- アスマイルは、大阪府の健康マイレージシステム
- 健康な人には利点が少ない健康保険制度。
- 最も気になる「賞品」は?
- ポイントが3種類もある。
- 健康データの入力はほぼ手作業。
- データが入るのは1アカウントにつきスマホ1台分だけ。
アスマイルは、大阪府の健康マイレージシステム
先日、健康診断を受けた際に、検診結果と一緒に宣伝チラシを受け取ったんです。そのチラシというのは、『アスマイル』というアプリを紹介するもの。
色々なアプリをインストールして、自分なりに利便性を向上させられるのがスマートフォンの良いところで、アスマイルもそのアプリの1つ。
アスマイルは、大阪府の住民向けに用意された健康系のスマホアプリで、健康に関連するデータを登録していくと、ポイントが貯まり、一定数までそれが貯まると、賞品に交換できるというもの。
2018年に、大阪府が健康マイレージシステムを作るとニュースになりました。
おおさか健活マイレージ アスマイル (pref.osaka.jp)
マイレージというと、頭に思い浮かぶのは、航空会社のもので、一定の期間内にマイレージ数が基準値を超えると、特定のステータスを手に入れることができる。エメラルドやサファイア、ダイヤモンドなど、宝石の名前を付けている航空会社もあります。
世の中には、「マイラー」という人たちがいて、あの手この手でマイルを集積し、一番上のダイヤモンドステータスを目指すようです。人間、目標があると力強く行動するものですし、何かを収集するという行為(切手や牛乳瓶のフタ、フィギュア、カードなど)は、人間を惹き付ける魔力のようなものがあります。
飛行機に乗るだけでなく、お店での買い物などでもマイルが貯まる仕組みがあり、飛行機に乗ってマイルを貯めるのを空マイラー、乗らずに貯める人を「陸マイラー」と呼ぶらしいです。さらに、マイルを熱心に貯めるのを「マイル修行」などと表現することも。
私は、ここまでマイルやポイント類を貯めるほどの熱意(?)を持ち合わせておりませんから、そういう方はただただ凄いと言う他ないです。
健康マイレージシステムも、航空会社のマイレージと同様に、マイルなりポイントを集めさせて、健康を増進させるなり、もっと飛行機に乗ってもらうなりといった目的を達成させるのです。
アスマイルは大阪府民専用のアプリですが、都道府県や市町村ごとに健康マイレージシステムが用意されているようですので(無いところもあるかも)、ご自分の居住地で調べていただければ、地域ごとにシステムが用意されているかと思います。
そんなアスマイルですが、実際に利用してみましたので、使用感というかレビューというか、感想をお伝えします。
健康な人には利点が少ない健康保険制度。
健康保険に加入すると、3割の負担で、医療機関で治療を受けられます。所得水準によっては2割負担や1割負担の方もいます。
ただ、毎月の健康保険料が必要で、収入の約10%を保険料として支払います。会社経由で社会保険に加入していれば、会社が半分を負担しますから、本人の保険料は約5%です。一方、国民健康保険に加入している方は、本人の全額負担で支払います。
普段から医療機関を利用する方は、より多くの給付を受けられますから、負担よりも受け取る給付のほうが多くなる場合があります。一方、健康に生活している方は、病院にほとんど行きませんから、毎月、保険料を一方的に支払うばかりです。
健康ではない人が多くの給付を受け、健康な人が保険料を支払う。公的な医療保険制度は、所得再分配機能も担っていますから、健康で経済力もある方が沢山の保険料を払う、という面があっても仕方ないところですが、健康な人に何らのご褒美も無いのは不満を感じるのではないでしょうか。
普段から、運動や食事、睡眠に気を使って、体をメンテナンスしているのでしょうから、むしろ健康保険制度からすれば望ましい加入者です。財政への負担も少ないわけですし。
健康保険制度では、不健康な人ほど得をする。このように思われてしまっては、政府としては、ちょっと困ります。万一の病気や怪我のために用意された制度ですし、「不摂生な生活をしてもいいじゃないか。病気になっても健康保険で治せるんだし」という人が出てきては、何のための健康保険制度なのか。
