仕事中のマスクが許される職場、許されない職場
インフルエンザの流行時期とコロナウイルスの広がりが同時期であるため、病気にかかっている人だけでなく、健康な人、普段からマスクをつけない人まで、マスクを付けるようになっています。
マスクでウイルスは防げない、と言われていますが、マスクをつければ、少しでもコロナウイルスを防げそうな気持ちになりますから、元気な人でもマスクをつけてしまう人が増えてしまうのでしょう。
日常生活で、マスクをつけるかどうかは、本人の自由ですから、そこは他人が何か言うようなところではありません。
必要のない人が、マスクを付けることで、お店のマスクが全部売り切れてしまう、という弊害はありますけれども、個人的にマスクを使うことを止めるのは難しいですから、ここは仕方のないところです。
問題は、仕事中にマスクをつけていいのかどうか。
インフルエンザが流行しているから、コロナウイルスが広がっているから、マスクを着用して仕事をしてもいいのだろうか、というのが労務管理で問題となります。
「緊急事態だから仕方ない」、「仕事中にマスクをつけても、今回は特例的に許されていいんじゃないか」という考え方もあります。政府だと、超法規的措置のようなものです。
お客さんと、直接に接触しない仕事だったら、マスクを付けていたとしても、何ら問題にはなりません。
食品工場で加工作業を延々とする仕事。
工場内で部品を組み立てて製品を作る仕事。
金属の粉末が舞うような場所で加工作業をする仕事。
施設を清掃する仕事。
このような、お客さんと会話する必要がないような仕事だったら、仕事中にマスクを付けたとしても、クレームは出ませんし、むしろ付けた方がいいわけです。
しかし、お客さんと接する仕事、例えば、ホテルのスタッフ。ホテルに来るお客さんと対話しなければいけないのですから、そこでマスクをつけた状態になっているとなれば、接客されたお客さんから不満が出るわけです。
マスクを付けて働くホテルスタッフなんて見たことがありません。
他にも、寿司屋も同様です。カウンターで、お寿司を握って、目の前のお客さんにお寿司を出す仕事です。
あの板前さんが、マスクを付けて、お寿司を握って、「へい、お待ち」とお客さんに出したら、どうなるでしょうか。そんなお寿司、食べたいと思うでしょうか。
病気にかかっている板前さんが握ったお寿司なんじゃないか、と人はお客さんは思ってしまうのでは。
また、マスクを付けていたら、板前さんとの会話も弾みません。マスクを付けている人には、話しかけにくいものですから。
飲食店や小売業では、人と接する仕事(これが付加価値)がメインですから、そういう場で、マスクを付けて仕事をするとなると、「何だこのお店は」と不満を持つお客さんも出てきます。
実際にあった例として、とあるスーパーマーケットで、レジ係の人たちが、ほぼ全員、マスクを付けている状態で接客をしていました。ちなみに、そのお店ではマスク着用についてルールは決めていませんでした。
それを見たお客さんが、お店の意見箱というか、意見を書いて投票するような箱があって、そこに「このお店の従業員はなぜみんなマスクをつけて仕事してるんだ」とクレームを書いた紙を投函しました。
お客さんと接する仕事で、マスクを付けていると、お客さんとの間に、壁を作っているような印象を与えるのではないでしょうか。親しみやすさが失われるような感じもあります。
マスクを付けるなら休む。出勤するならば付けない。接客業では、このような基準が必要なのでしょう。
引きこもる効果をマスクで得る人たち
マスクを付けていると、分かりますけども、外界から遮断されて、自分の殻に閉じこもってるような感覚を覚えます。
要するに、マスクを使って、引きこもり状態になっているようなものです。部屋の中ではなく、外に出ているときも引きこもりモードを継続しているわけです。
あなたの周りにもいるんじゃないですか。特別な理由があるわけじゃないのに、年がら年中ずっとマスクをつけてる人。
真夏の、汗だくになるような暑い日に、マスクを付けている人。見たことがあるのでは。もう、不審者ですよね。
それはね、真冬にね、インフルエンザが流行している時期に、マスクを付けていると言うならば分かりますよ。
