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毎週5時間 タダで残業させられる? 労働基準法と雇用契約の違い

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悪びれず「タダ残業」…社長の無知はもはや罪 労働法制の誤解が痛すぎる実話

完全週休二日制(土日祝日休み)、1日あたりの実労働時間は7時間という契約で入社しました。ところが社長は「法的には週に40時間までは働かせていい」と言ってくるそうです。

さらに「(法的には40時間なのに)実働7時間×5日間だと35時間しか働いておらず、あと5時間は働くべきだ」「土日のいずれか出社するのは義務であり、割増賃金の支払いもしくは代休を与えたりする必要はない」とも社員に向かって指示をしているそうです。

 

 

週40時間は、法定労働時間の枠。


勤務時間が週35時間までになっているが、
法律では週40時間まで働かせていいのだから、
残りの5時間分は土日や祝日に出勤すべき。

こういう理屈なんですね。

サッと読むと、
何だか正しい内容に思えてしまいます。


確かに、
法律では週40時間まで働けるようなルールがあった気がするし、
現状が週35時間なら、残りの5時間は追加で働いても良さそうです。


では、どこが問題なのか。

説明していきましょう。

 

まず、

「法的には週に40時間までは働かせていい」
という部分ですが、


労働基準法 第32条(以下、32条)
 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。

ここを根拠にしているのでしょう。

週40時間というのは、法定労働時間と言われ、
この範囲内で働けば法律違反にはなりません。


32条を別の切り口から捉えると、

「40時間を超えない範囲ならば、労働させてもよい」

と解釈する人がいても不思議ではありません。


「法的には週に40時間までは働かせていい」
という部分だけで判断すると、
これは法律違反ではありません。

ゆえに正しいと言えます。

 


法律に違反しなくても、雇用契約には違反する。


雇用契約では、

週5日勤務
1日7時間
週35時間勤務

月給30万円

という条件だったとしましょう。


ここで、

1週間に40時間は働かせていいと考え、
追加で5時間、土曜日に出勤させたとしましょう。

月曜日から金曜日まで7時間で、週35時間。

さらに、土曜日に5時間を追加し、週40時間に。

給与はそのままで月給30万円。

これが良いのかどうか。

 

週40時間を超えない範囲ならば、
32条には違反しません。

しかし、

勤務時間が増えたのに、
月給が30万円のままだと、
土曜日の5時間分が賃金未払いになります。

賃金未払いとなれば、
労働基準法24条(以下、24条)違反です。


労働時間に関する32条には違反していませんが、
土曜日の仕事に対する賃金未払いと捉えれば、
24条違反になります。


さらに、
契約した内容と勤務実態が違っていますから、
雇用契約にも違反しています。

契約に違反すると、
これは契約を解除する理由になります。

 

 

 

 

法律と契約は別物。


【雇用契約で決めている労働時間】

【法的な労働時間の上限】
はそれぞれ別物です。

週35時間で契約していたら、
35時間を超えて働いてもらうことはできません。

ただし、
「業務上の都合で時間外労働が発生する場合がある」
と契約書に書かれていれば、残業はできます。


週35時間で契約しているところ、
何らかの事情で、時間外労働が発生し、
先週は週37時間になり、今週は週36時間になったとなれば、
これは契約の範囲内です。

しかし、
毎週40時間労働になっているとなれば、
これはイレギュラーな時間外労働によるものではなく、
雇用契約に違反しています。


法律は全員に適用されるものですが、
契約は個別に適用されるものです。

法律だけだと個別の事情に対応できないから、
雇用契約で個人ごとに労働条件を決めるのです。


ゆえに、
法律で週40時間まで働けるからといって、
雇用契約を無視して、全員を週40時間勤務にすることはできないのです。

 

 


どこが残業で、どこが残業ではないのか。


残業という言葉の意味は1つではなく、
人によって解釈が異なります。


「決まった時間をオーバーして働けば残業」
と考えている方は多いでしょうが、

「決まった時間」とはどういう時間なのかが問題です。

先程の例では、
週35時間で契約しているケースでしたが、
これを週40時間まで延ばしたら残業になるのかどうか。

決まった時間が週35時間だと考えれば、
この場合は5時間分が残業になります。

35時間をオーバーした時間が残業ですからね。


しかし、

「週40時間、つまり法定労働時間を超えた時間が残業」
と考えた場合、

上記の例では残業は無かったと解釈できます。


雇用契約なり就業規則で決めた時間を
基準にして残業の有無を判断するのか。

それとも、

法定労働時間の週40時間を基準にして
残業の有無を判断するのか。

2通りあるんですね。

 

仮に、

【法定労働時間の週40時間を基準にして
残業の有無を判断する】
立場で考えた場合、

週35時間で契約している人を40時間まで働かせたら、
土曜日の5時間はタダ残業になってしまうのか。

これはタダ残業にはなりません。

週35時間で月給30万円なのですから、
追加で5時間働いたとなれば、
その時間に対する給与を追加で支払う必要があります。


1日7時間で、1ヶ月に21日勤務だと仮定すれば、
1ヶ月の勤務時間は147時間。

月給30万円を時間あたりに換算すると、
1時間あたり2,040円。

ならば、

土曜日に出勤した5時間に対しては、
10200円の給与を払わないといけないのですね。

月に土曜日が4回あるとすれば、
月給は4万円ほど上乗せされ、
34万円を少し超えるぐらいになるはずです。


契約していない時間まで働いた場合は、
その時間に対しては別途で給与を計算し支払う必要があります。

そのため、
土曜日の5時間勤務はタダ残業にはなりません。

月給30万円のままだと、賃金未払いで24条違反になります。

 

 


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山口正博 社会保険労務士事務所
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