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他の会社でも起こり得る セブンイレブンで残業手当の一部が未払いに

 

対岸の火事ではない

 


人によって違う残業の定義。

割増賃金である残業代を計算するときは、基本部分の給与、基本給や時間給だけを対象に割増賃金を付けるのではなく、手当を含めて計算する必要があります。

通勤手当や家族手当など、一部の手当は除外できますが、精勤手当や職責手当など、除外となる手当以外のものは、計算に含めて割増賃金を計算します。

そのため、手当が多いほど、割増賃金も増えていきます。時間外労働に対する割増賃金のみならず、深夜割増や休日割増も同様に。

残業という言葉を使うとき、人によってその定義が違っていることがあります。

必ずしも他の人と、その意味合いが同じとは限らなくて、話の内容が噛み合わない時があります。

例えば、5時間勤務の仕事の時に、何らかの事情で、5時間勤務が6時間勤務に変わったとしましょう。本来は、5時間で終わるところが、6時間の勤務になったわけだから、1時間の残業が発生しています。

では、この1時間の残業に対する賃金を残業代と表現していいのかどうか。

時間給が2,000円だとして、5時間勤務すれば、10,000円。6時間勤務すれば、12,000円。この場合、追加で発生した1時間に対する給料は、2,000円です。では、この2,000円は残業代でしょうか。それとも残業代では無いのでしょうか。

「1時間残業したんだから、それに対する賃金を支払っているので、それは残業代だろう」、これがまず1つの考え方。

次に、「確かに、残業ではあるけれども、支払われている給料は、通常の給料であって、時間外労働に対する割増賃金は付いていない。だから、残業代という表現ではなく、通常の賃金と表現する方が妥当なんじゃないか」という考え方もあります。

割増賃金が付いた時だけ残業代が発生している、と表現するのが、私の考え方なのですが、人によっては、そうではないようです。

所定労働時間を超えて働いた場合に支給される賃金は残業代だ、と表現する人もいるのです。

割増賃金が付いた場合に限って残業代だと表現するのか、割増賃金が付かなくても残業代と表現するのか。ここで解釈が分かれているのです。

 


残業代の計算を間違いやすい理由。

セブンイレブンで、残業代の未払いが発生していた、とニュースで報道されていますが、残業代の全てを支払っていなかったのではなくて、割増賃金を計算する過程に間違いがあり、その一部が支払われていなかった、というのが実態です。

店舗従業員様への給与支払い代行業務における「精勤手当」「職責手当」に対する残業手当の一部支払い不足について|セブン‐イレブン~近くて便利~

単に「残業代未払い」と書いてしまう、と残業代を全く払っていなかったかのような印象を与えてしまうので、誤解を招きます。

計算過程で、1.25という数字を使うところを0.25にしていたのが原因だと、セブンイレブンのウェブサイトで説明されています。

本体部分に対する割増賃金では、0.25を使って計算していたため、手当の部分に対する割増賃金も同じ0.25で計算してしまっています。

これを見て、「あぁ、これは間違うだろうな」と。割増賃金の計算だから、同じ数字で計算していけばいいだろう、と考えてしまうのも分かります。

残業代の計算で間違えやすいところは、まず手当を含めずに割増賃金を計算してしまう点。セブンイレブンでは、手当を含めて割増賃金を計算していますから、ここは問題ないのです。

手当を含めずに、割増賃金を計算してしまっている会社もありますから、そういう会社に労働基準監督署がチェックに入れば、未払いを指摘されてしまいます。

セブンイレブンでは、精勤手当と職責手当が支給されていたようで、その手当てに対する割増賃金が付いていなくて、未払いになっていたのかと想像していましたが、そうではありませんんでした。

基本給(or 時間給)の部分に対する割増賃金の計算は正しくて、手当の部分に対する割増賃金の計算に間違いがあり、支払額に不足が発生したものです。

時間給に対する割増賃金は、「残業時間 × 時間給 × 0.25」で算出できます。

一方、手当に対する割増賃金は、「残業時間 × (手当 ÷ 所定労働時間) × 1.25」で計算します。ちなみに、実労働時間ではなく所定労働時間を使っているのもポイントです。