そこで、健康な生活を送ってもらうために、何らかのインセンティブを用意する必要があります。それが健康マイレージシステムであり、大阪だとアスマイルということなのでしょう。
健康的な生活をして、それをスマホに記録として残していけば、ポイントが貯まる。そのポイントがある程度まで貯まると、賞品と交換できる。
民間の保険会社が販売する医療保険だと、保険の利用実績や年齢、既往症などで加入者の扱いが変わり、毎月の保険料も変わってきます。
よく保険を使う方だと、保険料が上がっていきますし、ほとんど使わない方だと毎月の保険料は下がっていきます。保険というのは本来はこのように設計されているものです。
しかし、公的な医療保険制度は、保険をどれだけ使っても保険料は変わりません。所得水準が上がると、それに連動して保険料も上がりますが、利用実績に応じて保険料が変動することはありません。
社会保険料は税金と同じ、と言われることがありますが、これは本質を突いています。利用状況ではなく、所得水準で保険料を決めるわけですから、税金と同じです。
たくさん納税したからといって、たくさんの行政サービスを受けられるわけではありませんし、健康保険料を他の人よりも多く支払ったからといって、高品質な医療サービスを受けられるわけでもありません。
健康マイレージシステムも、一定以上の健康保険料を支払った人だけが参加できるというものではなく、加入対象者ならば誰でも登録できます。
高所得者に厳しい社会保険ですが、税金と違って社会保険料には上限がありますので、一定以上の所得水準になれば保険料は上がらなくなります。この点では、税金よりも社会保険は負担の少ないものになります。
最も気になる「賞品」は?
ポイントを集める人の気持ちとして、最も関心が高いのは、間違いなく賞品でしょう。
ポイントやマイルを集めた先に、「ニンジン」があるからこそ、人は行動するのですから。
賞品は3種類あり、毎週の抽選に参加して入手するもの、毎月の抽選に参加して入手するもの、さらに国民健康保険に加入している人向けに用意されたもの。この3つです。
毎週、抽選して当たるものは、コンビニのコーヒーや100円のお菓子、スイーツ。内容は随時変わるのかと思いますが、私が見たところ、ローソンのSサイズコーヒー、ローソンで販売されているスムージー、ファミリーマートの100円菓子が選択可能となっています。
スムージーは良いとしても、コーヒーやお菓子を賞品にするとなると、健康をサポートするという趣旨に合わないんじゃないかと。食べ物だったら、サラダチキンやナッツ、チーズなどが良いのでは。健康を促進するような食べ物を賞品として用意するほうが自然でしょう。
アスマイルの週間プレゼントを抽選する時、利用者の方での操作は不要。先に賞品を選んでから抽選するのではなく、ポイントが指定の数に達すると、自動的に抽選を実施し、当選者は賞品を選べるという方式のようです。
この方式の方が、特定の賞品に応募者が偏らないし、予め賞品を用意する必要がないという利点がありますね。
2020年3月時点で、週トクの抽選には2回当選しましたが、月トクの抽選はまだ当たった経験がありません。
毎月抽選するものは、waonポイント、dポイント、Edy、nanaco、QUOカードなど、3,000円相当の電子マネー。他には、大阪府のがん対策基金への寄付もあります。
抽選に当選してから賞品を選ぶ。この順序について説明がなかったため、「どういう形で抽選に応募するのか」と分からなかったのですが、ポイントが貯れば、自動で抽選されるということ。
国保加入者専用のものは、40歳以上で、市町村の国民健康保険に加入している人が対象になり、抽選ではなく、ポイントを集めると賞品を受け取れます。賞品のラインナップは毎月抽選するものと同じで、電子マネーか寄付のどちらか。
国民健康保険に加入している人は、毎月の保険料を負担していますから、抽選ではなく全員プレゼントというわけです。
ちなみに、アスマイルのアプリは、大阪府民であれば使えるものですから、国民健康保険に加入している人だけでなく、会社経由で健康保険に加入していても対象ですし、被扶養者の方でも利用できます。登録時に健康保険の番号などは必要ありませんので、極端な言い方をすると、健康保険に入っていないくても利用できます。
