いものが。


ここで問題になるのが、


新しい有給休暇から使っていくのか

それとも、

古い方から使っていくのか

という点。

法律では、どちらの年次有給休暇から使っていくかを決めておらず、判断が分かれるところです。

給与明細を見て年次有給休暇の時効は分かる? 繰り越された日数。新しい方の日数

給与明細では年次有給休暇の残日数しか書いていない場合、

何日分が繰越分で、
何日分が新しい分なのか
内訳が分かりませんよね。

 

有給休暇を使うと、
残日数の数字が減っていくのですが、

古い方から使われているのか。
新しい方から使われているのか。

残日数の数字を見ても分かりません


給与明細に有給休暇の残日数を
書いていない事業所となれば、
さらに実態は不明朗になります。

 

年次有給休暇の時効は2年ですから、有給休暇の残日数の中には2種類の時効が適用された年次有給休暇が混ざった状態になってるわけです。

 

例えば、残日数が17日だとすると、今年度中に時効を迎えるものが7日で、来年度まで持ち越せるものが10日。そういう形で2種類の時効が適用される年次有給休暇が混ざった状態で残日数が表示されてるでしょう。

 

給与明細に、「年次有給休暇残日数17日」と表示されるなら、何日分が先に時効が到来して、また何日分が翌年度まで持ち越せるのか。残日数だけ表示されていたのでは分かりませんよね。

 

先に時効が来るものから使って行きたいと働く側は考えるはずです。ですから、先に時効が到来する日数は何日分なのかを知りたい所です。

 

「年次有給休暇残日数17日(うち11月末で7日は時効になります)」

このように給与明細にちょっと説明を加えてくれていると親切ですね。

新しい方から使う vs. 古い方から使う どちらも正解だから法律ではなく就業規則で決めないといけない

会社側は、

新しい有給休暇から使うようにする傾向があります。

繰り越された有給休暇は後回しにして、
直近で付与された有給休暇から消化していく。


一方、

労働者側は、

古い方から使いたいと考えている方が多いようです。

先に時効にかかるものから使った方が
時効で有給休暇が消滅しにくいですからね。

 

新しい方の有給休暇から使えば、
古い有給休暇は時効で消滅しやすくなり、
使える有給休暇が減って会社側には都合が良いです。

 

しかし、

有給休暇を使う側からすると、
なるべく消滅させずに使い切りたいと
考えているでしょうから、
古い有給休暇から消化していきたいと思うでしょう。

年次有給休暇を時効で消滅させてやろうという動機が意地悪

法律では、
付与された後の有給休暇を
どの順序で使うかは
決めていません。

 

そのため、

新しい方の有給休暇から使っても良いですし、
古い方から使っていくのも良いです。


ただ、

「なぜ新しい有給休暇から消化させるのか」
と問われたら、

これは答えにくい。


「古い有給休暇を時効で消滅しやすくして、
使える有給休暇を減らしているんです(意地悪全開)」
と素直に答えられるかどうか。

 

何とも嫌らしいというか、
意地悪というか、
そういう気持ちが滲み出てくるようです。

古い方から? それとも新しい方から? どちらが良いか

食べ物と同じように、
有給休暇も古い方から先に消化する方が
理にかなっています。

従業員も納得するし、
分かりやすい。


繰り越された日数と
当年度に付与された日数を
給与明細に表示しておくのも良いのですが、

古い方から使っていくルールならば、
繰り越された有給休暇の日数を知っておけば足ります。


6月の給与明細では、
有給休暇の残日数5日だった。

7月の給与明細では、
有給休暇の残日数が19日になっていた。


7月に有給休暇の残日数が増えていますが
これは新しい有給休暇が14日分付いたということ。

 

ならば、
残りの5日分は繰り越し分だから、

「早めに使っておく必要があるな」
と分かります。

 

