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無断欠勤し、その後出勤してこなくなった人を解雇してもいいの?

 

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2年近くも無断欠勤 1等海曹を懲戒免職、横須賀地方総監部(リンク切れ)

 2年近く無断で欠勤しているとして、海上自衛隊横須賀地方総監部は26日、自衛艦隊司令部の40代の1等海曹の男性を懲戒免職処分にした、と発表した。

 総監部によると、1等海曹は2016年11月28日から欠勤。家族が同日、田浦署に行方不明者届を提出した。現在も行方が分かっていない。

 失踪直後の16年12月や今年4月、1等海曹が都内で銀行口座から預金を引き出したり、携帯電話の契約を更新したりしていたことが判明。総監部は事件や事故に巻き込まれた可能性が低く、自らの意志で出勤を拒否している、と判断した。


公示送達で懲戒免職の意思表示を相手に伝える。

2年近く放置するよりも、
公示送達で懲戒免職を伝えた方が良かったのではと思える事案です。

今まで前例が無いため、
対処しようがなかったのだと思いますが、
相手に連絡が取れないときは公示送達という手段で伝えることができます


公示送達とは、

相手方の住所が分からないため、
懲戒免職するとの意思表示を伝えられないとき、
簡易裁判所を経由して、意思表示を相手に伝えるものです。

 

意思表示の公示送達(裁判所)

 

ちなみに、

お金(家賃や借りたお金の返済金など)の支払いを誰にすればいいのか分からないときは

供託

という手段を用います。

 

供託手続(法務省)

 

借り主が知らないところで家主が変わったとか、
債務者に通知せずに債権が譲渡されたとか、
そういう場合には支払金を供託して、
キチンと支払ったものと扱われるんですね。

 

お金の支払い相手を判断できないときは供託

意思表示を伝える相手が不明のときは公示送達

このような違いがあります。

そうは言っても、無断で欠勤してる人に対して連絡するために、公示送達という手段まで使うのかどうか。そういう手段を現実に使うのはあり得るのか。無断欠勤する人にそこまでやらないんじゃないか。というのが多くの方の考えるところではないかと。

きちんと手続きをするという姿勢の職場ならば、無断欠勤する人に対して公示送達を利用することもあるのかもしれませんけれども、そういう職場は少ないのではないでしょうか。

大半の会社では、無断で欠勤してる人がいたら、電話で連絡したり、同僚の人達にスマホを使って連絡してもらったり、家族や親戚に連絡したり。他には、友人に連絡したり、という形で、間接的に本人と接触しようとするのではないかと。

そういう連絡ができなかったら、じゃあ郵便で連絡文を送って連絡してみるとか。それでも何も連絡をして来なかったら、もう放置しておく。もしくは、欠勤から1か月ぐらい経った段階で除籍する。除籍というのは雇用契約を解除なり退職したと扱うものです。。

無断欠勤する人を想定して雇用契約や就業規則を作っている会社は珍しいのではないかと。無断欠勤するぐらいだったら退職するだろう、と考えるものですから、そんな事態を想定してルールを作るようなことはしないのですね。

 

連絡なしで出勤してこなくなった人。

何らかの理由で、
突如、連絡せずに無断欠勤して、
出勤してこなくなった。

こういう人、職場にもいるのでは。


事件や事故に巻き込まれて、
出勤できなくなるケースは本人に責任はありませんが、

そのような理由もなく、

もう職場に行きたくない、
辞めるから連絡なしで無断欠勤する、

という人もいます。


「辞める」と伝えにくいから、
無断欠勤でもって退職の意思を示す。

そういう事情もあるのかもしれませんが、
何の連絡も無しで出勤しなくなると、
職場の人は心配するもの。

警察に届けられて、
捜索される場合もありますから、

軽い気持ちで無断欠勤を続けると、
後から面倒なことになります。

 

こんなこと書いていますけれども、
筆者も学生の頃に同じことをした経験があります。

今となっては、良くないことをしたなと反省していますが、
仕事を辞める手段として無断欠勤を利用していたんですね。

こういうヤメ方は良くないのは分かっていたのですけれども、
色々と考えるところがあったのか、学生の頃にやってしまったんですね。

 

無断欠勤した人を解雇できる?

