労務管理のツボをギュッと押す方法を考えます

会社で起こる労務管理に関する悩みやトラブルを解決する方法を考えます。

新学期に学生のアルバイトを雇うときの労働条件で注意するところ。

 

学生バイト

 


学生アルバイトは雑に扱われやすい。


毎年、4月になると、厚生労働省は『「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン』を実施しており、2019年も4月1日から実施されます。

「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを全国で実施

筆者も高校生の頃に初めてアルバイトを経験しましたが、学生というのは雑に扱われる傾向があり、採用時に労働条件を詳しく説明されなかったり、契約書を作る職場もほとんどなく、雇用契約書の控えを受け取った経験は無かったように思います。

アルバイトを募集しているお店なり会社に電話し、応募したいと伝えると、「履歴書を書いて持ってきて」と言われ、決まった面接日に面接に行く。

面接を担当する人に履歴書を渡して、「じゃあ、いつから入れる?」と言われ、何だかなし崩し的に採用が決まる。

こういうパターンが多かったです。多かったというよりも、どの職場でも同様だったと言うべきでしょうか。

履歴書をサッと見て、面接でちょっと質疑応答して、「じゃあ、いつから入れる?」という流れでも採用はできますし、サクサクと仕事を始められる点は良いところ。

ただ、採用時に決めたことが、後になって、「こんなはずじゃなかったのに」、「約束していたことと違うんじゃないか?」なんて気分になってしまうことも少なくありません。

学生のアルバイトだから、「適当に扱っても大丈夫だろう」という甘さがあるのか。または、フルタイムやパートタイムで働く社会人の人とは違って「多少なり雑に対応してもいいんじゃないか」と勘違いしてしまう方もいるのではないかと思います。


採用される学生側も、「まぁ、学生だからこんなもんかな」と思ってしまうこともあり、筆者も高校生や大学生だった頃は、雇用契約や労務管理について詳しい立場ではありませんでしたから、同じような感覚を抱いていたものです。


学生の労働条件に関しては、過去にも色々とトラブルがあり、今でもトラブルは起こっているようです。

使用者側である会社であれ、労働者である学生であれ、お互いに働くルールを知っておけば、「こういうことはしてはいけない」と判断できますから、トラブルも減っていくのではないかと思います。

労務管理や雇用契約など、職場や学校では学ぶ機会が少ないでしょうから、行政が労働条件について周知させていくのは良い試みでしょう。

 

 


学生アルバイトを雇う際に問題になりやすい5つのポイント。


「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン のウェブサイトでは、重点的に呼びかける事項が5つ挙げられています。

 

  1. 労働条件の明示
  2. 学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定
  3. 労働時間の適正な把握
  4. 商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
  5. 労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止



まず、1つ目の「労働条件の明示」という点から。


労働条件、つまり働く曜日や時間、就業場所、休日、有給休暇など、これらの内容は、面接時に口頭で説明するのはもちろん必要ですが、書面にして応募者に渡す必要があります。

言葉で話すだけだと、内容を忘れてしまいますし、使用者、労働者ともに後から内容を確認できません。

履歴書を持ってきてもらって、面接して、「いつから入れる?」ではダメなんですね。90年代や2000年代はこういう雑な対応も通っていたのですが、今は労働条件を書面化しておくよう求められています。

どういう条件で働いてもらうのかを書面で作成し、キチンと残るようにしておく必要があります。


何か取引をするときは契約書などの書面を作るのが当たり前で、スマホの契約であれ、家を買うときであれ、商売の材料を仕入れるときであれ、条件を書面で残しているものです。

しかし、人を雇うときは、なぜか契約書を作らず、履歴書と面接だけでルーズに採用していたのです。

労働条件を書面にするといっても、「どういう書面を作ったらいいの?」と思うところ。その場合は、厚生労働省のウェブサイトに労働条件通知書の雛形が用意されていますから、それを印刷して使うところから始めてみてはどうでしょうか。

労働条件通知書 短時間労働者用(厚生労働省)