もし、

新しい有給休暇から使うルールだと、
繰り越された5日分を使うには、
まず先に新しい方の14日分を使ってしまわないと
いけないため、ハードルが高くなります。


古い有給休暇から使えるならば、
繰り越された日数を把握しておくだけでいいですし、
新しい有給休暇を使い切る必要はありません。


ゆえに、
有給休暇は先に時効が到来する
古い方から使うのがオススメです。


食べ物は、
古いものから先に食べますし、
販売するときも古い方から売っていきます。


仕入れも同じです。

先に仕入れたものから販売し、
新しく仕入れたものは倉庫の奥にしまっておく。

 

First In First Out(FIFO)

が基本です。

新しい牛乳じゃなくて、先に古い方を飲まなきゃ

素直に考えて、古い方から使うのが自然です。

例えば、冷蔵庫に入っている牛乳の日付を見るとき。自宅の冷蔵庫に賞味期限の日付が2014年1月24日の牛乳と2014年1月29日の牛乳があったら、あなたはどちらから飲みますか?

古いのは2014年1月24日が賞味期限の牛乳。新しいのは2014年1月29日が賞味期限の牛乳です。

100人に聞いて、おそらく92人ぐらいは2014年1月24日が賞味期限の牛乳から飲むのではないでしょうか。

中にはヒネクレタ人もいて、自分は新しい牛乳を飲んで、「オトーサンに古い牛乳を飲ませちゃえ」なんて考えるヒトもいるかもしれないけれども、フツーの人ならば古い牛乳から飲みますよね。

他には、古い方は料理に使って、新しい方はそのまま飲む。こういう分け方をしている方もいらっしゃるのでは。

お店でも、古い商品から先に販売しないといけないので、日付の古い牛乳が前に陳列されて、新しい牛乳は後ろの方に押し込められてお客さんが取りにくいようにしている。だから、賢いお客さんは、冷蔵庫の奥の方にある牛乳を取り出してカゴに入れるんです。

牛乳の例から分かるように、普通の感覚では、古いものから使って、新しいものは後に回す。これが素直で自然な判断です。

ならば、年次有給休暇も同じようにするのが自然でしょう。

ちょっとムズカシイことを言うと、民法488条1項に基づいて判断すれば、有給休暇に関して、債務者である会社がどの有給休暇を使うかを指定できるとも解釈できます。

有給休暇に関しては、会社が債務者です(有給休暇を使わせる義務を履行する立場)。一方、社員さんは債権者です(有給休暇を請求する立場)。

さらに、就業規則で、新しい有給休暇から先に使うように決めることは可能です。

しかし、できるからといってやっていいとは限りません。

法的に問題なくても、新しいものから使うのは不自然ですし、休暇を利用する立場からは納得しにくいはずです。

有給休暇を使う順序について何も決めていない会社ならば、半ば自動的に古い有給休暇から使っているでしょうから、おそらく問題は起こっていないはず。

法的に判断することも大事ですが、一般的な感覚で判断することもまた大事なのですね。


古いものを先に使う。新しいものは後

お店で買ってきて冷蔵庫で冷やしている牛乳。古い牛乳が無くなる前に、新しい牛乳を買ってくる。おそらく、これが普通だと思います。

新しい牛乳を買ってくると、冷蔵庫には古い牛乳と新しい牛乳が入ることになる。

ここで、「よし、冷たい牛乳でも飲もうか」と思ったとき、あなたならどちらの牛乳を飲むか。

古い牛乳を先に飲むか。それとも、買ってきたばかりの新しい牛乳を飲むか。

どちらでしょう。


たぶん、「古い方を先に飲まないとダメになっちゃうから、古い牛乳から飲もう」そう考える人が多いのではないでしょうか。

新しいものから飲んでしまうと、古いものは消費期限が到来して飲めなくなってしまうかもしれないので、先に飲んじゃう。これが普通の判断だと思います。


有給休暇にも古い有給休暇と新しい有給休暇があって、「先入れ先だし」で取り扱います。つまり、有給休暇のFIFO(First in , First out)ですね。


有給休暇には賞味期限や消費期限はありませんが、先に時効が到来する休暇から使用します。

休暇の残日数の管理はもちろん必要ですが、休暇の有効期限(時効までの期間)も同時に管理する必要があります。


6か月時点で、10日の休暇。
1年6か月時点で、11日の休暇
2年6ヶ月時点で、12日の休暇。

勤続勤務年数と有給休暇の日数は上記のように対応しています。


1年6ヶ月勤務すると、「6か月時点での10日分の休暇」と「1年6か月時点での11日分の休暇」とを合わせて、21日の休暇になる。ただ、有効期限は両者で違っていて、6か月時点での10日の休暇は、2年6ヶ月の時点で時効に達する。一方、1年6か月時点での11日分の休暇は、3年6ヶ月の時点で時効消滅する。

