労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

4月から新しく入ってくる学生アルバイトを雇うときの注意点。

 

学生

 

 

雇う会社。雇われる学生。


毎年4月になると、新しい人が職場に入ってくるもの。3月は退職する人が多く、4月は入社してくる人が多いのが毎年のパターンです。

4月から年度が新しくなり、学生も心機一転して、新しいアルバイト先を探す方も増える時期。

学生と他の社員は違うと思われているフシがあって、どうも学生は雑に扱われがち。採用時に契約書を作らない。勤務シフトを一方的に変えられる。契約したときよりも勤務時間を減らされる(もしくは増やされる)。商品の買い取りノルマがあるなど。



出典:岡山で未来をつかめ!|岡山県政PR動画公式サイト より。

岡山県のウェブサイトでは、学生のアルバイトに対する注意喚起を促すムービーも作られています。


相手は学生だから無茶苦茶言っても大丈夫だろうと思っているのではないか、筆者は学生の頃にそう感じていましたね。相手がモノを知らないウブな奴だと。

確かに、学生の頃は筆者も労務管理に詳しくありませんでしたし、今でもそういう学生はほとんどいないはずです。


厚生労働省でも、「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを4月1日から7月31日まで実施しており、学生や企業に周知しているところです。


重点的に周知している点は5つ。

1.労働条件の明示。
採用時に書面で労働条件通知書や雇用契約書を作る。

2.勤務シフトの設定。
学生の事情を考慮した勤務シフトを設定する。

3.労働時間の適正な把握。
労働時間を正しく記録する。

4.商品を強制的に購入させない。給与から購入費を控除しない。
恵方巻きや柏餅、クリスマスケーキ、おせちを買わせるようなケースですね。

5.労働契約の不履行に対して罰金を取らない。
労働基準法で定める減給制裁の範囲ならば減給も可能ですが、遅刻したり、休みを取ったという理由で時間給を減らしたり、契約で決めた日数よりも出勤日を減らすことはできません。


雇われる学生が労務管理のルールを知っておくことは大事ですが、雇う側である会社やお店の人が知っておくのも大事。

では、学生を雇うとき、どういうことが問題になるのか検討していきましょう。

 

 

学生を雇う会社やお店が注意すべき5つのポイント。


事業主の皆さんへ「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン中です!!(厚生労働省)

重点事項で挙げられているように、事業主側、学生を雇う会社が注意する点は5つあります。

では、1つずつ解説していきましょう。

 

 

1.アルバイトを雇うとき、書面による労働条件の明示が必要。


履歴書を持ってきてもらって、面接して、「じゃあ、いつから入れる?」という手続きだけでは足りず、書面で働く条件を提示する必要があります。

すでに契約書の型が出来上がっている職場は良いですが、採用時に書面を作っていない職場ならば、まずは厚生労働省が用意している労働条件通知書を使って、書面を提示するようにしていくと良いでしょう。

労働条件通知書 短時間労働者用(厚生労働省)

メールで契約書を送ることも可能で、文面に内容を記して送るのも良いですし、PDFを作成して、それをメールに添付して送る方法もあります。文書として保存できる体裁になっていれば良いです。

FAXもOKなようですが、今どきFAXというのはナシかと。事業所ではまだ使っているところがありますが、費用がかかりますし、印字も不鮮明で、良いところなしなのですが、しつこく使われています。

PCで文書を作成して、そのままメールなりクラウドストレージなりを使って相手側に送る方が都合が良いはずですが、そうなっていない事業所もあるんです。


他に、SNSでも文章は送れますが、短文を投稿するシステムが主流で、雇用契約書のような長文を送るには適していないメディアです。また、機種変更したり、アプリを消去すると過去のデータが消えてしまうこともあり、契約書をSNSで送付するのは推奨できません。

最低でも、労働条件通知書を作成して学生に渡す。ここは必須です。

 

 

2.学業とアルバイトが両立できるような勤務時間のシフトを適切に設定。


昼に学校に行くならば、平日は夕方から勤務するでしょうし、土日祝日なら朝から出勤することも可能でしょう。出勤可能な時間帯に合わせて出勤してもらうよう勤務シフトを設定していく。変わったところはなく、当たり前のことですが。