退職するなら、

「来月いっぱいで辞めます」

などと伝えましょう。


対面でも電話でも構いませんが、
何らかの方法で退職する意思を伝えます。


仕事で何か嫌なことがあって、
ムカついて無断欠勤し、
もう仕事には行かない。

そういう辞め方もあるにはありますけれども、
後から面倒なことが起こる可能性がありますし、
オススメしません。


事業所としては、

「無断欠勤している人を解雇したい」

と考えるところでしょう。


使用者と労働者は雇用契約を締結しており、

使用者は仕事ができるように環境を整備しないといけませんし、
労働者は労働を提供する義務があります。

無断欠勤すると、労働を提供していないわけですから、
債務不履行責任が生じます。

労働を提供するという債務を履行していないため、
債務不履行なんですね。


ですから、

無断欠勤を理由に、
使用者が労働者との雇用契約を解除するのもアリです。


ただ、

無断欠勤といっても、
個々に事情が異なります。


事件や事故に巻き込まれた、
もしくは自らそれらを起こしたとすれば、

出勤したくてもできない、
連絡したくてもできない、

という状況なのかもしれません。

そういう場合は、
解雇するというわけにもいきませんからね。


しかし、

本人は元気でトラブルも無いが
無断で欠勤したとなれば、

「解雇するか」

という話も出てくるというもの。

 

「もう来ないんだろうから、解雇にしちゃえ」
そう思いたい気持ちは分かるのですが、
本人は退職すると口頭でも文書でも伝えてきていないため、
雇用契約を解除しにくいのです。


もし、就業規則に、

「正当な理由、連絡なしで欠勤が3日以上に及んだ場合、解雇します」

と書かれていたら、

無断欠勤が3日目になった段階で懲戒解雇となります。


「3日で足りるんですか?」
「1週間ぐらいは様子を見る必要があるのでは?」
「14日は必要では?」
「いや、解雇予告期間と同じ30日は必要なのでは?」

など色々な考えがあるでしょうが、
ここは会社ごとに就業規則で決めるところです。

 

どうやって解雇の意思表示を伝える?

仮に、就業規則に基づいて、
無断欠勤が3日に及んだので、懲戒解雇したとしても、

「あなたを懲戒解雇した」
と相手に伝えないといけないのです。


会社としては、
就業規則に基づいて懲戒解雇すれば終わりなのでしょうが、
それを相手に伝えるまでは手続きは終わらないのです。


では、どうやって相手に懲戒解雇を伝えるか

ここが一番悩むところでしょうね。


本人に解雇を伝える手段としては、
せいぜい電話を何回かかける程度ではないでしょうか。

履歴書や緊急連絡網に書いてある
自宅電話や携帯電話に電話をかけて伝える。

本人が会社まで来れば伝えやすいでしょうが、
無断欠勤する人がすんなりと来社するとは思えません。

 

懲戒解雇したとの文書を内容証明で送る方法もあります。

内容証明 - 日本郵便

郵便局で、懲戒解雇の書面を提示して、
こういう文書をこの住所のこの人に届けます、
と証明するのが内容証明です。

通常の郵便料金に430円を加算すると送付できますから、
リーズナブルな手段です。

ただ、
相手がその住所にいなければ届けられません。


携帯電話の番号しか持っていない人も増えましたし、
電話番号を変えるのも容易です。

住所も、引っ越ししてしまえば、
もう会社はそれを知ることができません。


電話や郵便で伝えられればいいのですが、
それもできない場合は、先程の公示送達という手段を用います。

公示送達なら、
半ば強制的に懲戒解雇を相手に伝えることができますが、
現実にそのような手段まで用いるのかどうか。


相手が住んでいるところを調査して、
相手方に意思表示を伝えられないことを
証明しないといけないのが公示送達です。

電話や郵便に比べて手間のかかる手続きなんです。

業者に代行してもらうとなると、数万円の費用がかかります。


では、無断欠勤して来なくなった人にそこまでするのか。

 

もし、無断欠勤している人に支払うべき退職金がある場合は、
解雇した後になって、それを請求される可能性がありますから、
公示送達のために時間と費用がかかったとしても、
相手に懲戒解雇の意思表示を伝えたほうが良いでしょう。

 

懲戒解雇された場合は退職金を支給しない
という退職金規定がある会社もありますからね。

公示送達で懲戒解雇を伝えれば、
退職金は支給されなくなります。

例えば、
2,000万円の退職金がある人なら、
数万円の手数料を払って公示送達を申し立てても
退職金が不支給になることを考えれば、
高いものではありません。

 

