あやめ社労士事務所 - 労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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雇用契約書と労働条件通知書、どちらが正式な書面?

混乱

雇用契約書と労働条件通知書、同じような書面が2つあるの?

採用時に交付する書面は色々とありますが、その中には働く条件を定めた書類があります。

契約の期間、働く場所、勤務時間、休み、給与、交通費や雇用保険、社会保険に関することなど。こういったことを書面にして、使用者と労働者で勤務条件をすり合わせていくのですね。

その際に作るのが雇用契約書、もしくは労働条件通知書です。

どちらが正式な書面なのかというと、どちらも正式なもので、労働条件を書面にしたものとして通用します。

 

雇用契約書は働く条件を書面化した書類です。一方、労働条件通知書も働く条件を書面化した書類です。ちなみに、労働条件通知書には厚生労働省から雛形が用意されています。これは雇用契約書としても通用するものです。

 
しかし、これだと「いや、それじゃあ、どっちの書面を作ったらいいの?」と迷ってしまいますよね。どちらも同じ書面ならば、どちらか片方だけで足りるんじゃないかと思うのは当然です。

働く条件を決めた文書を作るのが目的ですから、書類の名称は乱暴に言えば何でも通用します。雇用契約書や労働条件通知書だけでなく、勤務条件通知書という名称でもいいですし、就業条件通知書という名称でもいいわけです。労働契約書、就業契約書、業務契約書など、色々と思いつきますが、肝心なのはその中身です。

働く条件を書面にしたものであれば、どのような名称であっても雇用契約書や労働条件通知書と同じものと扱われます。名称の違いよりも中身である実質で判断します。

  • 契約期間(雇用契約はいつまでなのか。半年や1年に設定して更新することもありますし、期限なしの雇用契約も可能です)
  • 就業の場所(例えば、ナントカ工務店 名古屋支店というように、どこで働くかを決めておきます)
  • 従事すべき業務の内容(なんの仕事をするのかを特定します。ここに書いている仕事以外は労働者は拒否することもできます)
  • 仕事の時間、休憩時間(仕事を何時から何時までするのか。休憩は交代制なのか。残業はあるのかどうか。時間に関連することを決めます)
  • 休日
  • 休暇(学生だったら、テスト期間中は休む、という内容も契約書に書いておくといいのでは)
  • 賃金(給与の締日や支払日について書いておきます。銀行振込なのか現金払いなのかもここで示します)
  • 退職(やめるときの手続について決める部分で、引き継ぎや返却するものなどを書いておきます)
  • 雇用保険や社会保険に関すること

これらの内容が含まれていれば、それは雇用契約書であって、その他どのような名称であっても雇用契約書として扱われるのです。ちなみに、ここでは雇用契約書という名称を使いましたが、この名称も他のものでも構わないのです。

働く条件を書面にして、言った言わない、伝えた伝えていないなどと後からトラブルにならないようにするのが目的です。

学生でしたら、働く条件を書面で渡してこない会社では働かない、という判断もあっていいのでは。

1つの契約に2通以上の文書を作らない

1つの売買にたいして2通の売買契約書を作ってしまうと、「どちらが正しいものなんだ?」と混乱しますよね。片方では1つ3万円と書かれていて、もう片方では1つ4万円と書かれていたら、どちらの価格で取引すればいいのかわかりません。

雇用契約書であれ、労働条件通知書であれ、実務ではどちらも同じものとして扱われています。

この2つの違いを説明する人もいますけれども、雇用契約書は使用者と労働者が合意した文書、労働条件通知書は使用者が一方的に渡すもの。そういう説明もありますが、このような誤差程度の違いを説明する意味はなく、肝心なのはその中身です。違いを説明してしまうと、それぞれ別の書面なのかと誤解を招きますが、どちらも同じものです。

ただし、労働条件通知書には労働者側が署名する欄や押印する欄が設けられておらず、使用者と労働者で合意した内容なのかどうかという点で疑義を生ずる可能性はあります。この点をクリアするために、労働条件通知書の題名を雇用契約書と書き直し、さらに使用者と労働者が署名、押印する欄を作るのも一案です。


