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雇用調整助成金、特例で学生でも支給対象になる。

学生も対象

 

 

雇用保険に加入していない学生も雇用調整助成金の対象に。

従業員を休業させた場合に、休業手当を支払うと、その費用の一部が助成金として補助される雇用調整助成金。

新型コロナウイルス感染症に対する対策として、雇用保険に加入していない学生も特例で助成金の対象にできます。

 

雇用調整助成金(厚生労働省)のウェブサイトより。

雇用調整助成金

従来の雇用調整助成金だと、雇用保険に加入していない学生は、支給の対象外になっているのですが、新型コロナウイルス感染症に対応して特例措置が実施されており、その特例が適用されると、雇用保険に加入していない学生も助成金の支給対象にできるのです。

ちなみに、この雇用調整助成金は、従業員本人が申請して受給するものではなくて、会社側で休業を実施して、休業手当を払って、その後に支給申請をして、助成金が会社に対して支給されるというものです。

お店が臨時休業になり、休業手当を支払われず、無給で自宅待機させられる学生もいるようですが、学生であっても労働基準法26条は適用され、会社は休業手当を支給する必要があります。

つい最近採用したばかりの学生でも対象になりますし、大学生だけでなく高校生も助成金の対象にできます。

さらに、新卒で採用したものの、出勤できずに自宅待機になっている人も、雇用調整助成金の対象にできます。

雇用保険に従業員が加入しているかどうかに関わらず、雇用調整助成金を利用できるようになっているのが特徴です。

ちなみに、雇用保険の被保険者を対象にしたものが「雇用調整助成金」で、被保険者以外の人を対象にするものが「緊急雇用安定助成金」と名称が分けられています。両者は混同されやすく、違いが分からないという方もいるはず。

要は、雇用保険に入っている人を対象にするのかどうかの違いです。

 

 

使用者の都合で休業していないのだから、休業手当は要らない?

臨時休業の原因は新型コロナウィルスなのだから、使用者の都合で休業していないのでは。そう考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

使用者がウィルスをばら撒いたわけではありませんし、休業したくてしているわけでもないのだから、使用者には責任は無いだろう。そう考えるのも分ります。

売上や注文が減って、仕事が減って休業する場合であっても、会社が内部留保を持っていれば、乗り越えられるものですから、新型コロナウイルスが原因であったとしても、従業員を休業させたとなれば、それは使用者の都合によるものだと判断されてしまうのです。

リーマンショックの頃も同様でしたけれども、売上や注文が減って、営業を停止した場合は、使用者なり経営者の責任になってしまうわけですから、新型コロナウイルスといえども、それによって営業を停止するなり臨時休業すると、その責任を使用者や経営者が負うのです。

経営者を助けるのは、経営者自身なのです。

休業手当というのは、雇用契約における違約金のようなものです。

例えば、1週間に5日働いてもらうところを、仕事が少ないからという理由で、週3日に減らしてしまった。

この場合、残りの2日分は使用者の都合による休業と扱われてしまい、仕事をしてもらっていなくても、給与を払わなければいけなくなってしまうのです。

ノーワーク・ノーペイは通用しないのです。厳しいですが。

働く時間数を減らした場合も同様です。1日に6時間働いてもらうという契約を締結したにも関わらず、仕事が暇だからとか、少ないという理由で1日3時間に減らしてしまうと、減った3時間は使用者の都合による休業になります。

従業員本人が本人の都合で休んだ日はノーワーク・ノーペイですが、使用者の判断で出勤日数や勤務時間を減らすと、それはノーワーク・ノーペイにはなりません。

 

 

自己都合で注文内容を変えると、ペナルティを課される。

何かを注文なり発注する時は、契約書を作り、どういう条件で取引するかを決めます。

取引では、注文者側の都合で、注文量を減らしたりすると、受注者から違約金を請求されることがあります。

注文者からの要望で作ってるのですから、受注者側としては約束した通りのものをちゃんと揃えなきゃいけない。

にもかかわらず、注文者の都合で、注文の数量を減らしてきたりすると、減らした部分に相当する金額もしくは契約で事前に決めた割合になりパーセンテージの補償をしなければいけないのが通例です。

