労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

雇用調整助成金の助成率が100%に。だが、休業手当の全額とは限らない。

雇調金

 

 

給与を肩代わりする雇用調整助成金。


従業員を休ませて、休業手当を支払うと、雇用調整助成金によって、その休業手当を補助してもらうことができます。

従来だと、助成率は最大で 2/3 でしたが、新型コロナウイルス感染症による休業に対応するため、特例で助成率が90%になり、2020年4月25日の発表では、さらに100%に変更されるとのこと。

新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大について

ただし、すべてのケースで100%助成というわけではなく、60%を超過した部分(40%相当)だけ10割助成で、60%の部分は以前のように90%助成となる場合もあります。その場合は、助成率は全体で94%です。

一定の条件を満たした場合は、休業手当の全体に対して助成率100%が適用されます。

60%を超えた部分だけ100%助成

雇用調整助成金の更なる拡充について

 

3月に助成率を最大90%に引き上げ、4月にはそれを最大100%まで引き上げました。

助成率を90%にした段階で、90%にするぐらいだったら、もう100%にしてしまえばいいんじゃないか、と考えていたのですが、1ヶ月ほど経過して、助成率は100%になったというわけです。

雇用調整助成金の利点は、お店や会社を閉めてる間に、支払う給与を助成金で肩代わりしてくれるところにあります。

給与払わずに、休業なり自宅待機させてしまうと、従業員からすると、もう会社やお店は潰れちゃうんだろうと考えて、仕事を辞めてしまう方も出てくるでしょう。

休業手当を支払って休ませているならば、雇用契約を解除することもないでしょうが、給与も出ないのに雇用契約を維持していても、労働者にはメリットがありませんので、契約を解除して、別の仕事をすることになります。

コロナウイルスの問題が収束して、営業を再開しようとしても、従業員がいなければ再開できないません。休業手当を払わずに従業員を休ませてしまうと、使用者が自ら会社なり企業を潰すということを意味します。

 


助成率100%だからといって、休業手当の全額が助成されるとは限らない。


雇用調整助成金の助成率が100%(10割)になるという発表を受けて、休業手当が全額、助成金で助成されると考えている人もいますが、それは労働者ごとに違います。

雇用調整助成金には上限額が設定されており、1日あたり8,330円まで。これを超過した分は会社が負担する必要があります。

さらに、助成率100%が適用されるには、1日あたりの上限額である8,330円以上の休業手当を支払う必要があります。

100%助成には条件がある。

もし、1日あたり5,000円なり7,000円の休業手当(8,330円未満)になる場合、以前の助成率である90%が適用されます。

すべての場面で助成率が100%となっているわけではない点には注意が必要です。

8,330円ぴったりで休業手当を支払えば、100%助成にはなりますが、そう都合よく帳尻は合わないでしょう。

この8,330円というのは、雇用保険の基本手当、言い換えると失業手当の支給額が目安となっています。

年齢によって基本手当の給付額は変わるようになっていて、その給付額が最も高くなる水準が45歳以上60歳未満の被保険者で、1日8,330円と設定されています。

雇用調整助成金を受給する際は、基本手当を受給しているのと同じだとみなして、その給付額を最大で1日8,330円に設定していると考えていいでしょう。

この上限額を引き上げるだとか無制限にするとなると、基準がなくなり、予算を組めなくなるため、政府としては上限額を廃止するわけにはいかない。

仮に1日8,330円が支給されるとして、1ヶ月の所定労働日数が20日だとすると、1ヶ月で助成金は166,600円。

毎月、月給が50万円なり80万円の人にとってみれば、月166,600円の助成金では足りないでしょう。

 

 

小学校休業等対応助成金と同じに。


小学校休業等対応助成金とは、学校や保育園が休校なり休園になって、その保護者が仕事を休むことになった場合、事業主がその人たちを特別有給休暇(法定の年次有給休暇とは別枠で設定したもの)で休ませると、その給料を助成金て補助してくれる制度です。

こちらの助成金は、創設された当初から助成率が10割に設定されています。

雇用調整助成金と同様に、1日あたりの上限額は8,330円ですが、その金額の範囲内ならば全額が助成金として支給されるものです。

今回の制度変更で、雇用調整助成金の助成率が10割になりましたから、小学校休業等対応助成金と内容は同じになります。

ただし、先程書いたように、雇用調整助成金で助成率100%を適用させるには、1日8,330円以上の休業手当を支給する必要があります。

ですから、職場によっては、小学校休業等対応助成金を利用しても、雇用調整助成金を利用しても、助成金の額が同じになる場合があります。

 

 

給与が1日8,330円以下の従業員を休ませる手段。


パートタイムで働いている人は、1日あたりの所定労働時間が4時間なり6時間で、フルタイム労働者に比べて労働時間が少なめです。

そのため、1日あたりの給与も8,330円を超える人は多くないはず。

仮に時給1,500円で6時間働いたとすれば9,000円。この人を休業させて、休業手当を9,000円払ったとすると、助成率は100%になり、助成金が上限の8,330円支給されるわけですから、会社の負担は670円で済みます。

東京都の地域別最低賃金は、2019年10月以降は1,013円。 パートタイム労働者の時間給は、最低賃金に近い水準だと考えて、時給1,100円だとすれば、6時間勤務で6,600円、7時間勤務でも7,700円。

1日8,330円を超えておらず、この場合は休業手当を満額支払ったとしても、助成率は90%なので、全額が雇用調整助成金として支給されるわけではありません。

一方で、1日の給料が3万円になる人がいたとしたら、その人を休業させて、休業手当を満額支払うと3万円。雇用調整助成金を受給した場合は、上限額が8,330円なので、残りの21,670円 は会社負担となります。

パートタイムで働く従業員(学生も含む)を休業させる際には、雇用調整助成金は有利な制度です。

助成率が最大で100%になっており(休業手当が1日8,330円以上でなければ最大90%)、1日あたりの上限が8,330円ですから、休業中の給料をほぼ助成金で肩代わりしてもらうことが可能です。

ですから、わざわざ無休で自宅待機させる必要はないですし、店を閉めてる間は、いつも通り働いているとみなして給料を払って、助成金を受給すればいいわけです。

ただ、問題となるのは給料水準が高い人です。

先ほど書いたように、フルタイムで1日働いて、給料が3万円に達するような人だと、雇用調整助成金だけでは基本手当の全額をカバーできませんから、足りない分は会社負担となります。

 

 

 

追記(2020年5月26日)上限額が8,330円から15,000円に。

 

助成額の上限額が1日あたり8,330円になっていた雇用調整助成金ですが、15,000円に上限額が変更されます。

上限額を超過した分は事業主が負担しなければいけないため、給与額が高い人を休業させると、助成金でカバーできない金額が発生します。

15,000円に上限額が引き上げられると、仮に助成率80%だとして、1日の給与が18,750円の人を休業させた場合、15,000円が助成金の額となります。

事業主が負担する額を減らせるため、会社のキャッシュの減りを遅くできるのが利点です。ただ、先に事業主が休業手当を立て替える必要があり、そのための現金を持っているかどうか。この点が助成金を利用できるかどうかの分かれ目です。

小学校休業等対応助成金も上限額が15,000円に引き上げられています。

雇用調整助成金の特例期間は、2020年6月30日まででしたが、小学校休業等対応助成金と同様に、9月30日まで延長されます。9月30日までの休業がコロナ特例の雇用調整助成金による対象になります。

特例でコロコロと制度が変わっていく雇用調整助成金ですから、受付窓口に周知されるまで時間がかかり、適用されるはずの特例が適用されないというケースも起こり得ます。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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