学生が休む時期は、テスト前後夏休みなどの長期休み、主にこの2つです。

テストは実施時期が決まっていますから、予め対応策を講じるのは難しくありません。

高校生は、5月中旬、7月上旬、10月中旬、12月上旬、1月下旬、合計5回のテストがあります。大学生だと、前期テストが7月にあり、後期テストが1月に実施されます。

さらに、夏休みが8月にあり、冬休みは年末年始。大学生は春休みが最も長く、2月から4月の初めまであります。

5月は高校生が減り、7月は高校生と大学生が減ります。年末年始もテストで学生が少なくなります。

学生が減る時期は分かっているのですから、その時期は学生以外の人に重点的に出勤してもらい、それ以外の時期は学生がメインになるように勤務シフトを設定していきます。


例えば、テストの時期に年次有給休暇を取ってもらえるようにすれば、有給休暇の義務化にも対応できて、学生も嬉しいでしょうから、一石二鳥です。テスト休みに使えば、あっという間に有給休暇は無くなります。

テストが終われば、学生に重点的に出勤してもらい、学生以外の人には有給休暇を取ってもらえばいいわけです。


テスト休みを取られてブーブー言う人もいますが、学生がテスト休みを取るなんてことは何十年も前から分かっています。お正月が1月1日に来るのと同じで、相手がどう動くかは分かりきっているのですから、対策を講じるのも容易なはずです。


長期休みは学生でも朝から出勤してもらえるのですが、旅行に行く人もいれば、実家に帰省する人もいますから、そのスケジュールを勤務シフトに織り込む必要があります。

勤務シフトを設定するときに、会社の都合をあまりに優先してしまうと、辞められてしまいます。そうなると、また新しい人を採用しないといけませんし、仕事を教える時間や手間もかかります。


勤務シフトを設定するときの注意点として、契約内容に合わせるのがポイントになります。

例えば、週4日出勤で契約している学生ならば、キチンと週4日働けるようにしないといけません。業務上の都合で、週3日にしたり週5日に変えたりすると契約違反になります。

もちろん、臨時的に今週だけ週5日に増やしたというのでしたら、学生の同意があれば勤務可能です。

しかし、週4日契約のところ、週3日に減らしたとなれば、不足した1日分は使用者の都合による休業となり、働いていない日でも給与が必要になります。

臨時で出勤日数を増やすのは、学生の同意があれば可能ですが(ただし、同意があっても契約には違反している)、減らすとなれば休業になりますから、ノーワーク・ノーペイにならず休業手当が必要です。


また、勤務時間数も契約で決めており、1日4時間勤務で契約していれば、原則としてその通りに勤務しないといけません。

忙しいからといって、今日は6時間勤務にしたり、暇だと1日3時間勤務になったりするのはダメです。

1日3時間に減らしてしまうと、契約した時間まで1時間足りませんから、この場合も足りない1時間は使用者の都合による休業になります(休業手当が必要)。


契約で決めた日数や時間の範囲内で働いてもらう。これも大事な点です。


材料を仕入れるとき、1つ300円で買うと契約したのに、「1つ250円で良いだろう?」と買い手が言ってきたら、売り手は「そんなものダメだ。300円で契約しただろう」と言い返すでしょう。雇用契約もこれと同じです。

週4日勤務で契約したら、週に4日は働けるようにしないといけない。1日4時間勤務で契約したら、1日に4時間は働けるようにしないといけない。

雇用は契約なのです。

 

 

3.アルバイトも労働時間を適正に把握する必要がある。


時間を記録する方法としては、タイムカードを使っている職場が最も多いでしょう。アナログな装置で、ずいぶんと息の長い製品ですが、単純で使いやすいため使い続けられているのでしょう。