無断欠勤を想定して労働基準法や民法は作られていない

雇用契約では、1週間に何日働くか、何曜日に出勤するのか、何時間働くのか、休みは週に何日とるのか、何曜日を休みにするのか。こういったことを契約の中で決めていますから、 無断で欠勤すると、契約で決めた内容を履行できません。ならば、無断欠勤で雇用契約を解除するのは対応として間違っていません。

その会社での仕事を辞めたくてあえて無断欠勤する人もいますからね。学生の頃の筆者のように。

契約で約束した通りの内容を実行してもらえないんだったら契約を解除する。例えば、3万円で時計を売ると言っていたのに、時計を売主が準備して来なかったら、買主は「この契約はなかったことにする」と言って帰ってしまうでしょう。これと同じです。 

無断欠勤したからといって、すぐに雇用契約を解除してしまうと、何らかの事故や病気によって出勤できなかった、もしくは連絡できなかったのかもしれませんから、何らかの事情があるのかもしれないという調査はしなければいけないでしょう。

本人や家族に連絡をして、親族、他には友人といった人達に連絡を取って、それでも連絡が取れなかったなら、雇用契約の内容を履行してもらえないので契約を解除する。契約内容を履行してもらえなかったなら、これは債務不履行ですから、それに対応するために契約を解除するんだ、という手順になるでしょう。

民法の債務不履行でもって雇用契約を解除する。これも根拠としては妥当なものです。雇用契約で約束した内容が履行されない。無断欠勤すると履行遅滞になりますから、それでもって債務不履行となり、契約を解除する、という順序になります。

ただし、無断欠勤により雇用契約を債務不履行で解除するとしても、何日間の猶予があればいいのかについては民法では決めていませんので、これは事業所ごとに独自に定める必要があります。

最も知りたいのはココなのかもしれませんけれども、民法で決めていないことならば、当事者間の契約、労務管理だったら雇用契約や就業規則で決めなければいけません。 民法は当事者間での取り決めが何もない時に使われる法律であって、言うなれば最低限の法律として位置づけられているものです。 

期間の定めのない雇用契約は、解約の申入れの日から2週間の猶予でもって終了すると民法627条では書かれています。また、労働基準法20条では解雇予告期間を30日間設けています。ならば、無断欠勤を始めてから2週間や30日も待たなければいけないかというと、これも微妙なところ。どちらの条文も無断欠勤する人を想定して作られたものではありませんから、そのままポンと当てはめて使うわけにはいかないのです 。

無断欠勤してる人に連絡を取って、本人に連絡を取れたかどうかのフィードバックを取るまでの期間はどれぐらい必要かと考えると、1週間もあれば十分なのではないでしょうか。連絡が取れればそれでいいとしても、1週間の猶予でもって連絡を取れなかったんだったら、無断欠勤してから1週間で債務不履行により雇用契約を解除する。こういうルールの決め方もあります。

客観的な基準がありませんから、「こういう対応するんだ」と任意に決めていかないといけないところ。本人と連絡を取るような手続きをしたかどうかは大事なところでしょうから、いつ誰に連絡を取ったのかという記録は残して、あれこれと連絡を取って、それで連絡が取れなかったら契約を解除する。 

労働基準監督署から解雇予告除外認定を受けるのも1つの方法です。無断欠勤して会社からあれこれと連絡を取ろうとしたにも関わらず、連絡が取れない、本人も出勤してこない、という事情を書面でまとめた上で、解雇予告除外認定をしてもらう。ただし、解雇予告除外認定を受けるということと、その解雇が有効かどうかは別の問題ですけれども。 

無断欠勤する人に対する対処法はいろいろありますし、どの対処法が正解かというと、いずれの選択肢も正解であって、この方法であれば何の問題も起こらない選択肢はありませんので、会社ごとに「ウチではこういう対応するんだ」と決めて、その通りに対応するのが妥当な解決ではないかと。 

 

 

雇用契約書とは?意味や記載事項、労働条件通知書との違いを解説
契約書で決めた通りの内容をお互いに履行する。これが商取引では当たり前ですけれども、会社内の雇用契約では、雇用契約の内容と就業実態がずれてしまうこともあり、往々にして雇用契約が軽く扱われがちです。

 

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