他にも、春先に、花粉が飛んでるから、花粉症対策として、マスクを付けている。外出時に限って。そういうまっとうな事情があるんだったら、まあマスクを付けていても納得です。
けれども、そんな事情もなく、常に、外でも、建物の中でも、ずっとマスクをつけてる人、年がら年中、春でも、夏でも、秋でも、冬でも、ずっと付けている人って、見るんじゃないすかね。筆者も知っています、そういう人。
「マスク依存症」という言葉があり、ずっとマスクを付けていないと、落ち着かないような状態になるようです。
マスクを付けていれば、口周りがほわっと温かくなって、冬場には、一種の防寒具として使えます。ただ、付けていると、確かに、周りの人達から遮断されてるというか、壁を作ってるというか、自分だけの世界が出来上がってるというか、そういう不思議な効果があるのが分かります。
普段マスクを付けない人だと、そういう効果が分からないでしょうけれども、ちょくちょくマスクを付けていると、マスクを使って引きこもっている感覚が分かるようになります。
その引きこもり感覚が分かってしまうと、マスク依存症になっちゃうわけです。
マスク着用のルールも決める必要がある
小売大手イオンでは、2019年12月から、就業中にマスクを着用するのは原則として禁止になりました。
何か特別な理由があり、病気中や花粉症など、そういう特別な理由がある場合は、着用を許すのでしょうが、原則として仕事中はダメというルールになったようです。
なお、2020年1月、コロナウィルスが流行している状況下では、特例としてマスク着用可能としているとのこと。
今までマスク着用について、何らのルールを決めていなかったのも良くないのですが、ルールが無ければ、好きなように決めていい、と考えるのが人間です。
就業規則に、マスクを着用していいのかどうか、について書かれていない。服装規定にも、書かれてない。身だしなみ規定にも書かれていない。だったら、自分の判断で、付けるかどうか決めてもいいんだ、と解釈するもの。
生魚、生肉、食べ物を直接に取り扱う仕事だったら、マスクを着用するのはアリですし、むしろ推奨されるべきなのでしょう。
けれども、それ以外の人は、マスクを着用する必要はないわけです。
コロナウィルスの感染が広がり、特例でマスクの着用を認めるとしても、いつまでにするのか。どこかで区切りを付けないといけないでしょう。
放置すると、ズルズルと、ずっとマスクを着用して勤務する人が出てきます。どさくさ紛れに。
予防のために仕事中にマスクを付けたい。そういう要望を出す人もいますけれども、仕事中の服装というのは、従業員が好きに決めていいものではなく、事業所がどういう服装にするか、どういう身だしなみするか、を決めます。
髪型、髪の色、爪、ユニフォーム、どんな靴を履くか、どんなシャツを着るか、そういう事を細かく決めるのが職場のルールです。
他人同士が集まって働く職場ですから、細かいルールが多々あるのはやむを得ないことです。政府が決めた法律と同じです。
そのルールの中に、マスクに関する項目が今までなかったので、各々が好きなように、マスクを使っていた、というのがこれまでの実情でした。
ルールとして決めるのは、シンプルなもので、「マスクを着用するなら休む、出勤するならマスクを着用しない」、原則となる基準はこれです。
マスクを付けなきゃいけないほど、体調に問題があるんだったら、出勤せずに休めばいいのです。
インフルエンザやコロナウイルスを防ぐという名目で、マスクを付けてしまうと、ウイルスなんて目に見えないものですから、ウイルスが飛散してると言ってしまえば、いつでもマスクを付けられるということになってしまいます。
まさに、言ったもの勝ちです。
予防目的でマスクを付けてOKだと、いつでもマスクを付けて構わないと解釈されてしまうのです。
一時的に許可するならば、いつからいつまでにするのか。これはキチンと決めないといけません。
接客を主とするサービス業では、こういう状態ではいけないわけです。
髪の色や爪、ユニフォーム、そういったルールを決めるだけでなく、マスクの着用ルールも、今後は決めておく必要があります。