労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

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国民健康保険料が高すぎて悩んでいる人へ。

 

保険料が高い

 

 


なぜ国民健康保険料は高いのか。

 

会社経由で健康保険に加入していると、支払う保険料は会社と折半になり、半分を本人が給与天引きで支払えば済みます。

一方、退職すると、在職時の健康保険を任意継続するか市町村の国民健康保険に加入することになります。または、業種別の国民健康保険組合がある場合は、そちらに加入できる場合もあります。

会社員ではなくなると、任意継続健康保険に入るか、国民健康保険に入るか、この2つで悩むところ。

国民健康保険料は高いと言う人も多いですが、保険料が高くなる原因は主に2つあります。

 

1つは、高齢の加入者が多い点。国民健康保険実態調査 平成30年度 速報によると、59歳までの国保加入率は20%前後ですが、60歳以降になると加入率が上昇します。
60歳から64歳で39.5%。65歳から69歳で65.7%。70歳から74歳だと77.6%。
60歳までは、会社経由で協会けんぽなり健康保険組合に入っている人が多いため、国民健康保険に加入している人は少ないのです。

国民健康保険に加入している60歳から74歳の人の割合は50.2%。つまり、国民健康保険に加入している人の2人に1人は60歳以上の高齢者というわけです。

 

2つ目の原因は、低所得世帯が多い点です。大阪市の例だと、加入者の6割強が世帯所得100万円未満で、500万円以上の世帯は3%程度です。

高齢者は病気や怪我をしやすく、医療機関を利用する頻度も高くなります。また、年金生活者だと支払う保険料も少なくなります。
となると、保険料を高めに設定していかないと、制度を運営するのが難しくなります。その結果、国民健康保険料は高いと感じる水準になっているのです。

 

 


任意継続の健康保険に入るか、国民健康保険に入るか。

 

会社員でなくなると、健康保険を任意継続するか、それとも国民健康保険に入るかという点について考える場面に遭遇します。

在職中は、給与明細を見れば、健康保険料と書かれていて、金額も1つだけで分かりやすいです。

国民健康保険になると、医療分、後期高齢者支援分、介護分、保険料の区分がこれら3つに別れていて、それぞれで保険料を計算し、それら3つを合算したものが国民健康保険料になります。

2019年時点では、国民健康保険料は約11%程度です。平等割と均等割という保険料もありますから、これを1%相当と考えれば、12%ぐらいが国民健康保険料の料率になります。
市町村によって多少の違いはありますが、12%で計算すると概算で保険料を算出できます。

 

会社経由で社会保険に加入すれば、本人が支払う健康保険料は半分になります。
国民健康保険だと、半分ではなく全額を世帯単位で支払いますから、保険料が高すぎると感じる方がいらっしゃるのも分かります。

病院に行きたいときだけ加入して、用が済んだら脱退する。こう考える方もいるでしょうが、「加入したくなったら入る」というわけにもいかない仕組みになっているのです。

加入していない期間があれば、その期間も含めて過去の保険料まで払わないといけないのが国民健康保険なのです。

都合よく無保険状態を選ぶことはできず、協会けんぽ、組合健保、国民健康保険、国民健康保険組合など、何らかの健康保険に入っていないといけないのが現状です。

 

 

 

所得高くなれば、国民健康保険は上限で止まる。

 

国民健康保険には、低所得世帯向けには減免制度があり、保険料負担が軽減される仕組みがあります。

世帯所得が100万円前後だと、保険料を減額する制度を利用できる世帯が多いはずです。

毎月の保険料をたくさん払っても、少なく払っても、利用できる医療サービスは変わりません。そのため、加入者はなるべく少ない保険料を払う方が得になります。

一方、高所得者だと、保険料は所得に連動して高くなりますが、一定の水準に達すると、保険料は増えなくなります。

税金には上限額が設定されていませんから、パーセンテージで計算した税額がそのまま税金の額になります。しかし、国民健康保険をはじめとする社会保険には上限が設定されており、そこに達すれば保険料は一定になります。

ちなみに、任意継続の健康保険にも保険料に上限があります。月額で3万円程度が上限になっており、上限に達した後は所得を増やしても保険料は上がりません。

任意継続の健康保険には保険料に上限がある。

 

低所得世帯ならば減免制度を利用し、高所得世帯は保険料の上限を振り切っていく。これが対策の基本となります。

 

