労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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休業中の給与を補助する制度 雇用調整助成金の支給率が最大90%に。

助成金

 

 

 

最大2/3の支給率を90%に引き上げ。

新型コロナウィルス感染症への対策の1つとして、2020年4月から雇用調整助成金の支給率が引き上げられます。

雇用調整助成金とは、仕事や注文が減ったり、お客さんが減って、従業員を休ませる時に、労働基準法26条に基づく休業手当を支払うと、その一部が助成金として補助される制度です。

休業手当とは、従業員を休ませたときに支払う給与です。仕事をしていなければ給与は出ない、と思っている方もいらっしゃるでしょうが、使用者の都合で従業員を休ませた場合は、一定額以上の給与(平均賃金の60%以上)を支払う必要があります。

従業員を休業で休ませて、休業手当を支払うと、雇用調整助成金を受給できるというわけです。

収益が減っている中、給与を払い続けるのは負担ですから、その負担を軽くするために雇用調整助成金が用意されているのです。

雇用調整助成金の支給率は、休業手当として支払った額の2/3もしくは1/2です。通常の場合は。

中小企業の場合は支給率2/3、大企業の場合は1/2となっています。支給額の上限額は、1日あたり8,330円。

この8,330円という金額は、雇用保険の基本手当、つまり失業手当の1日あたりの金額の最も高い額と同じになっています。

45歳から59歳の人が離職して失業手当を受け取ると、最も上限額が高くなり、その額が8,330円になります。

雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和 2 年 3 月 1 日から~

仮に休業手当として1日1万円を支給したとすると、中小企業の場合はその2/3ですから、約6,600円が助成金で補助されます。

ただし、この金額が助成金として支給されるとしても、残りの約2,400円ほどは会社が負担しなければいけません。

助成金だけで休業手当の全額をカバーしてくれれば、事業主側の負担は楽になるのですけれども、雇用保険料や社会保険料は発生しますから、人件費がゼロになるわけではないです。

雇用調整助成金の支給率を引き上げると、中小企業は支給率が90%になり、大企業は75%に変わります。

とはいえ、支給率が100%にならない限り、会社側の費用負担は続きます。

仮に、支給率を100%にしたとしても、1日あたり8,330円で助成金の額は上限に達しますから、無制限に助成金が増えていくことはありません。

支給率を引き上げるならば、予算の制約などもあるでしょうが、早い段階で助成金の支給率を100%にしてしまった方がいいのではないかと思います。

新型コロナウィルス感染症が収束するまで時間がかかると判断されれば、さらに雇用調整助成金の支給率が上がる可能性もありそうです。

上限額が1日あたり8,330円で、さほど高い水準ではないため、給与水準が高い人を休業させると、助成金では足りない場合もあります。

1日の給与が2万円の人を休業させると、その60%を休業手当として支払うとすれば、12,000円。この金額だと助成金の上限額8,330円を超えますから、超えた額は会社の資金から支払う必要があります。

雇用調整助成金を利用しても、現金は必要になりますので、融資で資金を集めておくよう行動しないといけません。

 

 

無休で従業員を休ませることはできない。

一時帰休や自宅待機、休業など色々な表現がありますけれども、新型コロナウイルス感染症でお客さんが減ったり、注文が減ったりして、従業員を休ませた場合は、使用者の都合で休ませたことになり、給与を支払う必要があります。

「出勤していない、働いていないんだから、給与は払わなくてもいいんじゃないか」
「ノーワークノーペイでいいんじゃないか」

そう考える経営者の方や事業者の方がいるかもしれませんが、従業員が雇用契約の通りに働けるにもかかわらず、使用者側の判断で仕事を休みにすると、休業手当という形で給与を支払わなければいけなくなるのです。

例えるならば、雇用契約における違約金のようなものです。

従業員を休ませれば人件費がかからない、賃金を払う必要がない、というのは間違いで、仕事を休ませても給料払わなければいけないのが雇用契約なのです。

給与(今回の場合は休業手当ですが)を払わずに、従業員を自宅待機させる会社もあるようですが、雇用契約で働いてもらっている従業員の場合は、無休で自宅待機させるのは法律違反になります。