文書の中身で働く条件(先ほど列挙した内容)を決めているならば、それは使用者と労働者との間で働く条件を決めた文書になります。

それゆえ、雇用契約書、労働条件通知書と2種類ありますが、どちらか片方だけを作れば足ります。他にも、雇入条件通知書という名称を使っているところもあるでしょうし、雇用条件通知書、労働条件合意書、就業条件通知書など、色々と名称は考えられます。上で書いたように、名称ではなく書面の中身で判断しますので、労働条件を書面にしたものかどうかが判断の基準です。

「あえて選ぶならばどっちがいいんですか?」と気にする人もいるでしょうが、好みで決めていただいて構いません。ちなみに、筆者が好きなのは雇用契約書です。雇用という名称の方がフォーマルな感じがしますのでこちらを選びます。

働く条件を書面化する。まずはここが大事です。社員数が増えて大きな会社になると、採用の手続きもチャンとしてきて文書を作成するのですけれども、小規模な会社やお店だと、履歴書と面接だけで採用手続きを終わらせてしまうような雑なところもあります。そういう職場では、まず書面を作るところから始めると良いですね。先ほど示した厚生労働省の雛形文書を使うのもオススメです。


雇用契約書も労働条件通知書も、両方を作ってしまうと、どちらが優先されるのか、正しいのか、混乱を招きます。

労働条件通知書を先に出して、その後に雇用契約書を出したとしたら、受け取った方は、「どっちが正式なものなの?」、「どちらか1つで足りるんじゃないの?」と思ってしまいます。それぞれで全く同じ内容ならば、2通も作る必要はなく、どちらか片方だけで足ります。もし、それぞれで違う内容だったら、どちらの内容が適用されるのか分からなくなりますよね。

どちらの書面を出しても構いませんが、どちらか片方だけを作るようにしなければいけません。

「ただの条件通知だから、正式な書面じゃないでしょ?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、内容は雇用契約そのものです。単に通知するだけの書面ではなく、正式な契約書になります(文書をナメてはいけない)。また、正式な契約書ならば1通で済むのに、わざわざ条件通知の書面まで出す手間をかける必要はありません。

1つの交渉に契約書が2通あれば、契約の当事者は自分にとって都合が良い方を選ぼうとしますから、契約内容に対してお互いにズレが生じます。お互いに保管するために同じ契約書を2通作るのとは違いますからね。


雇用契約書と労働条件通知書、作るのはいずれか1つだけです。

雇用契約書を初めて作る

人を雇うときには、雇入れ通知書とか、雇入れ条件通知書、労働条件通知書、雇用契約書を作成する必要があるのですが、未だに契約書を作らずに人材を採用している会社もあるかもしれません。

「作ったことがないから、どうしていいか分からない」
「必要なのは分かるけど、経験がないかわ作れない」
「誰かに依頼せずに、自分たちで作りたい」

そう思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、契約書となると、キチンと作っておかないといけないし、適当でいいやというわけにもいかない。だから、作るからにはチャンと作りたい。そう思うはず。

しかし、今まで人を雇う時に契約書を作ったことがない会社だと、どうしても腰が重くなりがちですよね。

最近は便利なサービスも出てきていて、契約書生成ツールというものが無料で使えるようです。


口約束で人を採用するのをヤメて、雇用契約書を作る

契約書生成ツール 会社設立の書類が自動で作れて手続きも格安~スマビ SmaBI - スマートビジネス応援プロジェクト(リンク切れ)


厚生労働省にも書式のダウンロードサービス(http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/)がありますが、上記のようなツールを使うという手もあります。

主要様式ダウンロードコーナー|厚生労働省


初めて雇入れ契約書を作ろうとしている会社には適したサービスかもしれません。

もし、契約書の内容を第三者にチェックしてもらいたいならば、弁護士の添削依頼も可能なので、そういうオプションも使ってみると良いでしょう。契約書は一度作ればあとは使い回しができるので、添削依頼で費用が発生しても一時的なものですから、モトを取るのは難しくないはずです。