例として、大阪市だと、年間の国民健康保険料は93万円に上限が設定されています。月に換算すると、7.75万円です。

年間所得600万円ならば、保険料が12%だとして、年間72万円。この所得水準だとまだ上限には達しません。

年間所得900万円だと、年間の保険料は108万円。この場合は上限額の93万円を超えていますから、保険料は108万円ではなく93万円になります。
所得から計算すれば、年間の国民健康保険料は108万円になるところですが、大阪市の国民健康保険料の上限額である93万円を超えているため、保険料は93万円で固定されます。

ここからさらに所得を増やしても、国民健康保険料は増えません。


年間所得1,000万円だと国民健康保険料は年間93万円。
年間所得2,000万円でも国民健康保険料は年間93万円です。

所得に占める国民健康保険料の割合は、年間所得600万円だと12%。900万円になると10.3%。1,000万円なら9.3%。2,000万円だと4.65%です。

ある程度までの所得だと、国民健康保険料もそれに連動して増えますが、所得が一定の水準を超えると、保険料は上限で止まります。

税金と違い、社会保険から個人が受ける便益には限度があるため、保険料にも上限が設けられているのです。

任意継続健康保険は、毎月3万円程度が保険料の上限です。一方、国民健康保険料の場合は、市町村ごとに少し違いはありますが、月8万円程度が上限になっています。

在職中の収入が多かった方は、退職後は国民健康保険ではなく任意継続健康保険に加入する方が保険料負担は少なくなります。

ただし、健康保険を任意継続できるのは退職から2年間ですので、その後はまた別の健康保険に入る必要があります。

 

 

 


どうやって国民健康保険料に対策を講じるか。

 

高いと言われる国民健康保険料にどう対処するか。

対処法はいくつかありますが、まず先程書いたように、低所得世帯になるか、保険料の上限を振り切っていくか。この2つがあります。


中途半端に収入が多いと、最も負担感が強くなるのが社会保険の特徴です。

他には、若くて健康な人が多い健康組合に入るのも一案です。

健康保険組合は加入者を一定の範囲に制限することができ、協会けんぽや国民健康保険のように広く加入者を受け入れる制度とは違います。

会社や業界別に健康保険組合が作られており、若くて健康な人が多ければ、保険料は下がります。健康保険を使う頻度が低ければ、支出も減りますから、保険料も低く抑えていけるのです。

ただ、国民健康保険の組合は数が限られており、誰しもが入れるものではありません。歯科医師や薬剤師、税理士、弁護士など、業界別に国民健康保険組合があり、加入対象者であれば加入できます。


組合によっては、保険料は所得にかかわらず毎月3万円という感じで、所得と保険料が連動しておらず、所得が高くなるほど負担感が減るような形になっています。

  1. 低所得者として国民健康保険に加入する。
  2. 高所得者として国民健康保険に加入する。
  3. 国民健康保険組合に加入する。


この3つが国民健康保険料に対する主な対処法です。

 

以前は住む市町村を変えて国民健康保険料を減らす方法もありましたが、都道府県で統一する方向になっており、引っ越しは現実的ではない対処法になりつつあります。

大阪府では、2018年から市町村ごとに保険料に差が出ないように平準化を進めています。暫くの間は保険料に差があるものの、いずれは保険料は1本化され、市町村ごとに差はなくなります。



少し技巧的な方法ですが、商売をやっている方ならば、法人を作って、その法人経由で協会けんぽに加入し、家族を被扶養者にするというのも一案です。協会けんぽならば、被扶養者の保険料は無料です。

法人の良いところは、お金の流れを調整できる点にあります。自営業者だと、個人ですから、お金を調整する弁がありません。減価償却費や事業経費などで所得を減らしていくぐらい。

法人だと先にお金を使って、残ったお金に法人税がかかります。税金を払う前にお金を使えるのも法人の利点です。

また、法人から支払う給与を減らせば、社会保険料も減ります。家族だけで運営している法人ならば、自分たちの給与を少なくして法人にお金を置いておけば、社会保険料の増加は抑えられます。

法人イコール会社というイメージがありますけれども、実態は財産を管理するために便宜的に作られた人格が法人なのです。

法人を利用する方法も加えれば、対処法は4つになりますが、筆者としては、所得を増やして、上限を振り切るのが最もオススメです。

自ら低所得になるように行動するのは貧乏くさいですし、社会保険料のために所得を減らすのも目的と手段が釣り合いません。

所得を増やして、国民健康保険料の上限を超えていく方が、収入が増えて、社会保険料の負担感も減っていきます。税金に上限がないのが気になりますが、ここは仕方ないところです。

 

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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