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新型コロナウイルス感染症を理由に離職すると失業手当が増える? 自己都合離職の給付制限期間も短縮へ

 

雇用保険の特例

 

 

新型コロナウイルスを理由に離職すると、雇用保険の特定受給資格者に。

2020年5月に雇用保険のルールを変更する省令案が出され、6月から新型コロナウイルス感染症を予防するために離職した人を特定受給資格者として扱うように変わりました。

会社経由で雇用保険に加入している人で、新型コロナウイルスに感染すると重症化する人、何らかの基礎疾患を持っている人など、染した場合に重症化する可能性があるため、やむを得ず感染を避けるために仕事を辞める方も中にはいらっしゃるのでは。

雇用保険では、会社都合で雇用契約を解除された場合、失業手当の給付日数が通常と比べて多くなるように設計されています。自己都合で離職した場合と会社都合での離職では給付内容が変わるのが特徴です。

感染を予防するために離職した人も、会社都合で解雇された人と同様に、特定受給資格者として扱われるようになりました。

一般の受給資格者と特定受給資格者との違いは何なのか。
特定受給資格者になると、どう有利なのか。

これらの点について説明します。

 

 

特定受給資格者は通常の受給資格者とどう違うのか。

雇用保険に加入してる人が離職して失業手当を受けるようになると、その人は受給資格者という立場になります。つまり雇用保険から失業手当を受ける資格のある人のことを受給資格者と表現します。

失業保険、失業手当という言葉が一般的ですが、失業保険は雇用保険で、失業手当というのは雇用保険の基本手当を意味します。

自分の意志で離職した場合、つまり本人都合により失業すると、失業手当の給付日数は少なめになります。

 

自己都合で離職した場合の所定給付日数

  1年未満 1年以上、5年未満 5年以上、10年未満 10年以上、20年未満 20年以上
全年齢 - 90日 90日 120日 150日

 

自己都合で離職すると、年齢は関係なく、雇用保険の加入期間で所定給付日数が決まります。

所定給付日数というのは、雇用保険の基本手当を受給できる日数で、例えば90日ならば、90日分の失業手当を受給できるという意味です。

一方で、本人の意思とは関係なく、会社都合で雇用契約を解除された場合は、失業手当の給付日数は、自己都合で退職した場合よりも多くなります。

自己都合離職の場合と違い、雇用保険への加入期間だけでなく、年齢も加味して所定給付日数が決まります。

 

特定受給資格者になった場合の所定給付日数

  1年未満 1年以上、5年未満 5年以上、10年未満 10年以上、20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日 -
30歳以上35歳未満 90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 90日 150日 180日 240日 270日
45歳以上60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日

 

通常の受給資格者よりも、失業手当を受けられる日数が多くなる。新型コロナウイルス感染症を理由に離職した人も、解雇や退職勧奨された場合と同等に所定給付日数が多くなるわけです。

 

自己都合での離職だが、会社都合の場合と同じ扱いになるのがポイント。

新型コロナウイルス感染症に感染すると重症化するので、今の仕事を退職する。そういう場合だと、本人都合による離職なので、失業手当の所定給付日数が少なくなってしまう。

そこで、新型コロナウイルス感染症を理由として自発的に離職した人を通常の受給資格者ではなく特定受給資格者として扱うことで、失業手当の給付日数が多くなるよう制度を変更したのですね。

基礎疾患を持っていて、新型コロナウイルスに感染すると重症化する人、例えば糖尿病の基礎疾患を持っているとか、呼吸器系の疾患を治療している。そういう方が仕事を辞めた場合に、今回の特例措置が適用されます。

一般の受給資格者、つまり特定受給資格者にならなかった方が、10年勤めている職場を辞めた場合、失業手当の給付日数は120日になります。上記の表では、通常の受給資格者で、加入期間が10年ですから、所定給付日数は120日です。

一方で、特定受給資格者として失業手当を受給した場合、仮に辞めた本人が40歳だとして、職場で10年勤務しているとすれば、失業手当の給付日数は240日になります。

年齢が40歳、雇用保険に入っていた期間が10年という前提だと、雇用保険の基本手当を受給できる日数は2倍の差が出てきます。

通常の受給資格者よりも特定受給資格者の方が、基本手当の所定給付日数が多く、有利になるため、中には本人都合による退職であるにもかかわらず、会社から退職勧奨されたと言って特定受給資格者になろうとする人もいます。

退職事由を偽るのは不正ですから、本人都合で退職したならば一般の受給資格者になりますし、本当に退職勧奨がされたならば特定受給資格者になります。

多方面で助成金や給付金、補助金が用意されていますから、新型コロナウィルス感染症を理由に、やむを得ず離職した人にも、雇用保険の基本手当を増やしてテコ入れしているのでしょう。

 

 

自己都合退職で離職した人の失業手当の給付制限期間が3ヶ月から2ヶ月に。

雇用保険は会社都合での離職、つまり解雇や退職勧奨で失業する場合は、雇用保険の受給日数が通常よりも多くなります。その一方で、自己都合での退職の場合でも雇用保険の基本手当は出るようになっています。

つまり、自分自身で離職した場合、雇用保険では失業がいわゆる保険事故に該当するわけで、その保険事故を自分自身で起こした場合も失業手当が支給されるようになってます。

ちなみに、生命保険の死亡保険では自殺した場合に保険金は出ません。他にも、自分が重大な過失や故意に事故起こしたり怪我をしたりしても、保険金が出ないのです。わざと事故を起こして保険金を受け取れば、それは保険金詐欺になります。

一方、雇用保険は、自分自身の意思で退職して、自発的に失業をした場合でも失業手当、つまり雇用保険の基本手当が出るようになっています。失業手当を受け取るために、わざと離職しても、それを受け取れるのが他の保険との違いです。

会社都合で失業すれば、失業保険からの給付を受けられるわけですけれども、会社都合ではなく自己都合で離職した場合は、給付を受けるまでの間、3ヶ月間の制限がかかるようになっています。

雇用保険の基本手当には離職後、求職の申込みをした日から7日間の待機期間があり、自己都合で離職した方には、さらに3ヶ月間の給付制限があります。その期間を経過した後に、失業手当を受け取れるようになるわけです。

新型コロナウイルス感染症への対策として、やむを得ない理由で自己都合退職する方も中にはいて、そういう方のために給付制限の期間を3カ月から2カ月に短縮したというわけです。

給付制限の期間が短縮されれば、以前よりも早い段階で雇用保険の基本手当を受給できるようになりますから、会社経由で雇用保険に加入していた人には有利な制度変更です。

雇用保険法33条1項では、自己都合で退職した場合は待機期間の7日間に加えて、1か月以上3か月以内の間で、基本手当の給付制限が設けられるようになっています。通常時は、3ヶ月の給付制限が課されているところを、ルールを変えて2ヶ月間の給付制限に変更したのですね。

離職日が令和2年つまり2020年の10月1日以降に離職日がある場合、給付制限の期間が3カ月から2カ月に短縮されます。

この2ヶ月への短縮は、5年間のうち2回までで、自己都合により5年間で3回以上離職した場合は、従来どおりの3ヶ月の給付制限があります。

2020年10月から5年間ですから、2025年の9月末までを想定しており、その期間の間に自己都合で離職した人は給付制限期間が2ヶ月になります。

なお、上で書いたように、新型コロナウイルス感染症を理由に自主的に離職したときは、特定受給資格者になりますから、給付制限期間はありません。

正当な理由がない自己都合離職者に対して、給付制限期間を2ヶ月に短縮していますから、特定受給資格者になった方とは別扱いです。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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