労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

休業中に収入が減ったら、算定基礎手続きで社会保険料も減るのか。

保険料決定

 

 


社会保険料は、標準報酬月額を基準にして決まり、標準報酬月額は報酬月額を基準にして決まります。報酬月額は、簡単に表現すれば毎月の収入のことです。

毎月の収入にあたる報酬月額から標準報酬月額という数字を出して、その標準報酬月額に保険料率を掛けると、社会保険料の数字が分かるわけです。


これらの数字の関係については、健康保険料の一覧表を見ていただいて、毎月の収入を当てはめると、標準報酬月額や社会保険料の額が分かるかと思います。

 

 

7月の算定基礎届で標準報酬月額が変わるのかどうか。


新型コロナウイルスを理由に、仕事が休業になった方もいらっしゃるかと思いますが、休業手当の支給率が100%であれば、収入が減ることはさほどないのでしょうけれども、それでも休業前に比べて少なからず変化があると思います。

通常時の報酬に比べて、休業中の報酬が少ないとなれば、社会保険料も減るだろう。そう思いますよね。収入に連動するのが社会保険料ですから、休業中に収入が減ってるなら、社会保険料もそれに連動して減っていくだろう、と考えるのが普通です。

4月、5月、6月の報酬を基準にして、7月に算定基礎届の手続きをして、標準報酬月額が決まり、9月以降の社会保険料も決まります。毎年、6月の下旬から集計作業をして、7月の初めに算定基礎届を出すのが通例です。

毎月の賃金に連動する雇用保険料と違って、社会保険料は年に1回の算定基礎手続きでもって決まり、保険料は原則として年間を通して一定です(随時改定という例外はあります)。

4月と5月は、緊急事態宣言が発令されていて、地方自治体からも休業要請が出され、職場が休みであった方もいます。

その休みがゆえに、通常時に比べて報酬が下がっているわけだから、算定基礎届の手続きでも、報酬が減った月を含めて標準報酬月額を算出するのかどうか。それとも、休業手当を受けていた月を除いて、標準報酬月額を算出するのか。どちらの処理をしていくかによって、標準報酬月額は変わりますから判断に悩むところ。

日本年金機構の標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集によると、7月1日時点で、一時帰休、つまり休業が解消しているか、解消していないかによって判断が分かれます。

 

7月1日時点で休業が解消している、通常営業に復帰している場合。

『7月1日の時点で一時帰休の状況が解消している場合の定時決定では、休業手当等を除いて標準報酬月額を決定する必要があることから、通常の給与を受けた月における報酬の平均により、標準報酬月額を算出する』

つまり、休業手当を受けていた月を除いて、算定基礎届を作成しますから、休業による影響の除いて標準報酬月額を算出していきます。


7月1日時点で休業が解消していない、まだ休業が継続している場合。

4月、5月、6月に休業手当が支払われていたならば、その月も含めて、つまり休業手当を含めて算定基礎届を作成します。

つまり、休業中の報酬を基準に標準報酬月額を決めるというわけです。

 


7月1日時点で休業が続いているのか、それとも終わっているのか。ここが判断の分かれ目です。

すでに休業が終わっているならば、休業の影響を除いて社会保険料を決めますよ。一方、まだ休業が続いているならば、休業中の状況を織り込んで社会保険料を決めますよ。このような違いがあります。

 

 

標準報酬月額の随時改定が特例で迅速化。社会保険料を早く変更できるように。

【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合における標準報酬月額の特例改定のご案内

収入が減って、社会保険料が変わるまでには、しばらく時間が必要で、一定期間を経過してからでないと随時改定の手続きはできません。

例えば、4月に収入が減って、その期間が3ヶ月続き、4ヶ月目の7月から標準報酬月額が変わる。これが通常時の随時改定です。

新型コロナウイルスを理由に休業し、報酬が2等級以上(健康保険料の一覧表で確認できます)下がった場合、下がった翌月に随時改定が特例で可能となっています。

従来の保険料のまま3ヶ月間待たないといけないのが随時改定ですが、特例での随時改定だと、4月に報酬が2等級以上減ったとすれば、翌月の5月から標準報酬月額を改定でき、社会保険料が変わります。

対象となる月は2020年の4月から7月ですので、4月以降の報酬が減ったとなれば、特例での随時改定の対象になる可能性があります。

社会保険料を早く変更できるのが利点ですが、一方で、標準報酬月額が下がると、傷病手当金や出産手当金、年金の受給額も下がりますので、その点について被保険者からの同意を取っておく必要があります。

社会保険料を削減すれば、会社には利点がありますけれども、加入している被保険者本人には、給付なり手当の額が減るという副作用がありますから、どういう対処をするかは、その都度、考える必要があります。

被保険者の給付や手当に影響が出るという「人質」を用意しておき、簡単には社会保険料を下げさせないように仕掛けられているのですから、上手に制度が作られていると感じます。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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