「手当 ÷ 所定労働時間」の部分は、1ヶ月単位で支給される手当を、1時間あたりに換算しています。

では、なぜ、前者では0.25を使い、後者では1.25を使うのか。

それは、前者の割増賃金(給与本体に対する割増部分)では、基本給の部分は分離して計算しているため、1.25ではなく0.25で割増賃金を計算しているためです。

割増賃金の部分が25%ですから、0.25になります。一方、基本給の部分は1になります。両方を合わせると1.25ですが、分離して計算すると、0.25と1に分かれるのです。

後者、手当の割増賃金を計算するところでは、手当本体と割増賃金を合わせて計算するため、0.25ではなく、1.25という数字を使って計算します。

誤りのケースのように、0.25で手当部分の割増賃金を計算してしまうと、手当本体の部分が未支給になり、割増賃金の部分だけが支給されてしまうことになり、本来の支給額よりも減ってしまいます。

手当本体と割増賃金を合わせて支給するのですから、1.25で計算する必要があるわけです。

「でも、セブンイレブンの例では、精勤手当と職責手当で月3,000円が支給されているから、手当の本体部分は要らないのでは?」と思うところでしょうが、この3,000円の手当は所定労働時間に対応するものであり、所定外の労働時間、つまり残業時間に対する手当は含まれていないのです。

そのため、残業時間が10時間だとすると、3,000円 ÷ 100時間 = 30円(これが1時間たりに換算した手当の単価)に時間数を掛けて、300円の手当が必要になるわけです。ここに割増賃金25%を上乗せすると、375円となります。

こういう計算を見ると、「残業させると思ったよりもお金がかかるな」と分かります。人件費を節約したいならば、残業はさせないのが正解です。

割増賃金は25%増という知識は正しいのですが、本体部分の手当が抜け落ちていないかどうか、このチェックが必要になります。

月給制の人と時給制の人では、少し割増賃金の計算方法が違っていて、セブンイレブンに限らず、他の会社でも同じ計算間違いが起こっても何ら不思議ではありません。

ただ、セブンイレブンの場合、2001年10月から2019年11月までに、支払い不足の金額が4億9000万円ですから、途中で気づくなり、指摘する人がいなかったのでしょうか。

今までやってきたことだから正しいのだろう、と思ってしまうのが人間ですから、なかなかチェックしようという気持ちにはなりにくいものですけれども。

 


残業代を正しく計算して給与を支給するには?

先程、書いたように、手当の部分の計算方法は、間違いやすいところです。

割増賃金を計算するときは、
1.手当を含めて、1時間あたりの賃金単価を出す。
2.手当も含めて計算するときは、手当本体を含めているのか、除いているのかチェックする。

1の段階で間違っている事業所もあるでしょうが、手当を含めることは分かっていても、計算の過程が間違うこともあります。

給与の計算方法には法的に制約はなく、電卓で計算してもいいですし、算盤で計算しても良いわけです。中には、表計算ソフトで給与を計算しているところもあるのでは。さらには、市販の給与計算ソフトでも構いません。

手当の部分で残業代の計算が間違いやすいものですから、あえて手作業で給与を計算せずに、然るべき給与計算ソフトを使うのが良いのではないでしょうか。

計算を間違って、あとから何十万円、何百万円と請求されるのは負担ですし、ましてや億単位の請求となれば困りものです。

毎月1,000円程度で、給与計算をラクにしてくれるならば、使わないという選択肢は無いのでは。その費用も事業経費にできるわけですし。

お金が絡む部分はキッチリしておかないと、相手から不信感を持たれてしまうものですから、割増賃金もキチンと計算しておくほうが良いはず。

月に60時間を超えて法定時間外労働をした場合、割増率が50%になるというルールもすでに大企業では適用されており、中小企業にもいずれ適用される予定です。

このような制度変更にも対応できる給与計算サービスを今から利用しておく方が、時間と費用を節約できるのではないかと思います。

山口正博 社会保険労務士事務所
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