抽選というのがクセモノで、ポイントを集めたからといって必ず賞品を受け取れるわけではありません。運営者としては、全員にプレゼントするよりは低コストですから都合が良いのですけれども、利用者としては「う〜ん、、」という感覚。
さらに、賞品とは別に、クーポンが用意されています。こちらは主にフィットネスクラブの1日体験や1日利用券で、ティップネス、ルネサンスの無料クーポンがあり、ゴールドジム、セントラルスポーツ、東急スポーツオアシスは、500円から1,000円程度で1日体験できるクーポンがあります。ちなみに、クーポンは抽選制ではなく、アプリの利用者ならば使えるもの。
1日無料利用券ならば、抽選のプレゼントにしても良さそうです。少なくとも、お菓子やスイーツよりは健康的だと感じます。フィットネスクラブの運営会社にスポンサーになってもらい、毎月、10枚ぐらいの利用券を提供してもらって、それを賞品のラインナップにしておくのも良さそうです。
ポイントが3種類もある。
ポイントというと、1つのサービスに1種類だけというのが通例です。イオンだったらwaonポイントですし、楽天だったら楽天スーパーポイントというように、ポイントは一本化されています。
しかし、アスマイルでは、週トク抽選(毎週実施される抽選のこと)用のポイント、月トク抽選(毎月実施される抽選のこと)用のポイント、国保加入者用のポイント、この3つに分かれています。
アスマイルを使い始めた方が最初に混乱するのが、このポイント分けではないかと。「何でポイントが3種類に分かれているんだ?」と疑問を抱くはず。
集計するポイントを3つに分ける意図はわかりかねますが、これは1つに集約できるのではないかと思います。
貯めるポイントは1種類にして、国保加入者と非加入者で応募できる賞品を分ける。こういうシンプルな形にした方が利用者は分かりやすいでしょう。
集計されるポイントが分かれていると、「何だか良くわからない」と感じられてしまい、利用者を減らしてしまう原因になります。何でもそうですが、面倒くさいと思ったら、人はそれを使うのをやめてしまいます。
ポイントを貯めるには、健康データを記録する、健康に関するコラムを読む、市町村が開催するスポーツイベントに参加する、後はアンケートに回答するという選択肢があります。
ちなみに、週トク抽選ポイントは、月曜日から日曜日までの間で貯めるに限られ、翌週への持ち越しはできない設定になっています。ということは、ポイントが溜まり次第、抽選に参加していかないと失効してしまいます。
週トク抽選は1,000ポイントで参加できるため、さほどハードルは高くないです。ただ、賞品は100円程度のものですから、細々とヘルスデータを入力するぐらいならば、自分で買ったほうがマシという判断もできます。
月トク抽選のポイントは、月初めから月までの集計で、翌月1日になると0にリセットされます。こちらは5,000ポイントで抽選に参加でき、賞品は3,000円相当の電子マネーです。
有効期限がそれぞれ違うから分けている、という理由も分かるのですが、それでも利用者にはややこしさを感じさせるのではないかと思います。1ヶ月内でポイントを使うようにして、週単位のポイント失効は無しにする。これでポイントは一本化できるのでは。
積極的に使っている人はそう多くないでしょうから、今のうちにポイントを貯めて、賞品を狙うという手もあります。
健康データの入力はほぼ手作業。
入力できる健康データは、歩数、体重(身長を入力する欄もある)、睡眠時間、血圧、脈拍、歯磨き、朝食、計7項目あります。
さて、このデータですが、どうやってインプットしていくかというと、ほぼ手入力です。ここ、もう決定的に面倒くさいところで、こんなもの毎日入力する人がどれだけいるのでしょうか。
歩数データだけは、スマホやApple Watchなどから自動で取得してくれるんですが、他のデータはコチコチと手作業で入力していく必要があります。
血圧や脈拍なんて、毎日、計測するものでしょうか。高齢者の方だと測っている方もいらっしゃるでしょうが、そうではない方は週に1回、月に1回、中には数ヶ月に1回ぐらいしか計測していないのでは。