様式は厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。


学生のアルバイトだと、出勤する曜日、勤務時間、休憩、休日、有給休暇、給与、この6点が重要な内容になります。

曜日ごとに労働時間を書く欄がありませんが、余白部分に書き込めば良いでしょう。

休憩時間も、勤務シフトによって変わるならば、それも補足するように労働条件通知書の余白部分に書いておくと分かりやすくなります。

すでに会社で雇用契約書の様式を定めて使っているならば、それを使い続けても構いません。


働く条件を書面に残す。ここが大事です。


付け加えると、契約で決めたことは、後から一方的に変えてはいけないのも大事な点です。

例えば、週5日で契約しているのに、実際は週3日しか出勤できない。逆に、週3日で契約しているのに、実際は週5日で勤務シフトが入れられているとか。

契約で決めた範囲でしか働けませんから、週3日契約ならば週3日まで勤務できます。

週5日契約なのに、週3日出勤になった場合は、足りない2日分は休業として扱われ、会社は休業手当を支払わないといけなくなります。つまり、仕事をしてもらっていない日に対して給与を払う羽目になります。

勤務時間でも同様で、契約通りに働けるようにしなければ、休業手当が必要になります。

1日6時間勤務で契約しているところ、1日4時間しか働けていないならば、足りない2時間は使用者の都合による休業になり、休業手当が必要になります。

契約した内容はキチンと守る。これも忘れてはいけないところです。

 


 

次に、「学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定」の部分について。


学生が他の従業員と違う点は、テスト期間に休みを取る、夏休みなど長期休暇中に帰省する、学校のイベントで休みを取る、就活のために休む、主にこれら4点です。

前の2つは時期が決まっていて、予め事業所の方で対処ができます。


まずテストについて書くと、高校生だと、5月中旬、7月上旬、10月中旬、12月上旬、1月下旬、合計5回のテストがあります。このテスト時期の1週間前ぐらいから休みを入れ始めますから、その時期は学生以外の人を勤務シフトに入れて対応します。

大学生はテストが年に2回あり、前期テストが7月にあり、後期テストが1月に実施されます。大学生が働く職場では、7月と1月はシフトに穴が空きやすいですから、この時期は学生以外の方に重点的に出勤してもらいます。

テストの時期はもう何十年も前から決まっていますから、予め対策を講じるのは難しいものではありません。

高校生と大学生のテスト時期が重なるときがあり、7月と1月は出勤する学生が特に少なくなります。つまり、7月と1月は学生以外の人に出勤してもらうよう働きかけが必要になります。


テスト休みを取られて不満を感じる職場の人もいるでしょうが、学生がテスト休みを取るのは分かっていることですし、それを納得の上で採用したわけですから、対策を講じておくのは当然でしょう。

例えば、テスト時期になったら時間給を一時的に加算して、勤務シフトに入る人を増やすようにインセンティブを設けるのも一案です。抜けた学生のフォローするわけですから、その補償として用意するわけです。


夏休み、冬休み、春休み、学生には長期休暇が年に3回ありますが、この時期にもテスト時期と同じように、出勤してもらうよう工夫が必要です。

せっかくの休みですし、バイトではなくどこかに行って遊びたいのが学生の気持ちです。ですが、学校が休みでも商売は休みではありませんから、なんとか出勤してもらいたいもの。

ここでもテスト時期と同様に、一時的に給与が増える仕掛けを作って、「遊びに行くよりも働いたほうがいいじゃないか」と思ってもらえる動機を会社が用意する必要があります。

例えば、8月1日から31日までの出勤日数に応じて給与を加算する。給与を毎日加算する方法も良いですが、一定の出勤日数に達した人に給与を加算するのも一案です。

8月に10日以上出勤した場合は3,000円を加算。
15日以上出勤した場合は5,000円を加算。
20日以上出勤した場合は10,000円を加算。

これは一例ですが、人はインセンティブに反応する生き物ですから、普段と同じ労働条件では夏休みや冬休みに働いてもらうのは難しいもの。強引に勤務シフトを入れて、辞められてしまったら大変です。

「おっ! 出勤してみようかな」と思わせるのがキモ。

強引に働かせてやろうと考えるのではなく、自発的に出勤したくなるような条件を出すわけです。

他には、「テスト期間中は有給休暇を優先的に使って構わない」とアピールするのも良いですね。テスト休み中に給与が出るのですから、学生としては嬉しいオファーです。事業所としても有給休暇の消化が一気に進みますし、年次有給休暇の義務化への対応にもなります。


あとは、学校のイベント(修学旅行やサークル、部活など)、就活がありますが、ここは個々に違いがあり、個別に対処する他ありません。

学生生活に支障が出ると、学生は仕事を辞めて他の職場を探しますから、なるべく学校での事情を斟酌して、使用者は勤務シフトを組みましょう。

 