他には、ノートや出勤簿にボールペンで記入する職場もありますし、カードをスキャンしてサーバーに労働時間を記録するところもありますね。

さらに、Suicaなどの交通系ICカードをタイムカード代わりに使うシステムまであり、ずいぶんと便利になりましたね。


どういう方法であれ、正確に労働時間が記録されていればOKです。

タイムカードは良いけれども手書きはダメ、というものではなく、「正確かどうか」が重要。どういう道具を使っているかよりも、時間を正確に記録しているかがキモ。

タイムカードは正確に労働時間を記録していると思われていますが、誰がカードを打刻機に入れたかまでは分かりません。本人かもしれないし、他の誰かかもしれない。印字された時間も、実際の始業時間よりも遅い時間が記録されている可能性がありますし、また、終業時間も実際よりも早い時間が記録されている可能性があります。


スマホのカメラでタイムカードなどを撮影しておけば、記録を保存できますし、給与の計算が合っているかどうかを後から確認できるでしょう。

ここで大事なのは、「1分でも働いていれば、それは労働時間になる」という点。

終業時間が21:49になったら、端数を切り捨てて21:45に変えてしまうのではなく、49分まで実際に仕事をしていれば、21時49分までの時間が給与の計算対象になります。

 

 

4.アルバイトに、商品を強制的に購入させることはできません。また、一方的にその代金を賃金から控除することもできません。


これを書いているのが4月ですから、強制的に購入させられるものと言えば、5月の柏餅を思い浮かべます。

従業員に商品を買わせても限度があります。1パックならまだしも、柏餅を10パックとなれば食べきれませんし、買っても大半は捨ててしまいます。

買わされた側は不満が残り、仕事を辞めてしまう人もいるでしょう。

何かを売るときは、販売すればご褒美が出るようにして、積極的に売りたくなるような仕掛けをすると良いでしょう。

例えば、紹介で5パック売れば200円。10パック売れば500円のインセンティブが貰える。もし、売れなかったとしてもペナルティは無し。

これならば学生としても面白く感じて「売ってみようか」という気持ちになるでしょうし、売れない場合のリスクもありませんから不満もありません。

ノルマを設定するのも構いませんが、学生側にリスクがないのが条件です。売ればインセンティブが出るが、売れなくてもペナルティは無い。こういうノルマ制なら実施可能です。

学生に買わせるのではなく、売ってもらうにはどういう仕掛けを作ったらいいか。ここに頭を使っていきたいところ。


給与から何らかの費用を控除するには労使協定が必要で、商品を買わせて、その代金を給与から引くことはできません。もちろん、給与から控除するのではなく、現金や電子マネーでもって、別払いで購入するのは構いません。

 

 

5.アルバイトの遅刻や欠勤等に対して、あらかじめ損害賠償額等を定めることや労働基準法に違反する減給制裁はできません。


遅刻したから罰金1,000円とか、欠勤したから時給を1,000円から900円に減らす。こういうことはできないんですね。ちなみに、時給900円だと最低賃金を下回る地域もあります。

地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)

遅刻に対して減給制裁を課す職場もありますが、これは労働基準法91条(以下、91条)の範囲ならば可能です。例えば、遅刻をすると、15分相当の給与が控除されるというもの。この程度だと、91条の範囲内ですから実施可能です。

計算の基礎となる賃金にもよりますが、金額に換算すると200円ぐらいです。「あぁ、遅刻するともったいないから、もう遅れないようにしよう」と思わせる程度の金額です。給与を減らすのが目的ではなく、遅刻しないようにしようと思わせるのが減給制裁の目的なのですね。

テスト休みを取ったから、来月から時給を100円減らす。こういうのは契約違反です。減給制裁ではなく、契約で約束した通りに履行していないため、難しい表現では「債務不履行(一部不履行)」と言えます。

契約を更新しない限り、使用者の一方的な判断で時間給を減らすことはできないのです。

 

 

変なことをしなければホワイト企業になれる。


採用時には働く条件を書面で渡し、学校の行事などを勘案して勤務シフトを作る。

商品を強引に買わせるのではなく、売ってもらえる仕組みを作る。

罰金を取ったり、時間給を減らしたりしない。


どれも難しいことではなく、当たり前のことを当たり前にやっているだけで学生に選ばれる職場になれるはずです。

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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