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36協定には残業を減らす効果は無い

36協定はポンコツ


 

36協定で残業は減らせない?

日本と同様、アメリカでも残業はありますが、36協定のようなものはなく、残業したことに対する割増賃金率だけが定められています。

法定労働時間を超えて働いた場合、賃金の割増率は50%以上。残業に対する制限はシンプルにこれだけのようです。

日本だと、まず法定労働時間でひとつのラインが引かれており、そこを超えるときは、36協定を締結する必要があります。法定労働時間を超えたときの割増率は25%以上です。さらに、月に60時間以上の法定時間外労働が生じる場合は、50%以上の割増率になるというルールもあります。

残業時間に上限を設定するのが36協定の役割なのですが、ここで決めた上限時間を破るケースが少なからずあります。

厚生労働省が定期的に発表する『労働基準関係法令違反に係る公表事案』にも、36協定で定めた上限時間を超過した事例がいくつも掲載されています。

長時間労働削減に向けた取組(厚生労働省)

36協定は、休日労働や法定時間外労働をする場合に、事前に締結しておく労使協定です。

法定労働時間をオーバーして働くときは、1日あたり2時間、1か月あたり30時間のように、残業の上限を協定で決めてるわけです。

ただ、労使協定という位置付けであって、その内容がどうも守られにくい傾向があるようです。

公表される法令違反事例でも、36協定で決めた上限時間を超過している事例がいくつもあるとなると、「労使協定だから、別に破っても大丈夫なんじゃないか」と甘く見られてるのではないでしょうか。

残業を許すための手段として、36協定が位置づけられてしまい、残業時間に上限を設けて、それを減らしていくという目的は、達成できていないのではないか、と思うのです。

減らすどころか、残業を増やしてしまっている。これが36協定の実態です。


労働時間と割増率だけで残業の基準を作ると分かりやすい。

36協定を廃止して、一律で割増賃金50%以上、という制限を加えたら残業は減るのかどうか。

どうなるのかはやってみないと分からないのですが、金銭的な制約に人は敏感に反応するものですから、「50%割増ならば、もう残業はさせられない」と考える使用者が増えるのではないかと思います。

36協定だと、残業を減らそうという動機が弱くなりがちです。残業を許すための労使協定、と認識されているフシがありますから。

「36協定を締結しとけば、自由に残業できるやろ」と考えている方も、世の中にいらっしゃるのでは。

さらに、36協定には、特別条項を付加することができ、さらに長時間の残業ができるような協定にすることもできます。

政府は、残業時間に上限を設けて、長時間労働を抑止しようと考えていますが、割増率を高く設定し、残業時間に制限を設けない方が、残業は減るのではないかと私は考えています。

36協定は、本当に残業を減らす効果があるのか、残業を抑止するような効果があるのか、というと、それは難しいだろうと私は思っています。残業を許すために締結されているのが36協定ですから。

労働時間の上限と割増賃金率という数字を示して、そこを基準に残業を減らしていこうとする方が分かりやすいでしょう。

50%割増になると、もうこれは従業員に残業させるわけにはいかなくなります。

給与が1.5倍になりますからね。仮に、1時間当たりの給与が2000円の人だと、それが1.5倍になれば3000円です。これはなかなかの金額です。

働く人にとっては悪くない話で、「それだけ割増してくれるならば、残業してもいいだろう」と考える方も出てくるのではないかと思います。

しかも、基本給の部分だけが割増されるだけでなく、手当も含めて割増賃金が付きます。

36協定で残業時間の上限を決めても、その約束を破ってくる会社があるわけですから、時間数に制限を課す方法は、あまりうまくいかないのでしょう。

数字で分かりやすい基準を作って、曖昧になる余地をなくしておかないと、長時間労働はいつまでたっても減りません。

法定労働時間を超える残業しても、50%以上の割増が付くならば、「別に残業してもいいよ」っていう人も出てきます。

一方で、使用者としては残業されてしまうと、給与が1.5倍になるわけですから、なんとしてでも残業を防がなきゃいけない。

労働時間数で制限しても守られにくいですが、賃金の割増率でもって金銭的な制限を課せば、人は動きやすくなります。

労働時間数と割増率を、一例として、

月45時間までは50%割増
月45時間超は75%割増
月60時間超は100%割増

というように、基準がハッキリしていると、使用者は「残業させると高くつく」と認識します。長時間労働をさせていると、お金がなくなって、会社が潰れますからね。

残業させなければ払う必要がありませんから、使用者は割増賃金の支払いを自主的に回避することも可能です。さらに、36協定を締結する手続きが不要になり、毎年、労使協定を締結し直して、協定書を労働基準監督署に提出する必要もなくなります。

残業時間に上限を設けるのではなく、割増賃金率を引き上げて長時間労働を減らす。この方法の方が効果が期待できるのではないか、と私は思います。

山口正博 社会保険労務士事務所
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