仕事上の約束事は書面に残す。これを面倒と感じて省略すると、相手が善良な人だと問題は起こりませんけれども、悪いことを考えている人が目の前に現れたら厄介な状況になります。

労働条件通知書と雇用契約書の内容がお互いに違っていると困る

労働条件通知書と雇用契約書、これらを2つとも作ること自体は構わないのですけれども、両方作成した場合は、同じ内容を双方の書面に書かなければいけなくなります。まぁ、二度手間なんですけどね。

片方の書面で書いてある内容と、もう片方の書面で書いてある内容が、お互いに違っていたり、矛盾していたりしては困るわけです。

例えば、労働条件通知書では、週3日で働くという内容になっていたにもかかわらず、雇用契約書では週4日勤務になっていたとしたら、どちらの書面が正しいものなのかわからなくなりますよね。

働く時間でも、労働条件通知書では1日6時間勤務と書いているにも関わらず、一方で、雇用契約書では1日5時間勤務というように決めていたら、じゃあどちらの内容が正しいのか混乱します。

正式に、雇用契約を締結する前に、事前に、仮のものとして、労働条件通知書を出しているだけ。そういう会社や事業所もあるのかもしれませんが、わざわざ二段階にして同じような書面を出す必要はありません。

「ウチは雇用契約書で条件を決めている」一方で、「ウチの会社では、労働条件通知書を正式な書面として使っている」このどちらでも構わないのです。

人を雇う際の条件を書面で残すのが目的ですから、労働条件通知書であれ、雇用契約書であれ、どちらも書面ですから、必要とされる条件はどちらも満たしているものです。

ですから、労働条件通知書しか出していないからといってダメなわけではないですし、雇用契約書しか作っていないからといって何か問題があるわけでもない。

働く条件を書面で残して、相手に通知する。これが目的ですから、その目的を達成できるなら、どちらの書面でも使えます。

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雇用契約書とは?意味や記載事項、労働条件通知書との違いを解説
契約書で決めた通りの内容をお互いに履行する。これが商取引では当たり前ですけれども、会社内の雇用契約では、雇用契約の内容と就業実態がずれてしまうこともあり、往々にして雇用契約が軽く扱われがちです。

雇用契約の書面を本人にメールで送ることは可能か

労働基準法施行規則第5条によると、雇用契約の内容を書面で交付するのが原則ですけれども、FAXと電子メールでの送信も本人が希望すれば可能となっています。

もはや FAX を使うという方は少数派かもしれませんが、メールで契約書の控えを送って欲しいと希望する人はいるかもしれません。クラウドストレージの共有機能やSNSで書面の控えを送る職場もありそうですが、施行規則で想定されている手段ではないものの、そういうやり方も出てくるでしょうね。メールにPDFで雇用契約書の控えを送るのが主流になるのでは。

あとは電子契約で雇用契約を締結すると、自動で控えを相手も取得できますし、押印したりペンで名前を書くこともありませんので、電子契約を利用するのもいいですね。

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ただし、これは本人が ”同意” したらメールで送っていいという意味ではなく、本人が ”希望” した場合は雇用契約の書面をメールで送ることが可能です。

同意と希望では少し意味が違います。本人が積極的に求めないといけないわけです。

チェックボックスを作って、「契約内容をメールで送信することを希望する」という箇所を作り、そこにチェックを入れればメールで送ってもらえる。じゃあ、そういう記入欄を雇用契約書に作っているかどうか。おそらく雇用契約書にはそういう欄はないのではないかと。

メールで送るとなると、雇用契約書をスキャンして PDF ファイルに変換して、それをメールに添付してという手順になりますけれども、メールだとアドレスを間違うと他人に送ってしまうリスクがあります。

クラウドストレージ経由でドキュメントを共有して送ることもできますけれども、そこまでして送付する必要があるのかどうか。

従来通りの書面で雇用契約書を作っておいて、本人がその控えを受け取ってから、スキャンするなり、スマホのカメラで撮るなり、自分なりにデジタライズすれば良いのであって、他人に誤送信する可能性を発生させてまでメールで雇用契約書の控えを送ってもらう必要はないでしょうね。

労務管理とは?どの企業にも必要な対応
労務管理とは言い換えれば職場での働き方そのものですから、労務管理についてきちっと決めるということは、働き方についてきちっと決めるということと同じです。

天候や顧客の予約状況で出勤日が変わる雇用契約はどうする?