なお、委託契約や請負契約という形で働いている人の場合は、雇用契約ではありませんから、労働基準法26条は適用されません。

これはフルタイムで働いている従業員だけでなく、パートタイムで働いている従業員も同様です。

正社員を休ませた時は、休業手当を払わなければいけないけれども、パートタイムで働いている人たちを休ませた場合は、休業手当を払う必要はない、というものではないのです。

雇用契約を締結して働いてもらっている従業員ならば、全員が休業手当を支給される対象となるわけです。

夏に、台風が来て、雨や風が強いのに、小売チェーンや外食チェーンのお店が通常通りに営業していますが、休ませてしまうと給与を払う必要があると知っているため、臨時休業にしないのです。

休業する原因が新型コロナウイルス感染症なのだから、使用者の責任や都合ではないのではないか、そう考える使用者や事業主もいらっしゃるでしょう。

従業員が新型コロナウイルス感染症に感染して、仕事を休むことになったなら、それは本人の問題ですから、使用者の責任ではなく、休業手当の支払いも必要ありません。

しかし、働こうと思えば働ける人、病気や怪我をしてない人たちを休ませてしまうと、それは使用者の都合で休ませていることになるのです。

例えば、コールセンターで感染者が出たので、そのセンターで働く人全員を自宅待機させたとなれば、健康な人も多数含まれますから、その方々には休業手当を支払って休んでもらう必要があるのです。

ちなみに、夏に台風が来て、お客さんが少ないから仕事を休みにしたり、従業員を早退させたりした場合も、使用者の責任になります。

また、雪が降って、お客さんがお店に来ない。そのため、従業員を休みにしたり、早退させたりする。この場合も使用者の都合で労働者を休ませてることになり、休業手当が必要になります。

感染予防という理由であっても、健康な人を休ませると、休業手当が必要になる。このように理解していただくと良いでしょう。

営業を止めているのに給与は必要になるのですから、その費用負担を軽くするために、雇用調整助成金が用意されているのです。

 

 

数日の臨時休業ならば、振替休日で対処可能。

営業を止めるといっても、数日ならば、他の出勤日と振り替えることで、休業を回避できます。

例えば、週末、土日の2日間だけ臨時休業にしたとすれば、その代わりに、他の休みの日を出勤日に変えて、休業日にならないようにします。

振替休日と同じ考え方です。

ただ、休業期間なり自粛期間が長期間、1ヶ月や2ヶ月となれば、振り替えて対処できる日数ではありませんから、その場合は休業手当を支給し、雇用調整助成金で負担を軽くする流れになります。

 

 

休業手当は必ずしも60%でなくてもいい。

労働基準法26条では、休業手当は平均賃金の60%以上となっていますが、この条件を満たすならば、支給率を変えても構いません。

休業手当という名称ではなく、法律に基づいて付与されるものとは別枠で、特別有給休暇を付与しても休業手当を支払うのと同じ効果を得られます。

給与は全額支給(休業手当の支給率100%)、社会保険料は会社が全額負担(従業員負担の部分も含めて)。こういう会社もありました。2009年の初め、リーマンショックの頃の話ですが。

休業となれば、「会社が潰れるんじゃないか」と従業員が動揺するでしょうし、1ヶ月や2ヶ月で通常営業に復帰できる見込みがあるならば、給与や社会保険料でこのような対応をするのも1つの方法なのかもしれません。

資金に余裕があり、短期間で通常の営業状態に戻れるという会社に限りますが。

 

 

厚生年金保険料の納付を猶予する制度

従業員が休んでいる間も発生するのが社会保険料です。

雇用保険料は実際に支払われた賃金をもとに計算しますし、保険料も少額ですから、支払いを休業中に支払いをしたとしても負担は少ないでしょう。

しかし、社会保険料は年に1回、標準報酬月額を決めた後は、原則として給与が支給されたかどうかに関わらず、毎月の保険料が必要になります。

新型コロナウィルス感染症で事業を休止した場合に、厚生年金保険料等の猶予制度が設けられていて、保険料を支払う時期を後にずらすことができます。

新型コロナウイルス感染症で 影響を受ける事業者の皆様へ(経済産業省) の34ページに掲載されています。

日本年金機構のウェブサイトにも、厚生年金保険料等の納付が一時的に困難となった場合に猶予制度があります と案内があります。

労働保険料に比べて、社会保険料は支払う額が多いですから、後払いにできれば、手元現金の減りを少なくできます。

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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