例えば、契約書で、「キャンセルした数量に相当する金額の80%を受注者は注文者に請求する」こういう類の文言が契約書に入っていることがあります。

仮に、1個1,000円の部品を1万個発注したとします。

その後、注文者による何らかの都合で、その発注量を5,000個まで減らした。

先程の違約条項が契約で決められていたとすれば、キャンセルした数量は5,000個で単価が1,000円ですから金額は500万円。

その80%がキャンセル料なり違約金として注文者から受注者に支払われると、その金額は400万円になります。

実際に5,000個分は購入していないものの、400万円を補償として支払わなければいけなくなります。これが注文者の都合でキャンセルした結果です。

雇用契約も、労働者から労働力を購入すると約束しているものですから、約束した分は確実に購入しなければいけないのです。

注文者である使用者の側から、その注文量を減らしてしまうと、その減らした部分に相当する補償なりキャンセル料が必要になるわけです。それが休業手当として決められてるのです。

 

 

雇用調整助成金を利用すると、どれぐらいの金銭的な効果があるのか。

助成金というと、お金が一気にドサッと入ってきて、懐が潤うようなイメージですけれども、現実の助成金は、実際に使った費用の一部を補助するもの。

100万円や200万円のお金を、ポーンと渡してくれるようなものではないのです。

では、雇用調整助成金を利用すると、どれぐらいの金銭的効果があるのか。

時間給1,200円で働く学生がいるとして、普段は1日4時間で勤務していると考えます。

4時間で給与は4,800円。働いている職場が中小企業に該当するとすれば、休業手当の90%が助成金で補助されます。

労働基準法26条では、休業手当の額は平均賃金の60%以上ですが、ここでは通常通りの給与、つまり普段働いた場合と同額の休業手当を支給したとします。

給与は4,800円で、その90%が助成金で補助され、雇用調整助成金は4,320円。後の残りの480円を会社が負担します。

1日480円の給与は必要になりますが、学生が辞めてしまって、また新しい人を採用し、教育する手間と時間を考えれば、高い費用でもないでしょう。

雇用調整助成金の上限額は、休業日1日あたり8,330円。学生だと、1日分の休業手当が8,330円を超過する可能性は高くない。

雇用保険に加入していない学生も、特例で雇用調整助成金の対象にできる(本来は対象外)ため、無給で休ませるのではなく、助成金を利用しながら休業手当を払う方がいいでしょう。

給与を肩代わりしてくれるのが雇用調整助成金で、申請の手続きも他の助成金に比べて容易ですから、休業するならば、確実に使いたい制度です。

 

 

雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の違いは?

雇用調整助成金について調べていくと、似たような助成金で、緊急雇用安定助成金というものがあると分かります。

では、雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金はどのように違うのか。

2008年の末頃に実施されていた助成金は、中小企業緊急雇用安定助成金という名称でした。

中小企業が中小企業緊急雇用安定助成金を申請し、それ以外の企業、大企業が雇用調整助成金を利用するというように、名称が分かれていたのです。

今回は、雇用保険に加入している人を休業させる場合は雇用調整助成金を利用し、雇用保険に加入していない人を休業させる場合は緊急雇用安定助成金、という形で分かれています。

どちらの助成金も内容はほぼ同じですけれども、名称が分かれていると、違う助成金なんじゃないかと思ってしまうのですが、雇用保険に入っている人と入っていない人を分けるために助成金の名称も2つに分けているというわけです。

学生を休業させた場合に、休業手当を支払うと利用できるのは、緊急雇用安定助成金です。

厚生労働省のウェブサイトに申請書を作成するためのマニュアルが用意されていて、案内通りに書類を作成していくと、必要な書類が出来上がるようになっています。


雇用調整助成金の様式ダウンロード(新型コロナウィルス感染症対策特例措置用)

 

特例で申請書は簡素なものに変わりましたし、添付書類も最低限のもので足りるようになっています。

雇用保険に入ってる人と入っていない人が一緒の職場で働いている場合は、前者を休業させる場合は雇用調整助成金の手続きになり、後者を休業させる場合は緊急雇用安定助成金の手続きをして、両者を分けます。