雨が降った時に仕事が休みになる職場、ありますよね。他にも、予約や注文が入った時は仕事があって、予約が入っていない時は仕事が休みになる職場。お客さんから依頼が入っている時は仕事がある職場も。

週4日や週5日で固定して出勤するには適していない職場がありますし、1日6時間、8時間と固定して出勤してもらうのが職場に合わないところもあるでしょう。

例えば、屋外で工事をする仕事だと、雨が降った時は仕事が休みになるでしょうから、こういう場合に休日になるよう事前に労働条件通知書や就業規則で決めているのかどうか。雨で仕事を休みになると決めていなかった場合は、仕事が休みになっても休業手当を払う余地がありますので。

週5日で出勤すると決めてしまうと、たとえ雨が降った場合でも出勤させなければいけなくなります。原則として週5日出勤だけれども、雨天の場合は工事を実施しないので休日となります、との特約を就業規則や雇用契約書、労働条件通知書で合意しておく必要があります。

雨になったら仕事は休みになるのが当たり前という業界であったとしても、その当たり前を誰しもが納得できるものではありませんから、ちゃんと書面でお互いに合意しておくのが大切なんですね。

他にも、予約や注文が入っていない時は休みになる職業もあります。例えば、葬儀業だと、お通夜と葬式の予約が入っていないならば職場に出勤したところで仕事がありませんから、通夜と葬式の予約は入っていない日は休日になるでしょうね。予約が入っているならば出勤して仕事ができるのでしょうけれども、お客さんからの予約によって出勤するかどうか、仕事が入るかどうかが左右されるようなところでは固定で出勤するわけにもいきませんよね。

先ほどの屋外工事の例と同じように、原則として週5日出勤とするものの、特約として通夜、葬式の予約が入っていない日は休日になる、と書面でお互いに合意しておくのがが大事になります。

ただし、予約によって出勤するかどうかが決まるものですから、いざ予約が入って、じゃあこの日に出勤してくださいと伝えた時に、相手が出勤してくれるかどうか、従業員の都合が合うかどうかは課題です。

週に5日、確実に出勤して働ける職場だったら、使用者は労働者が出勤して働けるようにしなきゃいけないし、労働者側はちゃんと出勤して仕事をするという関係になるんですけれども、お客さんの予約によって出勤するかどうかが変わるとなったら、出勤してもらえるかどうかも変動する状況になります。

予約が入って出勤してもらおうとしても、従業員の都合がつかないなんてことも起こりますから、 この点はこういう特約付きの雇用契約での欠点になります。ここを解決するために、出勤する予定の日の24時間前までに協議して出勤日時を決定する、との判断基準があれば勤務シフトの見通しが良くなります。これでも出勤する人が集まらなければ手当を加算して出勤を促すのも一案ですね。

リラクゼーション施設でも、お客さんの予約が入っているならば出勤して施術できますけれども、お客さんの予約が入っていなければ仕事のやりようはありませんから休みとなりますよね。この場合でも雇用契約の特約でお客さんから予約が入っていない、施術の予約が入っていない場合は休日となります、と雇用契約の特約条項を入れて、施術の予約によって出勤日が変動すると書面でお互いに合意を取っておく必要があるんですね。

週4日や週5日で固定して働いてもらわなければいけないものではありませんし、 働く時間も1日6時間とか8時間というように固定しておく必要もありません。職種にあった形で、どのような契約にしていくのかを工夫して、仕事の内容にあった働き方ができるようにするのが雇用契約や就業規則の役割なんです。

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