もし、1年勤務した時点で、3日の休暇を利用した場合。休暇の残日数は、10日 - 3日 = 7日になる。その後、1年6か月時点で11日分の休暇が追加されるので、7日 + 11日 = 18日に残日数が増える。ここでのポイントは、有効期限の違う休暇が混ざっている点です。

例えるならば、古い牛乳と新しい牛乳が1つの冷蔵庫に一緒に入っている状況です。7日分の休暇は2年6ヶ月の時点で時効に。他方、11日分の休暇は3年6ヶ月の時点で時効になる。

牛乳ならば、紙パックの注ぎ口に消費期限が押印されているので、日付の管理は簡単です。しかし、有給休暇は形のない法律上の休暇ですから、牛乳パックのように日付を表示するわけにはいかない。それゆえ、牛乳よりも使用期限の管理に手間がかかります。


有給休暇を利用するときは、先に時効が到来するものから使用します。商品の先入れ先だしと同じです。

先に仕入れたものが古い商品ですから、この商品が先に売れるように、お店の商品棚でも前や上に陳列する。コンビニやスーパーと同じです。古いものが前に来て、新しいものは後ろに補充する。


労働基準法では、有給休暇の使用順序については書かれていません。だからといって、新しい有給休暇から先に使い、古い有給休暇が時効で消滅するように処理することで、使える休暇の日数を減らしてしまうと、働いている社員さんからクレームが出るはずです。

先に新しい牛乳から買われると、古い牛乳が残ってしまう。そうなると、古い牛乳は割引して売り切らないといけなくなるし、それでも売れなければ、廃棄処分してしまう。だから、お店では古い牛乳が棚の前に来るようにして、入荷したばかりの新しい牛乳は後ろに陳列する。これは当たり前ですよね。

新しい休暇から計画消化? 年次有給休暇を使う順番は就業規則で決めておく

有給休暇は働いている人の判断で使う休暇ですが、会社によっては計画的に有給休暇を消化しているところもあるはず。

例えば、2ヶ月ごとに1日づつ有給休暇を計画取得する職場があり、年間で6日の休暇(12ヶ月÷2ヶ月=6日)を計画消化するとしましょう。

さらに、計画消化する休暇は、休暇が付与された時点で控除するとします。具体的な例だと、8月1日の時点で、16日の有給休暇が発生した人(労働基準法39条2項を参照)がいて、16日の休暇のうち6日分を計画消化分として控除し、自由に利用できる休暇を10日付与します。

ちなみに、この人は、16日の有給休暇を利用できるので、4年6ヶ月以上勤務している人だとわかります。


年に6回、有給休暇を計画消化するとなると下記のようになる。

1月から2月の間で1日。
3月から4月の間で1日。
5月から6月の間で1日。
7月から8月の間で1日。
9月から10月の間で1日。
11月から12月の間で1日。

2ヶ月毎に1日の有給休暇を計画消化して、年に6日の計画休暇となる。


では、月日が流れて、勤続勤務年数が5年6ヶ月になったら、今度は18日分(労働基準法39条2項)の休暇が発生します。

さらに、この時点でも、計画休暇のために6日分の休暇を控除して、残りの12日分を自由利用の有給休暇として付与することになる。


さて、ここで問題が生じます。

4年6か月時点では、6日の計画休暇と10日の有給休暇がありました。さらに、5年6か月時点では、6日の計画休暇と12日の有給休暇がありました。

さらに、どちらの時点でも、新しく発生した休暇から計画休暇のための6日分の休暇を控除しています。


では、4年6ヶ月時点の休暇をほとんど使わず、9日分残した状態で、5年6ヶ月に到達したらどうなるか。

残っている休暇が9日。新しい休暇が18日で、計画分が6日、通常の休暇が12日です。

この場合、古い休暇が9日残っているのですから、この9日から計画消化分の6日を控除したほうがいいんじゃないかと思えます。新しい18日分の休暇から6日分を控除するのではなく、残っている9日分の休暇から計画分の6日を控除すれば、先に時効が到来する休暇から使えます。