両者とも休ませて休業させるならば、雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の手続き、合計2つの書類を作成する必要があります。

両方の調整金を同時に手続きする場合は、重複する部分を省略することができます。仮に、雇用調整助成金の書類を作成し、後から緊急雇用安定助成金の書類を作成するならば、後者の書類は記入項目が減ります。

さらに、休業の計画届を事前に用意する必要もなくなりました。

以前は、計画と実績をすり合わせて、支給する助成金を決めていたのですが、休業をした実績のみで足りるように。

1日まるまる休業するだけでなく、勤務時間を短縮して時間単位で休業する場合も助成金を利用できますので、パートタイムで働く学生も助成金の対象にできるのです。

 

 

出勤日や勤務時間が日によってバラバラ。休業かどうかをどのように判断するか。

採用時には雇用契約を締結し、書面で1週間あたりの勤務日数、1日あたりの勤務時間を決めるのですが、実際に働き始めると、契約とは違う条件になっていることも。

週4日、1日4時間で契約したものの、実際は週5日勤務で、1日5時間の勤務シフトになっている。つまり、契約と実態がズレている状況です。

このような働き方をしている人を休業させる場合、契約と実態、どちらを基準にして休業手当を計算するか。

雇用契約と勤務実態がズレている場合、雇用契約の内容を優先して判断します。

また、勤務シフトで勤務日数や勤務時間を決めている職場の場合、勤務シフトがゼロになると休業もゼロになってしまうところですが、前年同月比で休業になったかどうかを判断することができますし、さらに、休業手当を支払った日を出勤日と扱って助成金を申請することも可能です。

例えば、普段だと月に20日出勤して働くところ、新型コロナの影響で出勤日が0日になったとすれば、実際の出勤日は0日ですが、勤務シフト上は20日ということにして、それを休業日とすることができます。つまり、仮の形でも構わないので、勤務シフトを作って休業すれば、助成金の対象とできるわけです。

勤務シフトが不確定な働き方をしている方には、この方法で休業日を設けることができます。

 

 

 

窓口には行かない方が良い。郵送かオンラインで書類を送るのがオススメ。

2009年の1月に雇用調整助成金、中小企業緊急雇用安定助成金の手続きをした経験がありますが、助成金センターの窓口に行って申請書を提出するために、1時間待ち、2時間待ちになり、随分と待たされた記憶があります。

今回は、その時以上に窓口に人が集まっているでしょうから、どうしても窓口に行って聞かなきゃいけないことがある、やらなきゃいけないことがある、という人を除いて、窓口には行かない方がいいでしょう。

椅子に座って、1時間も、2時間も待っているのは無益ですし、スマホをいじっても、本を読んでも、さすがに疲れてしまいます。

助成金の申請書は郵送で送ることができますし、オンラインでも申請できるようになりました。

ただ、オンライン申請は、システムに不具合が発生し、5月20日現時点ではオンラインによる申請は中止されています。

どういう仕掛けになっているのか、調べてみたかったのですが、調べる前にシステムが止まってしまいました。

書類を作って、印刷して、大きめの封筒、A 4サイズが入る封筒に申請書等を入れて、簡易書留で助成金センターまで送ればいいわけですから、必ずしもオンラインにこだわらなくてもいいでしょう。

申請に必要な書類も随分と少なくなっていて、助成金の申請書、売上を証明する書類(売上帳簿)、休業したことがわかるもの(勤務シフト表)、休業手当を支払ったことがわかるもの(給料明細の控え)、役員名簿、助成金を振り込む口座のキャッシュカードのコピー。

必要な書類はたったこれだけになりましたから、難しくて申請できない、書類が多い、という理由で拒否するわけにはいかないでしょう。

小規模な事業所用の申請書では、平均賃金の計算も必要なくなりました。

実際に支払った休業手当の額を基準にして助成金を支給するため、申請手続きは楽です。

これだけ大盤振る舞いな雇用調整助成金は今までありませんでしたから、無給で学生を休ませてしまうのではなく、休業手当を100%支払って、助成金を利用していきたいもの。

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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