 

労働時間を適正に把握する。働いていれば1分でも労働時間。


タイムカードやICカードなどを使って正確に労働時間を記録している職場ならば何も問題ありません。

ただ、タイムカードを使っていても、始業時間や終業時間が実際のものと違っていたりすれば、適正に労働時間を把握していることにはなりません。


また、労働時間の端数の取り扱いも問題になりやすい点です。

始業時間が17時なのに、実際は16時51分から仕事を始めている。この場合、労働時間は16時51分から開始ですが、給与計算では17時からの時間が計算対象になっている。

1分であっても実際に仕事をしている時間は労働時間になるため、51分から仕事を始めていたら、この時間が始業時間になります。

終業時も、勤務シフトでは21時で終わるところ、何らかの業務上の理由で21時11分まで延長したならば、終業時間は21時ではなく21時11分になります。11分を端数として切り捨てるのではなく、給与計算に含めて給与額を算出します。


ノートなどに本人が労働時間を記入する職場もありますが、これも正確に時間が記録されていれば有効です。ただ、この場合も労働時間の端数を切り捨てるのではなく、時間に端数が生じた場合はキチンと給与計算に含めてください。

故意に労働時間を変えてしまうのがダメなのであって、時間を記録する手段は色々あって構いません。

 

 

商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止


柏餅やクリスマスケーキ、おせちなどを従業員に半ば強制的に購入させるような場面を想像できます。

任意で買ってもらうのは構わないのですが、例えば、「1人あたり、柏餅を10パック販売するのが目標で、達しなかった場合は足りない分を本人が自腹で買う」のはダメです。


何かを売りたいならば、売れた件数に応じてインセンティブが用意されていれば、学生も熱心に販売するはずです。1パック500円の柏餅を1パック販売すれば、50円のインセンティブを受け取れるとなれば、「じゃあ、売ってみるか」という気持ちになります。

売っても売らなくても自分の給与が変わらないならば、熱心に売る理由がありませんので、ノルマを設定されてもやる気は起きません。

1パックで50円のインセンティブが出て、仮に売れなかったとしても学生に何のペナルティも無いならば、売る気持ちが盛り上がりやすいでしょう。

売れれば自分がトクをする。売れなかったとしても何のリスクもない。こういう条件ならば、ノルマを設定されても構わないですし、学生としても楽しいもの。

親戚や学校の同級生に柏餅を予約してもらえば、チャリンチャリンとインセンティブが入ってくるのですから、ゲームのような感覚で売れます。お店としても、1割のインセンティブを払わないといけないものの、売れ残って捨ててしまうよりはいいでしょう。

強引に商品を買わされて、給与を天引きされても、学生には不満しか残りません。

 

 

労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止


これは、例えば風邪を引いて仕事を休んだところ罰金を取られたとか、テスト休みを取って時給を減らされたなどが例として思い浮かびます。

休んでも学生から罰金は取れませんし、テストで休んだからといって時間給を減らすこともできません。

休んだ場合はノーワーク・ノーペイで当日の給与はありませんから罰金で引けるものがありません。また、時間給は契約で決まっていますから、事業主の感情で減らせないものです。

病気やテストで休むときは有給休暇を使えるようにして、給与が減らないようにしてあげれば、学生としては仕事を続けようという気持ちになりやすいでしょう。

罰金を取られたり、給与を一方的に減らされる職場だと、学生は辞めて他の職場に行ってしまいます。そうなると、また新しい人を雇って仕事を教えなければならず、会社にとっては損しかありません。

 

 

学生が嫌がることをしないのが良い職場。

 

  1. 労働条件の明示
  2. 学業とアルバイトが両立できるよう適切な勤務シフトの設定
  3. 労働時間の適正な把握
  4. 商品の強制的な購入の抑止とその代金の賃金からの控除の禁止
  5. 労働契約の不履行に対してあらかじめ罰金額を定めることや労働基準法に違反する減給制裁の禁止

どれも労務管理では基本のキホンですが、「学生なら適当に扱ってもいい」と誤解していると、トラブルのもとです。

いかに積極的に働いてもらえるか。楽しんでもらえるか。そのために仕掛けなり工夫をするのが労務管理の面白いところです。

『自分がされて嫌なことは学生にもしない』これが分かっていれば、変な方向には行かないでしょう。

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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