給与支払いの遅延を経験した
筆者が大学生の頃の話ですが、給与を1ヶ月遅れて支払われた経験があります。
会社の財務に何らかの問題があったわけではなく、私が勤めていたお店の店長がタイムカードを本部に送り忘れて、給与が計算されず、支払いもなかったんです。
つまり、人的なミスが原因で給与が支払われなかったというわけ。
タイムカードを本部に送るときには枚数や名前を確認するはずですし、本部の方でも在籍者とタイムカードをすり合わせてチェックするはずです。この二重のチェックがあるにもかかわらず、タイムカードが送られていない状態が発覚しなかったんですね。もしかして、そんなチェックなんてしていなかったのかもしれません。
チェーン展開する飲食店ですから、それなりにチャンとしているように思っていましたけれども、そういう会社でも雑な部分はあるのかなと。
その後、翌月分の給与で2ヶ月分をまとめて支給されました。
給与の支払いが遅れたら遅延損害金を請求できる
私のように、在職中に給与の支払いが遅延すると、年6%の利率で遅延損害金を請求できます。
当時は大学生でしたから、労務管理のことはほとんど知らなかったのですけれども、あの頃のように給与の支払いが1ヶ月遅れたら、その分だけ遅延損害金を請求できたんです。
仮に、給与が月10万円だとして、その支払が1ヶ月遅れ、遅延損害金の利率が6%だとすると、1ヶ月あたり500円が遅延損害金の額になります。
10万円の6%で6,000円。これを12ヶ月で割ると500円になります。
金額としてはたったの500円ですけれども、大学生ならば昼食1回分ぐらいにはなります。
遅延損害金の利息は、在職時と退職後で違いがあります。
在職中だと年6%(商法514条)。
退職した後は、年14.6%(賃金支払確保法6条)になります。
2022年時点では、民法が改正され、民法404条で法定利率は3%になっています。
ちなみに、遅延損害金を請求できるのは毎月の給与の支払いが遅延した場合です。退職後に支給される退職金は対象外です。退職金は会社が決めた時期に支払えば、それで足ります。
給与で遅延損害金を請求されるなんて、どこの会社でも起こることではなくて、1度もこのようなケースを経験した事が無い人の方が多いでしょう。
給与の支払いが遅れると、「この会社、大丈夫か?」、「もうすぐ潰れるんじゃないか?」と働いている人に不安を感じさせますから、会社としては重大インシデントです。
会社に対する働いている人の見方が変わってしまうほどのインパクトがありますからね。
給与が未払いになったら付加金も請求できる?
労働基準法114条には、付加金というものについて書かれています。
付加金とは、支払わなかった額と同じだけの額を上乗せして支払うもの。仮に、未払いになった額が3万円あるとして、そこに付加金が付くと、合計で6万円になるんですね。
ただし、この付加金を支払う対象になるのは、以下の4つの賃金です。
- 解雇予告手当
- 休業手当
- 残業代(法定時間外労働に対する割増賃金)、休日勤務や深夜勤務への割増賃金
- 有給休暇を取った日の給与
この4つが未払いになると、付加金の対象になります。
ただし、本人から会社に請求してもダメなんです。付加金の支払いを命じるのは裁判所ですから、本人から直接には請求できないのですね。
例えば、簡易裁判所経由で未払い残業代を請求する時に、合わせて付加金も請求するという形ならばOKです。
解雇予告手当はチャンと支払う。
休業したら手当をチャンと支払う。
割増賃金や有給休暇を取った日の給与もチャンと支払う。
当たり前のことを当たり前のようにやっていれば、会社が付加金を請求されることはありません。
残業代を未払いにしてツケを貯めていると、裁判で倍返しされるんですね。怖い、怖い。
未払いの給与を立て替える制度
給与が未払いになっているとき、条件を満たすと、給与を立て替え払いしてくれる制度があります。これを「未払賃金立替払制度」と言います。
ただし、この制度を利用するには、会社が倒産している必要があります。
倒産には2種類あって、法的に倒産した場合、事実上倒産している場合、この2つがあります。
まず、法的に倒産した場合というのは、破産、特別清算、民事再生、会社更生、このいずれかに会社の状態が該当したときです。
他方、事実上倒産した場合というのは、事業活動が停止し、再開する見込みはなく、賃金を支払う能力も無いときです。
2018年1月の成人式でトラブルを起こした某着付け会社の場合、成人式の日に事業活動が停止しており、再開する見込みは無いですし、賃金を支払う能力も無いようですから、事実上倒産している状態に該当するように思えます。
もし、給与が未払いになっているならば、未払賃金立替払制度で対応できそうですので労働基準監督署で相談するといいでしょう。
厄介なのは、給与を未払いのまま事業を継続しているケースです。これだと倒産していないため、未払賃金立替払制度の対象になりません。
「給与を払ってくれるまで働きません」と言えば、「働いてもらわなければ、過去の分の給与まで払えなくなる」と切り替えしてくる会社もあるでしょうね。
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