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海外に居住する配偶者の年金は、「配偶者年金」ではなく「国民年金」。

 

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配偶者年金の受給は「国内居住」要件…政府検討

 政府は、外国人労働者の受け入れ拡大に備え、厚生年金の加入者が扶養する配偶者について、年金の受給資格を得るには国内の居住を要件とする方向で検討に入った。2019年度中にも、国民年金法を改正する方針だ。


 日本の年金制度では、厚生年金に加入する会社員らが扶養する配偶者は、国民年金の「第3号被保険者」と呼ばれ、保険料を支払う必要はなく、年金を受け取ることができる。現在は、配偶者に居住地要件がないため、外国人労働者の配偶者が海外に住んでいても、将来的に日本の年金を受け取ることができる。

 政府は医療について、健康保険が適用される扶養家族を原則国内に居住する人に限る方針を固めており、年金も同様に、国内に住む配偶者を対象とする必要があると判断した。

 

読売オンラインでは、

記事タイトルに
「配偶者年金」
という名称が使われていますが、

現実には「配偶者年金」という名称の年金はありません

 

こういう造語によって思わぬ誤解を招くことがありますから、
固有名詞の扱いには気を付けたいもの。

 

 

配偶者は毎年19万2千円のお小遣いを貰っている。


配偶者年金という年金は無いと書きましたが、
上の記事で書かれている配偶者年金(あえて存在すると仮定して)とは
どういうものか説明しておきましょう。


例として、

夫が会社員として厚生年金に加入していて、
妻は専業主婦かパートタイムで働いている。

そういう家庭を想像してください。

 

夫は会社経由で社会保険に加入し、
妻は夫の社会保険にくっついて健康保険や年金に加入しています。

健康保険では被扶養者になり、
国民年金では、第3号被保険者という加入種別になります。


ちなみに、夫は第2号被保険者となります。

第2号被保険者は、厚生年金と国民年金、
この2つの年金に同時に加入しています

給与明細にかかれている保険料は、
厚生年金保険料だけですが、
この保険料に国民年金の保険料も含まれています


一方、
国民年金の第3号被保険者というのは、

ザックリ書くと、
「保険料無しで国民年金に加入できる身分」
です。


ここで、

「保険料を払わなければ、
将来の年金が増えないんじゃないの?」

と思う方もいらっしゃるでしょうが、

この第3号被保険者というのは特殊な扱いを受けており、
保険料は必要ないものの、
実際に保険料を支払った場合と同じ扱いを受けるんです。

 

国民年金の保険料は毎月16,000円強ですが、
これが無料になるというわけ。

月16,000円と仮定すると、
年間で19万2千円のお小遣いを貰っているようなイメージです。

実際はお金の動きがありませんから、
実感がないのですけれども。


「妻の年金保険料が無料になるなら、
夫の年金保険料が増えるんじゃないの?」
と考える方もいるでしょうが、

妻が第3号被保険者であっても、
夫の厚生年金保険料は増えません。

 

なかなか美味しい身分なんですね。第3号被保険者というのは。

 

ただ、
社会保険に加入する対象者を今後も政府は広げていく方向ですから、
働いて収入がある人は全員、自分で社会保険に加入し、
いずれ第3号被保険者という種別はなくなり、
第1号被保険者と第2号被保険者の2つに集約されるでしょう。

 

 

 

配偶者に支給される年金は国民年金。


夫が厚生年金に加入して、
妻は国民年金の第3号被保険者だと、

妻が60歳になれば、
老齢基礎年金を受給できます(繰り上げて受給申請した場合)。

この老齢基礎年金が「配偶者年金」と呼ばれているんですね。


「国民年金の老齢基礎年金」と呼ぶのが正式なもので、
「配偶者年金」という名称の年金は存在しないのです。

 

年金事務所に行って、
「配偶者年金について聞きたいんですけど」
と言えば、
窓口の人はキョトンとして対応に困るでしょう。


配偶者年金ではなく、
「国民年金の老齢基礎年金」
ですからね。

 

 

外国人労働者の配偶者に対する政府の対応。


外国人労働者が日本で働き、
その人の配偶者が海外に居住していると、

配偶者は国民年金の3号被保険者になり、
将来、国民年金を受け取れるようになります。

これが現行の制度です。


夫だけ日本に来て働き、厚生年金に加入すると、
海外に残っている妻は国民年金の第3号被保険者になります。

これだと、妻はずっと海外に住んでいるにもかかわらず、
国民年金を将来受け取れることになります

これを、配偶者も日本に住んでいる場合に限定しようと検討しているのです。


国内に住む配偶者に限定するとなれば、
実務としては、

海外にいる期間は第3号被保険者の期間としてカウントしない
処理になるのでしょう。


夫だけ日本で働いても、
配偶者が日本にいなければ、
第3号被保険者であった期間を受給資格期間に算入せず、
将来の年金には繋がらなくなります。


年金を受給する時点で国内での居住要件を求めるのではなく、
被保険者期間を計上する段階で居住要件を求めるのが
処理としては簡単です。


具体的な手続きは今後決まっていくのでしょうが、

「配偶者が海外に居住している間は、
第3号被保険者の期間として算入しない」

とするのが現実的な対応になるでしょう。

 

 

 

 

 

 

山口正博 社会保険労務士事務所
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