血圧の測定器なんて、自宅にありますか。ちなみに、私、持ってませんけど。フィットネスクラブには血圧測定器や体重計も用意されていますけれども、自宅にあるものと言えば体重計くらいでしょう。
身長を測る器具なんて、健康診断のときや病院に行かないと使わないはず。スポーツクラブにすら身長計を置いているところは少ないのではないでしょうか。毎日、身長を測っている人なんて、ほぼゼロでは。
自動的に入るのは歩数だけで、体重、脈拍、血圧、歯磨きをしたかどうか、朝食を摂ったかどうか、これらは画面から入力しないといけない。アスマイルを使うにあたって、最大の障壁はここじゃないかと私は感じます。
とはいえ、歩数以外のデータを自動で取得するとなると、Apple Watchで脈拍データを取るぐらいで、血圧や体重は手で入力せざるを得ないのが現状です。
スマホにリンクする血圧計や体重計があれば、データを自動でアスマイルまで送れるのでしょうが、そこまでを要求するのは酷でしょうか。
入力が面倒くさいので、アクティブに使っている人は多くないと予想しています。こういうものをマメに入力できる人は、そうそういません。よほど強いインセンティブがあれば話は別ですが、100円程度の飲み物やお菓子、3,000円相当の電子マネー、しかも抽選制。この程度では、アプリを利用させる動機として弱いです。
ただ、利用者が少なければ、賞品の抽選も当たりやすいのではないか、と良い方向に考えることもできます。他の人がワーッと使い始めると、競争が激しくなりますが、参加者が少なければ先行者利益を享受できます。
入力データを多くすれば、ポイントもたくさん付くのですけれども、自動で入力される歩数だけにしておくのもアリです。「手作業で入力はさすがにやりたくないな」という方は歩数だけでポイントを獲得していくといいでしょう。
データが入るのは1アカウントにつきスマホ1台分だけ。
2台以上の端末でデータを集約して使ってやろう、と考える方も出てくるでしょうが、それはできないようになっています。
2台のスマホにアスマイルをインストールし、同じアカウントでサインインしても、データは共有されません。歩数や体重などの記録も1台目と2台目、それぞれ別々で計上されます。つまり、端末ごとにデータが別れているので、1つのアカウントで合算できないのです。
複数台のスマホを複数人で使ってズルをする人が出てくるからでしょう。技術的に難しいという理由で、できないという可能性もありますが。
2台以上の端末を使ってまで参加するほどのものではありませんし、面倒な手入力を厭わない方でないと続けられないでしょう。
追記(2020年2月7日)
週間プレゼントは、ローソンのコーヒー、スムージー、ファミリーマートのお菓子、この3つでしたが、QUO Pay 100円もプレゼントに追加されています。
QUOカードPayならば、自分で商品を選べますから、100円分、何か好きなものを購入するといいのでは。
追記(2022年1月13日)
2021年12月時点では、歩数だけでなく脈拍など他のデータも自動で連携するようになっており、少しずつ利便性が向上しています。
ですが、自動でデータを共有する仕組みができたとしても、うまくデータを連携できている項目もあれば、血圧のように自動ではうまくいかないものもあります。
脈拍はスマートウォッチを使えば自動で計測されるのですけれども、血圧はスマートウォッチでは計測できず、自動的にデータを取得して登録するところまではいかないんですね。自分自身で血圧計で測って、そのデータを手動で入力していく必要があるわけです。
約2年ほどアスマイルを使い続けていますが、週間の抽選は私が記憶するところでは7回位は当選していて、1ヵ月ごとの抽選は2回当選しています。
地味にコツコツと使っていけば当選するのではないかと。
健康データを集めて記録していく習慣ができますから、そのついでに抽選で電子マネーが当たるとなれば、良いアプリではないかと。
昨今、感染症が広がっている世の中ですから、健康に対する意識を高めるきっかけなり手段としてアスマイルを使うのも1つの方法ではないでしょうか。