買ってきたばかりの新しい牛乳から飲むのではなく、冷蔵庫に残っている牛乳から飲む。これと同じです。


もちろん、休暇の残日数が4日とか1日しかない場合は、足りない休暇を新しい休暇から補充するのもアリです。

しかし、休暇が6日以上残っているならば、やはり古い方の休暇から計画消化するのが妥当だと思います。


ただ、時効の管理を統一して、古い休暇と新しい休暇が混ざって混乱しないようにするために、新しい休暇から控除するという判断はあり得る。

確かに、計画休暇の中に古い休暇と新しい休暇が混ざっていると時効の管理が面倒ですからね。


有給休暇の計画取得は便利そうですが、色々と引っかかる点もあって、使い方を工夫しないと、却って不便になる場合もありますね。


一つの方法としては、「一定日数以上の休暇が残っている人だけを計画休暇の対象にする」のも良いと思います。

労働基準法39条5項では、5日を超える部分の休暇は計画消化できるので、計画休暇を取得する時点で6日以上の休暇が残っている人は計画休暇の対象とし、それ以外の人は対象外にすると良いでしょう。

1月から2月の間で1日。
3月から4月の間で1日。
5月から6月の間で1日。
7月から8月の間で1日。
9月から10月の間で1日。
11月から12月の間で1日。

このペースで休暇を計画消化するならば、1月1日時点で6日以上の休暇が残っているかどうか。3月1日時点で6日以上の休暇が残っているかどうか。5月1日時点で6日以上の休暇が残っているかどうか。7月1日時点で6日以上の休暇が残っているかどうか。9月1日時点で6日以上の休暇が残っているかどうか。11月1日時点で6日以上の休暇が残っているかどうか。というように判定して計画休暇を取得するようにすれば、計画分の休暇を事前に控除して確保する必要が無くなります。

さらに、入社したばかりの人や休暇の残りが少ない人がいても、計画休暇の対象外にすることができますので、計画休暇のために「有給休暇を前借りするような状態」を避けられます。

また、2ヶ月に1日の計画休暇なので、勤務スケジュールを調整して、交代で休暇を取得することもできます。一斉に全員が休暇を取得するのではなく、2ヶ月の間で休暇を交代で取得すればいいのですから、業務が滞ることもない。


もし、一斉に休暇を取得するようにしてしまうと、他の人が出勤してないのに、自分だけ出勤することになり、仕事にならない場合があります。

例えば、社員数が33人の会社で、有給休暇の計画取得で休む人が28人だったとしたら、残りの5人は通常通りに出社するはずですが、仕事はできるでしょうか。通常だと33人いるはずの社員が5人しかいない。そのような状況で通常通りに業務ができるかというと、無理ではないかと思います。

休暇を計画消化するのはよいとしても、休暇の取得日まで統一してしまうと、上記のような不都合が生じます。それゆえ、有給休暇を計画消化する場合、休暇日は社員ごとにズラす必要があります。さもないと、対象外の人だけがポツンと出社することになり、仕事ができなくなる。

ゆえに、2ヶ月毎に期間を区切って、その都度計画休暇の対象者を決めるのが私は良いように思います。


年次有給休暇の義務化にも対応できる給与計算ソフトとは?
年次有給休暇に関する労務管理で最も大変なのは、有給休暇の残日数どうやって管理していくかという点ですよね。そこで、有給休暇の残日数を管理しやすくしてくれる給与計算ソフトがあれば助かります。
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